プラチナの集大成




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スイッチのアクションゲーム。開発はプラチナゲームズ。

ベヨネッタ、ヴァンキッシュ、メタルギアライジング、ワンダフル101などなど、数々のアクションゲームを作り上げて来たプラチナゲームズ。
プラチナのアクションは間違いなく業界最高峰にある。単純なコンバット部分の品質は言うまでもなく一流で、加えて軸となるシステムは個性的だし、キャラクター性もある。バランスも操作性も配慮が届いており、テンポも良い。ハッタリも効いている。この会社のアクションゲームが退屈だった試しがない。オンラインメインのマックスアナーキーは別として。
だから、どうせまた今回も面白いんだろうなぁと思ってたけど、想像を裏切られた。予想していたよりも10倍くらい面白かった。

舞台は2043年の地球。
突如として隕石が落下し、それによって生じたワームホールからキメラが出現。地球を汚染し始める。
このキメラが肉眼では姿が見えないため人類は大苦戦。そこで人類はキメラを捕縛して生体兵器として改良し、人間と接続するという起死回生の策を生み出す。
これにより接続された人間はキメラが視認できるようになり、また生体兵器は非常に有効な攻撃手段でもあり、人類の反撃が始まるのであった。

と、言うことで今作のバトルの軸は生体兵器と共に戦うデュアルアクション。
レギオンと呼ばれる生体兵器とキャラクターは鎖で繋がれた運命共同体であり、プレイヤーは両方を操作することになる。
両方操作?それって複雑じゃね?と思われるかも知れないが、レギオンに関してはある程度AIで動いてくれる。敵にレギオンを近付ければ勝手に攻撃してくれるので、その間に自分は回復したり、遠くから撃ったり。
でもレギオンに任せっ放しで良いかと言うと、全くそんな事はない。このゲームの鍵を握るのは、レギオンとキャラクターを結び付けている「鎖」。
レギオンは攻撃に関しては自動でしてくれるが、移動はしてくれない。鎖を手綱代りにしてプレイヤーが操作することになる。この鎖を利用した色んな戦術が存在する。
例えば敵を鎖でグルりと囲んで一時的に動けなくしたり、鎖を一直線に引っ張っておき突進してくる敵を弾いたり、レギオンに鎖を引き寄せて貰ってワイヤーアクション的な動きをしたり。
これがとても面白い。なんというか、戦術的で良い。アクションゲームと言うと、コンボを覚えたり、敵の攻撃を回避したり、というボタン捌きが重視されるが、この鎖システムはプレイヤーの状況判断がものを言う。
決まり切った流れのヒットアンドアウェイではなく、プレイヤーの機転によって大きく戦いの流れが変わり、それを実感できるのがとても楽しい。

しかしこのゲーム、めちゃくちゃ忙しい。気を使わないといけない要素が多すぎて頭が爆発しそうになる。
ただでさえデュアルアクションでキャラとレギオンという2体の存在を同時に操作するのが目まぐるしく、なおかつ鎖システムもアクションゲームではあまり見ないインターフェースなので慣れにくいのに、これに加えて非常に多くのシステムが詰め込まれて大変な事になっている。
レギオンが5体いてリアルタイムに切り替え可能だったり、攻撃をギリギリで回避するとスローモーションになるというシステムが組み込まれていたり、自由な方向に斬撃アクションができたり、人間も数種類の武器を切り替えできるし、更にはレギオン毎にアビリティを装備して特定のシチュエーションに合わせた追加効果を付与できるというRPG的なシステムまである。
あれ、ちょっと待って。なんか上の要素ってどこかで見たことがあるような・・・
スローモーションはベヨネッタの特徴的なシステムだし、自由切断はメタルギアライジングの象徴であり、RPG的な要素はニーア オートマタを彷彿とさせる。鎖システムに関してもグネグネとラインを動かす感覚はワンダフル101っぽい。
これって・・・これって・・・と、わざとらしく言うまでもなく、このゲームにはプラチナが今まで作ってきたゲームエッセンスの多くが詰め込まれている。しかも、デュアルアクションという新しいシステムまで搭載して。
その結果、とんでもなく操作が大変で、情報量が多く、非常にハードルが高いことになっているが、これほど多彩な戦術をぶつけられるアクションゲームは見たことがない。
アストラルチェインにはゲーム5本分くらいのシステムが詰め込まれていると言っても過言ではなく、本当にありとあらゆる戦い方が存在する。
重要なのは、敵には明確な弱点と癖があるということ。このゲームはただ闇雲にシステムが多いだけではない。ただプレイヤーの遊びの幅を広げるためにアクションの種類を多くしているわけではない。
アクションは豊富だけど何を使っても同じ戦い方になるとか、一つだけ飛び抜けて使いやすい戦術があってそれをゴリ押しすれば大丈夫とか、アクションゲームでは良くあることだけど、このゲームは特定のレギオンだけ使っていれば良いとか、鎖アクションだけ意識していれば良いとか、そんな単純なゲームではない。
ただゴリ押ししているだけでは状況は打開できないが、敵や状況に合わせて数あるシステムの中から的確にアクションの最適解を見つけ出すことで、本当に劇的に戦いの流れが変わる。死んでいるシステムは一つもない。全てに明確な使い道がある。
ここまで自分の創意工夫がダイレクトに反映されるアクションゲームは中々ない。はっきり言って、面白すぎる。

