ヴェルサスの影。FFの答え。



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PS4とXboxOneのRPG。開発はスクウェア・エニックス。

FFは、ストーリーのゲームだ。毎回世界観やシステムを変えてゲーム内容を一新してくるシリーズだが、ストーリーがゲームの根幹であるという設計は常に変わらない。
しかし、そこが原因となって近年のFFは批判の的になっていた。何しろ、FFのストーリーはキャラ主導の観賞型だ。
登場人物には、人生が与えられている。名前があり、過去があり、心に傷がある。ドラクエと違って勝手に喋り、葛藤し、涙を流す。プレイヤーの考えとは関係なく、キャラクターの意思によって、ストーリーが動く。
要するに、FFのストーリーは良く言えばドラマチックであり、悪く言えば押し付けがましい。だけでなく、ストーリーのドライブ感と演出を徹底的に重視し、その形にハマるようにプレイヤーをコントロールしていた。その究極が、あらゆる部分が調整されてプレイヤーの介入する余地が殆どなかったFF13だった。
FF13は、ある意味FFの本質を恐ろしく突き詰めたゲームであったが、RPGとしての楽しみは極めて薄かった。
しかも当時はオブリビオンが登場し、オープンワールド特有のプレイヤー=主人公としたRPGが人気を集めている最中で、真っ向から逆の方向に突っ走ったFF13は、それはもう叩かれまくった。
オープンワールド。自由度。はっきり言ってFFのストーリーとは相性の悪い要素だ。オープンワールドは自由に動けるため、ストーリーの進行とプレイヤーの歩みをシンクロさせ辛い。どうしても物語がぶつ切りとなりがちで、熱を持って入り込みにくい。その点、ストーリーの進行に合わせた一本道構造はFFのような物語には非常に合理的であるわけだ。
しかし、今ではオープンワールドは大作ゲーム、特にRPGのジャンルではスタンダードとまでになっている。はっきり言って、FFのやり方はもう今の時代では通用しない。
だが、それでも、FFはあくまでもストーリーのゲームだ。FF15でもそれは変わらない。しかし時代は変わっている。果たしてどうするのか。
ここがFF15の一番の注目ポイントだったが、スクエニは実に驚くべきやり方で答えを出してみせた。

まず、本作はオープンワールドである。スカイリムやフォールアウトのように最初から何処にでも行けるわけではないが、ちゃんとマップは地続きに繋がっている。れっきとしたオープンワールドだ。
オープンワールドの詳細はあとにするが、この要素がFFのストーリーにどのような影響を与えているか。
うん、やっぱり全く噛み合ってないね。最初は主人公である王子と御一行が結婚相手であるお姫様のもとに向かうという始まりなので、自由気ままに旅をしていてもあまり違和感ないが(普通に王子様が危険なモンスター討伐やってて良いのかよというツッコミどころはあるが、これを言ったらキリがないので許容範囲)途中から帝国が主人公の母国を陥落させ、帝国軍に追われるという展開になってからは違和感MAX。
お前ら、何で呑気に釣りをしたり、モンスターハントをしたり、ゲームしたりしてるの?ほら、王国陥落してるよ?父親大変なことになってるよ?何でそんなに気楽なわけ?特に金髪野郎、お前満面の笑みで自撮りしてる雰囲気じゃないだろ。空気読めよ。さっきのムービーで見せた決意はどこに行ったんだこいつら?帝国軍から逃げてるはずなのに普通に各地をドライブしては衆人環視の中に姿現してるし。
要するに、オープンワールドの自由に遊んで良いよという特徴が、もろストーリーの感情移入を妨げている。ここら辺のズレは割り切らなきゃいけないのは分かるが、ストーリーとプレイヤーの歩みが全くシンクロしてないからものすごく話に入り込みにくい。
と言うか、そもそもこのストーリーは明らかにオープンワールドに合ってねぇな・・・まず主人公が王子ってのが合ってないし。
まぁこれはヴェルサスから10年以上も制作にかけた弊害なんだろな。最初はオープンワールドにするつもりじゃなかっただろうし。
途中でナンバリングとして作ることになって、大作としての格を示すためにオープンワールドを採用することになったけど、その結果、設定とゲームデザインが噛み合わないチグハグになってしまいました感が凄い。
ストーリーの見せ方も疑問。今作、非常にムービーが少ない。そして設定の説明がほとんどない。明らかにムービーゲーだの、ファルシのルシがコクーンだのと批判された影響が出ている。
だから唐突感が凄い。姫様の儀式の覚悟も、王子が指輪を前にして抱く葛藤も、背景の説明がほとんどないから全く伝わって来ない。
テーマの一つとされていた主人公と父親との絆に関しても、映画やアニメを見ていないと分かりにくく、ゲームだけでは明らかに描き足りてない。
帝国軍や世界観にしてもそう。帝国軍の存在感のなさには唖然とした。あまりにも敵側に魅力がない。
メインストーリーだけだとボリュームは15時間くらい。確かにオープンワールドは遊び方次第ではあるが、これは明らかに本編が描き足りてなくて消化不良感が強い。
二つの王国の戦い、魔法の力で発展した現代的な都市、帝国軍の脅威。こういった世界観のスケールや背景が、ストーリーとしてもプレイヤーの歩みとしても全く伝わって来なかったのは本当に残念。

