バランスが取れたバイオ




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PS4とXbox Oneのアクションゲーム。開発はカプコン。

バランス取れてるよなー今作は。そりゃ絶賛されるよこれは。皆が待ち望んでいた理想のバイオだもん。
今までのバイオシリーズは偏った内容が多かった。例えばバイオ1、2、3は謎解き重視というだけでなく、アクション部分も移動はラジコン操作でカメラは俯瞰視点でシューティングはロックオン式なためテクニックでどうこうできる部分は少なく、アイテムのやり繰りやルートの選び方など、ゲーム全体がとにかく頭を使って攻略しろという姿勢だった。
打って変わってバイオ4は操作性がガラリと変わる。カメラはキャラの背後に回って主観的な視点となり、銃の照準を自由に動かせるようになった。敵の部位を狙い撃つことで怯ませられるという仕組みが自由照準の操作性を強調。更に怯んでいる隙に、多数の敵を巻き込んだりトドメを刺させる体術まで繰り出せるようになった。
それ以前のバイオはアクション性を徹底的に排除してプレイヤーに考えることを求める内容だったのに、その流れを清々しいまでに断ち切って、キャラを縦横無尽に動かせてカッコいいアクションが決められる、コントローラ操作が忙しいゲームへと変貌した。
ハードの世代が変わって主人公のレオンは超イケメンになったが、アクション化したバイオはそんな彼のカッコいいシーンを作りまくっていて魅力を最大限まで高めている。実に時代の流れに合わせた進化だった。
5も内容的には4のアクションシステムを引き継いでいるが、バディシステムを採用しており、これが一人で遊ぶと全く面白くないが、二人で遊ぶととんでもない神ゲーに変貌するくらい誰かと遊ぶことを前提に考え抜かれていた。
今では多くの協力プレイ対応のゲームが出ているが、未だにその系統ではバイオ5が俺の中のNo. 1です。大抵のゲームは協力プレイ「も」遊べるよ、というシステム・ゲームバランスだが、バイオ5は協力プレイが核であり、それに合わせて全てが作られている。
だから協力して攻略する、という必要性がこれでもかと強調されていたし、上手くコンビネーションが決まった時のカタルシスは凄かった。バイオ5は俺のゲーム史の中で一番時間をかけて遊んだってくらいのめり込んだな。
6は4から続くバイオのアクション性を更に進化。とにかくアクションに割り切った内容で、キャラをカッコ良く魅せるという4から引き継ぐコンセプトを徹底的に突き詰めていた。
7になるとまた方向性が変わる。これまで積み上げてきたキャラを魅せる、というコンセプトを完全に放棄。レオンやクリスが強すぎて敵と対峙する恐怖が失われつつあったバイオシリーズだが、彼らの匂いを作品から完全に消して照準をとことんホラーに絞った。
主人公は名前しか情報が明かされないただの一般人。カメラは問答無用で死角から敵が襲ってくる主観視点。レオンやクリスといった人気キャラも最後の一瞬しか登場しない。シリーズで好評だったオンラインプレイも排除。そしてVRに完全対応。
アクション、キャラクター、オンライン。バイオハザードが今までコツコツ積み上げて、ユーザーから支持されていた要素を全て捨て去り、とにかくプレイヤーを怖がらせるという一点に全てを注いでいた。

要するに、今までのバイオは、このゲームはこれを見せたいんだ!という作り手の欲望が実直に現れた作品が多かった。
その是非は今は置いておく。俺が言いたいのは、バイオは偏った作り方をしているシリーズであるという事だ。
ようやく話をバイオリメイク2に戻すが、今までのバイオに比べると、今作は実にバランスが取れている。

まず大きいのはカメラ視点。オリジナル版は天井から見下ろしているような視点で、迫力はあまりないし、移動も難しいし、カメラ固定だから照準もロックオンでアクション性が薄いし、と、かなり面倒な仕様だった。
リメイクでは俯瞰視点からバイオ4のような肩越し視点となり、自由に照準を動かせる。体術システムは存在しないが、4や5のように銃を構えている間は動けない、という癖もないので操作しやすい。
これにより、オリジナル版と比較してプレイヤーのテクニックで解決できる部分が多くなったので、ゾンビの対処は格段に快適になった。
ただし弾薬やハーブの数は厳しいので、闇雲に撃てば良いわけではない。相変わらずアイテムのやり繰りが必須なサバイバル性がある。
今作のゾンビは非常にシツコい。頭に何発当てても簡単には死んでくれない。ようやく死んだと思ってもまだ動き出す。この粘っこさ、まだ生きてる感が実にゾンビ的で良い。単なるプログラムで動いている敵という感じがなくて躍動感がある。流石はカプコン。
ただでさえ弾が少ないのにゾンビが粘ってくることもあって、今作は本当にリソース管理がキツかった。今までだと後半はジャンジャン弾が手に入ってゴリゴリ押せたが、今作は最初から最後まで常に困窮状態。
それだけあって、最後の開放感は素晴らしかったな。迫り来るタイラントに向かってロケットランチャーをぶっ放すあのカタルシス。美しい。あまりに美しすぎる流れだ。
それまで執拗に付きまとってきて、どれだけ反撃しても無敵だった、あのタイラントを爆風と共に綺麗さっぱり吹っ飛ばす完璧な演出。素晴らしすぎる。
バイオハザードシリーズの大きな特徴は、サバイバルでプレイヤーを縛るだけでなく、緊張から解放する瞬間も与えてくれるところだ。
安全部屋に入った時のあの安心感。ゾンビの頭を吹っ飛ばした時の爽快感。そしてタイラントがロケットランチャーで飛び散るカタルシス。
緊張感が持続しているからこそ、何気無い快感がカタルシスとして押し寄せる。この一時のカタルシスがあるからこそ、緊張感を耐え抜く事ができる。
いくらゲーム性が面白くてもずっと緊張しっぱなしではプレイヤーは疲れるだけだ。しかしそこにストレスからの解放を一瞬でも与えられる事でそれがモチベーションに繋がる。まさに飴と鞭。このメリハリの付け方がこのシリーズは最高にうまい。
とはいえ今作は緩い。難易度は高いが、死んでもセーブした場所ではなく、チェックポイントからやり直せるので手軽。インクリボンの数しか記録できないという仕様も当たり前のように無い。実に快適だ。

