超・超ストーリーゲーム




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PS5、PS4、スイッチのアクションRPG。開発はアクリア。

最近まで僕はFF16というストーリー特化ゲームを遊んでいたわけですけども、それが終わって次に手を付けたこのクライマキナは更なるストーリーゴリ押しゲームでした。
とにかくこのゲームの全ては物語であり、その為だけに作られたゲームであり、それ以外の事はどうでも良いと言わんばかりの内容。

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具体的に言うと、道のりが極めて簡略化されている。RPGと言えば移動の時間が結構な比率を占めているのが一般的だけど、このゲームにはフィールドや街といったものが存在せず、用意されたステージも仕掛けや分岐がほぼなくてスーパーシンプル。
見栄えも変わり映えしないし、バリエーションを生むための工夫も本当に最小限しかなく、明らかにゲーム側の事情が透けて見える。どう見ても予算が厳しそうなゲームなので察するところではある。
そして、どうせ作り込むことが出来ないならと開きなおったのか、道のりの部分を徹底的に簡略化してシンプルさを突き詰めているのが潔い。何しろステージクリアー後にタイムが表示されるが、殆どの場合10分にも満たない(メインのステージ総数は30足らず)。戦闘も含めてこの時間です。一応探索のための仕掛けもあったりするが、基本的に迷う要素は皆無。
その結果、とてつもなくゲームの回転が早く、ひたすら物語が押し寄せてくる、超高比率ストーリーゲームが誕生しているのであった。
いやもう本当にテンポが良い。ちょっと操作して、すぐ次のストーリーが流れる。FF16も割とそういう作りのゲームだったが、クライマキナの割り切り方は次元が違う。

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一方で、やたらと戦闘が難しい。正直、予想外だった。こんなに割り切った作りなので戦闘もサクサクだろうと余裕こいてたから。だから3体目のボスで何回かリトライさせられたのも何かの間違いじゃないかと思っていた。
気のせいじゃなかった。このゲーム、バトルはガチで殺しに来ている。途中から殺意の強い敵がわんさか登場し俺は何十回も死んだ。
戦闘の形としては、普通のサクサク動くアクション。パリィやジャスト回避などもあって結構本格派である。
そして、とにかく受けるダメージがあり得ないぐらいデカい。そこら辺にいる雑魚でも2回攻撃を食らうとザラに死ぬ。
そんな一つのミスが命取りになるゲームバランスなのに、敵の攻撃が自分のエフェクトと重なって分かりにくいし、モーションがペラペラなのでパリィやジャスト回避のタイミングが掴み辛いし、当たり判定もガバガバだし、アクションの作り自体はかなり大雑把でイライラする。
加えて、回復や覚醒などの重要な支援効果を発動するためには十字キーで項目を合わせる必要があって一瞬戦況から目を離さざるを得ない操作性も配慮がない。
極め付けに、バリアーのスキルさえ付けておけば緊張感のあるゲームバランスが無と化してヌルゲーとなる一貫性の無さにガックリする。
敵の攻撃力は高いが耐久力は低く戦闘が間延びしないこのゲームのバランスは、お互い殺るか殺られるかという機械らしい抑えの効かない激しさを表現していてストーリーに熱量をもたらしてくれるので戦闘の大雑把さに耐えながらも納得していたが、バリアーのせいでそんな情緒はどっかに飛んでいった。バトルの駆け引きも一気になくなり、ただの連打ゴリ押しゲーとなった。
まぁそんな事言いながらもバリアー使いますけどね。これが無いとしんどすぎるから。ラスボスとか即死攻撃連発してくるんで。

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というわけで、道のりは全く印象に残らないし、戦闘も残念な部分が多いが、結局のところこのゲームの本分はそこではない。とにかくクライマキナが見せたいものはストーリーであり、俺もそこに期待してこのゲームを買った。
そして、そこまでしているだけあってストーリーは、強い想いが込められていた。フリューらしく主張が強い物語が今回も展開される。
今作はやたらと「純粋性」に拘っているように見えた。身分だとか、性別だとか、肌の色とか、人間だからとか、そういう枠組みに囚われない、もっと純粋で混じり気のない真っ直ぐな衝動、それこそが本物の愛であるという、とてもピュアで眩しい主張をぶつけてくる。
そこのメッセージ性を高める為に、機械がテーマとなっていたり、登場人物が女性で固められたりしている。
個人的には腑に落ちないけどね。純粋な愛の形を描く為に、機械に愛を語らせたりというのは、確かに分かりやすい誠実さがあるけど、それこそ形に囚われた方程式に思えてしまう。機械なのに愛を持ってるなんてピュアに違いない!という理屈ありきに見える。
という事もあってイマイチ感じ取りにくいストーリーだったが、共感できなくてもキャラクターとの一体感や世界の実情に触れる臨場感によって何となく感動できてしまうのがゲームという媒体の良いところである。
しかし、クライマキナのチープな作りがここで悪い面に炸裂してしまう。ストーリー以外の作りがスカスカなためゲームプレイは流し作業のような感覚なのでゲームならではの臨場感が弱いし、ストーリー部分も映像が貧弱なので迫力を持って伝わって来ない。
結果的にシナリオとキャラクターの個性だけでこのゲームに入り込む必要があるのだが、俺はそこにあまり魅力を感じなかったので特に感情が動くこともなく終わってしまった。

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RPGを遊んでると移動とかお使いとか面倒くさいなと思ってしまうけど、そういう部分があるからキャラクターとの積み重ねが生まれて一体感が出来上がるのだなと実感した。ストーリーが自分の感性にハマる時は良いが、ハマらない時はゲームの体験性に頼らないと中々厳しい事になる。
とは言え、ストーリーというのは本来押し付けがましいもの。ストーリーに共感はできなかったが、裏を返せば個人的な見解が生まれるほどのメッセージ性が込められていたという事でもある。
俺はそういう主張が強い物語を体感すること自体が好きだし、フリューのRPGはそこに期待しているので充分応えてくれた。
何よりも、やたらと強そうなボスが立ちはだかって、壮大な音楽が鳴り響いて、青臭いセリフを吐いて、感情的なムービーが挟まって、という最高潮のクライマックスを迎える日本のRPGらしい熱量がある。ストーリーゲームとしては充分満足できる内容でした。