新生バイオ



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PS4とXboxOneのアクションゲーム。開発はカプコン。

アクションは、キャラが映える。キャラ人気が強いバイオにおいて、アクションの強化は、フランチャイズを支えるためにホラーよりも優先される事項だった。
俯瞰視点だった頃のバイオはパズル要素が強いゲームだったが、敵の存在もパズルの一部のようなもので、照準のロックオンが強いため弾薬さえあればほぼ確実に敵を倒せたが、銃以外の反撃手段が極めて乏しく弾が尽きると雑魚だったゾンビが途端に強大な敵として立ちはだかり、如何にしてアイテムを温存するかという頭を使ったプレイが求められた。
このサバイバル的なバランス調整がバイオのゲームとして面白いところであり、また、常にゾンビが油断ならない存在として立ちはだかるというホラーとしての怖さを醸し出していた。
しかし、バイオ4の登場がシリーズの流れを変える。ロックオンが非常に強く、ヘッドショットすらランダム判定で、プレイヤーがアクションとして介入できる余地がほとんどなかったバイオが、突如としてシューティングゲーム化。
照準は自分で合わせられるようになり、ヘッドショットも脚撃ちも自在。四方から襲い掛かってくる敵を華麗な立ち回りでいなし、起伏に富んだステージを縦横無尽に走り回る。怯んだ相手には必殺の体術をおみまい。
そんな主人公レオン様が超カッコ良いのである。ハードの世代が変わってグラフィック的にもイケメンになったのは勿論だが、もうアクションが一々カッコ良くて、それを自分で操作しているというゲーム特有の一体感もあって、実にヒーロー感を味わえるゲームに仕上がっていた。
かと言ってバイオの魅力がなくなったかというとそんな事はなく、動きながら撃てなかったりカメラが自由に回せないといういつものモッサリ調整にすることで、ジリジリとにじり寄ってくる敵との攻防やどこから現れいつ囲まれるか分からない死角の多さから緊張感を演出し、アクション的なホラーを作り上げることに成功。
だけでなく、特定の部位を狙い撃つと敵が怯み、そうすることで体術が発動出来て大きいダメージを与えられるのだが、これはアクションとしてアクセントがあるだけでなく、弾薬の節約にも繋がり、バイオの醍醐味である「有限のアイテムを如何にやり繰りするか」というサバイバル性に寄与されている。
しかも、部位を狙い撃つのが重要ということで、構えている間動けず、じっくり敵と向き合う必要のあるバイオの操作性はピタりとハマっているわけだ。
アクションとしてはただ面倒くさいだけの操作性だが、それを体術の要素によって意味のあるものにし、更にサバイバル性を掘り下げるまでに及んでいる。ゲームの形を180度変えながらもそれまでのバイオの魅力を余す所なく引き出し、アクションシューティングとして溶け込ませている。バイオ4は本当に凄いゲームだ。

一方で、次から次へと現れる敵を倒すゲームになったので、一体のゾンビにすら恐怖を感じられた旧バイオとは違い、雑魚が単なる雑魚になってしまい、ホラーとして弱くなったのは否めない。
俺はバイオはホラーのゲームではなくサバイバルのゲームだと思っているので、今の状態でも不満に思わないけど、ホラーを求める声が多いのは事実。
確かに、最近のバイオは、ホラーを邪魔する要素が多い。ヒーロー性のあるキャラクターは無敵すぎるが故にプレイヤーに安心感を与えてしまっているし、アクションはシリーズが進むにつれてどんどんサクサク動けるようになって困難に対処しやすくなり、敵を恐怖の対象として受け取りにくくしているし、ネットワークに対応した賑やかな協力プレイは緊張感を消し去った。
しかし一方で、これらはバイオシリーズの人気を支えるものでもあった。バイオハザードは世界中で大ヒットしている大作ゲームだ。売れるためには、マニアックなホラー路線よりも、キャッチーなシステムを取り入れやすいアクション路線の方が遥かに都合が良い。何より、アクションはキャラクターが映える。
しかし、アクション路線が明確だった前作の6はシリーズを潰されかねない勢いで批判されまくった。果たしてカプコンはどうするのか。

