演出を妥協したら最高に面白いアクションアドベンチャーになりましたとさ

PS4のアクションゲーム。開発はサンタモニカスタジオ。
ゲームはグラフィックなんか必要ない?あのさあ、ゴッドオブウォー先生を前にしてもそんなこと言えんの?
とにかく、このシリーズは映像が凄い。PS2、PS3、PSPとシリーズ作は出ているが、そのハードで出ているゲームの中では間違いなく最高峰。
単純なグラフィックのレベルが高いのは勿論だけど、映像が凄いと思わせる技術とセンスがズバ抜けている。
どれだけグラフィックのクオリティが高くても、ただ地味なシーンが続くだけでは、へー綺麗だね、で終わってしまうので、映像に力を入れている作品は派手さを大事にしているわけだが、ゴッドオブウォーはそのスペクタクルさという意味で抜きん出たものがある。
何しろゲームの舞台がギリシア神話。相対する敵は、ゼウスやハデスやアレスやポセイドンと言った、誰もが知っている神さま。これ以上ないくらいスケールが大きい題材だ。
しかも有名どころの神様を、主人公であるクレイトスは非人道的ならぬ非神道的な行為で片っ端から殺しまくる。
壁際に追いやり潰れるまで頭を殴りつける。目ん玉をえぐり潰す。両脚をもぎ取る。頭を引っこ抜く。もう見てられないほど凄惨な殺戮ショーを繰り広げる。
何故、ここまでするのか?答えは単純。主人公のクレイトスさんが怒っているから。
自身や家族や仲間を弄んだ神さまへの憎悪は海よりも深く、クレイトスは常に怒り続けている。その怒りの力は、全知全能の神すら超える。
ゴッドオブウォーとはそんな主人公の怒ラマを体験するゲームであり、誤魔化しなく真っ直ぐに描かれた怒りは、ゲームにパワーを与えている。ゴッドオブウォーに凄さを感じるのはそこだ。
しかしまあ、それだけと言えばそれだけのゲームでもあった。端的に言えば、凄いだけで面白くはない。
このシリーズの大きな特徴として、カメラが固定である事が挙げられる。
固定というか、場面に合わせてカメラは自動で動くが、プレイヤー自身がそのカメラを動かす事はできない。これは今の3Dアクションゲームでは珍しい事だと思う。
しかもゴッドオブウォーは超大作アクション。超絶グラフィックで世界が描写されているのに、カメラをじっくり回して堪能する、という事ができない。
このためマップは大きく制限されており、あっちに何かあるかな、こっちに何か隠されてるかな、という楽しみ方はできない。ほとんど一本道に近い。
カメラ固定はアクション的にも大きく影響していて、画面内に敵が収まり続けているので、如何に死角を作らずに動くかという3Dアクションならではの立ち回りの駆け引きがなく、攻撃にひたすら集中すれば良いというゴリ押し思考が強い戦闘となっている。
ボス戦は典型的で、巨大さと演出を見せるための側面が強く、シチュエーション通りに動かしてるだけで戦っている感じがしない敵も多かった。
ゲーム性を大きく犠牲にしてまで、何故カメラ固定に拘るのか。操作がしやすいから?もちろんメリットとしてそれはある。
アクションしながらカメラを動かすのは結構面倒な操作であり、3Dゲームの敷居を上げている原因でもある。3Dマリオも少し前までは如何にカメラ操作を無くしていくか、という点に注力していた。
しかし、そんな理由じゃないだろう。ゴッドオブウォーは18禁の暴力ゲーム。こんなゲームをやるのは普段からアクションに慣れてるゲーオタしかいない。
カメラが固定なのは、演出がしやすいからに他ならない。作り手が見て欲しいシーンを余すところなく意図した通りに見せる事ができる。
こういうアングルで、こういうシーンをプレイヤーに見てもらいたい。最高のアクションシーンを作りたい。ゴッドオブウォーの根幹にあるのはそれだ。
ゴッドオブウォーの映像はグラフィックの質も凄いが、計算されている。ムービーだけでなく、プレイアブルの全てのシーンをゲーム側がカメラでコントロールし、演出している。だからあらゆる場面が印象に残る。映像が凄いと感じる理由はここにもある。
