はずかしい日記。ネタバレ注意。
スタート〜神の岩の頂上まで




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よーし、やるぞー!ドラクエ11やるぞー!!
俺がやるのはもちろんPS4。久しぶりの新作。久しぶりのオフライン。久しぶりの据え置きでの大作。ワクワクしないわけがない。

さてさて、早速ぼうけんのしょを作るのだが、ドラクエ11はなんと、ゲームスタートの前に色んな縛り設定を付けることができる。
戦闘から逃げられないとか、買い物できないとか、防具を装備できないとか。これは初回の周からいきなり可能。
うーん、でも、裸でやっていくのはしんどいし、アイテム買えないのはキツすぎるし、戦闘から逃げられないのも面倒くさい。
やっぱり普通に始めるか?いや、縛りはもう一つある。それは、はずかしい呪い。
主人公が恥ずかしがり屋さんになって、色んな場面でその一面が現れるという。全くもって何を言っているのか分からない縛り。
しかし、実際にやってみるとこれが面白かった。今回は、そんな恥ずかしがり屋さん主人公のプレイ日記を始めていこうと思う。

ドラクエの魅力の一つは、プレイヤーが主人公になれること。ドラクエの主人公は、寡黙で、感情をあまり表に出さず、無個性だが、だからこそ、プレイヤーが主人公として物語に入り込むことができる。
状況報告だけの日記なんて退屈だし、せっかくの恥ずかしい縛りだし、何よりドラクエ。今回は、主人公になって日記を書いていこうと思います。



“16年前、ある王国が魔物に襲われて滅びた。その瀬戸際、一人の赤ん坊が川に流され逃げのびる。その子の左手の甲には、痣があった。”


今日も空に浮かんだ大樹が見える。世界は綺麗だ。
昔は何で木が空に浮いてるんだろうと思ったけど、時が経つにつれ、それが当たり前になった。
俺もあれくらい飛べたら良いのに。そうすれば誰にも邪魔されないから。だけど、俺ができるのはせいぜい木の上に登るくらいだ。ここはまだ、人の声が聞こえてくる。

「ありがとう!私のバンダナを取ってくれて!」

木から降り、幼馴染のエマにオレンジ色のバンダナを手渡す。彼女はそれで金色の長い髪を束ねた。
相変わらずエマは元気だなぁ。今日はあの日だってのに。

「今日はいよいよ儀式の日だね!神の岩に登って、祈りを捧げないと!」

村の真ん中にあるデカい岩に目をやる。あれに登れだって?無理に決まってるだろ。どんだけ反り立ってるんだよ。

「じゃあ、私は先に入り口まで行くから!村の人たちの話もちゃんと聞いときなさいよー」

それはもっと無理な話だ。
できるだけ顔を伏せて、誰とも目を合わさないように歩を進める。
ダメだ、顔を伏せすぎて前が分からない。だけど、顔を上げて誰かと目が合うのが怖いし・・・クソ、どうすりゃ良いんだ。

聞き覚えのある犬の鳴き声が聞こえてくる。あれは、エマの愛犬ルキじゃないか!でかしたぞ。お前に付いて行けば良いんだな!
ルキと一緒になんとかエマのもとにたどり着く。

「ルキも一緒に来たんだ!心強いわ!ほんとはね、私もちょっと怖いの。だから、あなたと一緒の日に生まれて、一緒に16歳を迎えることができて、とっても嬉しい!」

俺は顔を上げる。エマの目をしっかり見る。何も言えなかったけど、エマは分かってくれたようだ。

ん?なんかポヨンポヨンって音が聞こえる。もしかして人か!?と思って、急いで目を伏せるけど、よく考えたら人はポヨンポヨンなんて音を立てて歩く訳がなく、恐る恐る顔を上げてみたら、青いなんかスライム状の可愛いやつが目に入った。なんだこれ?

おいおい、こいつ体当たりしてきたぞ。うわあああああ!!死ぬうううう!!!って、あれ、全然痛くない。弾力のあるボールがぶつかったような感覚。でも、反動でコケちゃって、膝を擦りむいた。
勇敢にもルキが青いやつに立ち向かって噛み付いてる。弾力があるってことは、こっちの攻撃も無効化されるんじゃないか?
と思ったが、ルキの激しい噛み付きにスライムは液体を撒き散らし、みるみる身体が縮小している。うわぁ・・・あのスライム、片方の目がないよ・・・
なんて引いてるうちにルキがスライムを追い払ってしまう。よ、よし良くやったぞ。

