超自己満足




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PS4のアドベンチャーゲーム。開発はスクエニとhuman head studio。

言葉やBGMを排除したゲームということでその試み自体は珍しく、何よりスクエニなので迷わず購入したが、実際に音楽や台詞が無くなると全くもって盛り上がりに欠けるし、やり取りの場面も何をやっているのか意味不明で退屈だし、主人公は確かに耳は聞こえないようだが読唇術を会得しているようで、実際に言葉が分からないのはプレイヤーだけという何のためのコンセプトか分からない状況になっているのがまず酷い。
てっきり、主人公としてロールプレイができるように言葉や音楽を無くしているかと思ったのに、普通に主人公は相手の言葉を理解していて、何も伝わらないのはプレイヤー側だけという意味不明さ。主人公との一体感なんてあったものじゃない。
じゃあ制作側がこのコンセプトで何をやりたかったのか、と言うと、このゲームは発売から1週間後に音と台詞を収録したアップデート版が配信されるという仕組みになっていて、1周目はプレイヤーが想像を膨らませて自分だけの物語を作り上げ、2周目は答え合わせをして明かされる本当の真実に驚いて貰う、という事がやりたかったのだろう。
うーん、ハードルが高い、というか、押し付けがましい。確かに言葉が分からないので想像せざるを得ないが、そもそも想像しなくてもある程度話の大筋は分かる流れになっているのでそこまで想像の余地はないし、何を言っているのかアテレコして考えてみるのもyoutuberなら格好のネタだろうが個人でやる分には面倒くさくてやってられたものじゃない。
そして運命の1週間後。俺はyoutubeの動画を見て答え合わせの2周目を確認する。
え?ちゃんと自分でゲームやって確認しろって?
あのさー、聞いてくれよ。このゲーム、最後の戦闘が終わったあとの最後のムービーの場面でフリーズしやがって、アプリを落としてやり直したらその章の最初からに戻りやがったんだよ。
やたらと難易度が高くてその場面に到達するまでに1時間半はかかったのにあんまりな仕打ちだった。
だから俺はこのゲームを実質クリアーしていない。フリーズした時点で心が折れて最後の場面も動画で済ませた。大体ゲーム場面ならともかく実写のムービーでフリーズするってどういうことだよ。映画を観ていて途中で止まる事があるのかって話。
ゲーム部分の話がまだだったので触れておくと、内容としてはひたすら現れるチンピラを相手に戦闘する、というのを延々と続けるだけ。これ以外にやれることは一切ない。
この戦闘がまたいい加減過ぎるというか、アクションゲームとしてルールをちゃんと作って欲しいというか、自分はガードが出来ないのに相手はガード持ちでしかもそれを崩す手段がないというのがとにかく酷い。
てっきり掴みでガードを外せるのかと思ったがそんなことはなく、特定の敵は確定で掴みを外してくる理不尽さ。しかもガードで受けている最中にも無敵のカウンターで攻撃を返してくるからセコすぎる。
主にボス戦でこのような事態が起きるのだが、その仕様と相まって難易度は理不尽に高い。
あとはロックオンが無いのも意味不明。敵とじっくり間合いを図って戦ってねという戦闘なのに、軸移動ができないから立ち回りが行き当たりばったりになる。
何より戦闘の見た目が悲惨。軸移動がないから敵と間合いを取るためにあらぬ方向に主人公が走り出したりして、シュール過ぎる光景が繰り広げられる。
それ以前にモーションがかなり違和感あるし、目の前で戦いが行われているのに全く気がつく様子がない敵とかいて、実写を使って映像もフォトリアル路線で画面もゲームの情報を一切排除していてとにかく現実的な空間を作るという意気込みでゲームが作られているのに、結局ゲームっぽい嘘さを消しきれていないから非常に白ける。作り込みが甘いと言わざるを得ない。

で、話は戻るが、1週間後のアップデート。動画で音声とBGMが付いた2周目を確認する。
音楽とエフェクト音があるだけで戦闘は大分マシな感じになってるな。もともと雑魚戦は慣れたらヒットアンドアウェイがそれなりに楽しめる作りではあったが。
それで肝心のお話だが、えーと、これって言葉無くした意味ある?字幕が付属された事で、あーそういうことだったのね、と意表を突かれた事実が確かに一つだけあったが、それ以外は全く予想通りの内容で、答え合わせも何もなかった。
ストーリー自体は確かに悪くないが、音が無いというこのゲームの世界観を活かしていると全く言えないし、答え合わせの二重構成に耐えうる真実があるわけでもない。ほんと酷い。

これは無い。マジで無い。何周か回ってアリなやつなのか?と思ったりもしたが、冷静に考えても感情的に考えてもこれはやはりどう考えても無い。コンセプトによる面白さが全く感じ取れないのがとにかくダメ。
どれだけコンセプトによって苦痛が伴ったとしても、それによってもたらされる情緒や感動、驚きさえあれば別に良いんだよ。でも、このゲームはそれが無いんだから失敗作としか言いようがない。
主人公とのロールプレイは一致しないし、ストーリーは音が無い世界観を活かしていないし、答え合わせによる大きな真実があるわけでもない。
結果として、ただただ台詞が分からないのが意味不明で、それを確認するためにもう一度退屈極まりないゲームをしなければならないという酷いゲームだった。

新しいことに挑戦するのは素晴らしいことである。作り手がやりたい事のために、プレイヤーの快適性を度外視しなければいけないことも時にはある。
だけど、自分たちが見せたいものがキチンと面白いものでなければ、それをやる価値はない。面白さを伝える事ができないなら、それは単なる自己満足でしかない。
クワイエットマンは酷い自己満足ゲームだった。