仕切り直し成功


PS4のアクションRPG。開発は龍が如くスタジオ。
RPGだったシリーズが新作でアクションに転換する事は良くあるが、逆は殆ど見た事がない。
そんな滅多にない事が龍が如く最新作で起きた。
スピンオフも含めて一貫としてアクションのジャンルを貫いていたのに、最新作ではドラクエもビックリするほどの古めかしいターン式のコマンドバトルに変貌。
一方的にチンピラをそこら辺に落ちている看板やソファーや拳銃やその他諸々を駆使して倒れるまで殴り続けることをやめなかった今までの戦闘とは違い、今作は敵も味方もちゃんと殴る順番を守る秩序の取れたシステムとなっている。
一方で実際に繰り広げられる戦いはいつも以上に秩序もクソもない破天荒なファンタジーゾーンに突入。口から火を吹くし、影分身はするし、死んだ仲間を臭い息で蘇生させることもできる。
今作から桐生一馬に代わって主人公を務める「春日一番」は大のゲーム好きであり、ドラクエという生の単語を作中で10回くらい言葉に出すほどのRPGオタクなこともあって、ただのチンピラとの喧嘩も彼の妄想にかかれば勇者と悪の軍団との戦いに早変わりする。
龍が如くと言えば、日本のゲームでは極めて珍しい現実の社会を舞台にしたリアル気質なゲームだが、今作はそこにほんのりとファンタジーな風味が加わり見事にマンネリを打破。
やたらと逃げ足の速いホームレスを倒すと銀色のスライム並みに経験値を貰えたり、戦略の基盤となるジョブを変更するにはハローワークに行く必要があったりと、現実とファンタジーの組み合わせの妙が面白かった。
RPG化が推し進められたことで色んな側面から強化を計れるようになり、装備集めやスキル強化、仲間との絆を深めたりなど、今作はいつも以上に戦闘に臨むまでの準備が楽しい。
しかもそれは、龍が如く恒例の豊富な寄り道としっかり連動している。
サブイベントをこなしていると、経験値の入手だけでなく色んな事が起こる。隠れた物売り商人の出現だったり、商品を買い取りしてくれるお店がオープンしたり、ショートカットの開通だったり、仲間の知らない一面の開拓だったり、新しい友人の出会いだったり。
サブイベントが新たなサブイベントに繋がって、未知の要素を生み出してくれることもある。
かなり大きな事が本筋とは関係のないところから発生し、それがちゃんとパーティの強化に繋がるからいつも以上に寄り道するのが楽しかった。
ただ、ちょっと寄り道の強要が過ぎるんだよな今作は。メインだけだと出来ないことが多すぎる。商品の買い取りくらいはデフォルトでさせてくれても良いんじゃないかと思った。
基本的に俺はストーリーゲームでは先が気になるからどんどん話を進める猪突猛進スタイルだが、今作は途中で金を大量に集めないと話が進まない場面もあり、勢いを削がれた。
そういう多彩な遊びがRPGの楽しみ方だし、今作はクリアーまで45時間もかかりボリューム満点でRPGの面白さは十二分に詰まっていると言えるが、もう少しテンポが欲しかったね。
また、RPGを全面に押し出したコマンド戦闘はあんまり魅力がない。
敵と仲間の位置関係が影響してくる仕組みがあるので、少しだけ考えさせられる。例えば基本的に敵は自分の近くの相手を攻撃してくるため、守りに入りたいキャラは攻撃を控えるなど、空間を活かした戦略がある。
でも重要なのはそれぐらい。自転車や看板などのオブジェクトが近くにあればそれを活用して追加ダメージを与えるという器物損害罪に喧嘩を売ったお馴染みの仕組みもあるけど、それを狙ってコントロールするのはほぼ不可能だし、そもそもダメージも些細なもの。
ヘイトを集めて敵を一か所に固め、範囲攻撃で一掃するというのは中々有効で最初は積極的に狙っていたけど、このゲームは雑魚でも中々状態異常になってくれないから段々どうでも良くなった。
ドラクエだとバフや能力低下などが大きな役割を果たし、龍が如く7でも色んなパラメータコントロール系のスキルがあるが、2ターンとか3ターンですぐに効果が切れるし、そもそも補正が入ってるのか分からないくらい数値が変動しないので全く恩恵を感じられない。
