物語の推進力が凄い




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PS4のアクションアドベンチャーゲーム。開発は龍が如くスタジオ。

キムタクが主人公になっただけで基本的にはいつもの龍が如く。
舞台は当たり前のように神室町だし、当たり前のように暴力団の東城会が出てくるし、アクションやゲーム進行もいつも通りで、新規タイトルではあるが龍が如くシリーズの流れを大きく引き継いでいる。
とは言え差別化もされており、主人公が探偵なのでステルス的なゲームプレイが多く求められる。ターゲットを尾行したり、ピッキングや変装を駆使して潜入したり、ドローンを飛ばして事前に状況を確認したり。
今までは主人公がヤクザ上がりだったので、ひたすら暴力に訴えて状況を打破していたが、今作はカチコミ一辺倒ではないのでメリハリはそれなりにある。
まぁそんなに面白いわけでもないけどね、探偵アクションは。尾行とかターゲットの挙動が不審すぎて10秒に1回は隠れなきゃいけないし、面白くもないのに凄い面倒だった。
なのに製作者は尾行パートが気に入っているのかやたらと本編で求めてきて、最後なんて15分くらいずっと尾行に付き合わせられるのだからウンザリした。
とは言え尾行はいつも歩き回っている神室町の街を目一杯使ったアクションなので、箱庭のシステムを実感できるパートではある。

それよりも困ったのが今作は回復にかなり手間がかかること。敵の一部の攻撃は主人公の最大耐久値を削ってきて、削られた部分はコンビニ弁当を食ってもエナジードリンクを飲んでも回復してくれず、直接医者に診て貰う必要がある。
いつもなら5000円くらい払って飯を食えば体力が完全回復するが、この医者の治療費は2万円。
わざわざ医者に行かなくても携帯可能な医療キットというものもあるが、その値段も4万円。足元みすぎ。
でも連戦中に最大値が削られるとジリ貧になるのでどうしても買わざるを得ない。その結果、今作は割とマジで金がなかった。売れない探偵業をしている主人公と同じ気分になった。
もちろん金を稼ぐ手段はたくさんある。サブクエストが豊富に用意されているのがこの開発チームの特徴だ。ストーリーだけでなく、神室町をしっかり歩き回ってサブイベントや探偵の依頼をこなして下さいという事なのだろう。
しかし、いつも通り俺は他の要素は目にもくれず、本編一直線でひた走るのであった。
いやー、このシリーズなんかやる気が起きないんだよね、サブ要素。世界観の風情を感じさせるものから荒唐無稽な馬鹿馬鹿しいものまで、サブクエストの種類は多種多様で面白いし、今回はゲームバランス的にも寄り道の必要性が増してるし、いつもよりクリアーすることで手に入るご褒美も魅力的だが、やはりやる気が起きない。
強固なメインストーリーがあるゲームは、どうしても俺はそっちを優先してしまう。だってサブの要素をやるよりも本編進めている方が楽しいもん。

特にこのジャッジアイズはストーリーの先が気になって仕方なかったので他の事にかまけている余裕なんてなかった。
龍が如くは桐生一馬と遥という強力なキャラクターが存在する故にその二人を根幹においたストーリーを作らざるを得なかったが、今作はその制約が取っ払われたわけで、キャラクターのために作られた物語ではなく物語のための物語になっている。
故に支離滅裂な部分が少なく、面白い。サスペンス色の強い構成も強烈な引きになっており、とにかく先が気になる。サブクエストなんかに時間をかけている場合ではない。
終盤になると一般人が巨大な権力に立ち向かうという良くある話になるが、そんなドラマがかった陳腐な展開も気にならない。何故なら主人公がキムタクだから。キムタクならそれくらい日常茶飯事で起こり得るだろうという雰囲気がある。
そういう意味で、キムタクというキャラクターは非常にハマってる。むしろキムタク以外はあり得ないストーリーだ。単にキムタクという有名キャストでゴリ押ししているのでなく、ストーリーと調和して魅力的に見せているという点で非常にこのゲームは好感が持てる。
キムタクに対して遠慮のない扱いも素晴らしい。病院内で車椅子を振り回し破壊の限りを尽くすキムタク。電子レンジでチンピラの頭を温めるキムタク。セクハラ動画をばら撒くぞと脅したり、パンツ一丁の丸裸にして尋問をするキムタク。
ここまでやってくれるのかと驚くばかり。ゲームの意図を汲んで、良いものを作るために最大限の協力をしていると感じる。
キムタクが生き生きとした様子で恐喝まがいの尋問をしているシーンもこれ大丈夫なのかと心配になるが、そこが今回のストーリーの大事な部分ではある。
悪とされる側にも自分の正義がある、という意図を感じるストーリーだが、正直その辺りはどうでも良くて、むしろ善とされる主人公側が正義を振りかざしてやりたい放題しているのが面白い。
これが主人公のやってることは正しいという認識で進められていくので分かりにくいが、明らかに主人公陣営のやり方は暴走しすぎだ。明確に製作側が意図して主人公側に汚い事をやらせていると感じる。
要するに今作の主眼にあるのは、悪とされる側が正義を持っているように、善とされる側も必ずしも正しい側面だけを持っているわけではない、この世に100パーセントの純粋な存在などありはしない、という事なのだろう。
そう考えると中々に奥が深いストーリーだし、そういう意味でもキムタクは際どい役を演じ切ってくれたと感じる。

ゲーム部分がイマイチなのは相変わらずだが、ストーリーは面白かった。龍が如くスタジオの魅力もキムタクの魅力もちゃんと出ている。
しかしメインストーリーがしっかり作られていればいるほど、サブ要素のやる気が無くなるから悩ましい。そういう意味ではストーリーがあってないような海外ゲームの作りは理にかなっているのかもね。
でも、ストーリーが面白いゲームはやっぱり推進力が違う。本当にグイグイ持っていかれる。
ゲームでストーリーの比重が大きいと映画でやれば充分だとよく批判されるが、明確な目的を持って主人公を動かし、大団円の結末を迎えるという感覚が俺は堪らなく好き。ゲームは明確な目的とゴールがあるべきで、物語はその強固な柱になってくれる。
龍が如くスタジオのように現実の世界を舞台にして現実的なストーリーを作ってくれるゲームは殆どないので、これからも頑張ってほしいね。