主張が強い



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ニンテンドースイッチのRPG。開発はモノリスソフト。

JRPG。俺はこの呼び方が心底嫌いだが、日本のRPGがそうジャンル分けされて久しい。
JRPGのJとは言うまでもなくJapaneseの頭文字であるが、しかしアメリカ産のRPGをURPGと呼んだり、ドイツ産のRPGをGRPGと呼んでいるのは聞いたことがない。
ゲームオタクの俺だって、スカイリムやウイッチャーやドラゴンエイジやディアブロがどこの国のゲームなのか正直知らない。
これはRPGに限ったことではない。海外のゲームは、どのジャンルでもそのゲームに触れて「あ、これはこの国のゲームだな」と、感じることはまずない。
その国の人じゃないから機微が分からない、画一化されがちな大作しかローカライズされないから、というのは確かに大きな理由としてあるが、それを踏まえても、明確に滲み出るその国のゲーム文化、みたいなものが感じ取れたことがない。
アメリカのゲームもイギリスのゲームもドイツのゲームもオーストラリアのゲームもポーランドのゲームもスコットランドのゲームも、俺から見れば全て同じで、海外のゲーム、と一括りで済ませてしまう。

一方で、日本のゲームは明確にこれは日本のゲームだと感じさせるものがある。キャラがアニメ調で個性的だから?もちろんそれは大きい。しかし、最も違うのはゲーム制作の姿勢だと俺は思う。
ゲームというのは、プレイヤーが動かすものだ。だからプレイヤー主観であるべきだ。海外のゲームはこれをゲーム作りの哲学として考えられているものが多い。具体的にいえば、遊びの幅や自由度、シミュレーター、クラフト、ユーザー同士の対戦を重視している。
プレイヤーが世界を作り、プレイヤーが物語の行く末を決め、プレイヤーが主人公の役柄になりきり、プレイヤーがプレイヤーを倒す。ゲームの主人公はあくまでコントローラーを握っているユーザー自身であり、ゲームはそれを演出するツール。これが海外のゲームの傾向だ。
しかし、日本のゲームは大きく違う。ゲームというのは作られた世界であり、創造主(作り手)という神がいて、その神の手の上でユーザーが動くもの。噛み砕いていえば、ユーザーの主体性よりも、作り手が表現したいものを優先する傾向にある。
作り手がここを見て欲しいという部分を押し付け、プレイヤーはそれに合わせろ、というのが日本の伝統的なゲームデザインだ。だから物語はキャラ主導で動くし、システムは複雑で分かりにくいし、制限や縛りが多いし、ルートも決められている。
今主流となっているオープンワールドが日本では中々作られないのは、予算や技術の問題もあるだろうが、これが大きな原因だろう。ユーザーが主体となるオープンワールドでは、作り手が主導権を握れない。今までの制作方法を完全に変える必要があるからだ。
どちらのスタイルの方が正しいのか。もちろんエンターテイメントに正解はないが、海外のゲームが大躍進し、日本のゲームが遅れをとっている現状を考えれば、どちらが受け入れられているかは明白。プレイヤーからしてみても、ユーザーの遊び方を大切にしてくれる前者のスタイルの方が気分が良いのは当然だろう。
特にRPGは制作の違いが明白に現れ、日本のRPGはJRPGとジャンル分けされ、時にその呼び方は滑稽なゲームという意味で使われるのであった。
しかし、俺は決して日本のゲームの作り方が悪いことだとは思わない。何故なら、個性を感じることができるから。個性とは、ゲームの主張だ。そのゲームが大切にしているものを必死にプレイヤーに伝えようとする。これが個性だ。
海外のゲームも違う意味で個性はある。自分の手で個性的な体験を作る、これが海外ゲームの醍醐味だ。しかし、どうしても物足りないと感じてしまう。ゲームに気持ちを乗せてくれる推進力、のようなものが弱いから。
日本のゲームは、押し付けがましい。システムは複雑で面倒くさいし、ストーリーは一方的で訴えが強いし、遊びの幅は狭くそのゲームの型にはめようとしてくる。要するにエゴが強い。
だから魅力的だ、と俺は思う。一方的で自己中心的なエゴが、ゲームに勢いを生み、気持ちを昂ぶらせてくれるから。
個性とは本質的に一方的なもので、だから誰かにとっては人生を変えるほど影響を与えた大傑作でも、誰かにとってはそれが不快に見えることもあるし、俺も好き嫌いの嫌いに当てはまるものなら全力でこのゲームのここが気に入らないとこき下ろすが、どちらにしても、個性はそうやって感情を動かしてくれる。個性があるから、心が動く。エゴこそがそのゲームにしかない特別な体験を作り、感動を導いてくれる。
日本のゲームだけ、JRPGやジャパニーズスタイルと明確に線引きされ、世界でもある意味で浮いている。何故か。それはゲームの主張を大切にしているから、に他ならない。
このスタイルは批判されることも多いし、日本のゲームが世界から遅れを取った大きな原因であるのは否定しようもないが、しかし、これこそが日本のゲームの最大の美点だと俺は言いたい。

