葛藤日記
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>エルデンリング プレイ日記 その4
絶望に打ちひしがれたまま立ち直れない俺。あと2回。あと2回攻撃を当てるだけでこの地獄は終わったのに・・・。マルギット戦はまだ続く。
あまりにも心のダメージが大きく、完全に思考が停止状態。無作為に挑んでは犬死を繰り返している。もはや槌を出させるところまでも到達できない。
はぁ。もうダメだ。さっきので心がへし曲げられた。自分に自信が持てない。もしかするとマルギットが強いのではなく、単純に俺が下手すぎるのではないかという気がしてきた。フロムのゲームをオンラインに頼らず一人で攻略してきたという自尊心が砕かれようとしている。
もう6時間以上も戦っている。上級者向けに作られている追加コンテンツやSEKIROのボスは別格にしても、それを除いたらフロムのボスの中で一番苦労している。こんな奴が最初に立ちはだかって来るのだからこの先ゾッとする。
気持ちが萎えてしまい、手すら止まった。意味もなくアイテム欄でカーソルを動かしている。
「遺灰」がずっとこっちを見ている。モンスターを呼び出して仲間として戦わせる事ができるシステム。
フィールドで使ってみた感じ火力は頼りにならないが、ターゲットを分散できるのは魅力的で非常に有効な手段になるのは間違いない。
ほらほら、いつまでも意地を張ってないでもう使っちゃいなよという悪魔の声が聞こえる。
なんかもう、これぐらい妥協しても良いかな。別に良いよね。別に何もルール違反しているわけじゃないもん。強いて言えば俺のプライドが少し傷付くぐらい。
デモンズソウル以降、フロムのゲームでは初見においては絶対にNPCも含めて召喚には頼らないという鉄の掟が俺の中にあり、
今作から追加された簡易的な召喚システムである「遺灰」もボス戦では使用しないという自分ルールを課していた。
でも、流石にもう正攻法で勝てる気がしない。いや残り1割まで削れたのだから勝てるチャンスはあるのだろうけど、もう気力がない。俺の心は弱ってしまった。
遺灰はあくまで補助的な存在。どうせフロムだって遺灰を使われる事を前提にして、ボスをこんなめちゃくちゃな難易度にしているに決まってる。だからこれは別に俺のプライドに触れるものではない。当然の手段。仕方のない事なんだ。
・・・はぁ。そう思い込んで自分を納得させようとしたけど、やっぱり出来ないんだよな。融通が効かない俺の心は、しょうもないちっぽけなプライドを必死になって守ろうとしている。
「SEKIRO」はある意味で楽だったな。そんな葛藤に悩む余地すらなかったから。協力プレイもなく、装備やレベル上げという概念もなく、とにかく強敵とひたすら向き合って戦い続けるしかなかった。
一方でエルデンリングは色んなやり方がある。レベルや装備、戦技、魔法、ステルス、仲間、アイテム、オンライン。使えるものは何でも使って困難を突破するというのがこのゲームの攻略法だ。
そうは言っても同じ方向性だったデモンズソウルやダークソウルは、アクションに比重を傾けたプレイスタイルでもそこまで行き詰まることはなかった。正直に言うと俺は、今までこのシリーズであんまり武器やアイテムを使い分けた事がない。
流石に「ダークソウル2」はRPG的な思考がないと厳しいゲームだったので色んな戦法を駆使したけど、基本的にはある程度のゴリ押しが許容されてガードを軸にした立ち回りで何とかなるのが今までのフロムのゲームだった。
ところがエルデンリングはダークソウル2を遥かに上回ってRPG的な考え方が求められる内容で、アクション一辺倒では打開が厳しいゲームバランスになっている。
マルギット戦で明確にこのゲームのスタイルが明示されているけど、アクションだけで何とかするのではなく、試行錯誤し、研究し、あらゆる手段を駆使して道を切り拓いていく必要がある。
工夫しないのなら地獄を見る。それがエルデンリングというゲームの印象。
オーケー、分かった。召喚はしない。遺灰も使わない。でも、アクションで勝つんだという考え方は捨てよう。