またコマンドRPGはMP回復アイテムを希少なものにして強力な魔法やスキルの使用にブレーキをかけさせたりするけど、今作は金さえ出せばガブ飲みで無限にMPを回復できるのでやり繰りする必要もない。
そして極め付けに、そんな面倒な工夫をする意味が見出せないほど敵が弱い。だから殆どゴリ押しすれば良い。
ごめん嘘。本当は、2箇所だけ明らかに制御が外れたヤバいボスがいる。明らかにあいつらだけバランス担当の人間が違うんじゃないかと思うレベルでスペックがおかしい。
結果、久しぶりにゲームでレベル上げという作業をした。まさか龍が如くでやる羽目になるとは思わなかった。レベル上げ自体は楽しかったから別に良いけどね。
急な難易度の上昇は単純に終盤に差し掛かったからだと思ったけど、そのあとのボスは弱かったし、ラスボスも大したことがなかった。本当にあの2箇所だけ。極端すぎる。
まぁでも、全体的には今までのアクションの戦闘よりは今作の方がまだ面白かったかな。
龍が如くは今作を除いて6作やってるけど、今まで面白いと思ったのは「龍が如く0」の敵を殴ると打ち出の小槌の如く銭をジャラジャラ落とすあれくらいで、それ以外全く思い出に残るものがない。
このシリーズのアクションはストレスも無いが、カタルシスも達成感もない。桐生の兄貴がソファーをジャイアントスイングしている破天荒な見栄えがちょっと面白いだけ。
それに比べると今作はまだ印象的な瞬間が何箇所かあった。コマンドバトルは初めての取り組みだし、まだまだ洗練できるだろうから次回もこれでよろしく。アクションは微妙、寄り道が魅力なゲームだがそれもあんまりこのシリーズではやる気が起きない、となると何故龍が如くを買い続けているんだという話になるが、そりゃあもうストーリーしかない。
そのストーリーもナンバリングによってかなり振れ幅があるが、今作は良かった方かな。
今作は、このゲームの中だけでもストーリーの振れ幅が大きい。良い部分はとても良いが、印象が悪い部分もめちゃくちゃ目立つ。
端的に言うと、人間ドラマは魅力的だけど、物語の流れはもうハチャメチャ。
何かメッセージがあってそれを伝えるためのご都合主義なら別に良いが、それとは関係のない部分で、あまりにも結果ありきの展開が続くので冷める。そんなのありえねーだろのオンパレード。
まぁ俺は人一倍そういう作為的な筋立てを見ると気になってしまう面倒なタチではあるけど、それにしたってこれはない。
だけど、人間ドラマは決まってる。特に最後の場面は感動した。
何でだろ。よくよく考えれば、そこまで深掘り出来ているとは思えない。でも、春日の言葉が心に届いた。
このゲームのテーマは、「春日一番」。桐生一馬に代わる新たな主人公だが、彼の人とナリをこの一作だけで完璧に描き切れている。
ネタバレになるから言えないけど、普通に考えたら、あの人間に対してあそこまで尽くすことなんて出来ない。
でも、春日一番という人間ならきっと出来てしまう。そう思わせる説得力がある。
このゲームは決してストーリーが緻密に作られているわけではないけど、春日一番がどういう人間なのかという点については、とてつもない熱量を持って伝わってくる。
最後の場面もストーリーの展開が唐突なので、見方を変えれば、感動の押し付けだとか、ご都合主義だとか揶揄することもできる。だけどそう感じないのは、春日一番という人間をちゃんと描いていて、彼自身の言葉が伝わってきたから。
感動を作るためにそういう言葉を言わせているのではなく、春日一番ならきっとその言葉を投げかけるだろうという臨場感があった。だから感動できた。
シリーズ仕切り直しの一作目。
RPGの取り組みはまだ発展途上という感じだがポテンシャルは十分垣間見えたし、新主人公については大成功。
少なくとも俺は桐生一馬の存在を忘れるくらい春日一番のことが好きになれたね。これからも龍が如くシリーズをやり続けます!
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