現実感を取っ払って面白くなった



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PS4のアドベンチャーゲーム。開発はグラスホッパーマニファクチュア。

シルバー事件の続編。
前作は効率の良い社会を目標に作られた24区という独自の世界を舞台にしていながら、東京かどこかで起きた話かと思うような現実感重視の地味なストーリーだったが、今作は一変。
24区をモデルにして更に洗練化を図った今回の舞台である25区は、理想社会を作る効率を極めるために徹底した行政主導が行われており、郵便事業の組織が地域に悪影響を与えかねない人間をほんの些細な理由でも処刑しまくるという、かなり直接的な表現がされた管理社会となっている。
同じく不穏因子の処刑を認められた警察組織の凶悪犯罪課との対立も深く描かれ、前作で物足りなかった、その世界独自のシステムの表現という点に関しては、今作はこれでもかというほど見せてきて、非常に面白い事になっている。
世界観の現実感が取っ払われたことで、人を食ったような台詞回しや仕掛けは更に強調されていて、キャラクターの個性は強烈だし、ドラクエ的なターン戦闘や、コンビニの地下に隠された迷路のようなマップ、ヴァーチャル娼婦とのチャットなど、ユニークな仕掛けも盛りだくさん。
前作も読むだけのテキストゲーでありながら色々趣向を凝らしていたが、前作以上に創意工夫が加えられ、飽きさせない作りは素晴らしい。

一方で、面倒臭いのもパワーアップ。何故か前作よりも悪化している操作性。完全に運ゲーのコマンド戦闘。地図すらないマップ探索。メモ必須のパスワード入力。メモすら許されない、聞き直しが出来ないタワーマンション捜査。
中でもタワーマンションの捜査は本当に参った。80階もあるマンションの中からターゲットを探せだもんな。
流石に部屋は限定されてるけど、ガチで80階登り降りさせられた。住人の言葉から答えを割り出せたっぽいけど、聞き直しも出来ないし。こんなのありかよ。
そして極め付けは、クリアー後に訪れる衝撃の100エンディング組み手。このゲーム、エンディングが100個あります。嘘じゃないです。本当です。
最後のチャプターを周回するだけで良いとは言え、文章スキップ機能がないので、一周で大体5分×100で、全部見るのに8時間ほどかかる計算。ってふざけてんのか?あり得ないだろこれ。8時間あったら竜王から世界救えるっつーの。

前作との大きな違いは言ってみれば、管理社会としてのシステムが過激に表現されている事だが、現実感を取っ払った事でユーモラスな表現が違和感なく溶け込み、須田剛一らしい人を馬鹿にしたような仕掛けがこれでもかと詰め込まれる結果になってる。面倒くさいけど、唯一無二の世界観で面白かったよ。
何より前作に比べて「犯罪性とは何か」というメッセージは分かりやすく、迫力を持って伝わって来た。世界観に説得力があるから。
死と正義と使命感に満ちた、綺麗で純真な世界。全ての始まりであるタワーマンション殺人事件の犯人と動機は意外なものだったが、こんな世界じゃ起こり得るよなと納得できる。
しかしふざけたゲームだったが、エンディング100個は度肝を抜かれたな。悪い意味で。
エンディングの直前にある人が、どんな選択を選んでもそれがお前の嘘偽りのない結末であり、やり直しもifもあり得ない、だからデータは選択を選んだ時点で消去するって言ってたっけ。
結局、データ消去はただのハッタリでそのチャプターを周回するだけで全部の結末を見られるけど、100個も見るのが億劫だった俺は、その人の言葉に従って唯一無二の結末を持ってこのゲームを終わる事にした。