俺はそこに拘りすぎていた。いや、エルデンリングを舐めていた。あまりにもRPG的な考えが抜け落ちていた。
召喚を縛るだけでなく、育成や武器の使い分けやアイテムによる補助、戦技によるアプローチなど、殆ど頭になかった。まともな戦略は皆無だったと言って良い。
とにかく立ち回りの一辺倒で攻略しようとしていたのは否めない。今まで、それで何とかなってたから。
どうせ今回もいつもと同じやり方でクリアーできるだろうとタカを括ってました。行き詰まってもちょっとレベルを上げればそれで解決できるとこのゲームを舐めてました。
でも、6時間もマルギットに負け続けて、ようやく甘えが消えた。
召喚と遺灰だけはどうしても使えないけど、それ以外はもうなりふり構わない。出来ることは全部する。そして絶対にマルギットを倒す。
まず、肉を食べます。攻撃力のステータスが一時的に上昇。
剣に火脂を塗って炎のエンチャントも付けます。これで少しはダメージが増えるはず。今まで消費アイテムを殆ど使用してこなかったので備蓄はたんまりある。
更には投げ付けて攻撃できるククリや火炎瓶もアイテム欄にセットします。遠距離攻撃についても俺は積極的に使わないスタイルだったが、もうそんな事も言ってられない。
そして「ダガー」をもう一つの武器欄にセット。ダガーは攻撃手段ではなく回避手段。「クイックステップ」という戦技に俺は注目した。ローリングよりも移動距離が大きくて素早く回避できる。
再挑戦。
さっそくクイックステップで厄介な光るソードの連打を回避しようとしたら、左手にある盾の戦技が優先されて、パリィが発動。みじん切りにされる死亡。
リトライ。
どうしてもクイックステップを試したい俺は、左手に「ダガー」を装備する。
マルギットが光る槌を構え始めたのでダガーに切り替えてクイックすて・・・っぷではなく右手のグレートエペの戦技が発動。そのまま殴り殺される。死亡。
リトライ。
いーよいーよ。そもそもクイックステップを使うためにダガーに切り替えるなんて非効率極まりないし。むしろ目的と手段が入れ替わりそうなところ目が覚めた。
大事なのは、無理に戦略を作ることではなく、マルギットを倒すこと。そこに集中しよう。
火炎瓶を投げようとしたら思ったよりもモーションがちんたらしていてその隙に殴られる。回復しようとスロットを切り替えている間にまた叩き付け。死亡。
尽く上手くいかない。むしろ悪化している。肉やエンチャントにしてもそこまで劇的にダメージが増えるわけではないし、オマケに時間切れも早い。二段階目まで効果が持たない。
アイテムを使おうとするとその隙を狙って攻撃してくるのがフロムのボスなので、開幕前に補助アイテムを使うしかないが、本気を出してない序盤でしか効果がないので殆ど意味がないと気付く。
結局、何かやろうとしても上手くいかない。もうどうすりゃ良いんだ。
いや、待て。インベントリの中にきっと攻略の鍵が隠されているはず。ちゃんとやれることをやりきるんだ俺。
「ガードカウンター」というTIPSが目に入る。今作は旅中で受け取ったヒントをインベントリの中にまとめてくれていつでも確認できるようになっている。
ガードカウンター?なにそれ。そんな要素いままでなかったよな。
まぁこの項目の中に収まっているという事は、一度ヒントが流れたんだろうけど俺は完全にスルーして今この存在に気が付いた。とりあえず使ってみよう。
リトライ。
えーと。ガードで攻撃を受けた直後にR2ボタンか。よっこらしょと。
思ったよりも出が遅くてガードカウンターが決まる前に敵の連打を喰らう。死亡。
リトライ。
なるほど、相手の攻撃の打ち終わりのタイミングを見極めて発動する必要があるんだね。
よし、攻撃終わった!ガードカウンター!を発動する手前で、いつもの光る剣でカウンター。分かりきっていた未来。マルギットの打ち止めのタイミングなんて分からないっての。
そのあとの尻尾攻撃時に初めてのガードカウンター成功。うーん、ダメージは大きいけど、出が遅すぎるなぁ。普通にモーション中に攻撃受けるとキャンセルされるし。何よりスタミナの減りが大きすぎてそのあとのリカバリーが大変。リスクの割にはリターンが少ない。
