これが、ドラクエ。これが、日本のRPG。

PS4と3DSのRPG。開発はスクウェアエニックス、オルカ、トイロジック。PS4版をプレイ。
RPG。ロールプレイング。今も昔も、日本で最も人気なゲームのジャンルだろう。俺も大好きだ。
しかし、ゲームがHDで作られるようになる頃から日本のRPG事情が変わる。映像クオリティが一気に上がり、制作費が高騰。特に物量を求められるRPGは岐路に立たされた。
端的に言えば、これまでRPGで最も人気の要素だった、世界をまたにかける大冒険、といった流れを作ろうとすると金がかかりすぎる。しかも携帯機が流行して据え置きではゲームが中々売れない時代。
こうして据え置きの中堅RPGは一気に淘汰され、大作のドラクエやキングダムハーツまで携帯機に移籍し、僅かに残ったFFも壮大な世界をまとめ上げることはできず、一つのコンセプトに特化するという方向に転換した。
そんな中で、海外の大作RPGがオープンワールドや膨大な物量を引っさげて一気に新しいRPGのスタンダードを作り上げる。スカイリム。オブリビオン。フォールアウト。ドラゴンエイジ。マスエフェクト。ウィッチャー。
うん、確かにどれも面白かったね。大冒険だし。しかし、ピンと来ない部分もかなりあった。
明確な目的がないからストーリーに入り込みにくい。自由度重視でストーリーラインがはっきりしないからゴールに向かって進んでいる感覚がない。キャラに魅力がない。ゲームバランスが大味で戦闘がつまらない。ラスボス然としたラスボスがいない。インターフェースが分かりにくい。などなど。
もちろん、RPGと言っても形は色々あるし、こうしなきゃいけないという決まりなんてない。むしろ、そんなものに囚われず、自由に作るべきだと思う。
海外RPGの考え方で言えば、俺の不満は全くの的外れも良いところだ。海外RPGの根幹にあるのは、プレイヤーを主人公に仕立て没入させることなのだから。目的やゴールをあえて明確にせず、キャラもあえて没個性化することで、プレイヤーが主人公であり、この世界の運命を自分で決める、という姿勢をハッキリさせている。戦闘のゲームバランスが大雑把なのも、詰め将棋ではなく、プレイヤーの自由なアプローチで敵を倒せるようにするためだ。ユーザー主観を徹底しているわけだ。
どんなゲームだって信念というものがある。それを無視して、他のゲームがこうだからこうすべきだ、なんて言うのはあまりにも愚かすぎる。
しかし、心のどこかで、こんなRPGがあれば、という理想がこびり付いている。色んなRPGをやる度に、ここがこうだったら良いのに、という思いが頭を過ぎる。
その根幹にあるのが、ドラクエだ。俺の初めてのRPGは、ドラクエ3だった。初めてクリアーしたRPGは、ドラクエ7だった。初めて見る3D映像に感動したRPGも、ドラクエ8だった。
少年時代、ドラクエしかRPGを知らなかった俺は、RPGと言えばドラクエ、ドラクエこそがRPGのスタンダード、という方程式が見事に刷り込まれたのであった。
事実として、ドラクエは日本のRPGのルーツである。ドラクエ自身もウィザードリィやウルティマなど、海外のRPGから影響を受けたゲームだが、日本初のオリジナルRPGであり、それ以後爆発的に人気になるRPGというジャンルに多大な影響を与え、今でも多くのいわゆるJRPGの根幹に根ざしているのが、ドラクエという存在であるのは言うまでもない。
が、そんなドラクエに対しても、こうだったら良かったのに、と最近は思わざるを得ない。
おい、なんで急に携帯機なんだよ!せっかく頭身あがったのに退化してんじゃねーか!は?更にお次はMMOのオンライン??ない。それは本当にない。頼むから貴重なナンバリングを使ってMMOにするのやめて。