そういうわけで、ゴッドオブウォーにとって何よりも大切なのは演出であって、他の部分は二の次三の次。ゲームとしての面白さはあんまり考えられていない。
ゲームは映像が一番大事に決まってるだろ!という姿勢が、今までのゴッドオブウォーだった。そしてその暴論をプレイヤーに納得させてしまうだけの、抜きん出た映像のクオリティと演出力がこのゲームにはあった。
そんなゴッドオブウォーが、演出をある程度妥協してゲーム性に注力したのだから、そりゃ面白くなるに決まってる。
ようやく最新作の話になるけど、今作の最大の特徴は、固定カメラを取っ払ったこと。完全にプレイヤーがカメラを自由に動かせるようになり、これによってゲームの性質が激変した。
まず、アクションとしては死角を考えながら動く必要が生まれ、立ち回りで油断できなくなった。敵に関しても一度に出てくる数は大きく減ったが、その分面倒な動きで攻めてくる。
今までは大量に現れる雑魚敵をなぎ払う、という無双的なアクションに近かったが、今作は雑魚に存在感があり、一戦一戦の戦いで重みを感じる。
フリーカメラはボス戦でも大きく影響を与えていて、ゴッドオブウォーと言えば巨大な体躯を誇るボスとの戦いが印象的だったが、固定カメラでないと表現が難しいその手の敵は今作殆どいない。
演出よりも、白熱したバトルを体験して欲しい、という今作の姿勢が伝わってくる。
フィールドも大幅に横に広がった。カメラをぐるぐる回すたびに新しい道が見つかる。見つかり過ぎて本編が進まないレベル。
素晴らしいのは、探索したらちゃんと良いアイテムが手に入ること。
今までは決められた順番で装備やスキルが手に入るだけだったのに、今作は装備の種類が非常に多く、プレイヤーの個性が反映されるほどカスタマイズ要素が深くなっているのだが、探索すればするほどクレイトスさんが強くなって非常に楽しい。敵が強く、簡単には倒せない事もあって、よりこの探索とカスタマイズは活きている。
過去のゴッドオブウォーはゲーム側がコントロールしていたが、今作の主体はプレイヤーに置き換わり、遊びの幅が大きく広がっている。
バトル、探索、カスタマイズ。固定カメラによって制約されていたゲーム性が解き放たれ、格段にゲームとして面白くなった。
もちろん、これはゴッドオブウォー。映像のレベルは相変わらず上の上で、演出力も凄い。要所要所で凄まじいシーンを見せ付けてくる。ため息が出るほど圧倒される。
今作なんて巨大なボスも少なくて、単純な派手さはいつもと比較したら抑え目なのに、胸が高まる場面の連続。ラスボス戦とか最高だったな。
さらに今作も、ない。何がないって、ロードが一切ない。一瞬とかそんな次元じゃない。無。完全に皆無。
それどころかカクツキすらない。ゴッドオブウォーでは当たり前の事なので今更驚くこともないが、それにしてもこれだけのグラフィックを実現していながら、しかも今作はフリーカメラのためマップも隅々まで描写する必要があるのにロードがないというのは本当に凄い。
故に辞めどきが分からない。一瞬の緩みも乖離もなくゲームが続くので、これ以上ないくらい没頭してしまう。
厳密に言うと、ロードが無いわけではない。ファストトラベルでマップの移動をする時、異空間を彷徨って、時間が経つと扉が出現してワープする、という手順を取るが、恐らくこの間に処理をしているのだろう。
待ち時間は生まれるが、この間に色んな話を聞かせてくれるし退屈はしない。上手い感じに誤魔化していると思う。
クリアー後に調べるまで分からなかったけど、今作は3のあとの話なんだな。3の最後で主人公クレイトスは自殺したような見せ方をしていたのに、生きていたわけだ。しかも、ちゃっかり新しい奥さんを見つけて子供まで作っている。
その奥さんは病気?で死に、妻の遺灰をある場所に持っていくために息子と旅をする。というのが今作の物語。
とりあえずクレイトスさんの雰囲気が変わり過ぎててちょっと面白い。復讐に囚われ、ただ激情のままに神を殺し回っていたクレイトスさんが、仙人のような冷静さを習得していてビックリ。子供は人を成長させるってか。