「はぁ〜、なんとかなったわね!じゃあ儀式に行きましょうか!まずはあの洞窟を抜けるわよ」

えー。岩山を登るだけでなく、洞窟まで抜ける必要があるのか・・・だって、そんな、絶対魔物いるじゃん・・・ルキ、あとは任せたぞ。

当たり前だけど、洞窟は暗い。なんか鉢合いそうだなぁ。
チクっ。ん、痛い。なんかさっきからチクチクするんだが。
身体をよくみると、にっこり笑った小さなおっさんが引っ付いていて、マチ針よりも小さな針で滅多刺ししていた。うわあああ!!
急いで投げ捨て、ルキに成敗してもらう。全くなんだよここ。もう嫌だ。家に帰りたい。
と、前方に光が差している。お、もしかしてもう出口か。やった!

「助けてー!!」

出口に近づくと、聞き覚えのある甲高い声が響いてきた。人か。まさか人がいるのか。
思わず足が止まるが、エマとルキが走り出している。俺もつられるように後に続く。
洞窟を抜けた先の広場で、小さな子供が倒れていた。あれは、マノロじゃないか。何でこんなところに。

マノロの周りに靄が立ち込めている。靄はだんだんと鮮明になり、次第に形になった。こいつ、魔物か。
ルキが立ち向かう。しかし、連戦の疲れもあるのか、反撃を喰らい弱っている。今までのやつとは違うようだ。エマも恐怖に立ち竦んで動けないまま。

え、ちょっと。これ、俺が頑張る流れ?そんな、できっこないよ。人と喋れない。まともに目も合わせられない。何をするにも自信がない。そんな俺が、魔物を倒すなんて。でも・・・
背中の剣に手をかける。そうだよ。ちゃんと持ってきたじゃないか。俺にはあるんだ、誰かを守れる武器が。誰かを守りたいって想いが。

剣を抜き、靄に斬りかかる。空を切ったように手応えがなかったけど、ダメージは入っているらしい。相手は怯んでいる。
連続で斬りかかろうとしたけど、もう一体の靄が不意に背後から攻撃してくる。痛ってー!!2体とか卑怯だろお前ら。
傷口が割とエグい。これ、出血多量で死ぬんじゃね?貧血で倒れそうなんだが。
すると、エマが寄ってきて急いで薬草を塗ってくれる。しみるけど、心なしかマシになった気がする。
しかし、状況は変わらない。2体を相手にするのはかなりキツい。せめてタイマンなら・・・でも、俺がやるしかない。やるんだ。

その時、急に頭の中にある単語が閃いた。メラ?え、これ言えば良いの?いや、でもちょっと人前だし・・・えーと、メラ・・・
シーン。何も起きない。え、ダメ?もっと大きな声で?あーもう分かったよクソ。いくぞ。ふぅー。はぁー。ちょっとエマ、耳塞いでてくれる?

メラ!!!

手から火の玉が発生し、靄に向かって直撃。多量に含んだ水に気化し、大爆発。靄は消滅した。

お兄ちゃんありがとうー!!と、寄ってくるマノロ。ちょ、ちょっとやめて。こっち来ないで。いや、まぁいいか。
そのあとマノロはエマにたっぷり絞られ、そのまま洞窟をあとにした。さて、俺たちはまだ儀式が終わっていない。

洞窟を抜けた先は、神の岩の頂上に繋がっていた。
垂れ下がった蔦を登り、わざとらしい狭い足場を通り抜け、おあつらえ向きな段差を上がって、ようやく頂上にたどり着く。
はぁー、やっとか。これで儀式も終わりか。エマがこっちを見て笑ってる。俺も頷く。

遠くの方で空気を割るような音が。次の瞬間、空を切り裂いて大鷲が飛び込んできた。
体当たりを受けたエマは崖際まで吹っ飛ばされる。落ちる・・・手前で俺はエマの手を握り掴んだ。間一髪。
しかし、大鷲は懲りずにまた突進の構え。どうすることもできない。俺はエマの手を強く握りしめた。
その時、左の手の甲が光り、閃光が空へと駆け上がる。光は雷に変わり、大鷲に直撃。黒焦げになって落ちていく。
エマを引き上げたあと、左手の甲を見ると、昔からあった痣が微かに光っていた。これに助けられたのか?

「あなたがやってくれたの?もう、これで死ぬんだって思った・・・。ありがとう!本当に!!」

エマと一緒に祈りを捧げると、雲が晴れて、そこには見渡す限りの景色が広がっていた。

「世界って、こんなに広かったんだ。もしかして、儀式はそれを伝えるために行われているのかもね」

何で助かったのかは分からない。でも、エマの笑顔がまた見れた。それで充分だ。

続く。