リアル



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PS5とPS4のアドベンチャーゲーム。開発はブルーバーチーム。

主観視点というリアルな視点で、あらゆるゲーム的な情報を取り除いたリアルな映像で、システム的なアプローチを排除したリアルなゲーム進行で。とにかくリアルな体験に拘って作られているゲーム。
アクション要素は皆無に近いし、劇的なストーリー展開もないし、やることと言ったらひたすらアパートの中を歩き回って一軒一軒のチャイムを鳴らして玄関越しから立ち話を繰り返すという、とてつもなく地味な内容だが、飾り気のないゲーム進行だからこそリアルさが映え、リアルだからこそあらゆる体験が等身大に感じ取れて大きなインパクトで伝わってくる。
つまるところ雰囲気に酔わせるというところに一点特化していた。

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一方で、ここぞという時は盛り上げてくれるメリハリもある。
サイバーパンクな世界観により、人間の機械化が進んでいて、人の脳をハッキングすることが出来るのだが、その人の人生を夢のカオスさと織り交ぜながら表現した映像が凄く奇妙で情緒的で勢いがあって面白い。現実のパートはひたすらに地味だが、脳内世界では怒涛の展開が待っている。
その部分にしても、ただ移動と簡単な仕掛けを解いていく繰り返しでゲーム的な面白さは殆ど無いけど、映像の力だけで引っ張ってくれる大きな魅力があった。

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また、舞台となるアパートの密度が凄い。
4階までビッチリと部屋で埋め尽くされ、壁をくり抜いて無理矢理フロアを広げた構造は整然さの欠片もなく迷路のように複雑で訳が分からない。住人もまともな人間はごく僅かで、そこら中に死体や犯罪が転がった悪意の坩堝状態。全体から果てしないカオス感が迸っている。
ただアパートを歩き回るだけでなくどんどん飛躍していき、下水道や地下の物置、奥深くにある殺人鬼の隠れ家、謎の実験部屋、大量のカラクリ、果ては聖堂まで設置されていて、バイオハザードやサイレントヒル的な大迷宮の様相を見せる。そんな魔都と化したアパートの探索が大変面白かった。
個人的に、一つの固定された小さな舞台があらぬ方向に発展してファンタジーすれすれの飛躍を遂げていく様が好きなので、この辺りは凄くツボ。このゲーム特有のリアルさの拘りにより、世界がより魅力的に映るようになっているのがまた大きい。

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ストーリーは何も考えなくてもドラマを感じ取れる内容で、抽象的な雰囲気を漂わせているけど、意外と単純な親子愛を語る話だった。普通に良い話。

ただ、日本語の吹き替えがあまりにも残酷。下手とかそういう次元にもない。論外レベル。年寄りなのに声は青年とか、常識的に考えておかしくないか?
どうやら配信者などの素人にやらせているみたいで、取るに足らない住人だけならともかく、主要キャラも聞くに耐えない演技なので流石に参った。よくもまぁこんな雰囲気重視のゲームでそんな愚行が出来たなぁという感じ。
英語音声に切り替えも出来ないのだから本当にタチが悪い。

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モッサリだし、地味だし、爽快感もないし、分かりにくいけど、それはリアルさという要素に転換され、雰囲気ゲーとして強固な魅力を誇っている。
ただ映像が綺麗です、世界観が特徴的です、という表面的な要素だけでは表現しきれない、製作者の拘りを貫いた故の重厚さがある。
それだけに、ローカライズがあまりにもあんまりで悲しい。開発チームの努力を蔑ろにする最低の行為と言わざるを得ない。
それだけで打ち消されるようなヤワなゲームでは無いけど、ただただ残念。