さて、ゼノブレイド。初代ゼノブレイドは世界的に絶賛された。色々な理由があるだろうが、やはり大きいのはマップだろう。何しろゼノブレイドのマップは凄かった。メチャクチャ広くて、立体的で、複雑で、バリエーションもあって、オープンワールドではないが、とにかく探索が面白かった。
もちろん俺もそこは楽しめたが、一番気を惹いたのは、当時から既に希少になりつつあった主張が強い大作RPGであったこと。
キャラは個性的で、そいつらが勝手にストーリーを動かし、システムはややこしく、戦闘は手強い、と、ゲームの主張がかなり強い、まさしく代表的な日本スタイルのRPGだった。しかもそれを超大作のスケールで作り上げている。不満点もかなりあったが、実に俺好みのゲームであった。
しかし、次のゼノブレイドクロスになると話が変わる。マップを更に大きくし、シームレスに繋げ、要するにオープンワールドになった。それに合わせて、ユーザー主体のゲーム性となる。
主人公はアバターでユーザー自身がビジュアルを作り、その主人公に感情はなく、ストーリーもクエスト制のぶつ切りで熱量が弱くなった。このゲームならではの楽しみはもちろんあるし、これはこれで面白かったが、物足りなかった。あれがなかったから。ゲームに気持ちを乗せてくれる推進力が。つまるところ、ゲームの主張が。

前置きが非常に長くなったが、今回の本題であるゼノブレイド2。
ナンバリングが付いたゼノブレ2は初代ゼノブレイドの方向性を継ぐ正統な続編であり、あらゆる面がパワーアップしている。主に押し付けがましく、面倒くさい方向に。