MMOは新しい挑戦としてまだ納得できなくもないが、9は完全に逃げだろ。日本で最も売れるRPGであるドラクエが、据え置き機から逃げてどうするんだよ。
携帯機だって立派なゲーム機だが、片手間で遊べる、というのが根幹にあるハードだ。ゲームと集中して向き合える据え置き機じゃなければ、海外のゲームと戦う土俵にすら立てない。
本当に悔しいんだよな。日本のRPGスタイルだって良いところがたくさんあるのに、海外の自由度偏重スタイルばかり評価されて、そればかりかJRPGがコケにされているのが。結局、特にRPGではオープンワールドがスタンダードになりつつあるが、無理にそれを取り入れようとして死んだゲームを何本も見てきた。
極端な自由度やシームレスが無くても、面白いRPGは作れる。それを伝えられるのがJRPGであり、その権化であるドラクエだ。
オープンワールドかストーリー重視かで揺れる今の日本のRPGの流れや、ユーザーのJRPGに対する評価は、ドラクエが大作RPGから逃げ続けた影響が間違いなくある。それくらいドラクエはJRPGというジャンルを大きく左右する。
はい、ここまで前フリです。
戻ってきました。据え置き機で、オフラインで、大作の、待望のドラクエが。
言うまでもなく、映像は超絶進化。奥行きがあって、広がりがあって、鮮やか。実に世界が広くて美しい。脳内で補完するのもドラクエの楽しさだが、直接突きつけられるとやはり圧巻。
しかも、ボリュームは大作になって減るどころか更に増し、クリアーまで65時間もかかった。これでもかとロケーションは詰め込まれ、めくるめく大冒険感を演出してくれる。
世界はとても広大で、最初は地元でのお使いからどんどん広がっていき、次第に船に乗って大航海し、最終的には空まで行動範囲が広がる。完璧なまでにいつものドラクエの流れだ。
昔のRPGの広大な世界は、トップビューだから表現できたけど、カメラをグリグリ回せる三人称視点でしかもHDクオリティとなると相当な労力がかかる、というのは良く言われていることで、実際、街やダンジョンがたくさんあって、海を渡って、空を駆け巡って、という世界をまたにかけた大冒険感のあるRPGはほとんど無くなってしまった。
しかし、流石はドラクエ。資本力が違う。ドラクエの広大な世界を、最新の技術で完璧なまでに作り上げている。もう全く妥協がない。大作RPGとして大満足の内容だった。
あとは、いつものドラクエ。まー、今作も変わらない。本当にいつも通り。
大作で作るからには当然お金がかかるわけで、今では据え置き機のゲームは海外ユーザーの需要もアテにするのが普通であり、そこの好みに合わせて作られるのも珍しくない。
しかし、ドラクエは全くブレなかった。戦闘はいつものターンベースであり、アクション性は皆無。フィールドはそこそこ自由度があるが完全なシームレスじゃないし、明確なストーリーラインがあってほぼ一本道。もちろん主人公は喋らないし、それどころか未だに他キャラのボイスも一切無しときた。本当にドラクエは変わらない。
ドラクエの魅力とは何か。それは、誰もがメリハリのあるRPGを楽しめる、という事だと思う。
単純明快な成長システム。シンプルにまとまったターンベースの戦闘。大きくて見やすいインターフェース。明快な目的があるストーリー。
ドラクエは分かりやすいRPGだが、ドラクエの分かりやすいとは、ただ単純でシンプルという意味だけではない。分かりやすいのは悪いことじゃないが、それだけだと、面白味に欠ける無難なゲームだ。
しかし、ドラクエは面白い。間違いなく面白い。何故なのか。それは、あらゆるところで「意味」を作ってくれることに尽きる。
例えばザッと思い付くだけでも、
・レベルが1上がるだけで強さを実感できるパラメーターバランス。
・新しい街に着くたびに高くて強い装備が店に売り出され、毎回お金の使い道に悩まされる。