舞台はあの警察署。一本道ではなく、決められた空間内で謎解きをしながら行ったり来たりさせられる。
最初は行けない場所だらけだが、仕掛けを解いたり鍵を手に入れることで徐々に行動範囲が広がっていくのが相変わらず面白い。
警察署内は複雑に繋がっていて同じ目的地にたどり着くまでに複数のルートがあるが、こっちの道にはゾンビがいるから遠回りしてあっちから行こうとか、この道はよく使うからゾンビを倒しておこうとか、そういう考え方ができて、弾薬の数と常に睨めっこする必要があるバイオのサバイバル性と実にマッチしている。バイオは本当によく考えられたゲームである。
リメイクでは板で窓を塞いでゾンビの侵入を防ぐこともできるのだが、この板が絶妙に足りないのが嫌らしくて、これまた色々と考えさせられる。自分がよく使う通路だから塞いでおこうとか、ゾンビを避けやすい場所だから止めておこうとか、弾も薬もないからもう塞いじゃえ!とか。実にサバイバル的だし、攻略性に深みも与えているし、とても良いアイディアだと思う。
レベルデザインで言えば、リッカーとゾンビの配置とか本当に嫌らしかったな。
リッカーは音に敏感だが視力は殆ど無いので歩けば無視できるのだが、ゾンビが近くにいたらノロノロしている間に捕まってしまう。しかしゾンビを対処するために走ったり撃ったらリッカーが襲いかかってくるし・・・というもどかしさ。
新たに登場した無敵のタイラントも同様で、決して死ぬことなくどこまでも追ってきて、謎解きや敵の対処にイレギュラーを引き起こしてくる。
決められたパターンで攻略できるほどバイオは底の浅いゲームではない。プレイヤーに応用力を求める調整は流石だった。

端的に言うと、今作は思考型だったバイオ2を少しアクションに寄せただけのゲームではある。
昔のバイオのゲームデザインはホラーとして優れているし、サバイバルのゲーム性とも相性が良いし、何よりプレイヤーから絶大な支持を受けているが、快適なアクションゲームが溢れている今の時代には合わないという問題があった。
その問題をカメラをバイオ4の視点にして照準も自由にしてアクション性を高めるという、割と単純なやり方であっさり解決。
アクション部分が快適になったと同時に、あらゆる部分が遊びやすく調整されており、それでいて謎解きやサバイバルの手応えは変わらず、そして映像はハイクオリティでホラーのムードは満点と、まさに今のバイオと昔のバイオの良いとこ取り。これで面白くならないはずがない。
というか、何で今までこのタイプのバイオが無いのか不思議だった。昔のバイオのマップデザインで今のバイオのシューティングシステムを採用すれば、昔のバイオの方が絶対良かった、いや今のバイオの方が良いに決まってるという両方のファンを手っ取り早く満足させられるのに。
今作をやった限り、謎解き重視のマップデザインでもビハインド視点のシューティングは決して相性悪くないしね。むしろホラーの緊張感は上がってる。
多分、拘りがあったんだろうな。確かに、俯瞰視点でアクション性が薄かった昔のバイオの方が、サバイバル性に深みがあった。アクションではどうにも出来ないから、とにかく考えて考えて攻略する必要があった。上で言ったように、バイオハザードはそういう作り手の拘りがもの凄く感じ取れるゲームだ。
確かにバイオリメイク2はいつものバイオに比べると尖ってないかも知れない。ソツなく作られた只の優等生かも知れない。でも、間違いなく面白かった。
新しいものを作る。自分の主張を通す。それはものすごく大事なことだし、素晴らしいことだが、それと同じくらいバランス感覚は大切だ。最も大事なのは面白いものを作ることだから。あまりにも偏りすぎると作り手にしか面白さが分からないものが出来上がってしまう。時にはブレーキをかけて客観性を忘れない、バランス感覚は必要だ。漫画や小説と違ってチームで制作するゲームという分野では尚更。
そういう意味で、今作はものすごくバランスが優れた、素晴らしいバイオハザードだったと思う。遊びやすくて、でも手応えがあって、昔のバイオと今のバイオの両方の面白さがあって、そして怖かった。
でも、これがナンバリング最新作だったらちょっと不満だったかもね。リメイクだからこれくらいのバランスで良いと思うけど。
バイオRE2は完璧で理想的なリメイクでした。