人生が詰まってる



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PS5、PS4、スイッチのパズルゲーム。開発はwitch beam。

空っぽの部屋にいる。そこにはダンボールがポツンと置かれている。中にはぬいぐるみや時計など個人の荷物が詰め込まれていた。今日から誰かがこの部屋に住むようだ。
俺はダンボールから中身を出し、美しく、なおかつ機能的に配置する。全ての荷物に完璧に適した場所を与え、どう俺ってセンスあるでしょ?と悦に浸っていたら、荷物の一部が赤く光ってここ違うよみたいな事を示された。
どうやら、ただのレイアウトゲームではないらしい。

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アンパッキングは、ダンボールの中の荷物を部屋の中に配置していくパズルゲーム。最大の特徴は、荷物に対して「持ち主」が存在すること。
直接持ち主が現れることはなく、台詞も一切ないが、俺はその人のことをよく知っている。
ぬいぐるみが好きで特に豚の人形をいつまでも大切に持っていることを知ってるし、好きなゲームメーカーが恐らく任天堂であることも知ってるし、芸術の才能があっていくつもの賞を受賞していることも知ってるし、同じダンボールの中に片方だけの靴とフライパンを一緒に入れてしまうほどいい加減な性格だということも知っている。
ダンボールの中には持ち主の人生が詰まっていて、荷解きを通してその人の20年間の歴史を感じ取ることが出来るというのがこのゲームの趣旨。

本作はプレイヤーのセンスだけを見せ付けて終わりという単なるレイアウトゲームではなく、荷物の配置する場所に正解や間違いという判定があるパズルゲームでもある(オプションで変更することは可能)
と言ってもそこまで厳格に配置場所を求められる訳ではなく、キッチン用品はキッチンの中に置いたり、トイレットペーパーをトイレの近くに置いたり、という一般常識やある程度の機能性が達成されていれば基本的にはOK。
終盤のステージになると荷物の物量に対してのスペースがキツキツになってきて、上手いこと工夫して物を収納する必要があったりもするが、そこまで難易度は高くない。
ただ、たまにイレギュラーな荷物がある。ベッドの上に他のぬいぐるみは置けないのに豚の人形だけは置いても良かったり、とある写真は目に入らない場所に閉まっておく必要があったり、手帳は枕の下に置いても大丈夫だったり。
荷物には持ち主がいるので、最終的にはその人の気持ちを汲み取ることが出来ればそれは正解なのだ。ここら辺の曖昧さが、このゲームのドラマ性を高めてくれている。
このぬいぐるみは特別なんだろうなとか、この写真は今ではあまり良い思い出じゃないんだろうとか、そうやって自然と持ち主の事を思いながらゲームを遊んでいる自分がいた。
パズルゲームでありながら、はっきりとした正解、不正解という明確な線引きがされていないが、だからこそ人生の趣を感じ取ることができるのだろう。

素晴らしかったのが、PS5のコントローラーの振動。物を置いた時の音や感触が驚くほど細かく作り込まれている。
殆ど全ての荷物に対して固有の振動があるというだけでなく、置く場所によっても違う。例えば机に皿を置いた時と床に置いた時では感触が変わっている。驚くべきことに皿を重ねた枚数によっても感触が違う。凄い。

それにしても、ぱっと見どんな荷物なのか分からないものが結構多くあるのは困った。
セーターだと思ったものが実は湯たんぽだったという事実に気付くまでに凄く時間がかかって詰みそうになった。