・ダンジョン内の宝箱から店よりも強い装備が良く見つかるので、つい寄り道したくなる。
・タルやタンスや壺など、街の至る所にアイテムが隠されていて、練り歩こうという気にさせてくれる。
・敵がほどほどに強くて育成の必要性を実感させられる。
・MP回復アイテムが希少なので、魔法やスキルの使い所を考えさせられる。
・蘇生アイテムが希少な上に全滅したら教会からやり直しなので、仲間の状態に常に気を配る必要がある。
・主人公の個性をあえてなくしてプレイヤーに投影しやすくし、プレイヤー=主人公とすることで能動的な行動に臨場感を持たせる。
ドラクエの真骨頂は、プレイヤーがメリハリのある体験が得られるように、ゲーム側が自然に導いてくれるところにある。
育成の重要性、お金の使い道、MPのやりくり、寄り道などなど。行動の先に、全て意味がある。魔法でゴリ押しすれば良いじゃんとか、敵弱いから成長させる必要ないじゃんとか、そういう単調さが一切ない。
細かいところ一つ取っても、分かりやすく行動の必要性を作っているから、プレイヤーは能動的に動く。頭を使う。だから、思考停止にならない。単調にならない。
つまるところドラクエは、プレイヤーが意識しなくても、自然に、能動的に動けるように、徹底的に計算してゲームを調整している。そしてプレイヤーが主人公として入り込みやすくすることで、その能動性に臨場感を作っている。
このゲームバランスと臨場感こそがドラクエの面白さの源であり、ゲームをあまり知らない人でも、自然に誘導されて起伏のあるRPG体験が楽しめる。
ドラクエが今でも変わらないのは、売れるからだとか、それが伝統だからというのもまぁあるだろうけど、ゲーマーも、ゲームを知らない人も、みんながRPGをちゃんと楽しめるようにというもっと大きな意義がドラクエにはあり、それがドラクエの信念だからだと俺は思う。
とは言え、当たり前だがシリーズ毎に細かい部分は変わっている。特に今作は戦闘のゲームバランスに関してかなり大きな方向転換が見られる。
ドラクエに限らずだが、RPGは呪文や魔法やスキルなど、特殊な攻撃がとても強い。だからどんどん使いたくなるが、それだと駆け引きも何もなくなるので、ゲーム側は制約をかける。ドラクエの場合は、MPと呼ばれるものがそれだ。MPが尽きると強力な攻撃は使えなくなる。
MPは他でも多く採用されているシステムだが、ドラクエが巧妙なのは、MP回復アイテムを簡単には入手できないようにしている事だ。戦闘が終わった。じゃあMP回復薬をがぶ飲みしてまた次の戦闘で呪文をぶっ放そう、という単純な戦い方ができない。
じゃあどうするかと言うと、プレイヤーは出来るだけMPを温存しようと考える。長く複雑なダンジョンの中、ボス戦まで何とか余力を残せるよう、MPやアイテムをやりくりしながら戦闘を繰り返す、という必要があった。
更に全滅したら教会からやり直しというリスクも相まって、ここにヒリヒリとしたサバイバル感と、駆け引きが生まれる。これがドラクエの戦闘の妙だった。
ドラクエの戦闘システムは確かに単純だが、その裏には徹底したバランス調整があり、一つ一つの戦闘で気が抜けず、手に汗握るものにしている。ドラクエのゲームバランスは本当に凄い。
しかしそれは、ランダムエンカウントという、半ば強制的に戦闘を行う必要があるシステムだから通用するゲームバランスでもあった。
ドラクエ9からは敵がフィールドにシンボルとして表示されてそれに触れると戦闘に突入するシンボルエンカウントが採用されたが、このエンカウントは敵を倒すかどうかプレイヤーが選択できるので、極端なことを言えば、敵を避け続けて一気にダンジョン奥のボスまで向かう、という事ができる。もうMP管理の必要性はなくなったわけだ。