と、言うわけでバイオ7。今作の最大の特徴は、カメラが一人称視点になっていること。つまり、操作キャラは画面内に表示されず、カッコ良いアクションを見届けることができない。
今までキャラを如何に魅力的に見せるか、という事を追求してきたバイオシリーズが、いきなり真逆の方向に舵を切ったわけだ。
それに合わせてキャラクターは一新。過去作のキャラはほぼ登場せず、主人公に至っては一部を除いて全く姿が表示されない。公式HPを見ても主人公のデザインは紹介されていない。あれだけキャラに拘っていたバイオが、今作では徹底的に素性を隠している。
故に、臨場感が凄い。だって、主人公はプレイヤー自身だから。キャラのヒーロー感が強くユーザーが第三者になりがちだった過去作と違って、今作は全く自己主張をしない新しいキャラが主人公であるため、非常に自己投影しやすい。
そこに一人称視点が繋がって、まさに自分がゲームの世界に入ったような迫力がある。リアリティが極めて重要なホラーゲームにおいて、これが出来ている時点で成功は約束されたようなの。
当然、ゲームバランスも大きく変わっている。次々と現れるクリーチャーをなぎ倒していくゲーム感覚のアクションホラーから、その世界にいるという雰囲気を重視した体験型のアクションホラーに変貌。
本当にビックリするくらい敵が出てこないうえに、倒せない無敵のクリーチャーまで存在する。しかもそいつから逃げ回りながら謎を解いていく必要があるのだから堪ったものではない。自分が無力な存在になるというのはホラーゲームでよくある手法だが、まさかヒーロー思考だったバイオで取り入れてくるとは。
一人称視点に、一般人感覚の主人公、雑魚ではなくなったクリーチャー。世界の雰囲気作りは完全に成功しており、正直、これは怖い。
しかも演出がホラーとして非常に優れていて、特に序盤はダイナミックで衝撃があり、それを生の視点で体験しなければならないのだから非常にキツい。勘弁して欲しい。

一方で、後半になると一気にゲームの性格は変わる。次々に弾や武器が手に入り、敵もワラワラと現れる。ボスもどんどん出てくる。あれだけ締め付けられていたのが嘘かのようにゴリゴリ攻めまくれる。
これは旧バイオハザードからの大きな特徴だが、このシリーズは緊張からの解放、メリハリを非常に大事にしている。
安全部屋に入った時のあの安心感。ゾンビを倒した時のあの爽快感。緊張感が持続しているからこそ、何気無い快感がカタルシスとして押し寄せる。この一時のカタルシスがあるから、緊張感を耐え抜く事ができる。
いくらゲームが面白くても、ずっと緊張しっぱなしではプレイヤーは疲れるだけだ。しかしそこにストレスからの解放を一瞬でも与えられる事でそれがモチベーションに繋がる。まさに飴と鞭。このメリハリの付け方がバイオは本当に上手い。
今作も後半からプレイヤーは思いっきり堪ったものをぶつける事ができる。最後の締めがロケットランチャーじゃないのは残念だったが、気持ちの良い終わり方だった。エンディングが流れている間、俺はこの世界を生き抜いたんだと余韻に浸りっ放しだった。

バイオ7は凄い。何が凄いって、ホラーとしてのクオリティが高いのは勿論だが、その方向性のために今まで積み上げてきたものを未練なく捨て去ったその勇気が凄い。
しかも失敗が許されないナンバリングタイトルでそれをやってのけた。相当の覚悟と自信がなければ出来ない事だ。
過去の伝統に囚われず、ホラーを追求するにはどうすれば良いか、という事を徹底的に突き詰めているから、これだけのものが作れている。結果として、キャラクターも、アクションも、ネットワークプレイも無くなったが、ホラーゲームとしては間違いなく一流だ。
大きく変わったからと言って、バイオの魅力が無くなったわけではない。常に頭を悩まされるアイテムリソース、メリハリのあるアクションの押し引き。レベルデザインは旧バイオだが、アクションの熾烈さは今のバイオだ。新旧バイオの良いところをミックスさせた新生バイオに仕上がっている。紛れもなくこれは、バイオハザードだ。

あと、VRは、普通にやるよりも100倍くらいホラーを高めてくれるとんでもない体験なので、デバイスを探し出してでも買ってやるべきだね。