もちろん単純なアクションゲームとしての品質も上の上。レスポンス、動きのキレ、スタイリッシュなモーション、派手なエフェクト。全てが一級品。
アクションゲームとしての強固な基盤があり、そこに多彩なシステムを詰め込み、それを活かせるようにゲームバランスを練り上げている。
動かして楽しい、システムが新しい、アクションが爽快、というだけでも凄いが、そこに戦術性まで加わり、既にプラチナのアクションゲームは業界最高峰だったが、今作で更に一段飛び抜けた感がある。
俺はプラチナのベヨネッタが大好きだけど、アストラルチェインはそれを軽く超えた。

このゲーム、ただ難しいだけではない。プレイヤーに対する配慮も細かい。
まず滅多なことではゲームオーバーにならない。RPGかよってくらいに回復アイテムをめちゃくちゃ持てるから。
それでも死んでしまうと、今度はすかさず蘇生機能が働く。俺はハードに相当する難易度で遊んでたけど、そこですら2回の蘇生が許された。蘇生すると体力は全回復。しかも蘇生の回数すらアイテムを使うことで回復することができる。
同じくスタイリッシュアクションであるデビルメイクライ5も同じような介護システムでプレイヤーがゲームオーバーになることを必死に阻止してきたけど、それ以上にこのゲームはプレイヤーのミスに対して緩い。アクションのハードルは高いし、敵も強いけど、行き詰まることはまずない。
正直気が抜けるところもあるけど、まぁ良いかな。緩いからじゃあゴリ押しで良いか、とはならないから。単純にアクションが素晴らしくて、工夫を求めてきて、それが結果として反映されるのが面白いから、率先して自分からゲームを楽しもうと思える。
難易度を上げてゲームオーバーを厳格にすることでプレイヤーに的確な操作と考えることを強制するというのもアリだが、ゲームの面白さによって能動的に工夫して遊ぼうと思えるならそれが理想的だ。
アイテムや蘇生が制限された難易度だってちゃんとあるわけだし、アクション初心者から上級者まで誰もが楽しめる作りになっている。

ここまでアクション素晴らしいと言い続けてきたけど、このゲーム、実はアクションは6割くらいで他の要素が4割くらいを占める。
その他4割は何をやっているのかというと、探索したり、街の人の依頼をこなしたり、謎解きをしたりする。
アクションゲームの中に色んな要素を混ぜるのは開発元であるプラチナの趣味みたいなもので、特に初代ベヨネッタはバイクステージやシューティングステージを過剰なまでに強調していたけど、このゲームはそれ以上にアクション以外の比率が高い。
でも、これがまた面白いから何も文句はない。なんというか、本気で作られているんだよな。単なるオマケや息抜きなんかじゃない。メインを張れるほどにめちゃくちゃ作り込まれている。レギオンの個性を生かした仕掛けとか驚くほど良く考えられている。
俺は基本的にクリアーに関係のないことはあんまりしない質だけど、このゲームはかなりのサブクエストとアイテム回収に励んだ。よくよく考えれば作業だし、やってることはお使いなんだけど、単純に楽しかった。

ボリュームも凄い。比率でアクションが6割と言ったけど、そのパートだけでも分量的にはプラチナのアクションゲームの平均的なプレイタイムよりむしろ長いくらいで、そこに探索・調査パートが乗っかってくるという重量感。ベヨネッタ2を軽く3回クリアーできるくらいのボリュームがある。
これだけのボリュームでありながら、アクションも探索パートも凄まじく作り込まれているのだから凄いが、終盤はちょっとダレたかな。戦いがワンパターンになってた。
もっとシステムの特性を活用しないと倒せない敵がわんさか出て来て欲しかったけど、最後のあたりはゴリ押し可能な連中が多くて残念だった。

ストーリーはまぁまぁ。レギオンや双子の関係を軸に話は展開される。ありがちな話だけど、熱くはなれた。
ストーリーやキャラクターに関してもメインはアクションだからと言って手抜きは感じない。丁寧に作り込まれていたと思う。

このゲームの熱量には恐れ入った。アクションのシステムの詰め込みっぷりもそうだし、調査パートやストーリーも含め、凄まじいボリュームで構成されている本作。
普通ならどこかが薄くなったり、詰め込み過ぎて破綻しそうなものだが、圧倒的な作り込みでまとめ上げている。アクション、探索、仕掛け、カスタマイズ、サブクエスト、ストーリー、キャラクター。全てが高い水準にある。
単純に要素を注ぎ足してもイコールそれが足し算になるとは限らないけど、ここまで作り込めば関係ない。
このゲームに関しては詰め込んだ分だけ足し算のようにゲームの面白さが増幅している。新規タイトルでここまでの作り込みと詰め込みを許すパブリッシャーの任天堂も凄い。
プラチナの歴史が詰め込まれ、それがアクションゲームとして結実している傑作。集大成と言っても過言ではない。
アクションゲームが好きなら絶対やるべし。