そして、今作は更に親切化。レベルアップするごとにHPとMPが全回復し、多くのダンジョンではボスの手前でキャンプを使って回復が可能で、極め付けにオートセーブに対応して全滅しても直前からやり直す事ができるようになった。9の時点で大分怪しかったが、ドラクエの戦闘の根幹にあった、MPのやりくりによるサバイバル感は今作でほぼ完全に消失した。
残念に思うところもあるけど、まぁ仕方ないかなと感じる。シンボルエンカウントになった時点で戦闘は自分の意思で避けられるわけで、サバイバル感はもう無きに等しい。それなら、もっと遊びやすいようにと調整するのは理に適っている。
じゃあランダムエンカウントに戻していつものゲームバランスにしろよ、とはあんまり強く言えない。だって、正直かったるいから。戦いたくもないのに戦わされるランダムエンカウントは結構ストレスだからね。ましてダンジョンで迷ってる最中は。
昔は何とも思わなかったけど、シンボルの快適さに慣れるともう戻れない。そこら辺のユーザー事情を敏感に感じ取って、昔のやり方に拘らず、今の時代に合わせて作ってくるあたり、ドラクエは柔軟だなと思う。
ストーリーは、久しぶりの勇者の物語。しかし、普通に無難な話ではない。絶対正義の単純なアイコンとして扱われている勇者という表現だが、今作は、そこを掘り下げている。勇者とは何か。勇者を勇者たらしめるものとは。
単に勇者が悪い奴らをやっつけました、では物語は終わらない。勇者とは、希望の象徴である、ということが、いつも以上に伝わってくるストーリーだった。
「勇者は、悪魔の子と呼ばれた」という題材も、中盤までは適当に扱ってるなーという感じだったが、終盤からはちゃんと触れてくる。ある場面では、確かに勇者と魔王は表裏一体だな、と思わされた。
そして最後の仕掛けは、こじ付けではあるけど、とても良いファンサービス。最後まで結末を見届けて本当に良かったと思える心に残るシーンだった。
本編以上に面白かったのが、仲間や街で起こる一つ一つのエピソード。相変わらずの堀井節が炸裂しまくっており、平気で外道じみた話を織り交ぜてくるから気が抜けない。かと思えば心に響く感動的なものも多く、いずれにしろ印象的だった。
もちろん、演出の表現は大幅にパワーアップし、いつも以上にドラマチック。ボイスはいつものポポポポポポという電子音だが、全く気にならない。よく考えたらセリフって文字だけ見て大抵飛ばしてるしな。
ドラクエは元々ある程度想像して補完して下さいっていうRPGだし、ボイスを入れなかったのは良い選択だと思う。
もう、本当に大満足。実にJRPGだった。
大作だからリソースが足りなくて規模が小さくなったり、海外市場を気にして方向性がブレたりするのではないかと思ってたけど、全くそんなことはなかった。ここまで完璧にドラクエの流れをボリュームたっぷりに最新技術で作ってくれるとは思わなかった。
確かに、映像が綺麗になったのに逆行して化石のようなゲームスタイルに古臭く感じることもあるが、しょうがない。これがドラクエの信念なのだから。
ドラクエ11は、オープンワールドやシームレスやアクションに目もくれず、これが日本のRPGだ、これがドラクエだ、と堂々と見せ付けている。日本のRPGの根幹を作り上げてきたシリーズとして、そのスタイルは決して間違いではないと、誇りを持って作られているのが伝わってくる。
ゲームには色んな形がある。特に海外と日本のゲームの違いは顕著だ。
だけど、どれの方が良いとか、どれが正しいとか、そんなものは決してない。人それぞれにゲームの美しい思い出があり、それによって抱く印象は変わるのだから。
ドラクエ11は、俺がRPGに抱くセピアな望郷を鮮やかにしてくれた。やっぱり、RPGは面白い。