まず、マップ。相変わらずデカすぎる。何だこれは。信じられないレベルで広い。
しかも立体的。とてつもなく広大なマップが何層にも積み重ねられて凄まじいスケールを醸し出している。
そしてただ広いだけではない。計算的に入り組んでいて、そのスケールを等身大に感じさせてくれる。
例えば、目的地は大まかに矢印で示されるのだが、大体その通りに進んでいると、崖に突き当たったり、巨大な木の根に邪魔されたりする。最初はどうやって目的地まで行けば良いんだよと途方にくれる。
迂回したり、隠れた道を探したり、木をよじ登ったり、仕掛けを解いたり、と、マップのあちこちを探し回ってルートを開拓し、ようやく目的地に辿り着ける、そんなマップデザインになっている。毎回毎回ゴールに着くまで本当に苦労させられた。
マーカーで道筋を示すとそれに沿って一直線に進まれてせっかくのマップを見てもらえない可能性がある。かと言って、マーカーを表示しないとこのような広大なマップのゲームでは不便極まりない。
ゼノブレイド2はその問題を完璧に解決している。マップデザインが完全に計算され、ある程度の道筋は示しながらもプレイヤーを迷わせ、マップを縦に横にと行き来させて、そのスケールと立体感を直接体験できるようにしている。広大さと立体的構造を保ちながら緻密さまでも備えているのは凄まじいとしか言いようがない。
ゲーム中に表示できるマップがかなり見辛く、これがルートの発見を困難にしている節もあるが、地図が便利すぎたら探険の情緒は弱まる。これも探索の楽しさを助ける調整の一つだ。悪くない。アップデートで修正されるらしいけど。
もちろん、一直線に進むのは勿体ないと感じさせる仕掛けもいっぱいだ。マップが立体的かつ緻密に繋がっていて、単純に踏破するのが楽しいのは当然として、ある境界線を超えたらここはこういう場所ですよーとロケーション名が表示されたり、隠されたポイントでは秘境・絶景地点として教えてくれたりと、まるで旅行しているような気分にしてくれる。しかも経験値まで貰えるのだから実利的でもある。
まぁ今作はクエストクリアーやロケーション発見の経験値は、一旦蓄積されて宿屋で泊まることでレベル上げに使用できる、という仕様になっているので、イマイチ経験値を得ている実感がないんだけど。
雑魚と戦うのが面倒な俺としては、どんどんマップを埋めてガンガン経験値を稼いでいくあの感じが好きだったんだけどね。多分、低レベルクリアーの人のために配慮したのだろう。今作はレベル補正もないし。
また、フィールドのあちこちに巨大な敵や固有の名前を持つレアな敵、イベント、強力なアイテムが散らばっていて、探索の意欲を掻き立ててくれる。ゼノブレクロスは強そうなアイテムを見つけてもレベル制限で使えないものばかりだったけが、今作はそういう制限もない。
しかもそんなマップが十何個とあるのだから恐れ入る。バリエーションが豊富で、いずれも凄まじい密度。
本作はオープンワールドではないが、どうしても最近のマップは密度よりも物量が優先されがちで、ゲームエンジンが発達したこともあり、平坦な地形や同じ風景が続くテンプレートの集合体という域を出ないものも多いが、このゲームは一切そんなことを感じさせない。シリーズ通してマップの密度は凄かったが、今作は極まった感がある。

しかし残念なのは、アイテムをゲットした!という達成感が薄いこと。
敵を倒したり採取地点でゴソゴソすると、アイテムのアイコンが散らばり、それに触れることでアイテムを獲得できるのだが、その触れた地点で一瞬アイテムの名前が浮き上がるだけなので、何を手に入れたのか凄い分かりにくい。
いつのまにか袋の中が知らないアイテムで満たされていく。俺はこの感覚が好きじゃない。
アイテムを手に入れた時の見せ方、というのは結構大事な事だと思うのだが、力を入れているゲームもあれば、割と適当なゲームも多い。
例えばゼルダの伝説はわざわざファンファーレを入れてカメラを切り替えてリンクにポーズまでさせて盛り上げてくれるし、例えばフォールアウトは死体の装備を剥ぎ取る時に能力値を見せてくれて自分の手持ちと比較もできてそのアイテムの有用度を示してくれる。
それに比べて、ゼノブレイド2ときたら残念すぎる。アイテムが大量に手に入るゲームだからアッサリ目にしているのだろうが、それにしたってもう少し見せ方があるだろうと思う。アイテム取得の実感は、引いては探索や戦闘のモチベーションに繋がるというのに。
しかもこのアイテムアイコン、すぐに消える。たとえ戦闘中だろうが容赦なく消える。この仕様も意味不明。ただでさえ戦闘は忙しくて立ち回りも重要だというのに、アイテムが散らばったら一々取りに行く必要がある。これをさせる意図が良く分からないし、非常にストレスだった。
まあでも、それを踏まえても探索が楽しいのは揺らがないし、マップの作り込みは凄かった。流石はゼノブレイド、と言ったところ。