それがあってか、今作は残虐表現はかなり大人しい。首を引っこ抜いたりなんてことはしない。せいぜい捻じ曲げるだけ。無意味な殺しもしないし、人は変わるものだなと思う。
随分と達観したキャラにはなっているが、感情のままに動いていた弱い時のクレイトスを良く知っているだけに、彼の言葉は上っ面でなく、心からの言葉のように聞こえる。
復讐の道を歩んでも安らぎなんて得られないよーとか、クレイトスが言うと本当に説得力がある。
そんなクレイトスだが、息子の前では素直になれないのが微笑ましい。息子からも、「おい、とか、あれを読め、とか、僕をそんな風にしか見てないんでしょ」と突っ込まれる始末。これもクレイトスというキャラを良く知ってるからニヤニヤしながら楽しめてしまう。
もちろんクレイトスは息子のことを心から愛しており、子供に危険が迫ると激情の様子を見せる。あのクレイトスが垣間見える瞬間だ。
今作はクレイトスと息子の二人で旅をするわけだが、道中付いてくるだけでなく、戦闘でも子供は一緒に戦ってくれる。
しかもめっちゃ有能。とりあえずダメージを受けない。だから守る必要がない。バディシステムといえばバイオ4とかで大統領の娘を守りながら戦う必要があって面倒だったが、そういう意味でこいつは気にかける必要がほとんどない(捕まって一時的に動けない時はあるが、それも稀)ので、ノーストレス。
攻撃面でも弓攻撃が凄く強いし、素晴らしい働きを見せてくれる。シチュエーションによってはクレイトスより使える。
体力が風前の灯火という場面で回復薬を投げ渡された時には、おお神よ、という気持ちにすらなる。共に戦っているということを強く感じさせてくれる。ここまでしてくれて感情移入しないわけがない。
子供は単なる同行者ではない。喋るだけの人形でもない。心強いパートナーであり、また、愛すべき一人の息子でもある。そのことを、ムービーではなく、ストーリーでもなく、ゲームプレイの体験の中で感じさせてくれる迫真性。これぞゲームの醍醐味だ。ゲームにとって、これほど理想的なストーリー手法はない。
今までのゴッドオブウォーはクレイトスの怒りを描いていたが、アクション的な側面が強く、ストーリーとしてはあまり掘り下げられていなかった。1は奥さんと子供が殺されたから、という理由付けがあったのでまだ分かるけど、2と3はある意味自業自得だしな。
しかし今作は、ただのキャラ設定ではない、クレイトスの芯からの想いが明確に伝わってくる。怒り、という感情とは少し違うが、今まで以上の激情が見えて非常に迫力があった。
ストーリーも良かったな。親と子というテーマを軸に、とても良く出来た話だった。ライバルキャラも魅力的で面白い。
何か新しいことをしているわけじゃないけど、ゲームは中身よりも映像の方が大事に決まってるだろ!と言い続けていたゴッドオブウォーが、ゲームは映像も中身も大事っすよね、と方向転換したのは大変革。
ギリシア神話という大スケールの世界を舞台に、巨大なクリーチャーや神様と戦う、しかも超リアルなグラフィックで、という元々魅力的なポテンシャルを持つゴッドオブウォーが、アクションに駆け引きが出て、マップが横に広がって冒険感が生まれて、探索したらちゃんと良いアイテムが貰える優れたゲームバランスになって、カスタマイズや成長はプレイヤーの個性が反映されるほど深くなって、しかもストーリーも最高、と、アクションゲームとして完璧に的を得た作りになってるんだから面白くないわけがない。
やってる時、ちょっと過去のゴッドオブウォーが恋しくもあったけどね。昔のゴッドオブウォーは確かにゲームとしてはイマイチだったけど、ゲームは映像よりも中身が大事なんて論調を吹っ飛ばすほどの勢いがあったからなぁ。
まぁでも、今作の方がゲームとしては間違いなく面白かった。グロは抑え目だから、今まで遠慮してた人も手が出しやすいね。

PS4のアクションゲーム。開発はサンタモニカスタジオ。
ゲームはグラフィックなんか必要ない?あのさあ、ゴッドオブウォー先生を前にしてもそんなこと言えんの?