PS4と3DSのRPG。開発はスクウェアエニックス、オルカ、トイロジック。PS4版をプレイ。
RPG。ロールプレイング。今も昔も、日本で最も人気なゲームのジャンルだろう。俺も大好きだ。
しかし、ゲームがHDで作られるようになる頃から日本のRPG事情が変わる。映像クオリティが一気に上がり、制作費が高騰。特に物量を求められるRPGは岐路に立たされた。
端的に言えば、これまでRPGで最も人気の要素だった、世界をまたにかける大冒険、といった流れを作ろうとすると金がかかりすぎる。しかも携帯機が流行して据え置きではゲームが中々売れない時代。
こうして据え置きの中堅RPGは一気に淘汰され、大作のドラクエやキングダムハーツまで携帯機に移籍し、僅かに残ったFFも壮大な世界をまとめ上げることはできず、一つのコンセプトに特化するという方向に転換した。
そんな中で、海外の大作RPGがオープンワールドや膨大な物量を引っさげて一気に新しいRPGのスタンダードを作り上げる。スカイリム。オブリビオン。フォールアウト。ドラゴンエイジ。マスエフェクト。ウィッチャー。
うん、確かにどれも面白かったね。大冒険だし。しかし、ピンと来ない部分もかなりあった。
明確な目的がないからストーリーに入り込みにくい。自由度重視でストーリーラインがはっきりしないからゴールに向かって進んでいる感覚がない。キャラに魅力がない。ゲームバランスが大味で戦闘がつまらない。ラスボス然としたラスボスがいない。インターフェースが分かりにくい。などなど。
もちろん、RPGと言っても形は色々あるし、こうしなきゃいけないという決まりなんてない。むしろ、そんなものに囚われず、自由に作るべきだと思う。
海外RPGの考え方で言えば、俺の不満は全くの的外れも良いところだ。海外RPGの根幹にあるのは、プレイヤーを主人公に仕立て没入させることなのだから。目的やゴールをあえて明確にせず、キャラもあえて没個性化することで、プレイヤーが主人公であり、この世界の運命を自分で決める、という姿勢をハッキリさせている。戦闘のゲームバランスが大雑把なのも、詰め将棋ではなく、プレイヤーの自由なアプローチで敵を倒せるようにするためだ。ユーザー主観を徹底しているわけだ。
どんなゲームだって信念というものがある。それを無視して、他のゲームがこうだからこうすべきだ、なんて言うのはあまりにも愚かすぎる。
しかし、心のどこかで、こんなRPGがあれば、という理想がこびり付いている。色んなRPGをやる度に、ここがこうだったら良いのに、という思いが頭を過ぎる。
その根幹にあるのが、ドラクエだ。俺の初めてのRPGは、ドラクエ3だった。初めてクリアーしたRPGは、ドラクエ7だった。初めて見る3D映像に感動したRPGも、ドラクエ8だった。
少年時代、ドラクエしかRPGを知らなかった俺は、RPGと言えばドラクエ、ドラクエこそがRPGのスタンダード、という方程式が見事に刷り込まれたのであった。
事実として、ドラクエは日本のRPGのルーツである。ドラクエ自身もウィザードリィやウルティマなど、海外のRPGから影響を受けたゲームだが、日本初のオリジナルRPGであり、それ以後爆発的に人気になるRPGというジャンルに多大な影響を与え、今でも多くのいわゆるJRPGの根幹に根ざしているのが、ドラクエという存在であるのは言うまでもない。
が、そんなドラクエに対しても、こうだったら良かったのに、と最近は思わざるを得ない。
おい、なんで急に携帯機なんだよ!せっかく頭身あがったのに退化してんじゃねーか!は?更にお次はMMOのオンライン??ない。それは本当にない。頼むから貴重なナンバリングを使ってMMOにするのやめて。
MMOは新しい挑戦としてまだ納得できなくもないが、9は完全に逃げだろ。日本で最も売れるRPGであるドラクエが、据え置き機から逃げてどうするんだよ。