雑魚戦ならともかく、ボスで積極的に狙うべきテクニックかと言うと微妙な気がする。
いや・・・結局、こうやってすぐに新しい可能性に見切りを付けてしまうから何も上手くいかないんじゃないか。悪い側面ではなく、良い側面を見るんだ。
ガードカウンターは確かにリスクがあるが、ゴリ押し手段として結構使える。結局攻撃できるチャンスが少なくてジリ貧になって負けるというのがいつものパターンなのだから、多少は無茶すべき。
そう考えたら、肉やエンチャントだって決して無駄ではない。稼げる時にダメージは稼ぐべきだ。
敵を完封して完璧に勝とうとする必要はなくて、どれだけ吹っ飛ばされても這いつくばっても最終的にマルギットを倒せたらそれで良い。
あれだけ葛藤したのに、まだ俺の中にはアクションでスマートに勝ちたいという気持ちが根強く残っていた。でも、このゲームはRPGなんだ。RPGは相手の攻撃を受けて当たり前なんだ。どれだけ打ちのめされても最後は勝てば良い。試行錯誤したことで、ようやく本当の意味でその境地にまで至る事ができた。
心を改める。もっと泥臭く、必死に、前向きになってマルギットを倒しに行こう。
開幕前。肉を食べて炎のエンチャントを付けて攻撃力を上昇させる。
靄をくぐり抜けてマルギットと対峙。最初は離れているので骨のナイフを投げ付けて少しでもダメージを与えておく。
アイテムスロットは常に回復薬がすぐ使えるようセットしておきたいので、ナイフはショートカットキーから出せるようにしておいた。これもTIPSを見直して気付きました。
ジャンプのあとに好機。ここで2回攻撃するか、3回攻撃するか迷う。3回武器を振ると尻尾回転攻撃が来た場合回避が間に合わない。
いや、もうヒットアンドアウェイに俺は拘らない。少しでも肉とエンチャントの間にダメージを稼ぎたいし、3回攻撃する。運良く相手は尻尾を回して来なかった。
光る剣のカウンターも気にしない。相手の動きが止まったら積極的に攻撃しにいく。ただ盾を構えながらのガード突きで最低限のリスクヘッジはする。
一つの考えに固執しすぎるのは良くない。大事なのはバランス。攻めと守りのバランスを図りながら、少し殺意高めで戦う事を意識する。
相手の体力が6割付近になったらマルギットに張り付くことを心掛ける。ハンマーを出してジャンプする一連の流れは大きな攻撃チャンスだから。ジャンプする前にハンマーを薙ぎ払ってくるが、それくらいのダメージは気にしない。
なんか、やたらと調子が良い。半分くらいまで削ったがここまで一つも回復薬を使用していない。
これは行けるんじゃね?という先急いだ気持ちが悪い方向に働く。急に動きが硬くなる俺。前半の果敢な姿勢は完全に消えて、このチャンスを逃したくないという焦りから守りに入ってしまう。
すると守りに意識が傾いているはずなのに簡単な攻撃に何故か当たりまくる。ミルミル減っていく回復薬。微動だにしない相手の体力。完全に悪循環に陥った。
流れを変えなければまた同じ事の繰り返し。勇気を持って踏み込め、俺。
マルギットの光るソード攻撃。いつもなら後ろに回避していたが、前にローリングする。更に槌を構えて追撃しようとしてくるが、これも前にローリングして回避する。
するとここで動きが止まった。カウンターも来ない。4回もこっちの連続攻撃が決まるという滅多にない事が起こる。
マルギットは大ジャンプで体勢を立て直そうとしてくる。その間に武器を両手に持ち替え、落ち着いてスタンプを回避。着地後に戦技でより大きなダメージを与える。
着地後は大技が来やすいので無理はせず、すぐに離れる。離れたところからククリをひたすら投げ付ける。この戦いで全てを決めるんだ。
マルギットの体力は風前の灯。あと1、2回の攻撃で終わる。だけどククリの底が尽きた。回復薬も空っぽ。また唸り出す俺のチキンハート。
落ち着け。ここからは無理をする必要はない。死なないことだけを考えるんだ。絶対の絶対に攻撃を当てられるタイミングを見極めろ。
一番安全にダメージを与えられる最適解は何か、必死に頭を回転させる。遠距離から攻撃が一番無難だが、手持ちがない。今からアイテムをクラフトしてナイフを作るか?いや、戦闘中にインベントリを操作するのは無防備に等しくリスクがありすぎる。
