世の中

PS5、PS4、XboxX.SのアクションRPG。開発は桜花スタジオ。
17年ぶりとなる聖剣伝説シリーズの新作。スクエニはタイトルによって予算の掛け方にムラがあるけど、少し前に発売された聖剣伝説3のリメイクが100万本以上売れた実績をもとに企画を通したのか、それなりの規模で作られていた。
映像は綺麗だし、ムービーはフルに動くし、アクションは派手だし、カスタマイズは豊富だし、ダンジョンも凝ってるし、世界も広大。海を渡ったり空を飛び回ったりという皆が大好きな世界をまたにかけた大冒険だって出来る。
日本のRPGは低予算だったりコンセプトが一方向に特化しているものが多い中で、このゲームは需要のある要素をそつなく取り入れて王道RPGとして申し分ないクオリティを誇っていた。
無難とも言えるが、クオリティの高い王道RPGというのは意外と少ないので、そういう意味では個性がある。

でも、戦闘が面白くないんだよなぁ。アクションとしての気持ちよさがあんまりない。それは動きがモッサリしているという意味ではなく、コンボ性だったり、システム性だったり、アクションをする上での動線が弱いので、一辺倒なボタン操作になりがち。
感覚的には、ターンベースの戦闘をリアルタイムに動かせるにしましたという感じに近い。じゃあ戦術性が濃いのかと言うと、それも無い。アイテムはほぼ無制限に持ち込めて全くインターバルなしにがぶ飲みできるし、MPも戦闘中に簡単に回復できる。
演出が派手なので見た目は賑やかだが、アクションとしてのアプローチが弱く、駆け引きも無くて、ひたすら戦闘は大味。軸と呼べるものがないので、面白さを見出しにくいバトルだった。
そして、戦闘が面白くないと俺はモチベーションが一気に下がってしまう。
戦闘が面白いからカスタマイズしたくなる。カスタマイズに意欲が沸くから装備やアビリティを探す為に探索したくなる。そういう連鎖反応があるRPGが俺は好き。バトルが面白くないと探索もカスタマイズもテキトーで良いやとなってしまう。
このゲームは戦闘が全く面白くなかった。途中からひたすらストーリーだけを追いかけて終わった。

俺を最後まで引っ張ってくれたのは、ストーリーの力。これが思いの外良かった。
聖剣伝説シリーズは初めてなので、どうせ中身のないメルヘンファンタジーでしょ?と勝手に思い込んでいたけど、とんでもなかった。テーマ性の濃い、心に何かを残してくれる物語だった。
ストーリーは、御子として魂を捧げるために選ばれた人たちと守り手が、マナの樹まで旅をするというあらすじ。魂を捧げる、というのは要するに死を意味する。主人公たちは死ぬ為に旅をしているわけで、FF10のような殉教的な物語となっている。
異様なのは、主人公たちの目がキラキラしていること。誰もが自分が御子に選ばれる事を望んでいる。そして選ばれた事に心の底から感謝している。家族も選ばれた我が子を嬉しそうに送り出している。
死を運命付けられたのにあまりにも能天気なので「こいつら死ぬ意味が分かってるのかな?」と思ってしまうほど。
でも、異常な習慣が世の中に浸透している事なんて現実世界でも良くある話で、生贄の儀式は流石に極端すぎる発想だが、社会や組織を支えるために個人は犠牲になって然るべきという観念は大なり小なり今でも一般的にあるものだ。俺だってそれを何となく受け入れてしまっている。当たり前となっている事を疑ってかかるのは凄く難しい。
ゲーム中で言及はないけど、命を捧げる行為に違和感を持たれないように、長い年月をかけて御子として選ばれる事は誉であると刷り込んでいく世の中が形成されていったのは間違いない。誰かが命を捧げないと世界が滅びてしまうから。
だから誰も疑わない。DNA単位で世の中の理が身体に刻み込まれている。目をキラキラさせながら、自分の運命を受け入れている。あまりにも真っ直ぐで、純粋。それが当たり前の世界。
そんな中で、たまにふと、御子に選ばれた仲間が使命ではなく自分自身を顧みた感情を吐露する場面があったりして、切ない。
このゲームの物語は、「当たり前となっている事に対して、思考を止めるのではなく、考える」がテーマとなっている。
御子として選ばれたら命を捧げるのは絶対の運命であるという世の中の摂理に従って特に疑問を抱く事なく死ぬためにマナの樹に向かっていた主人公たちが、旅を通して、世の中の仕組み、別れる事の意味、命を捧げる真の覚悟、自分自身の意志など、色んな事を学びながら成長していく。純粋で真っ白だった主人公たちは、ちゃんと物事に対して考えるようになっていく。
そういうストーリーなので、世界を滅ぼそうとする宿敵のキャラクターに対しても、何かやんごとなき理由があるに違いない!というスタンスで接していくのは良かったが、あまりにも理由が一方的すぎるので、もう少し同情できる境遇を作って欲しかった。
あと、終わり方があんまり好きじゃない。せっかく自分たちで考えて選択する事が出来る思考が身に付いたのに、あの終わり方だと、成り行きで何とかなりました、という風にしか見えないんだよな。もっと、自分の運命と自分自身の選択の狭間で葛藤して欲しかった。