次に、戦闘。いやー、正直ビックリした。あまりにも複雑で最初の10時間は訳が分からなかったから。
いつも通り、基本はオート攻撃で、時間が経つごとにチャージされるスキル攻撃を順番に使っていく戦闘なのかと思ったが、まあ最初らへんはそんな感じなのだが、理解する間も無く次々に新しいシステムが追加されていき混乱した。
しかも最初に説明してくれるだけで何故かTIPS集のようなものがない。理解するまでかなり時間がかかった。
でもとりあえず大事なのは如何にして必殺技を繋げるか。具体的に言うと、特定の属性の順番で必殺技を繰り出すことで大きなダメージを与え、更に特定の特殊攻撃を防ぐことができる。
更にここからが重要だが、必殺技を3コンボすることで属性玉というものを敵に装着させることができる(最大3個。同じ属性は不可)
この属性玉はチェインアタックという必殺技を応酬できるモード時に割ることができ、割った数だけ連続でそのモードを続けられる。このチェインアタックだけで最終盤のボスの体力も4割くらい削れるので、如何に属性玉を付けるかが鍵を握るわけだ。
が、話はそう簡単ではない。まず、必殺技を使うにはスキル攻撃でチャージする必要がある。そして、そのスキル攻撃はオート攻撃でチャージする必要がある。
キャラクターにはブレイドというパートナーがいて、それぞれ必殺技やスキルを持っているのだが、そのブレイドを切り替えながら戦うことができる(切り替えられたブレイドはクールタイムの間、使用不能になる)。
ポイントは、切り替えても必殺技のチャージ分は引き継がれて、しかしスキルのチャージは満たされている、ということ。だから、ブレイドを積極的に切り替えて、積極的にスキルを使って、どんどん必殺技が使えるような状況に持っていくのが理想的。
しかしこれはあくまでも理想。実際はこんなに上手くいかない。何故なら、ブレイドには個性があり、回復が得意だったり、攻撃が強かったり、守りが硬かったりと、それぞれだが、単に如何に必殺技ゲージを貯めるかだけでなく、その状況に合わせたブレイド選び、というものが大事になってくるからだ。いくら必殺技を使いたいからと言って、体力が僅かしかないのに回復役のブレイドを切り替えてしまうのが自殺行為なのは明白。
そしてブレイドにはそれぞれ属性がある。ここで、特定の属性の順番で必殺技を使う、というルールが駆け引きを求めてくるわけだ。
必殺技で一気に回復したい。ブレイドを切り替えて必殺技をチャージしたい。ヤバイ技が来るからガード役に切り替えたい。でも、そのブレイドの属性ではコンボが作れない。どうする。どうする。ここに駆け引きの余地があり、戦いを面白くしている。
更に必殺技の3コンボ、というのは基本的に一人では困難。CPUが動かしている仲間2人の力を借りる必要が出てくる。必殺技のタイミングはこちらの判断で出せるが、ブレイドの切り替えは勝手に行われるので、属性が合わない、ということがよくある。
だから属性玉を作るのは割と難しい。まあそこまで大変でもないけど、同じ属性は付けられないので、3つ付けようとするとかなり時間がかかる。
で、最強のチェインアタックにしても制約がある。色んな条件でチャージされるパーティーゲージを貯める必要があるのだ。
3ゲージ分までチャージ可能で、チェインアタックは全て消費して発動なのだが、悩ましいのが仲間を蘇生させるのにこのゲージが必要であること。1回の蘇生につき、1つゲージを消費する。
つまり、チェインアタックを使ったあとは蘇生がしばらくできない。パーティーは3人しかいないので、1人欠けると非常にキツい。ちなみにその状況でプレイヤーが操作しているキャラが死ぬと即ゲームオーバーである。
もちろん、蘇生ばかりにパーティーゲージを使って、せっかく属性玉を付けてお膳立てしたのに中々チェインアタックに持ち込めない、という事もよくある。
しかし、ここまで苦労させられるだけあって、チャインアタックの威力は絶大だ。最初にも言ったが、終盤のボスですら体力を4割以上削る凄まじいパワーを誇る。しかもチェインアタックでオーバーキルした分だけボーナスで経験値も獲得できる。そして敵はアホみたいに体力がある。これを狙わない手はない。というか、これを戦略の軸にして戦えということだろう。
いやはや、かなり新しい感覚の戦闘スタイルだった。超絶威力の必殺技があり、それの為に長い時間をかけてお膳立てして、一気に決める。しかし一歩間違えば全滅のリスクも背負う。まさに諸刃の剣。
必死こきながら属性玉を作って、何とかパーティゲージを維持して、今なら敵を倒せるか・・・いやもしダメなら一気に全滅だぞ・・・と葛藤しながら戦う緊張感、そして必殺技で大逆転するカタルシス。痛快だ。