携帯機だって立派なゲーム機だが、片手間で遊べる、というのが根幹にあるハードだ。ゲームと集中して向き合える据え置き機じゃなければ、海外のゲームと戦う土俵にすら立てない。
本当に悔しいんだよな。日本のRPGスタイルだって良いところがたくさんあるのに、海外の自由度偏重スタイルばかり評価されて、そればかりかJRPGがコケにされているのが。結局、特にRPGではオープンワールドがスタンダードになりつつあるが、無理にそれを取り入れようとして死んだゲームを何本も見てきた。
極端な自由度やシームレスが無くても、面白いRPGは作れる。それを伝えられるのがJRPGであり、その権化であるドラクエだ。
オープンワールドかストーリー重視かで揺れる今の日本のRPGの流れや、ユーザーのJRPGに対する評価は、ドラクエが大作RPGから逃げ続けた影響が間違いなくある。それくらいドラクエはJRPGというジャンルを大きく左右する。
はい、ここまで前フリです。
戻ってきました。据え置き機で、オフラインで、大作の、待望のドラクエが。
言うまでもなく、映像は超絶進化。奥行きがあって、広がりがあって、鮮やか。実に世界が広くて美しい。脳内で補完するのもドラクエの楽しさだが、直接突きつけられるとやはり圧巻。
しかも、ボリュームは大作になって減るどころか更に増し、クリアーまで65時間もかかった。これでもかとロケーションは詰め込まれ、めくるめく大冒険感を演出してくれる。
世界はとても広大で、最初は地元でのお使いからどんどん広がっていき、次第に船に乗って大航海し、最終的には空まで行動範囲が広がる。完璧なまでにいつものドラクエの流れだ。
昔のRPGの広大な世界は、トップビューだから表現できたけど、カメラをグリグリ回せる三人称視点でしかもHDクオリティとなると相当な労力がかかる、というのは良く言われていることで、実際、街やダンジョンがたくさんあって、海を渡って、空を駆け巡って、という世界をまたにかけた大冒険感のあるRPGはほとんど無くなってしまった。
しかし、流石はドラクエ。資本力が違う。ドラクエの広大な世界を、最新の技術で完璧なまでに作り上げている。もう全く妥協がない。大作RPGとして大満足の内容だった。
あとは、いつものドラクエ。まー、今作も変わらない。本当にいつも通り。
大作で作るからには当然お金がかかるわけで、今では据え置き機のゲームは海外ユーザーの需要もアテにするのが普通であり、そこの好みに合わせて作られるのも珍しくない。
しかし、ドラクエは全くブレなかった。戦闘はいつものターンベースであり、アクション性は皆無。フィールドはそこそこ自由度があるが完全なシームレスじゃないし、明確なストーリーラインがあってほぼ一本道。もちろん主人公は喋らないし、それどころか未だに他キャラのボイスも一切無しときた。本当にドラクエは変わらない。
ドラクエの魅力とは何か。それは、誰もがメリハリのあるRPGを楽しめる、という事だと思う。
単純明快な成長システム。シンプルにまとまったターンベースの戦闘。大きくて見やすいインターフェース。明快な目的があるストーリー。
ドラクエは分かりやすいRPGだが、ドラクエの分かりやすいとは、ただ単純でシンプルという意味だけではない。分かりやすいのは悪いことじゃないが、それだけだと、面白味に欠ける無難なゲームだ。
しかし、ドラクエは面白い。間違いなく面白い。何故なのか。それは、あらゆるところで「意味」を作ってくれることに尽きる。
例えばザッと思い付くだけでも、
・レベルが1上がるだけで強さを実感できるパラメーターバランス。
・新しい街に着くたびに高くて強い装備が店に売り出され、毎回お金の使い道に悩まされる。