とにかく、このシリーズは映像が凄い。PS2、PS3、PSPとシリーズ作は出ているが、そのハードで出ているゲームの中では間違いなく最高峰。
単純なグラフィックのレベルが高いのは勿論だけど、映像が凄いと思わせる技術とセンスがズバ抜けている。
どれだけグラフィックのクオリティが高くても、ただ地味なシーンが続くだけでは、へー綺麗だね、で終わってしまうので、映像に力を入れている作品は派手さを大事にしているわけだが、ゴッドオブウォーはそのスペクタクルさという意味で抜きん出たものがある。
何しろゲームの舞台がギリシア神話。相対する敵は、ゼウスやハデスやアレスやポセイドンと言った、誰もが知っている神さま。これ以上ないくらいスケールが大きい題材だ。
しかも有名どころの神様を、主人公であるクレイトスは非人道的ならぬ非神道的な行為で片っ端から殺しまくる。
壁際に追いやり潰れるまで頭を殴りつける。目ん玉をえぐり潰す。両脚をもぎ取る。頭を引っこ抜く。もう見てられないほど凄惨な殺戮ショーを繰り広げる。
何故、ここまでするのか?答えは単純。主人公のクレイトスさんが怒っているから。
自身や家族や仲間を弄んだ神さまへの憎悪は海よりも深く、クレイトスは常に怒り続けている。その怒りの力は、全知全能の神すら超える。
ゴッドオブウォーとはそんな主人公の怒ラマを体験するゲームであり、誤魔化しなく真っ直ぐに描かれた怒りは、ゲームにパワーを与えている。ゴッドオブウォーに凄さを感じるのはそこだ。
しかしまあ、それだけと言えばそれだけのゲームでもあった。端的に言えば、凄いだけで面白くはない。
このシリーズの大きな特徴として、カメラが固定である事が挙げられる。
固定というか、場面に合わせてカメラは自動で動くが、プレイヤー自身がそのカメラを動かす事はできない。これは今の3Dアクションゲームでは珍しい事だと思う。
しかもゴッドオブウォーは超大作アクション。超絶グラフィックで世界が描写されているのに、カメラをじっくり回して堪能する、という事ができない。
このためマップは大きく制限されており、あっちに何かあるかな、こっちに何か隠されてるかな、という楽しみ方はできない。ほとんど一本道に近い。
カメラ固定はアクション的にも大きく影響していて、画面内に敵が収まり続けているので、如何に死角を作らずに動くかという3Dアクションならではの立ち回りの駆け引きがなく、攻撃にひたすら集中すれば良いというゴリ押し思考が強い戦闘となっている。
ボス戦は典型的で、巨大さと演出を見せるための側面が強く、シチュエーション通りに動かしてるだけで戦っている感じがしない敵も多かった。
ゲーム性を大きく犠牲にしてまで、何故カメラ固定に拘るのか。操作がしやすいから?もちろんメリットとしてそれはある。
アクションしながらカメラを動かすのは結構面倒な操作であり、3Dゲームの敷居を上げている原因でもある。3Dマリオも少し前までは如何にカメラ操作を無くしていくか、という点に注力していた。
しかし、そんな理由じゃないだろう。ゴッドオブウォーは18禁の暴力ゲーム。こんなゲームをやるのは普段からアクションに慣れてるゲーオタしかいない。
カメラが固定なのは、演出がしやすいからに他ならない。作り手が見て欲しいシーンを余すところなく意図した通りに見せる事ができる。
こういうアングルで、こういうシーンをプレイヤーに見てもらいたい。最高のアクションシーンを作りたい。ゴッドオブウォーの根幹にあるのはそれだ。
ゴッドオブウォーの映像はグラフィックの質も凄いが、計算されている。ムービーだけでなく、プレイアブルの全てのシーンをゲーム側がカメラでコントロールし、演出している。だからあらゆる場面が印象に残る。映像が凄いと感じる理由はここにもある。
そういうわけで、ゴッドオブウォーにとって何よりも大切なのは演出であって、他の部分は二の次三の次。ゲームとしての面白さはあんまり考えられていない。
ゲームは映像が一番大事に決まってるだろ!という姿勢が、今までのゴッドオブウォーだった。そしてその暴論をプレイヤーに納得させてしまうだけの、抜きん出た映像のクオリティと演出力がこのゲームにはあった。