ゲームとしてはイマイチだったが、ストーリーは面白かった。日本のRPGらしい熱量をぶちまけた一点突破ではなく、リアルで切実なテーマを備えた、考えさせられる物語だった。
それにしても、久しぶりに新作を出して、内容も悪くないのに、売上はパッケージだけで初動が4万ですか。ダウンロード版、PC版含めても多分良くて7〜8万くらい。3のリメイクから半減という結果。
今後の売れ行きや海外の売上は未知数だが勢いは感じられない。せっかく復活したのに、またしばらく休眠しそうですね。
売れなければ、ゲームは作れない。その当たり前に対しては、ぐうの音も出ない。

PS5、PS4、XboxX.SのアクションRPG。開発は桜花スタジオ。
17年ぶりとなる聖剣伝説シリーズの新作。スクエニはタイトルによって予算の掛け方にムラがあるけど、少し前に発売された聖剣伝説3のリメイクが100万本以上売れた実績をもとに企画を通したのか、それなりの規模で作られていた。
映像は綺麗だし、ムービーはフルに動くし、アクションは派手だし、カスタマイズは豊富だし、ダンジョンも凝ってるし、世界も広大。海を渡ったり空を飛び回ったりという皆が大好きな世界をまたにかけた大冒険だって出来る。
日本のRPGは低予算だったりコンセプトが一方向に特化しているものが多い中で、このゲームは需要のある要素をそつなく取り入れて王道RPGとして申し分ないクオリティを誇っていた。
無難とも言えるが、クオリティの高い王道RPGというのは意外と少ないので、そういう意味では個性がある。

でも、戦闘が面白くないんだよなぁ。アクションとしての気持ちよさがあんまりない。それは動きがモッサリしているという意味ではなく、コンボ性だったり、システム性だったり、アクションをする上での動線が弱いので、一辺倒なボタン操作になりがち。
感覚的には、ターンベースの戦闘をリアルタイムに動かせるにしましたという感じに近い。じゃあ戦術性が濃いのかと言うと、それも無い。アイテムはほぼ無制限に持ち込めて全くインターバルなしにがぶ飲みできるし、MPも戦闘中に簡単に回復できる。
演出が派手なので見た目は賑やかだが、アクションとしてのアプローチが弱く、駆け引きも無くて、ひたすら戦闘は大味。軸と呼べるものがないので、面白さを見出しにくいバトルだった。
そして、戦闘が面白くないと俺はモチベーションが一気に下がってしまう。
戦闘が面白いからカスタマイズしたくなる。カスタマイズに意欲が沸くから装備やアビリティを探す為に探索したくなる。そういう連鎖反応があるRPGが俺は好き。バトルが面白くないと探索もカスタマイズもテキトーで良いやとなってしまう。
このゲームは戦闘が全く面白くなかった。途中からひたすらストーリーだけを追いかけて終わった。

