浄化



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いつもの流れ(新年迎える前に投稿する筈だったのに年を越してしまったからブログの時間設定を弄って云々)で、さっそく行きます。


5位:『リターナル』(SIE/Housemarque)

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死ぬと殆どがリセットされるローグライク式のTPS。
このジャンルは苦手な筈なのに、PS5クオリティで作られたアクションが気持ち良過ぎて全く気にならず。そして気付けばローグライクの沼にハマってた。
難しいというよりはミスが許されないゲーム性なので常に最適解の操作が求められて本当に疲れるし、数々の理不尽な攻撃や初見殺しとしか思えないトラップに発狂したし、5時間かけて作り上げたキャラが無となった時には魂が抜けそうになったが、それも良い思い出。
一年に何十本と新作を買っているので、どうしてもゲームを惰性で遊んでいる部分はある。でもこのゲームにおける死ねないという集中力は、心の底からの感情を呼び起こし、ゲーム体験を特別なものにしてくれた。


4位:『真・女神転生5』(セガ/アトラス)

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女神転生の新作。探索と育成とゲームバランスが完璧に噛み合ってる。
キビキビ動くからテンポが良いし、マップのアスレチック具合も素晴らしく、色んな強化要素が散らばっているので実利的でもあるという、相変わらず難易度は高いがとにかく探索が楽し過ぎて育成が全く苦にならない。仲魔集めや悪魔合体の面白さもいつも通りで、パーティー強化の楽しさは群を抜いてる。
高難度RPGの作業的な部分であるレベル上げがこのゲームでは楽しさに変わり、歯応えという面白さをデメリット無しに享受できるのだから、最高としか言いようがない。


3位:『デスループ』(ベセスダソフトワークス/アーケンスタジオ)

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ループを繰り返す謎の島に囚われた主人公が、永遠の一日から脱出するために、リミットを迎えるまでに8人のターゲット暗殺を目指すというゲーム。
一日が終わると全ての進行状況がリセットされるのでハードルは高いが、ループするという設定上、何度でもやり直しは可能。
同じ日を繰り返すという特性を逆手に取り、街を探索し、ルーティンや情報を探り、ターゲットや環境をコントロールして、少しずつ計画の精度を上げていきながら最終的な目標に到達するというゲーム。

なんというか、このゲームの雰囲気作りが凄く上手い。プレイヤーを世界に没頭させる仕組みが綺麗に回ってる。
まず、リスタートの流れがゲームっぽくない。普通ならゲームオーバーになるとセーブデータからロードしてやり直す必要があるが、このゲームでは時間切れになったり死んだりすると世界がリセットされて一日の初めからスタート、という流れになるので、ゲーム的なシステムの介入を通さず、世界の理として自然な流れでリスタートできる。この仕組みはゲームっぽさを打ち消して世界の実在感を高めるという意味でかなり大きな効果を発揮していた。死んだら最初から、という感覚も、死=無というリアリティがあってゲームっぽさを和らげている。
ミッションも一本道ではなく、サンドボックスの空間の中で無秩序にイベントやヒントが散らばっていてプレイヤー自身の手でそれを探っていく必要があるので、自分の手でミッションを遂行しているという臨場感が強い。
そして何より、何度もループを繰り返してゴールを目指すというゲーム進行は、主人公の必死な試行錯誤と一致し、感情を共有できる。
オープンワールドでもないし、リアルタイムに時間が流れている訳でもないし、実はそこまで試行錯誤が求められるゲームでもないが、このゲームの没入感は凄まじい。
目的を達成することの困難さ、必死さ、目まぐるしさ。そういうリアルな泥臭さがこのゲームでは味わえる。それは決して映像が綺麗なだけでは表現できない、システムとゲームバランスの賜物だ。
PS5専用のハイエンドなクオリティですよ、というだけでは収まらない、計算と拘りが感じ取れる素晴らしいゲームだった。


2位:『It Takes Two』(EA/ヘイズライトスタジオ)

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面白かった。「面白い」という言葉はこのゲームのためにあるのかというくらい、率直に、純粋に、掛け値なしに面白かった。
端的に言うとゲーム内容は3Dマリオだが、マリオより、もっと快適で即興的な楽しさが沢山詰め込まれている。
システムが斬新だとか、ゲームバランスが優れているとか、メッセージ性があるだとか、そんな面倒くさい理屈をこねくり回す必要もない。遊べばすぐにこのゲームの面白さは分かる。