初代もクロスもどちらかと言うとオート戦闘という印象が強くて地味だったが、今回は盛り沢山。
ブレイドの切り替え。必殺技のコンボ。パーティーゲージの管理。散らばる回復ポッドの収集。属性玉。キャンセルアタック。前作からの要素だが、打ち上げや転倒のコンボ。ヘイトの管理。敵との位置関係。
とにかく今作は忙しい。あらゆる情報が押し寄せてきて、それを柔軟に打開できるだけの手段が用意されていて、なおかつ常に属性玉は狙わなければならず、そして敵は非常に手強いので、息つく暇がない。
今まではレベル補正があり、ある程度レベルが離れていると敵にダメージが通らず、駆け引きはそれなりにあったが、結局はレベルに依存したところが大きかった。
しかし、今作はレベル補正がない。レベルがかけ離れていても戦い方次第で打開できる。裏を返せば、例え自分のレベルが高くても、システムを理解し実践しなければ普通に負ける。
複雑で忙しいが、非常にやりごたえがあり、駆け引きも深く、そしてユニークで、とても濃密で面白い戦闘システムだった。

戦闘も不満点はある。改めて言うけど、何故TIPS集がないのか。非常に独創的で複雑で情報量が多いにも関わらず、最初に説明してくれるだけ。特に属性コンボに関してはよく分からなくて、ファミ通の攻略ページを見てようやく理解した。
必殺技を使うと、それが起点になる属性のルートが右上に表示されるんだけど、そのUIが最初は何を意味しているのか分からなくて、ずっと属性コンボについて掴めないままだったんだよな。
更に、デバフやバフの情報が分かりにくい。というか、一部の情報は画面に表示すらされてない気がする。
また、ブレイドごとに個人で勝手に使うスキルみたいなのがあるが、それが発動している様子を見たことがない。いや、多分発動はしているんだろうけど画面に埋もれて分かり辛い。
戦闘のUIに関しては足りないと感じる部分がかなり多い。

ブレイド、という存在が戦闘の大きな役割を果たすのは書いた通りだが、これの取得方法がコンシューマーではユニークと言うか、現代的と言うか、コアというアイテムを消費してランダムに生成される、という方法になっている。要するにガチャである。
かなり物議を醸しているが、個人的には、アリ。別に課金があるわけでもないし。レアブレイドの出現率が結構シビアでそこまで射幸心を煽らなくても良いだろうとは思うけど。でも、コンシューマーのゲームらしく確率を高める方法はあるしな。
ブレイドの数はかなり多くて、しかも能力に個性があって、強いブレイドが出た時は嬉しかったりする。
しかし、育成やカスタマイズに関してはかなり大変である。何しろ情報が非常に多いから。正直、戦闘のシステムを把握するよりもこっちの方が大変。
ブレイドはキャラ1人につき3人まで装備(ゲームでは同調と言う)可能で、彼らのパラメーター補正、発動スキル、常時スキル、必殺技の付与効果、ロールの役割を天秤にかけるのは当然として、更に属性、ロールの組み合わせによる補正、武器の能力も考えて構築せねばならず、更に主人公だけでなく全ての仲間がブレイドを複数同調できるので、戦略の幅はめちゃくちゃ広い。
カスタマイズが戦闘に与える影響は大きく、戦うまでの準備もかなり面白かった。
しかし覚えなきゃいけないことが多すぎて辟易することもある。主人公以外のキャラを操作することもできるが、流石に戦略を組み直すのが面倒で殆ど他のキャラを使わずに終わった。

