ゲームは、楽しい



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スイッチのアクションゲーム。開発は任天堂。

記憶にある限り、やたさんが人生で初めて遊んだゲームはスーパーファミコンの「スーパーマリオワールド」で、その思い出の中でずっとゲームオーバーの画面がハイライトしているけど、ゲーム自体の難易度が高いのか初めてのゲームだったので操作に慣れていなかったのかあるいは両方なのか分からないがとにかく死にまくっていた印象が強烈に残っており、未だにゲームオーバー時に流れるイントロが耳にこびり付いて離れない。
当時はお爺ちゃんお婆ちゃんの家にしかゲーム機が置いてなくて夏休みや正月などで帰省した僅かな期間の間に1日1時間という制約の中で遊んでいたが、久しぶりにテレビゲームが遊べると思ったら失敗の風景ばかり見せ付けられ、しかもセーブできる場所が特定のステージで限定されていたので中々前に進む事ができず、何回も同じステージばかりやる羽目になっていた。
それでもゲームを遊べるというその時間が幼少のやたさんには特別なものだったので、目を輝かせながらマリオワールドを遊んでいた。

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そして時は流れ、ゲームを遊ぶ事が当たり前になり、好奇心や集中力は衰え、ゲームはただの作りものであるという事も知ってしまった俺は、久しぶりに自分にとっての原体験であるスクロールマリオの新作、「マリオワンダー」を買って遊んでいるのであった。
当然の事ながらマリオワールドよりも簡単である。ステージは嫌らしさがないし、クッパも弱い。サクサク進んでいく。いやまぁ普通に死ねるけど、残機が大量にあるのでゲームオーバーになる事はない。特定の場所でしかセーブ出来ないなんて事もないし、チェックポイントも細かくある。
マリオワールドは結局祖父母の家にあったスーパーファミコンが壊れるまで遊んでもクリアー出来なかったが、ワンダーは数日で終わった。

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うん、これぐらいの手軽さで良いよ。マリオなんて楽しく遊べたら良いんだから、無理に難しくする必要なんてない。
この「楽しく遊べたら良い」、という単純なゲームの面白さを俺はあまり自分の中の価値観に浸透させる事が出来てなかった気がする。
マリオワールドでの思い出が原体験としてあったので、どうしても俺の中では、頑張って攻略するゲーム体験にこそ価値があるという意識が強かった。
流石に全てのゲームに「ダークソウル」並の難易度は求めないけど、手応えがない爽快感だけのゲームを軽視していた節があり、同じマリオシリーズの「マリオオデッセイ」とか簡単すぎるという理由でかなり酷評していた記憶がある。
でも、最近は爽快感という取っ付き易さがあるから、ゲームは楽しみやすいんだなと思えるようになったね。考え方が変わったというか、それを理屈として実感できるようになれた。
結局のところ俺が途中で投げ出してしまっているゲームの大半は爽快感に欠けているものであって、駆け引きだとかアイテムのやり繰りだとかシステムの試行錯誤が求められるゲームバランスだとかそうした「やりごたえ」が欲しいと言いながらそれが突き詰められているゲームに出会うと取っ付きの悪さを感じて放り投げている事が多々あり、心の奥底では遊び易さを優先していた事に気付いた。
もちろんゲームの方向性によってユーザービリティの度合いは幅があって然るべきだが、少なくともマリオに関しては楽しく遊べたらそれで良いと思う。

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マリオワンダーは、如何に気持ちよくプレイヤーがゲームをクリアーできるか、という爽快感をゲーム体験として表現している。
今作の最大の特徴は、「ワンダーフラワー」というアイテムを取るとステージの仕掛けが一変するところ。
雪崩れ込む牛の行列。クネクネ動き出す土管。唐突に始まるクイズ。何故かスライムになるマリオ。ワンダーフラワーという理由付けだけでやりたい放題しているのがあまりにも愉快。何をしても良いよねと言わんばかりの何でもありの突拍子がない仕掛けがステージに充満していた。
見栄えるアイディアが満載なのでそれだけでも充分面白いが、しかもこれがリズム良くアクションできるように計算されているのでマリオを動かしていて凄く気持ちが良い。何も考えなくて良いし、工夫する必要もない。ただ流れに身を任せるだけで良い。まるでジェットコースターのような感覚で突き進む事ができる。
このワンダーは、本当にただ爽快感を得させる為だけの仕掛けだが、それが凄く心地良かった。ゲームって楽しいんだと単純に思わせてくれる面白さがあった。
もちろんその単純な面白さの裏には、流れるようにアクションができるよう緻密な計算の元に成り立っているステージのデザインや、ギミックの多彩さ、煌びやかな映像、マリオメーカーもビックリさせる大胆なアイディアなど、そうした任天堂の知恵と技術が結集した制作能力があるのは言うまでもないが、そんな面倒な理屈を考えるまでもなく、ただただ純粋に楽しかった。

昔、マリオワールドを夢中で遊んでいたのも、難しいからではなく、ゲームが楽しいからだった。
ゲーム体験において「やりごたえ」というのは間違いなくゲームを面白くしてくれる要素だし、今でも俺の嗜好はそっち寄りだけど、それだけが全てではない。
ゲームは、単純に楽しい。マリオワンダーは、ゲームの純粋さを感じさせてくれるものだった。