拘りとユーザービリティ



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PS5、PS4のアクションゲーム。開発はRoll7。

「olliolli」というローラースケートのシリーズ作品を作っているメーカーが開発したゲームで、今作では銃を使って敵を倒すというユーザー受けしやすいシューティングのジャンルを基盤としながらも、ローラースケートを使った高速移動や、グラインド・トリック・エアーといった同社が得意とするアクロバットな要素を存分に取り入れている。
そしてこの2つの仕組みが上手く噛み合っていた。大量の敵に囲まれて四方八方から銃弾が飛び交う中、無駄にカッコ付けたアクロバットなスケートアクションを決めながら敵を撃ち倒していくのは絵になってる。
実際は攻撃を避けるだけならわざわざ複雑なトリックを決めるよりも◯ボタンだけ押してローリングをする方が簡単だし確実なんだけど、このゲームはカッコいい見栄えのあるアクションを決めないと弾薬の「リロード」ができないという制約があり、アクロバットなアクションは切っても切れない存在となっている。このゲームの個性を活かす良い仕組みだと思う。

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敵の攻撃は激しいし、孤立無援だし、リロードしようとする度にインスタ映えする動きを求められるし、結構難しいゲームであるのだが、オプションのカスタマイズがかなり豊富で、柔軟にゲームのバランスを調整することができる。
なんなら無限弾薬にしたりダメージを全く受けないという仕様にすることも可能。しかもゲーム開始時からすぐ行えてしまう。
このゲームに限らず、最近は仕様をユーザー側が細かく調整できるゲームが多いけど、どうなんだろうね。俺はあんまり嬉しくない。
ユーザーインターフェースや画面情報の調整ぐらいならまだ分かるけど(それも俺はあんまり自由に弄れない方が良いと思うが)、このゲームで言えば、リロードするにはトリックが必須というシステムの核を蔑ろにする無限弾薬なんてオプションが最初から使えてしまうし、ゲームの醍醐味をぶち壊すようなやり方をゲーム側が自ら晒しているという。
とは言え、ただひたすらカッコ良いローラーアクションを極めたいというユーザーもいるだろうから、銃撃戦に気を使う必要がないオプションは良い配慮だとは思うが、せめてクリアーしてから解放で良かった気はする。
結局オプションなんてプレイヤー側が自由に決めれば良いんだからあるに越したことはないじゃんとも言えるけど、俺としてはゲーム側の拘りを押し付けてきて欲しいと思っているのであんまり釈然としない。
例えば「ダークソウル」 にイージーモードなんて搭載されたら選択の自由だとしてもそれだけで自分は間違いなくやる気がなくなる。

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ゲームの拘り、というのは、言い換えればプレイヤーに対する制約でもある。基本的に、ゲーム側が個性を強調しようとする取り組みは、ユーザービリティを損なう事が多い。
でもその取り組みのおかげで、ゲームのコンセプトは強固になる。それがそのゲームにしかないものを生み出し、特別な体験を作ってくれる。
そう言いながらも、拘りが行きすぎると今度は理解するまでに疲弊してしまうので、結局のところ大事なのはバランスだと思うが、このゲームはあまりにもユーザービリティが行き過ぎていてモチベーションが下がってしまった。