マイルドになったアイザックさん



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PS5、XboxX.Sのアクションアドベンチャーゲーム。開発はMotive。

残虐表現のため日本で発売されなかったSFサバイバルホラー、「デッドスペース」シリーズ初代のリメイク作品。
リメイクとなる今作は初報の時点で日本のレーティング機構である「CERO」での審査予定が告知されついに念願叶って国内でも発売されるかと思いきや、発売数ヶ月前にこのシリーズのオリジナルを作ったスタッフによる精神的な続編の「カリストプロトコル」がレーティングの理由で日本での発売中止を余儀なくされ、カリストプロトコルがダメなのにデッドスペースが大丈夫な筈もなく案の定コンシューマーでの国内展開は頓挫した(PC版のみ表現そのままで発売されている)
でも俺はそんな事はお構いなしに海外版を取り寄せてこのゲームを遊んでいるのでした。

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うん、相変わらずグロかったね。特にレーティング審査はプレイヤーの行動に対する結果を重視して見るという話を聞くが、こちらの攻撃によって、頭は破裂するし、腕は飛ぶし、脚はもげるし、血も出まくる。極め付けに倒れた相手をグチャグチャと踏み付ける事まで出来てしまう。残酷だ。CEROが真っ青になるのもよく分かる。でも、それがメチャクチャ気持ち良いのだから仕方ない。その快感が無ければこのゲームはやってられない。

何しろこのゲームの緊張感は凄まじい。主人公アイザックは屈強で反撃手段として多彩な銃火器も手に入るが、それが頼りなく見えるほどこのゲームのプレイヤーに対する精神的な圧力はハンパじゃない。
とにかく凄いのが映像のリアルさ。グラフィックは特上で、ロードによる暗転もなく、しかも極力ゲーム的な情報を映像から排除してどうしても必要なものはガジェットに溶け込ませる(例えば体力バーはアーマーの骨組み、弾薬数は銃のホログラムに表示など)という工夫を凝らしているため、混じり気のない純粋な空間が表現されていた。本当に自分がその世界に居るんじゃないかという思わせるほどの臨場感がある。
その上敵となるネクロモーフは見た目が恐ろしい上に神出鬼没で、ダクトやら配管の隙間やら物陰やら死体の成りすましやらとあらゆる死角を利用して唐突に襲い掛かってくるのでとにかく油断ができない。当たり前のように背後からうめき声が聞こえてくるから毎回ビビる。常にどこから奇襲してくるのか分からないので気を抜いてる暇なんかない。
そしてまた舞台が果てしない宇宙の中で孤立したコロニーというのが絶望感を際立たせる。

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このゲームの雰囲気作りは凄まじく、徹底的にプレッシャーをかけてきて生きるか死ぬかという緊張感を極限まで浸透させている。
俺はPS3の頃からデッドスペースのシリーズを全作やってるし、ホラーにも相当な耐性があるけど、それでも中々冷静になれなかった。安心したいという欲望から、クリーチャーが現れたら息の根が確実に止まるまで徹底的にぶちのめしてやろうという残酷な感情を駆り立てられる。
でも奴らは簡単には死なない。腕がもげてもお構いなしだし、脚が飛んでも這いずりながら追い縋って来るし、頭を吹っ飛ばしたら視界が見えない事によって逆に制御が外れてメチャクチャに動き回り始める。どこからでも湧いて来る適応力と粘り強い耐久力はまるでゴキブリのようで、何となく生命の逞しさすら感じてしまう。
しかし敵も一応は生き物なので腕が無ければ攻撃力は下がり、脚が無ければ機動力も落ちる。更に種類によっては腕がブレードだったり爆弾だったりという場合もあり、切断したその部位をテレキネシスの力を使って敵にぶつける事で大ダメージを与える事ができる。当然それは弾薬の節約にも繋がる。
部位欠損の表現は自分のアクションがちゃんと相手にダメージを与えているという爽快感を与えてくれるだけでなく、アクションの戦術性、アイテムの節約というサバイバル感にも密接に繋がる非常に重要な仕組みとして機能しており、リアルな表現とゲームの攻略性が極めて自然に連動しているのがデッドスペースの凄いところだ。

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だけど敵が倒れたとしてもまだ安心できない。奴らは姑息に死んだふりをするから。
だから倒れたクリーチャーを踏み付けてトドメを刺してやる。本当に息の根が止まっているのか確認する為の大事な儀式であるが、死んだあとも無抵抗の相手を好きなだけグチャグチャと踏み付ける事ができるので、側から見ると大変にお下品でお行儀が悪い。この仕組みがCEROが難色を示す大きな理由ではないかと勝手に思ってる。
でも、やらなきゃやられるんだから仕方ない。だってまだ生きてるかも知れないでしょ?と、そんな言い訳を盾にしながら今までの鬱憤を晴すが如く倒れたクリーチャーをグチャグチャと必要以上に踏み潰すのがもう最高に気持ちが良くてスッキリする。
生きるか死ぬかという極限状態が俺を残虐にさせる。それほどまでにこのゲームはリアルであり、敵は恐ろしく、だからこそ安心感を渇望したくなる。そのカタルシス、緊張からの解放がこのトドメを刺す踏み付け行為に全て詰まっていると言っても過言ではない。確かに表現としては下品だと思うが、しかしこのシステムはある意味でこのゲームの根幹を握るとても大切なものだ。

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やっぱりデッドスペースは面白いね。色んなサバイバルホラーがあるけど、緊張感と敵を打ち倒す爽快感は群を抜いてる。
リメイク云々というよりはデッドスペースのコンセプトの感想しか書いてないけど、基本的には原作に忠実なリメイク作品なので目新しさは特にない。映像が強化された事でより一層コンセプトの説得力が増していたというのが最大の魅力。
一応目立った違いとしては寡黙なアイザックさんが喋るようになったこと、そしてアイザックさんの踏み付けが随分マイルドになっていた。
カリストプロトコルの主人公ジェイコブさんは力強く過激に踏み付けしていたけど、それに比べるとかなり控え目で、だからデッドスペースはPC版だけは日本で出せたのかもね。