そんなゴッドオブウォーが、演出をある程度妥協してゲーム性に注力したのだから、そりゃ面白くなるに決まってる。
ようやく最新作の話になるけど、今作の最大の特徴は、固定カメラを取っ払ったこと。完全にプレイヤーがカメラを自由に動かせるようになり、これによってゲームの性質が激変した。
まず、アクションとしては死角を考えながら動く必要が生まれ、立ち回りで油断できなくなった。敵に関しても一度に出てくる数は大きく減ったが、その分面倒な動きで攻めてくる。
今までは大量に現れる雑魚敵をなぎ払う、という無双的なアクションに近かったが、今作は雑魚に存在感があり、一戦一戦の戦いで重みを感じる。
フリーカメラはボス戦でも大きく影響を与えていて、ゴッドオブウォーと言えば巨大な体躯を誇るボスとの戦いが印象的だったが、固定カメラでないと表現が難しいその手の敵は今作殆どいない。
演出よりも、白熱したバトルを体験して欲しい、という今作の姿勢が伝わってくる。
フィールドも大幅に横に広がった。カメラをぐるぐる回すたびに新しい道が見つかる。見つかり過ぎて本編が進まないレベル。
素晴らしいのは、探索したらちゃんと良いアイテムが手に入ること。
今までは決められた順番で装備やスキルが手に入るだけだったのに、今作は装備の種類が非常に多く、プレイヤーの個性が反映されるほどカスタマイズ要素が深くなっているのだが、探索すればするほどクレイトスさんが強くなって非常に楽しい。敵が強く、簡単には倒せない事もあって、よりこの探索とカスタマイズは活きている。
過去のゴッドオブウォーはゲーム側がコントロールしていたが、今作の主体はプレイヤーに置き換わり、遊びの幅が大きく広がっている。
バトル、探索、カスタマイズ。固定カメラによって制約されていたゲーム性が解き放たれ、格段にゲームとして面白くなった。
もちろん、これはゴッドオブウォー。映像のレベルは相変わらず上の上で、演出力も凄い。要所要所で凄まじいシーンを見せ付けてくる。ため息が出るほど圧倒される。
今作なんて巨大なボスも少なくて、単純な派手さはいつもと比較したら抑え目なのに、胸が高まる場面の連続。ラスボス戦とか最高だったな。
さらに今作も、ない。何がないって、ロードが一切ない。一瞬とかそんな次元じゃない。無。完全に皆無。
それどころかカクツキすらない。ゴッドオブウォーでは当たり前の事なので今更驚くこともないが、それにしてもこれだけのグラフィックを実現していながら、しかも今作はフリーカメラのためマップも隅々まで描写する必要があるのにロードがないというのは本当に凄い。
故に辞めどきが分からない。一瞬の緩みも乖離もなくゲームが続くので、これ以上ないくらい没頭してしまう。
厳密に言うと、ロードが無いわけではない。ファストトラベルでマップの移動をする時、異空間を彷徨って、時間が経つと扉が出現してワープする、という手順を取るが、恐らくこの間に処理をしているのだろう。
待ち時間は生まれるが、この間に色んな話を聞かせてくれるし退屈はしない。上手い感じに誤魔化していると思う。
クリアー後に調べるまで分からなかったけど、今作は3のあとの話なんだな。3の最後で主人公クレイトスは自殺したような見せ方をしていたのに、生きていたわけだ。しかも、ちゃっかり新しい奥さんを見つけて子供まで作っている。
その奥さんは病気?で死に、妻の遺灰をある場所に持っていくために息子と旅をする。というのが今作の物語。
とりあえずクレイトスさんの雰囲気が変わり過ぎててちょっと面白い。復讐に囚われ、ただ激情のままに神を殺し回っていたクレイトスさんが、仙人のような冷静さを習得していてビックリ。子供は人を成長させるってか。
それがあってか、今作は残虐表現はかなり大人しい。首を引っこ抜いたりなんてことはしない。せいぜい捻じ曲げるだけ。無意味な殺しもしないし、人は変わるものだなと思う。
随分と達観したキャラにはなっているが、感情のままに動いていた弱い時のクレイトスを良く知っているだけに、彼の言葉は上っ面でなく、心からの言葉のように聞こえる。