ジャンプするまで待つ?ありだけど、相手の動きに依存するのは怖さがある。ラッシュをひたすらされたらジリ貧になるだけ。
考えてる間にもマルギットは動き出す。俺が一番嫌いな回転4連打。流石に踏み込む勇気はなくローリングで後ろに下がって回避。
この距離感。もう行くしかないよな。動きが止まったマルギットに意を決して飛び込む。
案の定、ナイフでのカウンター。これは盾で受ける。魔法攻撃なので多少貫通するがそこまでダメージがあるわけではない。ガードすれば体勢も崩されない。散々煮湯を飲まされたアクションだが、そこまで怖がる必要はなかったんだ。
まだ攻撃は我慢する。狙い目は、ナイフのあとの大技。杖。槌。ソード二連撃。色んなパターンが考えられるが、何でも来い。回転4連打以外なら全て避けられる自信がある。傾向的に同じ技を連続で出してくることは滅多にないので4連打が来ることはないはず。
少し前まではヒットアンドアウェイとは名ばかりの防戦一方な戦い方で、ジリ貧になっているうちにどこかでミスをして上手いことアクションが出来ず自信を喪失していたが、積極性は俺が失くしかけていたものを取り戻してくれた。
マルギットの選択は、ハンマー。もう何回も見た。溜めてから振ってくるディレイ攻撃だが、ローリングのタイミングは完璧に分かってる。
後ろに下がる選択肢はない。前に踏み込んで避ける。
完璧なる隙。完璧なる距離感。もはや相手のいかなる動きも俺が振り下ろす攻撃には間に合わない。ついに戦いが終わった。
「忌み鬼の手が、お前を逃しはしない・・・」とか含みのある捨て台詞を残してマルギットは消える。
ばいばい、マルギット。もう二度とその面を俺の前で見せないでね。
さて、これから何をするんだっけ?もう目的も何もかも忘れた。とりあえずマルギットが塞いでいた先に進むとするか。
この後も、数え切れない程の困難がやたさんの前に立ちはだかることになるのだが、それはまた別のお話。
おわり。
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絶望に打ちひしがれたまま立ち直れない俺。あと2回。あと2回攻撃を当てるだけでこの地獄は終わったのに・・・。マルギット戦はまだ続く。
あまりにも心のダメージが大きく、完全に思考が停止状態。無作為に挑んでは犬死を繰り返している。もはや槌を出させるところまでも到達できない。
はぁ。もうダメだ。さっきので心がへし曲げられた。自分に自信が持てない。もしかするとマルギットが強いのではなく、単純に俺が下手すぎるのではないかという気がしてきた。フロムのゲームをオンラインに頼らず一人で攻略してきたという自尊心が砕かれようとしている。
もう6時間以上も戦っている。上級者向けに作られている追加コンテンツやSEKIROのボスは別格にしても、それを除いたらフロムのボスの中で一番苦労している。こんな奴が最初に立ちはだかって来るのだからこの先ゾッとする。
気持ちが萎えてしまい、手すら止まった。意味もなくアイテム欄でカーソルを動かしている。
「遺灰」がずっとこっちを見ている。モンスターを呼び出して仲間として戦わせる事ができるシステム。
フィールドで使ってみた感じ火力は頼りにならないが、ターゲットを分散できるのは魅力的で非常に有効な手段になるのは間違いない。
ほらほら、いつまでも意地を張ってないでもう使っちゃいなよという悪魔の声が聞こえる。
なんかもう、これぐらい妥協しても良いかな。別に良いよね。別に何もルール違反しているわけじゃないもん。強いて言えば俺のプライドが少し傷付くぐらい。
デモンズソウル以降、フロムのゲームでは初見においては絶対にNPCも含めて召喚には頼らないという鉄の掟が俺の中にあり、
今作から追加された簡易的な召喚システムである「遺灰」もボス戦では使用しないという自分ルールを課していた。
でも、流石にもう正攻法で勝てる気がしない。いや残り1割まで削れたのだから勝てるチャンスはあるのだろうけど、もう気力がない。俺の心は弱ってしまった。