俺を最後まで引っ張ってくれたのは、ストーリーの力。これが思いの外良かった。
聖剣伝説シリーズは初めてなので、どうせ中身のないメルヘンファンタジーでしょ?と勝手に思い込んでいたけど、とんでもなかった。テーマ性の濃い、心に何かを残してくれる物語だった。
ストーリーは、御子として魂を捧げるために選ばれた人たちと守り手が、マナの樹まで旅をするというあらすじ。魂を捧げる、というのは要するに死を意味する。主人公たちは死ぬ為に旅をしているわけで、FF10のような殉教的な物語となっている。
異様なのは、主人公たちの目がキラキラしていること。誰もが自分が御子に選ばれる事を望んでいる。そして選ばれた事に心の底から感謝している。家族も選ばれた我が子を嬉しそうに送り出している。
死を運命付けられたのにあまりにも能天気なので「こいつら死ぬ意味が分かってるのかな?」と思ってしまうほど。
でも、異常な習慣が世の中に浸透している事なんて現実世界でも良くある話で、生贄の儀式は流石に極端すぎる発想だが、社会や組織を支えるために個人は犠牲になって然るべきという観念は大なり小なり今でも一般的にあるものだ。俺だってそれを何となく受け入れてしまっている。当たり前となっている事を疑ってかかるのは凄く難しい。
ゲーム中で言及はないけど、命を捧げる行為に違和感を持たれないように、長い年月をかけて御子として選ばれる事は誉であると刷り込んでいく世の中が形成されていったのは間違いない。誰かが命を捧げないと世界が滅びてしまうから。
だから誰も疑わない。DNA単位で世の中の理が身体に刻み込まれている。目をキラキラさせながら、自分の運命を受け入れている。あまりにも真っ直ぐで、純粋。それが当たり前の世界。
そんな中で、たまにふと、御子に選ばれた仲間が使命ではなく自分自身を顧みた感情を吐露する場面があったりして、切ない。

御子として選ばれたら命を捧げるのは絶対の運命であるという世の中の摂理に従って特に疑問を抱く事なく死ぬためにマナの樹に向かっていた主人公たちが、旅を通して、世の中の仕組み、別れる事の意味、命を捧げる真の覚悟、自分自身の意志など、色んな事を学びながら成長していく。純粋で真っ白だった主人公たちは、ちゃんと物事に対して考えるようになっていく。
そういうストーリーなので、世界を滅ぼそうとする宿敵のキャラクターに対しても、何かやんごとなき理由があるに違いない!というスタンスで接していくのは良かったが、あまりにも理由が一方的すぎるので、もう少し同情できる境遇を作って欲しかった。
あと、終わり方があんまり好きじゃない。せっかく自分たちで考えて選択する事が出来る思考が身に付いたのに、あの終わり方だと、成り行きで何とかなりました、という風にしか見えないんだよな。もっと、自分の運命と自分自身の選択の狭間で葛藤して欲しかった。

ゲームとしてはイマイチだったが、ストーリーは面白かった。日本のRPGらしい熱量をぶちまけた一点突破ではなく、リアルで切実なテーマを備えた、考えさせられる物語だった。
それにしても、久しぶりに新作を出して、内容も悪くないのに、売上はパッケージだけで初動が4万ですか。ダウンロード版、PC版含めても多分良くて7〜8万くらい。3のリメイクから半減という結果。
今後の売れ行きや海外の売上は未知数だが勢いは感じられない。せっかく復活したのに、またしばらく休眠しそうですね。
売れなければ、ゲームは作れない。その当たり前に対しては、ぐうの音も出ない。
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