面白いものを作りたい、プレイヤーを楽しませたい。世の中には色んなゲームが存在するが、一部例外を除き、殆どのゲームが「面白いもの」を最終的なゴールとして作られる。しかし人がものを作る以上、その過程で色々と面倒なものが混じりがちでもある。
面白さを伝えるための手段が複雑で分かりにくかったり、個性やメッセージ性を押し出し過ぎて理解し難かったり。作り手の自己主張が行き過ぎてユーザーへの寄り添いが疎かになり、独りよがりになっているゲームは多い。
俺はそういう作り手の面倒な感情こそがゲームに魅力とパワーを与えると信じているから創作は製作者の主張が少し強調されているくらいが丁度良いと思うが、一方で、面倒な感情を抑えて一途に純粋な楽しさを追求しているこのゲームの姿勢も素晴らしい。
It Takes Twoは、面白いものを作ろう、プレイヤーを楽しませよう、という出発点から全くブレてない。最後の最後までその信念をもとにゴールまで突っ走っている。
捻くれた言い方をすると、安易に有り触れた面白さを詰め込んだだけのごった煮ゲームとも言えるが、「面白い」という説得力の前には関係ない。面白い、というのはそれだけで素晴らしいことだ。

しかしこのゲームにも譲れないもの、強い主張と呼べるものがある。フレンドや知り合い以外を参加させることができないマルチプレイがそれ。
このゲームは2人でのプレイが必須であり、オンラインにも対応しているが、知らない人を参加させる機能は存在しない。
相棒に呼べるのは、フレンドとして登録されているユーザーか、ローカルで知人と一緒にプレイするか。つまり、知り合いと呼べるプレイヤーいないとこのゲームを遊ぶ事すらできないという、かなり強烈な制約がある。
確かに、見知らぬ人同士のプレイだと、嫌がらせで邪魔したり、スマホばかり弄っていてやたらと反応が遅かったり、という相手を省みない状況が起こる事もあるだろう。ボイスチャットのコミュニケーションだってハードルが高い。
誰かとゲームを遊ぶなら、気心の知れた人と一緒に遊んだ方が楽しいに決まってる。特にこれは対戦ではなく協力型のゲームだ。2人の役割分割が求められるギミックも大量に存在する。
知り合いとボイスチャットを通すか、友達や特別な人と屋根の下で一緒になって遊ぶ。そういう条件が整って初めてこのゲームの面白さは発揮される。
親しい人と一緒に笑いながらゲームを楽しんでほしいという願いがIt Takes Twoの根幹にはある。だから多少売り上げが落ちたとしても、プレイスタイルを制限する道を選んだのだろう。

It Takes Twoは、バランスが取れている。ユーザーが楽しめるものを一途に目指して作っているが、譲れないところではプレイヤーを篩にかけて、ゲームのコンセプトが壊れないように守っている。
結局、何事もバランスが大事。ユーザーのことを全く無視したら誰にも理解されないが、かと言って寄り添い過ぎると大事なものが壊れてしまう事もある。
ゲームを遊んでいて、これ面倒くさ過ぎるだろ、なんでこんな事も出来ないんだよ、と思う事は無数にあるが、結局のところ、そういう制約があるからゲームのコンセプトや世界は守られているんだし、最終的にそれはそのゲームにしかない面白さ、魅力へと昇華される。
It Takes Twoは、ユーザーへの寄り添いと、強固なエゴがバランス良く織り混ざった、とても優れたゲームだった。


1位:『バディミッションBOND』(任天堂/コーエーテクモゲームス)

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世の中そんなに甘くない。都合が良い。短絡的すぎる。そんな単純に物事が解決するわけない。またどこかで聞いた事があるような理想論を語ってるよ。思考が行き当たりばったりすぎるだろ。
物語を見ていると、そんな邪念が頭を過ぎる事が良くある。歳を取るに連れてストーリーを真っ直ぐに受け止めることが難しくなってきた俺は、どうしても「筋が通っているか」どうかが気になって仕方ない。
このゲームも初めの頃はひっきりなしにそんな思考が頭の中に沸いて出て来たが、次第に雑念は消える。だってこのゲームは、完璧に筋が通っているから。ここまで言葉と行動を尽くして見せられたら、納得するしかなかった。
どんなにご都合主義でも、どんなに使い古されたチープなテーマでも、どんなに青臭い理想論でも、そこに至るまでの道のりを真摯に描けば、それは美しい奇跡になる。そういう現実では絶対に起こり得ない奇跡を見せてくれるのが、物語の成せる技だ。
バディミッションは現実の厳しさや陰湿さもかなりハッキリと描写しているが、最後はこれ以上ないくらいの大団円を迎える。
そしてそれは、安易なご都合主義なんかではなく、キャラの意志と行動にしっかり裏打ちされた、何かを積み重ねた結果として起こる、とても真実味のある奇跡だった。本当に感動した。


・Yata of the year

【東京ヤクルトスワローズ】

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今年、最も俺の心を擦り減らし、メンタルを揺らがし、感情を昂らせた存在。
20年ぶりの日本一。泣きました。


ではまた来年。