復讐の道を歩んでも安らぎなんて得られないよーとか、クレイトスが言うと本当に説得力がある。
そんなクレイトスだが、息子の前では素直になれないのが微笑ましい。息子からも、「おい、とか、あれを読め、とか、僕をそんな風にしか見てないんでしょ」と突っ込まれる始末。これもクレイトスというキャラを良く知ってるからニヤニヤしながら楽しめてしまう。
もちろんクレイトスは息子のことを心から愛しており、子供に危険が迫ると激情の様子を見せる。あのクレイトスが垣間見える瞬間だ。
今作はクレイトスと息子の二人で旅をするわけだが、道中付いてくるだけでなく、戦闘でも子供は一緒に戦ってくれる。
しかもめっちゃ有能。とりあえずダメージを受けない。だから守る必要がない。バディシステムといえばバイオ4とかで大統領の娘を守りながら戦う必要があって面倒だったが、そういう意味でこいつは気にかける必要がほとんどない(捕まって一時的に動けない時はあるが、それも稀)ので、ノーストレス。
攻撃面でも弓攻撃が凄く強いし、素晴らしい働きを見せてくれる。シチュエーションによってはクレイトスより使える。
体力が風前の灯火という場面で回復薬を投げ渡された時には、おお神よ、という気持ちにすらなる。共に戦っているということを強く感じさせてくれる。ここまでしてくれて感情移入しないわけがない。
子供は単なる同行者ではない。喋るだけの人形でもない。心強いパートナーであり、また、愛すべき一人の息子でもある。そのことを、ムービーではなく、ストーリーでもなく、ゲームプレイの体験の中で感じさせてくれる迫真性。これぞゲームの醍醐味だ。ゲームにとって、これほど理想的なストーリー手法はない。
今までのゴッドオブウォーはクレイトスの怒りを描いていたが、アクション的な側面が強く、ストーリーとしてはあまり掘り下げられていなかった。1は奥さんと子供が殺されたから、という理由付けがあったのでまだ分かるけど、2と3はある意味自業自得だしな。
しかし今作は、ただのキャラ設定ではない、クレイトスの芯からの想いが明確に伝わってくる。怒り、という感情とは少し違うが、今まで以上の激情が見えて非常に迫力があった。
ストーリーも良かったな。親と子というテーマを軸に、とても良く出来た話だった。ライバルキャラも魅力的で面白い。
何か新しいことをしているわけじゃないけど、ゲームは中身よりも映像の方が大事に決まってるだろ!と言い続けていたゴッドオブウォーが、ゲームは映像も中身も大事っすよね、と方向転換したのは大変革。
ギリシア神話という大スケールの世界を舞台に、巨大なクリーチャーや神様と戦う、しかも超リアルなグラフィックで、という元々魅力的なポテンシャルを持つゴッドオブウォーが、アクションに駆け引きが出て、マップが横に広がって冒険感が生まれて、探索したらちゃんと良いアイテムが貰える優れたゲームバランスになって、カスタマイズや成長はプレイヤーの個性が反映されるほど深くなって、しかもストーリーも最高、と、アクションゲームとして完璧に的を得た作りになってるんだから面白くないわけがない。
やってる時、ちょっと過去のゴッドオブウォーが恋しくもあったけどね。昔のゴッドオブウォーは確かにゲームとしてはイマイチだったけど、ゲームは映像よりも中身が大事なんて論調を吹っ飛ばすほどの勢いがあったからなぁ。
まぁでも、今作の方がゲームとしては間違いなく面白かった。グロは抑え目だから、今まで遠慮してた人も手が出しやすいね。
コメント
コメント一覧 (2)
私はゲーマー歴が浅いこともあり、このシリーズを全く知りませんでした。買う予定もなかったのですが、やたさんのレビューを読んで興味が湧きました。未プレイのダークソウルを購入予定なので直ぐに買うつもりはありませんが、PSストアでセールになったら積極的に買ってみようと思います。
(受け身な姿勢で申し訳ない^^;)
今作のゴッドオブウォーはダークソウルに近い楽しみ方ができるので、フロムのダークファンタジーが好きならオススメですね。