・ダンジョン内の宝箱から店よりも強い装備が良く見つかるので、つい寄り道したくなる。
・タルやタンスや壺など、街の至る所にアイテムが隠されていて、練り歩こうという気にさせてくれる。
・敵がほどほどに強くて育成の必要性を実感させられる。
・MP回復アイテムが希少なので、魔法やスキルの使い所を考えさせられる。
・蘇生アイテムが希少な上に全滅したら教会からやり直しなので、仲間の状態に常に気を配る必要がある。
・主人公の個性をあえてなくしてプレイヤーに投影しやすくし、プレイヤー=主人公とすることで能動的な行動に臨場感を持たせる。
ドラクエの真骨頂は、プレイヤーがメリハリのある体験が得られるように、ゲーム側が自然に導いてくれるところにある。
育成の重要性、お金の使い道、MPのやりくり、寄り道などなど。行動の先に、全て意味がある。魔法でゴリ押しすれば良いじゃんとか、敵弱いから成長させる必要ないじゃんとか、そういう単調さが一切ない。
細かいところ一つ取っても、分かりやすく行動の必要性を作っているから、プレイヤーは能動的に動く。頭を使う。だから、思考停止にならない。単調にならない。
つまるところドラクエは、プレイヤーが意識しなくても、自然に、能動的に動けるように、徹底的に計算してゲームを調整している。そしてプレイヤーが主人公として入り込みやすくすることで、その能動性に臨場感を作っている。
このゲームバランスと臨場感こそがドラクエの面白さの源であり、ゲームをあまり知らない人でも、自然に誘導されて起伏のあるRPG体験が楽しめる。
ドラクエが今でも変わらないのは、売れるからだとか、それが伝統だからというのもまぁあるだろうけど、ゲーマーも、ゲームを知らない人も、みんながRPGをちゃんと楽しめるようにというもっと大きな意義がドラクエにはあり、それがドラクエの信念だからだと俺は思う。
とは言え、当たり前だがシリーズ毎に細かい部分は変わっている。特に今作は戦闘のゲームバランスに関してかなり大きな方向転換が見られる。
ドラクエに限らずだが、RPGは呪文や魔法やスキルなど、特殊な攻撃がとても強い。だからどんどん使いたくなるが、それだと駆け引きも何もなくなるので、ゲーム側は制約をかける。ドラクエの場合は、MPと呼ばれるものがそれだ。MPが尽きると強力な攻撃は使えなくなる。
MPは他でも多く採用されているシステムだが、ドラクエが巧妙なのは、MP回復アイテムを簡単には入手できないようにしている事だ。戦闘が終わった。じゃあMP回復薬をがぶ飲みしてまた次の戦闘で呪文をぶっ放そう、という単純な戦い方ができない。
じゃあどうするかと言うと、プレイヤーは出来るだけMPを温存しようと考える。長く複雑なダンジョンの中、ボス戦まで何とか余力を残せるよう、MPやアイテムをやりくりしながら戦闘を繰り返す、という必要があった。
更に全滅したら教会からやり直しというリスクも相まって、ここにヒリヒリとしたサバイバル感と、駆け引きが生まれる。これがドラクエの戦闘の妙だった。
ドラクエの戦闘システムは確かに単純だが、その裏には徹底したバランス調整があり、一つ一つの戦闘で気が抜けず、手に汗握るものにしている。ドラクエのゲームバランスは本当に凄い。
しかしそれは、ランダムエンカウントという、半ば強制的に戦闘を行う必要があるシステムだから通用するゲームバランスでもあった。
ドラクエ9からは敵がフィールドにシンボルとして表示されてそれに触れると戦闘に突入するシンボルエンカウントが採用されたが、このエンカウントは敵を倒すかどうかプレイヤーが選択できるので、極端なことを言えば、敵を避け続けて一気にダンジョン奥のボスまで向かう、という事ができる。もうMP管理の必要性はなくなったわけだ。
