ヨコオタロウの突飛なストーリーありきのゲームから、全てが高水準のA級RPGに変異しました




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PS4のRPG。開発はプラチナゲームズ。

当たり前だけど、同じシリーズでも開発が違うだけでクオリティがここまで変わるんだなー。
ニーア、ドラッグオンドラグーンと、ヨコオタロウ氏がディレクターを務めたRPGは、陰湿な世界観とストーリーを演出する様々な仕掛けが目を引いたが、ゲームとしてのクオリティはお世辞にも高いとは言えなかった。映像はショボいし、アクションは普通すぎて何も特徴がないし、ゲームバランスは大雑把だし、ロードも長い。端的に、ゲームとして作りがチープだった。
ところが今作は突然変異。キレッキレのアクション。程よくテクニックを求められるゲームバランス。地続きでロードのないシームレスなマップ。ハッタリの効いた魅せる映像。
もうあらゆる部分が超絶パワーアップ。マシンスペックの問題ではない。明らかにゲームとしての質が違う。それもそのはず、今作の開発はHD機で何本も大作を作ってきたプラチナゲームズだ。
特にアクションの見違えっぷりは凄い。まず、延々と銃弾を撃ち続けたり、軽快に動くアクションで押し込んだりと、常に攻めの姿勢を維持できるのが心地良い。
基本的にゴリ押しできるが、敵の攻撃前に必ず目が赤く光るという予備動作があるので回避のタイミングが分かりやすく、アクションの押し引きを意識させられる。ここら辺の作りが上手い。
モーションはキレッキレで、フレームレートも滑らか。敵の動きも躍動感がある。適当に操作していても敵との激しい攻防を演出してくれて素晴らしい。アクションのクオリティは流石プラチナゲームズとしか言いようがない。
まぁ他のプラチナのアクションと比べると奥深さはないし、敵も弱いけど、根幹はRPGなのであえて抑え目にしているのだろう。RPGらしく、ちゃんと育成すればテクニックがなくてもあっさりクリアーできるように調整されている。
それにしても、ウィッチタイム(直前回避でスローモーション)がカスタマイズで用意されていたのは驚いたな。ベヨネッタ大好きな俺はこれで俄然楽しむことができた。銃弾といい、ウィッチタイムといい、プラチナゲームズのアクション要素がたくさん詰め込まれている。

話は変わるが、プラチナと言えば(特に神谷氏)、STGが好きで好きで好きで仕方のない集団であり、ベヨネッタといい、ワンダフル101といい、ステージの合間にシューティングのステージを入れまくっていた。本当にもう鬱陶しいくらいに。
明らかにいらない要素だし、ゲームのテンポも盛大に崩していたが、イライラしながらも許せた。何故なら、愛があるから。
こいつら、本当に趣味でゲーム作ってんだなーというのが伝わってくる。自分の好きなものを作るというのは、素晴らしい事だ。

一方、前作のニーアは低予算をカバーするためにSTG的な演出を多用していた。それがまた、ヨコオタロウ氏らしい異質なゲーム世界を作り上げていて、パッとしないニーアのゲーム部分の中で、唯一、印象に残る要素だった。
そのニーアをプラチナが作ったらどうなるのか。
もちろん、STGだらけになるのであった。横スクあり、縦スクあり、3Dあり、全方位あり、弾幕もあり、と、あらゆるシューティングステージを投入してくる。鬱陶しいくらいにSTGの連続だった。ただ難易度は抑え目で助かった。
と、思ったら最後の最後に地獄を見た。最後は何故か極悪難易度のリズムゲーが出てくるのがシリーズ恒例だったが、今作はSTGが立ちはだかる。プラチナゲームズのニーアらしくて良いと思う。

プラチナの話はこれくらいで良いや。ニーアと言えば、やはり本領はヨコオタロウ氏のストーリーと世界観。
同じシリーズとはいえ、全く違う話なのかと思いきや結構ガッツリ繋がっていた。ストーリーの性質にしても、前作の方向性をより踏み込んだ感じ。今作も、理性のない単純な敵として扱われがちな魔物の内面を掘り下げようとしている。
前回は元人間の怪物がその対象だったが、今作の相手は機械生命体。
まずもって、操作するキャラクターが機械生命体とリンクする部分の多いアンドロイドであり、それぞれを対比させながら話を進めているので、テーマの取っ掛かりを掴みやすいし、深く掘り下げる事もできている。
インターフェースやリスタートの仕様など、細かい部分で操作キャラクターがアンドロイドという存在であると演出し、プレイヤーをキャラ視点で物語に向き合えるようにしているのも上手い。非常にストーリーに入り込みやすかった。
そのストーリーにしても、前作は泣かせようという意識が先行しすぎて分かりやすい感動物語という感じだったが、今作は、何故生きるのか、という生命の賛歌が根底にあり、伝わってくるものがある。
そこが軸としてブレていないのでキャラの行動原理も説得力があり、等身大の葛藤を感じ取る事ができた。
そしてまた、今作も音楽が素晴らしい。ニーアの世界観の大部分を構築していると言っても過言ではないほど音楽が前面に出まくっている。場面場面をより印象に残るものにしてくれた。

プラチナが作るからゲーム部分のクオリティが上がるのは分かりきっていたけど、ストーリーのレベルも上げてくるとはなー。
突飛な仕掛け、あざとい狂気や感動など、今までは割と唐突に感じられたヨコオタロウのシナリオだったが、今作は設定と主張とキャラの感情が一つのテーマの元に繋がっていて実に重厚だった。
また、最近のRPGは一部分に特化したものが多いけど、これは突出はしてないが各要素どれも安定したレベルでまとまってる。
アクションは爽快かつテクニカルな深みがあるし、ちゃんとバランスも調整されているし、フィールドはそこそこ探索のしがいがあるし、サブクエストや収集などやり込みもバッチリだし、キャラも魅力があるし、ストーリーも言った通り。そこに加えて、ヨコオタロウ氏らしい他のゲームにはない演出や仕掛けが随所に仕込まれていて、無難に収まっていない。
いやはや、実に楽しませて貰ったよ。普通のゲームは飽きたという人はもちろん買うべきだけど、普通にRPGが好きという人にもオススメだね。