遺灰はあくまで補助的な存在。どうせフロムだって遺灰を使われる事を前提にして、ボスをこんなめちゃくちゃな難易度にしているに決まってる。だからこれは別に俺のプライドに触れるものではない。当然の手段。仕方のない事なんだ。
・・・はぁ。そう思い込んで自分を納得させようとしたけど、やっぱり出来ないんだよな。融通が効かない俺の心は、しょうもないちっぽけなプライドを必死になって守ろうとしている。
「SEKIRO」はある意味で楽だったな。そんな葛藤に悩む余地すらなかったから。協力プレイもなく、装備やレベル上げという概念もなく、とにかく強敵とひたすら向き合って戦い続けるしかなかった。
一方でエルデンリングは色んなやり方がある。レベルや装備、戦技、魔法、ステルス、仲間、アイテム、オンライン。使えるものは何でも使って困難を突破するというのがこのゲームの攻略法だ。
そうは言っても同じ方向性だったデモンズソウルやダークソウルは、アクションに比重を傾けたプレイスタイルでもそこまで行き詰まることはなかった。正直に言うと俺は、今までこのシリーズであんまり武器やアイテムを使い分けた事がない。
流石に「ダークソウル2」はRPG的な思考がないと厳しいゲームだったので色んな戦法を駆使したけど、基本的にはある程度のゴリ押しが許容されてガードを軸にした立ち回りで何とかなるのが今までのフロムのゲームだった。
ところがエルデンリングはダークソウル2を遥かに上回ってRPG的な考え方が求められる内容で、アクション一辺倒では打開が厳しいゲームバランスになっている。
マルギット戦で明確にこのゲームのスタイルが明示されているけど、アクションだけで何とかするのではなく、試行錯誤し、研究し、あらゆる手段を駆使して道を切り拓いていく必要がある。
工夫しないのなら地獄を見る。それがエルデンリングというゲームの印象。
オーケー、分かった。召喚はしない。遺灰も使わない。でも、アクションで勝つんだという考え方は捨てよう。
俺はそこに拘りすぎていた。いや、エルデンリングを舐めていた。あまりにもRPG的な考えが抜け落ちていた。
召喚を縛るだけでなく、育成や武器の使い分けやアイテムによる補助、戦技によるアプローチなど、殆ど頭になかった。まともな戦略は皆無だったと言って良い。
とにかく立ち回りの一辺倒で攻略しようとしていたのは否めない。今まで、それで何とかなってたから。
どうせ今回もいつもと同じやり方でクリアーできるだろうとタカを括ってました。行き詰まってもちょっとレベルを上げればそれで解決できるとこのゲームを舐めてました。
でも、6時間もマルギットに負け続けて、ようやく甘えが消えた。
召喚と遺灰だけはどうしても使えないけど、それ以外はもうなりふり構わない。出来ることは全部する。そして絶対にマルギットを倒す。
まず、肉を食べます。攻撃力のステータスが一時的に上昇。
剣に火脂を塗って炎のエンチャントも付けます。これで少しはダメージが増えるはず。今まで消費アイテムを殆ど使用してこなかったので備蓄はたんまりある。
更には投げ付けて攻撃できるククリや火炎瓶もアイテム欄にセットします。遠距離攻撃についても俺は積極的に使わないスタイルだったが、もうそんな事も言ってられない。
そして「ダガー」をもう一つの武器欄にセット。ダガーは攻撃手段ではなく回避手段。「クイックステップ」という戦技に俺は注目した。ローリングよりも移動距離が大きくて素早く回避できる。
再挑戦。
さっそくクイックステップで厄介な光るソードの連打を回避しようとしたら、左手にある盾の戦技が優先されて、パリィが発動。みじん切りにされる死亡。
リトライ。
どうしてもクイックステップを試したい俺は、左手に「ダガー」を装備する。
マルギットが光る槌を構え始めたのでダガーに切り替えてクイックすて・・・っぷではなく右手のグレートエペの戦技が発動。そのまま殴り殺される。死亡。
リトライ。
いーよいーよ。そもそもクイックステップを使うためにダガーに切り替えるなんて非効率極まりないし。むしろ目的と手段が入れ替わりそうなところ目が覚めた。
大事なのは、無理に戦略を作ることではなく、マルギットを倒すこと。そこに集中しよう。
