遊びがないから面白い




IMG_1524

色んなハードで出てるスクロールアクションゲーム。開発はインティ・クリエイツ。

現在制作中であるブラッドステインド リチュアルオブザナイトの前日譚。
俺は最初これが本編だと思って、スクリーンショットの大幅に劣化した映像を見て愕然としたが、よく調べたらキックスターターで公約したという8bit版のスピンオフだった。
このゲームはいわゆるインディーズというやつで、ドラキュラシリーズ制作の中心にいた五十嵐氏が、またドラキュラのようなゲームを作りたいという思いからコナミを辞めて、自分で会社を作って、スポンサーを集めて、キックスターターで資金を募集して、スタッフも用意して、ようやく開発に漕ぎ着けたという経緯を持つ。
確か、当時キックスターターで最高額の支援金を集めたんだっけな。俺もドラキュラシリーズは大好きなので応援してた。一銭も出してないけど。ちゃんと製品にはお金を出すつもりだからそれで十分だよね。本編の発売日は未定だが買うことは確定している。
この8bit版もお布施という気持ちで買ったわけではない。ドラキュラの血を濃く受け継いだタイトルとして単純に気になったから買った。

本編との違いは、映像が8bitであること。そしてジャンルがRPG要素を排除したガチガチのアクションであること。
このゲーム、かなり難しいです。何故なら、レベルや装備の力でゴリ押すという、最近のドラキュラで有効だった解決法が存在しないから。
育成やカスタマイズといった要素は一切なく、テクニックと戦略性が全て。いつもの感覚で進めていたら死にまくる。そしていつもの感覚が抜けきらない俺は死にまくった。

最近のゲームは遊びがある。特にアクションゲームは顕著だ。レベルや装備でパラメーターを調整できたり、ジャンプのコントロールやキャンセル技などで挙動を制御しやすかったり、お金で簡単に有利なアイテムをGETできたり。
たとえ難しいとされているゲームでも、操作や選択のミスをある程度許容してくれる緩さがある。
難易度の高いアクションゲームと言えば今はダークソウルが筆頭だが、あのゲームもプレイヤーに完璧を求めてはいない。ある程度の正解はあるが、そこから外れても許してくれる懐の深さがある。遊び方はプレイヤーに委ねられており、プレイヤーそれぞれに遊び方があった。
確かに難しいゲームだが攻略法を固定しない緩さも持ち合わせており、だから大ヒットできたのだろうなと思う。

さて、このブラッドステインド。遊びが非常に少ない。ジャンプの挙動は固定。リーチは短い。レベルや装備はなし。回復アイテムは滅多に出ない。ベテランスタイルを選べばダメージを受けると吹っ飛ぶ。
極め付けは、仲間切り替えシステム。いつでも切り替え可能なキャラクターが4人おり、それぞれ挙動や能力が大きく異なるのだが、特定のキャラの力を使わないと突破が困難なシチュエーションが非常に多い。
つまるところ、余裕がない。失敗が許されない。流石に完璧とは言わないが、7割くらいは正しい入力と選択をする必要がある。例えにあげたダークソウルとは違って、このゲームは明確な正解があり、そこから外れると育成システムがなく操作の融通も効かないこのゲームは難易度が急上昇するわけだ。
ここが、このゲームを受け入れられるかどうかの分かれ目だろう。俺は、気に入った。
このゲーム、この場面はこのキャラクターでこのアクションをすると楽になりますよ、という意図がマップにもボスにも明確にあり、スキルも大事だがそれ以上に的確な選択をすることが求められる。この試行錯誤して正解を探す感覚が凄く楽しい。正解を見つけると、本当に驚くほど楽に突破できる。
個人的に、こういうゲームバランスは好みだ。どういう選択をすれば良いか確かな答えがあるから、ちゃんと攻略しているという実感が持てる。行き当たりばったりに遊ぶのも楽で良いが、クリティカルな行動をしてスマートに切り抜ける流れは気持ち良い。
このゲームバランスが遊びの狭さを生んでいる原因ではあるが、単純にテクニックを求めるのではなく考えて攻略ができるというのは、ゲームバランスが練りこまれているという証拠だ。闇雲に難しいわけではない。
一方で、スキルで消費されるウエポンポイントに関しては潤沢に手に入る。せっかく正解が分かっていても、ウエポンが足りなくてスキルが使えない!ということは少ない。
全くやり繰りが求められないわけではないが、臆せずにバンバンスキルを使っていける。試行錯誤を促進する良い調整だと思う。

かなり的確に考えて選択をしないと死ぬゲームだが、ごり押し癖が染み付いた俺はなかなかクリアー出来なかった。いやー、本当に死にまくったな。
ついつい、これくらい許されるだろうという甘さが出てしまう。それを許してくれるほどこのゲームは温くない。
特に悩まされたのが、ダメージを受けると吹っ飛ばされる仕様。ジャンプしたら敵に触れて吹っ飛んで落下死。どれだけこのパターンで死んだことか。
モードを切り替えれば消せる仕様だが、俺は意地になってやり続けていた。この仕様がないとゴリ押しで突破できるので退屈だと思う。ゴリ押しできない、というのがこのゲームのイライラするところであり、でも一番面白いところだからね。
しかし気になるのが、主人公が弱すぎること。このゲームは4人のキャラクターを切り替えて攻略するわけで、仲間の3人はそれぞれ強みがあって活躍してくれたが、主人公は特徴がないのが特徴というキャラで、他と比べて明らかに使い道が少なかった。
主な役割は初見ステージの実験要員。主人公がモルモットなんて悲しすぎるが、それくらいしか活躍の場がないのだから仕方ない。なんかあんまりだった。

ボリュームはかなりある。1周だけでは6割くらいしか埋められないルート、真のラスボス、マルチエンディング、ボスラッシュ、特殊スキル。もちろん更に難しい難易度もあり、やり込み甲斐は抜群。これで1000円に満たない値段なのだから安すぎる。

まーあとはやっぱり世界観だね。一応ドラキュラとは違うタイトルだし、敵もドラキュラじゃないが、雰囲気は完全に悪魔城そのもの。微塵も遠慮がない。
ゴシックホラー全開の世界。滲み出るドラキュラのDNA。ドラキュラは久しくやってないけど、思い出させてくれた。

スピンオフでこの作り込みは凄いね。RPG要素のない昔のドラキュラはあまり知らないけど、ゲームバランスや映像はあの頃のドラキュラを再現しようという意図あってのものだと思うから、昔のドラキュラが大好きだった人はむしろこっちの方が楽しめるかもね。
俺も充分楽しめたが、やはり本命はRPG型である本編。本番への期待が高まるスピンオフだった。