分かりやすい



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PS5、PS4、XboxX、XboxOneのアクションゲーム。開発はバンダイナムコスタジオ。

すまん、みんなちょっと聞きたいことがあるから集まってくれ。

アニメや日本のRPGは好きか?

異能力を使ったバトルを見ると心の中で熱いものが湧いてくるか?

まだ据え置き機でゲームをやる気力はあるか?

会話やムービーが長いゲームは平気か?

イケメンや可愛い女の子がいっぱい出てくるけど、「これだから日本のゲームは〜」とか考えずに、むしろ「ありがとうございます!」と言えるタチか?

クールなシスコンやツンデレ眼鏡男、不器用でドが付くほど馬鹿真面目な老兵、お調子者のキザ野郎、過保護なママ気質の女、などなど、そんなあざとい個性を強調したキャラクターのオンパレードだけど問題ないか?

「俺は愛する人のためにこの世界を否定する!」とか言ってしまう人間を見て、斜に構えず受け止められる自信はあるか?

その言葉に対して「それでも俺はこの世界を守りたいんだ!」と情熱のままに叫ぶ熱い主人公を見て馬鹿にせずにちゃんと応援してやれるか?

今でも利き腕が疼くことはあるか?

この中で、3つ以上当てはまる人がいたら間違いなくあなたはこのゲーム側の人間なので、買って下さい。損はしません。
もし全部当てはまる人がいたら、それはもうこのゲームをやるために生まれてきた人生としか思えないので、今すぐ買いに走って下さい。
つまるところ、スカーレットネクサスはそういうゲームです。

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高品質な映像で魅せるアクション

異能力者によるバトルを表現したアクションの出来が良い。軸となるのは物体を浮遊させるテレキネシス。
周りには瓦礫や電柱や自転車などのオブジェクトが散らばっているので、それを武器として活用できるというのが基本線。
初めはまず、適当にモノを浮かせて敵にぶつけるという単純な遊びが楽しい。物体の大きさによって浮かせるのに時間がかかったり、ダメージも変わったりと、細かく調整されているので、色んなモノを浮かせて敵に当てたくなる。

次の段階として、テレキネシスを絡めたアクションの流れを作るのが楽しい。
闇雲にオブジェクトをぶつけるのではなく、この順番で超能力と近接攻撃を組み合わせるとスムーズにアクションが流れますよー、という動線があり、上手くいくとアクションが綺麗に決まるので絵になるし、爽快感がある。
これはアクションの選択肢を狭めるやり方とも言えるけど、俺はただボタンをその場の判断で押すアクションよりも、「戦術の軸」が明確に用意されていて如何にしてその流れに持っていくか考えさせられるアクションが好きなので、個人的に好みな作りだった。

ただ、コンボの種類は極めて少ないので早いうちからアクションがワンパターン化するが、すぐに新しい要素として「仲間の異能力を借りる」というシステムが登場する。
自分の攻撃に炎や雷の特性を纏わせたり、透明になったり、高速で移動したり、分裂したり。これによって戦術性が劇的に向上。
初めはチュートリアルの「この敵はこの個性に弱いから積極的に使っていけよー」と教えられた通りにしか使わなかったけど、こういう場面でこの超能力を使ったら有利に立ち回れるんじゃね?とプレイヤーの発想で気付ける応用性があって、意外と使い道は幅広い。
無制限に使えるわけではないが、すぐにチャージされるので気楽に使えるのも良い。何より色んな超能力を発揮できるのは華がある。

そしてこの異能力バトルを最大限に盛り上げてくれるのが、映像のクオリティ。
いや、舐めてました。どうせ日本の新規タイトルだから、低予算なんでしょと思ってました。
本当に綺麗だし、滑らかに動きます。なんちゃってではなく、アニメのバトルシーンを切り取ったような迫力あるアクションが展開される。
敵にトドメを刺す演出などまさに日本のゲームの真骨頂という感じで、これでもかというほどカッコ良く見せてくれる。しかも全ての敵に固有のトドメシーンを用意している気合いの入りっぷり。ここは一見の価値がある。

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アクションの底が見えてくる終盤

が、途中から楽しかったアクションがしんどくなってくる。難易度の上げ方が「大型の敵をいっぱい出す」だから。
同じ敵ばっかりだし、数の暴力でひたすら攻めてくるし、この頃には実はアクションの引き出しがそこまで多くなかったという事実も目の当たりにし、終盤は楽しいよりも徒労の気持ちの方が強い。

途中まで難易度ハードでやってたけど、大型の敵が複数体出て来るウェーブが5回くらい続いた時には流石に辛くなって難易度を下げた。
そもそも回復薬をガブ飲みできるタイプのゲームバランスなので、高難易度でやる必要は無かったかもね。
スカーレットネクサスのようなゲームで回復を厳しく制限するのは方向性的に削ぐわないと思うからこれで良いと思うが、やっぱりこのゲームバランスはどうしても戦闘の緊張感が薄れるし、プレイヤーの回復のごり押しに対抗するための調整が大量の物量戦なので、その点が顕著になる終盤は辛かった。

