熱量




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エンディングまで見た。148話。これだけのためにアマプラのdアニメストアに加入し、半年近く付き合ってきたアークファイブもおしまい。
1〜80話辺りまでは文句なしに面白くて名作であるファイブディーズを超えてるんじゃないかと思うレベルだったが、中盤以降主人公の排他的な主張が目立つようになり急減速。面白い、面白くないじゃなくて、不快。見ていて気分が悪くなる。
このアニメの主題である「デュエルでみんなを笑顔にする」というメッセージが強調されまくり、それに相反する考え方は全否定。
主人公の主張だけ神のお告げのような扱いをしてご都合主義な展開で良いように見せているのが不愉快極まりなかった。
しかもそのメッセージはただ綺麗事なだけで全く説得力を持って語れていないのだから聞くに値しない。本当に見るのが苦痛というレベル。
だけど120話くらいから伏線が回収され始めてストーリーが盛り上がり、そこからラストまでは一気呵成。
終わってみれば、不愉快だったエンタメ主張に対してもある程度納得できるだけのストーリーにはなっていた。

アークファイブの良いところは、最初から最後までゴールが変更されずに一つの終着点に向かって突き進んでいるところだね。
遊戯王シリーズのファイブディーズもヴレインズも一部、二部という節目があって、二部からは無理矢理ストーリーを付け足しましたというツギハギな感じが強く、時間をかけている割にはスケールもあまり感じなかったけど、アークファイブは148話かけて一つの壮大な物語を作り上げているから張り巡らされた伏線が回収される終盤の展開は勢いがあった。
1クール、多くて2クールのアニメが主流の中、150話近くもかけてストーリーを作らせて貰える作品なんて殆どない。
俺が見てきた遊戯王はその潤沢な尺を持て余して間延びするという悪い方向に働いているパターンが多かったが、アークファイブは話の流れがブレてないのでしっかりスケールを感じ取れるし、何より全ての流れが収束していくカタルシスがある。
終盤の盛り上がりは素晴らしく、大河ドラマのような骨太の大長編ストーリーを見届けたという満足感があった。
とはいえ完全に世界観がキッチリ管理されているわけでもなくて、それ今さっき急ごしらえしただろという描写も目立ったし、もっと上手く活かしてくれよという設定も多かったけどね。
特にラスボスの設定。凄く魅力的な素材でこのアニメの主題を補強できるポテンシャルがあるのに殆ど活用されてないのが勿体なさすぎる。

今更このアニメを見る人もいないだろうけど、ここからネタバレするので一応注意。


実は主人公はかつて世界を滅ぼしたズァークという人物の生まれ変わり。
世界を壊滅させた悪魔のような男と恐れられているズァークだが、もとはデュエルで皆を楽しませたいと願う一介のデュエリストだった。
しかしソリッドビジョン(カードが具現化されるあれ)に質量が宿る技術が開発され、リアルで迫力のあるデュエルが実現したことで観客は激しく力強い戦いを求めるようになり、それに応えようとし過ぎるあまりズァークは危険な行動も省みない人間になってしまった。そして世界を滅ぼすまでに至る。
ズァークは純粋な人間だった。一途すぎる故に、暴走してしまった。
主人公の信念にズァークの存在が根付いているのは言うまでもない。この設定はちゃんと伏線があるので、突貫で作り上げたものではなく、最初から仕込んでいた秘密だと思う。
だから、ズァークとか終盤になって突然出て来たのに親近感があって、感情移入しちゃった。彼の切ない一途な想いが明かされた時はちょっとグッときたし、あれほど不快だった主人公のエンタメ思想も少しだけ理解できた。
ズァークの設定を上手いこと使えば空回りしていたエンタメ主題をもっとドラマチックに仕上げることが出来た気がするけど、このアニメはサプライズとして使うことを選んでいた。個人的には勿体ないと思う。

あと、遊戯王のアニメではいつものことだけど、音楽がめちゃくちゃ良いです。音楽だけで雰囲気を作り上げていると言っても過言では無いほど場面を盛り上げていた。
アニメーションや演出に関してもシリーズの中で最もレベルが高いので、それと組み合わさって印象に残るシーンが数多くある。
俺のお気に入りは7話、12話、24話、34話、61話、75話、140話、144話、147話、148話。特に24話と34話は演出が決まりすぎていて10回くらい見直してる。

世間での評判は散々でリアルタイムでアニメを見ていなかった俺にも悪評が聞こえてくるほど叩かれていたので、かなり覚悟して見始めたが、そこまで言われるほどの内容ではない。でもまぁ、一度貼られたレッテルを覆すのは難しいよね。
確かに不快に感じることもあったけど、それも言い換えれば感情を動かされたということであり、作品に熱量がある証拠。
何も想いが込められていない創作に触れても感情は全く動かない。例え発生した感情が負の方向であったとしても「無」よりはよっぽど良い。何時間、何十時間もかけて作品に触れるのだからどんな形でも良いから思い出に残って欲しい。
だから恐れずに主張してくれ。アークファイブは確かに空回りしているし、説得力もないし、あまりにも独善的だが、突発的ではない、一貫とした強固な主張があった。
俺からすれば、何も感じるものがなかった次作のヴレインズの方が遥かに受け入れられない。あのアニメは明らかに批判を恐れて逃げていたからな。主張し過ぎて叩かれたアークファイブの反動なんだろうけど、全く発信されるものがなくて何も心に残らなかった。
まぁ流石に負の感情ばかりでストレスの思い出として残るのはどうかと思うけど、アークファイブは良い思い出だってたくさん作ってくれた。
キャラは魅力的で、面白いデュエルの回も多かった。世界観のスケールは大きかったし、終盤の盛り上がりも素晴らしかった。アニメーションと音楽のレベルが高く、カッコいいシーンがたくさんあった。不快感しかなかった「デュエルでみんなを笑顔に」というメッセージも最後には少しだけ共感できるようになった。
良いことも悪いことも含めて心に残る、最後まで見て良かったと思えるアニメでした。