火炎瓶を投げようとしたら思ったよりもモーションがちんたらしていてその隙に殴られる。回復しようとスロットを切り替えている間にまた叩き付け。死亡。
尽く上手くいかない。むしろ悪化している。肉やエンチャントにしてもそこまで劇的にダメージが増えるわけではないし、オマケに時間切れも早い。二段階目まで効果が持たない。
アイテムを使おうとするとその隙を狙って攻撃してくるのがフロムのボスなので、開幕前に補助アイテムを使うしかないが、本気を出してない序盤でしか効果がないので殆ど意味がないと気付く。
結局、何かやろうとしても上手くいかない。もうどうすりゃ良いんだ。
いや、待て。インベントリの中にきっと攻略の鍵が隠されているはず。ちゃんとやれることをやりきるんだ俺。
「ガードカウンター」というTIPSが目に入る。今作は旅中で受け取ったヒントをインベントリの中にまとめてくれていつでも確認できるようになっている。
ガードカウンター?なにそれ。そんな要素いままでなかったよな。
まぁこの項目の中に収まっているという事は、一度ヒントが流れたんだろうけど俺は完全にスルーして今この存在に気が付いた。とりあえず使ってみよう。
リトライ。
えーと。ガードで攻撃を受けた直後にR2ボタンか。よっこらしょと。
思ったよりも出が遅くてガードカウンターが決まる前に敵の連打を喰らう。死亡。
リトライ。
なるほど、相手の攻撃の打ち終わりのタイミングを見極めて発動する必要があるんだね。
よし、攻撃終わった!ガードカウンター!を発動する手前で、いつもの光る剣でカウンター。分かりきっていた未来。マルギットの打ち止めのタイミングなんて分からないっての。
そのあとの尻尾攻撃時に初めてのガードカウンター成功。うーん、ダメージは大きいけど、出が遅すぎるなぁ。普通にモーション中に攻撃受けるとキャンセルされるし。何よりスタミナの減りが大きすぎてそのあとのリカバリーが大変。リスクの割にはリターンが少ない。
雑魚戦ならともかく、ボスで積極的に狙うべきテクニックかと言うと微妙な気がする。
いや・・・結局、こうやってすぐに新しい可能性に見切りを付けてしまうから何も上手くいかないんじゃないか。悪い側面ではなく、良い側面を見るんだ。
ガードカウンターは確かにリスクがあるが、ゴリ押し手段として結構使える。結局攻撃できるチャンスが少なくてジリ貧になって負けるというのがいつものパターンなのだから、多少は無茶すべき。
そう考えたら、肉やエンチャントだって決して無駄ではない。稼げる時にダメージは稼ぐべきだ。
敵を完封して完璧に勝とうとする必要はなくて、どれだけ吹っ飛ばされても這いつくばっても最終的にマルギットを倒せたらそれで良い。
あれだけ葛藤したのに、まだ俺の中にはアクションでスマートに勝ちたいという気持ちが根強く残っていた。でも、このゲームはRPGなんだ。RPGは相手の攻撃を受けて当たり前なんだ。どれだけ打ちのめされても最後は勝てば良い。試行錯誤したことで、ようやく本当の意味でその境地にまで至る事ができた。
心を改める。もっと泥臭く、必死に、前向きになってマルギットを倒しに行こう。
開幕前。肉を食べて炎のエンチャントを付けて攻撃力を上昇させる。
靄をくぐり抜けてマルギットと対峙。最初は離れているので骨のナイフを投げ付けて少しでもダメージを与えておく。
アイテムスロットは常に回復薬がすぐ使えるようセットしておきたいので、ナイフはショートカットキーから出せるようにしておいた。これもTIPSを見直して気付きました。
ジャンプのあとに好機。ここで2回攻撃するか、3回攻撃するか迷う。3回武器を振ると尻尾回転攻撃が来た場合回避が間に合わない。
いや、もうヒットアンドアウェイに俺は拘らない。少しでも肉とエンチャントの間にダメージを稼ぎたいし、3回攻撃する。運良く相手は尻尾を回して来なかった。
光る剣のカウンターも気にしない。相手の動きが止まったら積極的に攻撃しにいく。ただ盾を構えながらのガード突きで最低限のリスクヘッジはする。
一つの考えに固執しすぎるのは良くない。大事なのはバランス。攻めと守りのバランスを図りながら、少し殺意高めで戦う事を意識する。