一方でこのゲームはその問題点を自覚しているようで、特殊なオブジェクトをテレキネシスすることで大型の敵にも即死級の大ダメージを与えられるというメリハリの付け方は上手い。
少し前に苦労して倒した敵がすぐに出て来てウンザリしたところで、おあつらえ向けとばかりに特殊なオブジェクトが用意され、一撃必殺のテレキネシス!
バイオハザードでチェーンソー男をロケットランチャー1発で沈めた時のような、あれに近いカタルシスがある。
ひたすら雑魚戦が続くので冗長的なのは否定出来ないけど、定期的にプレイヤーを気持ち良くさせてくれるから中弛みもいくらか軽減され、最後まで突っ走る勢いを生んでくれたね。

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やりたい事を、やり切る

このゲーム、ボリュームはかなりある。俺はクリアーまでに25時間かかった。
スカーレットネクサスのアクションは確かにカッコ良いし、新鮮だし、そこそこ戦術性もあるが、25時間ものボリュームに耐え得る程ではない。
アクションの引き出しや敵の種類はそこまで豊富ではないのだから、美味しいところだけ凝縮させて10時間くらいにコンパクトにまとめてくれたらアクションゲームとしてはもっと面白くなったはず。だけど、そうしなかった。
理由は明白。このゲームにはもう一つ軸があり、ストーリーにも力を入れているから。

そのストーリーはビックリするほど王道ではある。専門用語を駆使した世界の実情の解説から始まり、仲間との出会い・裏切り・別れ、お約束のように始まる鬱展開、明かされる衝撃の真実、取って付けたような対立、異なる種族が云々、不自然に挟まる仲間とのコミュニケーション、愛する人のために世界がうんたら、それでも俺はこの世界をうんたら、そして感動のフィナーレ。
よくもまぁ、こんな自信満々にど真ん中のストレートを投げてこれるなぁと思う。アクションを犠牲にしてまでこれをやり切っているのだから恐れ入る。
このゲームの大きな特徴として「ユイト」と「カサネ」という2人の主人公が存在し、途中でそれぞれの主人公が仲間を引き連れてかなり殺気に満ちた対立をするんだけど、その合間に片方の陣営のパーティーとお茶会したりとか、緊張感をぶち壊すようなコミュニケーション要素を混ぜてくるあたり、ストーリーよりもキャラクターを優先するというバンダイナムコらしい鉄の意志を感じる。

内容はともかくとして、このゲームの、やりたい事に対して真っ直ぐ突き進もうという志はスカーレットネクサスという作品に筋の通った空気感を作り上げている。
異能力バトルなんていう厨二病歓喜のアクションと、アニメやJRPGの教科書のようなストーリー展開、わざとらしいキャラ造形など、それぞれの要素の向かう方向は完全に一致している。
俺が何でこのゲームを買ったかと言うと、そういうゲームをやりたかったからに他ならない。このゲームの素晴らしいところは、何をやりたいのかがパッケージを見るだけで伝わってくるところ。
ストーリーは想像以上に面白くなかったけど、それは中身の話で、雰囲気を作り上げるという意味では素晴らしい効果を発揮している。
「カッコ良いものを、カッコ良く見せる」。そういう方針のゲームなのだから、そこを忠実に成し遂げようとしたこのゲームの潔い姿勢は素晴らしい。

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ムービーをもっとくれ!

だから言いたい。なんでちょびっとしかムービーが無いんだと。どう考えてもこのゲームとムービーの相性は抜群だろ。
このゲーム、アクションに予算をかけすぎたせいか、ストーリーは殆ど紙芝居で表現されている。正直、この点には心の底からガッカリした。
新規タイトルで予算は限られているんだろうし、ストーリーは単独でも相当なボリュームな上にそれぞれの主人公によってかなり見せ方が変わっているようなので、全てをムービーにするのは大変な労力が要るんだろうけど、それを分かった上でもこのストーリーの見せ方には失望した。
別にプリレンダである必要はない。とにかくキャラを動かして見せて欲しい。紙芝居とムービーじゃ「カッコ良さ」の表現には雲泥の差がある。

会話の場面が多いので紙芝居を基本線にしたのかもしれないが、俺はやり取りの場面こそムービーで見せて欲しいなぁと思う。
あらかじめ用意された数パターンの顔の表情で会話されても、想いや感情がいまいち伝わってこない。そもそもただでさえ退屈になりがちな場面なのに見栄えもしないので余計に話が頭に入ってこない。
ムービーは批判の的になりがちだが、演出としては最強のツール。キャラクターを魅せることに拘ったストーリーゲームなら積極的に取り入れるべきだと俺は思う。スカーレットネクサスは、まさにそういうゲームのはず。
アクションといい、ストーリー展開といい、キャラクターといい、ここまで日本のエンタメをやり切っているゲームは中々ないのに、肝心の話の表現方法が地味に収まっているのは本当に勿体ない。
ただ、数少ないムービーシーンはかなり高品質で、キャラクターがよくある人形のような動きではなく、ちゃんと人間らしく動いていて良かった。それだけに・・・ね。

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返す返すもストーリーの見せ方が残念で仕方ないし、アクションの勢いも終盤には途切れるけど、それでも期待には充分に応えてくれた。

ちなみに上のチェック項目で一つも当てはまらない人はまずこのゲームを楽しめないので買わない方が良いです。

やりたい事がハッキリ現れているというのは、ユーザーにとっても取捨選択しやすいからとても良い事だね。