そして、今作は更に親切化。レベルアップするごとにHPとMPが全回復し、多くのダンジョンではボスの手前でキャンプを使って回復が可能で、極め付けにオートセーブに対応して全滅しても直前からやり直す事ができるようになった。9の時点で大分怪しかったが、ドラクエの戦闘の根幹にあった、MPのやりくりによるサバイバル感は今作でほぼ完全に消失した。
残念に思うところもあるけど、まぁ仕方ないかなと感じる。シンボルエンカウントになった時点で戦闘は自分の意思で避けられるわけで、サバイバル感はもう無きに等しい。それなら、もっと遊びやすいようにと調整するのは理に適っている。
じゃあランダムエンカウントに戻していつものゲームバランスにしろよ、とはあんまり強く言えない。だって、正直かったるいから。戦いたくもないのに戦わされるランダムエンカウントは結構ストレスだからね。ましてダンジョンで迷ってる最中は。
昔は何とも思わなかったけど、シンボルの快適さに慣れるともう戻れない。そこら辺のユーザー事情を敏感に感じ取って、昔のやり方に拘らず、今の時代に合わせて作ってくるあたり、ドラクエは柔軟だなと思う。
ストーリーは、久しぶりの勇者の物語。しかし、普通に無難な話ではない。絶対正義の単純なアイコンとして扱われている勇者という表現だが、今作は、そこを掘り下げている。勇者とは何か。勇者を勇者たらしめるものとは。
単に勇者が悪い奴らをやっつけました、では物語は終わらない。勇者とは、希望の象徴である、ということが、いつも以上に伝わってくるストーリーだった。
「勇者は、悪魔の子と呼ばれた」という題材も、中盤までは適当に扱ってるなーという感じだったが、終盤からはちゃんと触れてくる。ある場面では、確かに勇者と魔王は表裏一体だな、と思わされた。
そして最後の仕掛けは、こじ付けではあるけど、とても良いファンサービス。最後まで結末を見届けて本当に良かったと思える心に残るシーンだった。
本編以上に面白かったのが、仲間や街で起こる一つ一つのエピソード。相変わらずの堀井節が炸裂しまくっており、平気で外道じみた話を織り交ぜてくるから気が抜けない。かと思えば心に響く感動的なものも多く、いずれにしろ印象的だった。
もちろん、演出の表現は大幅にパワーアップし、いつも以上にドラマチック。ボイスはいつものポポポポポポという電子音だが、全く気にならない。よく考えたらセリフって文字だけ見て大抵飛ばしてるしな。
ドラクエは元々ある程度想像して補完して下さいっていうRPGだし、ボイスを入れなかったのは良い選択だと思う。
もう、本当に大満足。実にJRPGだった。
大作だからリソースが足りなくて規模が小さくなったり、海外市場を気にして方向性がブレたりするのではないかと思ってたけど、全くそんなことはなかった。ここまで完璧にドラクエの流れをボリュームたっぷりに最新技術で作ってくれるとは思わなかった。
確かに、映像が綺麗になったのに逆行して化石のようなゲームスタイルに古臭く感じることもあるが、しょうがない。これがドラクエの信念なのだから。
ドラクエ11は、オープンワールドやシームレスやアクションに目もくれず、これが日本のRPGだ、これがドラクエだ、と堂々と見せ付けている。日本のRPGの根幹を作り上げてきたシリーズとして、そのスタイルは決して間違いではないと、誇りを持って作られているのが伝わってくる。
ゲームには色んな形がある。特に海外と日本のゲームの違いは顕著だ。
だけど、どれの方が良いとか、どれが正しいとか、そんなものは決してない。人それぞれにゲームの美しい思い出があり、それによって抱く印象は変わるのだから。
ドラクエ11は、俺がRPGに抱くセピアな望郷を鮮やかにしてくれた。やっぱり、RPGは面白い。
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