宇宙は不安定




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PS5とPS4の宇宙空間アクションゲーム。開発は2ptインタラクティブ。

前澤友作氏が自前で宇宙に行って話題になったけど、俺は金がないのでゲームで我慢する。

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スペースシャトルの中が舞台となるので、当然周りは無重力。
ふわふわした挙動。散らばるアイテム。どうせ障害はそんなとこだろうと思っていたら、最大の敵は「操作性」だった。

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このゲーム、操作が非常に特殊。左右のスティックでそれぞれに対応した腕を動かし、R2L2ボタンを押し続けることで手を握り締めホールドする。R1、L1ボタンで脚を折り曲げることも可能。
要するに、移動のために割り振られたボタンが存在しない。例えば、スティックや十字キーで身体の向きを変えて遊泳する、なんてことは出来ない。
じゃあどうするかと言うと、スティック操作が割り当てられた事によって柔軟に動かせる「腕」と、ホールド可能な「手」を最大限活用する。
壁だったり取っ手などを掴んで「支点」を作り、腕を曲げて力を働きかけることで、その反動の力で前に進んでいく。これが基本的な移動方法となる。脚を屈伸させられる操作を利用し、壁を蹴った力で進むこともできる。
周りに何も支えが無かったり、宇宙空間に放り出された時も、平泳ぎのように大きく腕で弧を描くことで遊泳することが可能。
言葉にすると簡単なように見えるが、あくまでもプレイヤーが出来ることは「力を働きかける」ことなのでコントロールが難しく、目まぐるしく身体が回転する無重力空間の環境と相まって、制御には四苦八苦する。
移動だけでなく「レバーを下げる」「引き出しを開ける」といった何気ない行動も一苦労。力を込められる体勢を維持する必要があったりして、宇宙空間内の不便さが際立っていた。

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そんな環境の中で、プレイヤーは様々なトラブルを乗り越えていく。
基本的に求められることは単純で、頭を使うパズル的な仕組みは殆どないし、特定のタイミングで特定の操作をしろみたいなアクション要素もあんまりない。ただ、タスクをこなしていくだけ。
しかし、その作業は無重力という環境と独自の操作性が立ちはだかることで、とてつもない困難と化していた。

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ミッションは単純な作業ではあるけど、巨大な鉄柱を組み上げてアンテナを直したり、ポッドに乗って宇宙空間に繰り出して隕石から採掘したりと、見栄えするシチュエーションが多くて気分が盛り上がる。
やってること自体は地味だが、宇宙空間というスケールはきっちり演出されている。

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要するにこのゲームは、良く言えばリアルであり、悪く言えば面倒臭い。
とにかく地味だし、ストレスだし、不自由だが、それが臨場感に繋がっている。ただ、ふわふわした挙動ですよ、というだけではない、不安定な無重力の現実感をこのゲームでは体験できる。その一点に特化したゲームデザインは美しい。
そして、このゲームの最も素晴らしい点は2人プレイに対応してること。ローカル限定だが、シェアプレイでフレンドと一緒に遊べる。
これによって宇宙空間内の不便さはストレスではなく楽しさに早変わり。2人プレイに沿ったミッションも楽しいが、操作に四苦八苦している中を相方が手を差し伸べてくれたりとか、そういう自然な協力が生まれる余地があって体験性が際立っていた。

「リアル」というのはストレスではあるが、ゲームに大きな魅力を与えてくれるということがよく分かる。何気ない行動の一つ一つが、些細な出来事が、色鮮やかな体験になる。
もちろんどこまでリアルさを突き詰めても結局は作り物だし、モニター越しの出来事なので本物には全く及ばない。
でも、このゲームはたった2200円で「宇宙って大変そうだなぁ」という気持ちを体験させてくれる。そこにこのゲームの価値がある。