相手の体力が6割付近になったらマルギットに張り付くことを心掛ける。ハンマーを出してジャンプする一連の流れは大きな攻撃チャンスだから。ジャンプする前にハンマーを薙ぎ払ってくるが、それくらいのダメージは気にしない。
なんか、やたらと調子が良い。半分くらいまで削ったがここまで一つも回復薬を使用していない。
これは行けるんじゃね?という先急いだ気持ちが悪い方向に働く。急に動きが硬くなる俺。前半の果敢な姿勢は完全に消えて、このチャンスを逃したくないという焦りから守りに入ってしまう。
すると守りに意識が傾いているはずなのに簡単な攻撃に何故か当たりまくる。ミルミル減っていく回復薬。微動だにしない相手の体力。完全に悪循環に陥った。
流れを変えなければまた同じ事の繰り返し。勇気を持って踏み込め、俺。
マルギットの光るソード攻撃。いつもなら後ろに回避していたが、前にローリングする。更に槌を構えて追撃しようとしてくるが、これも前にローリングして回避する。
するとここで動きが止まった。カウンターも来ない。4回もこっちの連続攻撃が決まるという滅多にない事が起こる。
マルギットは大ジャンプで体勢を立て直そうとしてくる。その間に武器を両手に持ち替え、落ち着いてスタンプを回避。着地後に戦技でより大きなダメージを与える。
着地後は大技が来やすいので無理はせず、すぐに離れる。離れたところからククリをひたすら投げ付ける。この戦いで全てを決めるんだ。
マルギットの体力は風前の灯。あと1、2回の攻撃で終わる。だけどククリの底が尽きた。回復薬も空っぽ。また唸り出す俺のチキンハート。
落ち着け。ここからは無理をする必要はない。死なないことだけを考えるんだ。絶対の絶対に攻撃を当てられるタイミングを見極めろ。
一番安全にダメージを与えられる最適解は何か、必死に頭を回転させる。遠距離から攻撃が一番無難だが、手持ちがない。今からアイテムをクラフトしてナイフを作るか?いや、戦闘中にインベントリを操作するのは無防備に等しくリスクがありすぎる。
ジャンプするまで待つ?ありだけど、相手の動きに依存するのは怖さがある。ラッシュをひたすらされたらジリ貧になるだけ。
考えてる間にもマルギットは動き出す。俺が一番嫌いな回転4連打。流石に踏み込む勇気はなくローリングで後ろに下がって回避。
この距離感。もう行くしかないよな。動きが止まったマルギットに意を決して飛び込む。
案の定、ナイフでのカウンター。これは盾で受ける。魔法攻撃なので多少貫通するがそこまでダメージがあるわけではない。ガードすれば体勢も崩されない。散々煮湯を飲まされたアクションだが、そこまで怖がる必要はなかったんだ。
まだ攻撃は我慢する。狙い目は、ナイフのあとの大技。杖。槌。ソード二連撃。色んなパターンが考えられるが、何でも来い。回転4連打以外なら全て避けられる自信がある。傾向的に同じ技を連続で出してくることは滅多にないので4連打が来ることはないはず。
少し前まではヒットアンドアウェイとは名ばかりの防戦一方な戦い方で、ジリ貧になっているうちにどこかでミスをして上手いことアクションが出来ず自信を喪失していたが、積極性は俺が失くしかけていたものを取り戻してくれた。
マルギットの選択は、ハンマー。もう何回も見た。溜めてから振ってくるディレイ攻撃だが、ローリングのタイミングは完璧に分かってる。
後ろに下がる選択肢はない。前に踏み込んで避ける。
完璧なる隙。完璧なる距離感。もはや相手のいかなる動きも俺が振り下ろす攻撃には間に合わない。ついに戦いが終わった。
「忌み鬼の手が、お前を逃しはしない・・・」とか含みのある捨て台詞を残してマルギットは消える。
ばいばい、マルギット。もう二度とその面を俺の前で見せないでね。
さて、これから何をするんだっけ?もう目的も何もかも忘れた。とりあえずマルギットが塞いでいた先に進むとするか。
この後も、数え切れない程の困難がやたさんの前に立ちはだかることになるのだが、それはまた別のお話。
おわり。
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