そして、ストーリー。とりあえずムービーが長い。全部で15時間はあるんじゃないかってレベル。1時間近くムービーを眺めていたこともある。
押し付けがましいが、熱い。ストーリーの熱がこれでもかと伝わってくる。
特にアクションのムービーシーンは非常に良く出来ている。音楽の協調。カメラワーク。魅せる演出。一級品だ。盛り上がりは最高潮で、心が昂ぶる。
その流れから繋がるボス戦。熱い。燃える。ボタンを押す指に力がこもる。よーし、かかって来いや!という気持ちになる。
まさしくゲームとの一体感。主人公の感情とシンクロする心地良さがある。
キャラ主導の物語は、ムービーが長いだの、映画でやれだの、自由がないだのと批判されるが、しかしドラマチックだ。
主人公に寄り添って、出会いに喜び、葛藤に共感し、別れに悲しみ、成長に感動し、そして大団円を迎える。ゲームのストーリーは、そんなドラマを共有できる面白さがある。だから俺はゲームでストーリーを体験するのが好きだ。

しかしこのゲーム、物語自体は微妙である。特に、やたらと描写に尺を割いている割には敵陣営の説得力が薄い。
どいつもこいつも、やけに過去を語りたがるが、どれも取って付けたように感じる。何故なら、この物語において敵の存在は結局主人公側の主張を強くするためのパーツでしかないから。敵のことなんて本当はどうでも良いけど、主人公が戦う相手にも過去を与えて、背負うものを持たせれば、物語に深みが出るでしょ的な、そんな考えが透けて見える。
仮面の男は結構魅力的な敵に見えたけど、結局何がしたいのか良く分からなかった。芯が定まってないんだよな。
過去を与えるよりも、一途に自分が正しいと思うことに真っ直ぐ進んで、がむしゃらに主人公に立ちはだかって来るやつの方がよっぽどカッコ良い。
特にガッカリしたのはラスボス。最後のバトル前に行われるお決まりの自分語りの場で、自分の主張や存在意義を語るのではなく、仮面の男可哀想でしょ?同情するでしょ?だもんなぁ。あからさまに敵の過去をアピールしすぎで、上滑りしてる。
とは言え、主人公の目的は明確でブレないし、テーマである人間とブレイドの絆も丁寧に描いている。ゲームの目的地である楽園の答えも良かった。
敵側の葛藤も、薄っぺらくはあるがこれのおかげで単純な勧善懲悪にはなっていない。そこまで退屈なストーリーではなかった。

ムービーは、アクションシーンは良かったが、それ以外は浮いているものも多い。
やたらとノリが軽いが、どうにも深夜アニメ的な雰囲気が漂っている。それもかなり古臭い感じの。オッサンが無理して今の若者ってこんな感じでしょ?と振舞っているような、そんな痛々しさが滲み出ていて正直滑ってる。アクションシーンは本当に素晴らしいんだけど、ムービーの落差が酷い。
キャラのデザインもあざとく、尻がパンツからはみ出ているとか、いやーもう狙いすぎっす。
デザインは置いとくにしても、魅力的なキャラがいなかった。何でだろう?あんまり弱さを感じないからかな。そういう描写もあるが、なんか無理矢理そういう過程を作っている感じがあった。個性的ではあるけど、本質的に人間(獣人)として完成されているキャラが多い。
最終盤にキャラの本音みたいなものを曝け出す展開があったけど、あれをもっと早く持ってきて広げてくれたらなあ、と思わずにはいられなかった。

ゲームクリアーまでのタイムは50時間ほど。やり込みも死ぬほどある。相変わらず凄まじいボリュームだ。
不満は多いが、大満足である。複雑なゲームシステム。迷わせることを強制するマップ。訴えが強いストーリー。一方的なキャラクター。非常に挑戦的で、押し付けがましくて、そして魅力的な内容だった。
初代ゼノブレイドの方が完成度は高いが、しかし今作の方がパワーを感じる。前作よりも面倒で、分かりにくくて、話は説教的だが、それ故にゲームの主張を強く感じるから。
気に入らない主張だってある。しかし、それを含めてゼノブレイド2であり、推進力があり、気持ちをゲームに乗せてくれた。濃厚で最高のRPG体験だった。
これほどやりごたえがあって、勢いがあって、ドラマチックで、そして予算が注ぎ込まれた超大作RPGというのは今の時代ほとんどない。
日本のRPGが好きなら、これを無視するのは勿体ないとしか言いようがない。スイッチを持ってないなら、探し出してでもやるべきだね。