終わり良ければ



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"「八つ裂き公」と呼ばれる連続殺人鬼により100人以上の命が失われ、政府は例外的な措置として優秀な探偵が集められた組織「探偵同盟」に捜査を依頼。
北条和都は、探偵同盟に憧れる一介の見習いだったが、謎の男が目の前に現れ、探偵同盟に参加するよう要求される。そして気付けば、名前も知らない孤島に連行されるのであった。"

PS4とスイッチのテキストアドベンチャーゲーム。開発は日本一ソフトウェア。

イマイチ興味を惹かれない殺人劇と、僕良い子でしょアピールが鬱陶しい生温い友情ごっこによりストーリーは進められていく。
事件はダンガンロンパを思い出すような奇抜なトリックを仕掛けてくるのでそこは目を引くけど、キャラのとんちんかんな言動が白ける。
これ、一応探偵キャラが活躍しますというゲームだよね?「登場人物、全員探偵」というキャッチコピーを掲げているが、「登場人物、全員毛利小五郎」というコピーに置き換えても違和感ないくらい、素人丸出しの連中が揃っていて、お前ら本当に優秀な探偵なのかよとツッコミたくなる。
ただ、稀に探偵の片鱗を見せてくることもあるんだよな。そこも含めて毛利小五郎っぽい。「どうせこういうオチなんでしょ」という俺の予想を先読みするかのような推察をしてきて、「そんな単純なことはやりませんよー」という一筋縄ではいかない展開が何箇所かあった。そこは面白かった。
しかし基本的に殆どのキャラが選りすぐりの探偵とは思えない器量なので、探偵キャラとしての魅力があまりにもない。その時点で世界観の設定が死んでるに等しく、キャラゲーとしては致命的。
そして探偵としては未熟だが、僕良い人でしょアピールだけは一人前だから鼻につく。
もうさ、キャラの魅力を良い人アピールで高めようとするのやめませんか?そりゃ善人ではあって欲しいなと思うし、俺はどちらかと言うと「仲間」とか「絆」とか青臭い精神論は嫌いじゃないけど、このゲームはそれをわざとらしい自己犠牲精神で表現していて陳腐極まりない。自己満足ではなく、筋の通った意志と感情でそれを見せて欲しい。


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と言うわけで大半は面白くなかったけど、最後の最後でこのゲームの見せ場は訪れた。
主人公は問われる。自分が死ぬか、他の誰かが死ぬしかない、という究極の二択が問われる場面に遭遇したとき、どうするか。他人を蹴落としてでも自分を守るか、誰かのために自分が死ぬか。
それに対する主人公の答えが、心に響いた。トロッコ問題で代表されるように究極の二択というのは良くある思考実験だし、物語でもそういうシチュエーションはたくさん見られるが、答えを二極化するな、考えることをやめるな、という前向きな考え方が大変共感できた。
それも言ってみれば理想論だし、綺麗事ではあるけど、最後のメッセージは血が通ってる。不器用で回りくどくて冗長で、決して綺麗な言葉では無かったけど、だからこそ必死さが滲み出ている。
同じ青臭い精神論でもキャラの友情ごっこは陳腐でわざとらして全く何も思うところがなかったが、最後の訴えは作者の本当の気持ちが込められているという迫真さがあった。だからメッセージが伝わってきた。

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ストーリーはそれぐらい。このゲーム、システムが結構珍しい。
捜査パートではシミュレーションRPGのようなマス目のマップを探索することになり、キャラそれぞれに割り振られたパラメータに応じて、移動したり、仕掛けを見つけたり、謎を解いたりする。
最初はこのシステム欠陥じゃね?と思ったりもした。制限ターンがキツキツで、詰め将棋レベルで正確にキャラを動かす必要があるのに、後出しジャンケンで急に解くべき謎や即死罠がマップのどこかに現れたりして、そんなん理不尽やんとずっと愚痴ってた。
だけど終盤まで気が付かなかったけど、このゲームには全ての行動を放棄してマップのどこでも自由に移動できるという仕組みがあり、それによって釣り合うバランスとなった。
そこさえ分かっていれば楽しめそうなゲームシステムだっただけに、勿体ないことをしたなと思った。見落としていた俺が悪いんだけどね。

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終わり良ければ、ってやつだね。やっぱり前向きなストーリーは気持ちが良い。
ストーリーなんて結局作りものなんだから、いくらでも綺麗事で理想論を語ってくれたら良い。作者の気持ちさえ乗っていたら、ちゃんとそれは伝わる。
探偵キャラの活躍に陶酔できるというゲームでは無かったけど、ちゃんと見るべきところはある物語でした。