が、正直そこら辺は割り切ってる感がある。周知の事実だが、FF15は元々FF13プロジェクトの一環であるファブラノヴァクリスタリスを構成する一作であり、元はヴェルサスという名称で制作されていた。
しかし、ヴェルサスの制作は難航を極めた。恐らく、当初ディレクターを務めていた野村氏の想像する世界はとんでもなく壮大なものだったのだろう。
しかもゲームの規模はどんどん膨れ上がっていった。最初は昔のFFのように見下ろし視点だったのが三人称視点となり、スピンオフだったのがナンバリングとなり、フィールドはオープンワールドとなり、ハードもPS3から次世代機となった。そうこうしているうちに収拾が付かなくなったのだろう。10年以上の制作期間がそれを物語っている。
更に元々は連作の予定だったが、スクエニ経営陣の方針により一作で完結させることになってしまった。FFほどの大作、しかもオープンワールドとなると、全部を表現するのは無理がある。ハードが移行し作り直してからの期間は4年らしいが、発表してもう10年経つ。流石にこれ以上は待たせられないと判断し、取捨選択の必要に迫られたのだろう。
そしてFF15は選んだ。世界観の描写、さらにはメインストーリーまでほぼ捨てて、ある一点に全力を尽くした。

その一点とは、仲間との旅だ。この点に関しては、文句なしに素晴らしい。
仲間は、王子とその御一行の野郎4人組だ。途中参加したり離脱する奴もいるが、基本的に最初から最後までパーティは固定となっている。
何が素晴らしいって、こいつらの仲が本当に良いこと。道中やバトルなど、常に声をかけてくれて、孤独な旅になりがちなオープンワールドを実に賑やかに彩ってくれる。
フィールドを歩いていれば昨日食べた夕飯の話題で盛り上がり、強そうな敵と出会えば驚き、夜になれば休むよう勧めてくる。サブクエストに関してもいちいち対応した会話が発生する。もちろん、全てシームレス。会話のバリエーションはかなり豊富に用意されている。
仲間の躍動感も凄い。単に主人公の後ろに付いて回るだけでなく、先に走って行ったり、行き過ぎたら振り返って待ってくれたり、会話をする時はちゃんと顔を見てくたり、朝起きたら手を挙げて挨拶してくれたり、戦闘でハイタッチしてくれたり、本当に細かいところまで作り込まれていて、生きた存在として感じさせてくれる。
仲間の存在をより印象的なものに見せてくれるのが、キャンプの要素。このゲーム、夜になると敵が一気に強くなる。中盤まではほぼ太刀打ちできない。なので、夜になるとキャンプなりどこかに泊まるなりして休む必要性が出て来る。
夜=怖いという式を明確に位置付けることで、暗くなったら下手に動かない方が良いという考えが生まれ、一日のサイクルが実感でき旅の臨場感が強まっていた。そして一日の締めくくりがキャンプになるよう自然に誘導している。これは上手い調整だ。
またキャンプや宿泊の演出がとても良い。単にシステム的に処理されるのではなく、焚き火を囲んで一緒に御飯を食べたり、ゲームで遊んで盛り上がったり、近くに女キャラがいる時は彼女を巻き込んでお喋りで盛り上がったり、その様子をちゃんと描写してくれる。1日の終わりを印象的に見せてくれることで、4人で旅をしているという実感を強く得ることができた。
キャンプのあとにたまに、仲間との個人面談みたいなイベントが挟まるのも面白い。友達の家に泊まりに行った夜中に、実はあのさ・・・と秘密の話で盛り上がったあの感じをまさかゲームで味わえるとは!
忘れちゃいけないのが写真システム。仲間の一人がカメラで勝手に色々と撮ってくれて、一日の最後に撮ったそれを確認できる。道中の美しい景色だったり。モンスターとの戦いの光景だったり。晩御飯だったり。4人揃っての記念写真だったり。単なる自撮りだったり。旅の思い出を、形として残してくれるわけだ。
もちろん写真を保存して、途中で旅の足跡に思いを馳せることもできる。そして改めて、こいつら本当に仲が良いよなと感じさせられる。これは仲間の絆と旅の情緒を演出してくれる最高のシステムだった。
そして一番肝心なのが、RPGとしては珍しく女キャラがパーティにいないこと。散々批判された点だが、異性がいないから、自然で対等なやり取りを実現している。掛け値のない友情を演出できている。
FF15の仲間はRPGにありがちな寄せ集めの存在ではない。彼らは主人公にとってかけがえのない友人であり、しかもそれを押し付けるのではなく、旅を通してプレイヤーに自然に伝えている。
会話やモーション、イベントやシステムに至るまで本当に作り込まれていて、こいつらと一緒に旅をしているんだなという気分にさせられた。本当に最高の仲間たちだった。こいつらと旅をしているのが、本当に楽しい。
オープンワールドは、ストーリーに関しては全くもって噛み合ってないが、この仲間との旅において実に有意義なものとなっている。

もちろん、オープンワールドなので旅はそこそこに、ストーリーメインでひたすら突っ走ることもできる。キャンプも実はメインだけならそれほど使う要素ではない。
コロシアムや釣り、キャンプ、空飛ぶ車、チョコボなど、RPGらしいバラエティ豊かな要素が詰め込まれているが、それを決して無理に押し付けてこない。自分で勝手に見つけて勝手に遊んでねとしている。
正直、この作りには驚いた。何故ならFFは、詰め込まれた要素をこれでもかと見せ付けてくるゲームだったからだ。
しかも今作は、ストーリーの受け取り方までプレイヤーに委ねている。いつものFFなら、このストーリーはこうだからこう感じ取ってくれ、という作り手の一方的な想いが全面に出ていた。自由度を放棄して一本道にしてまでストーリーの見せ方に拘るくらいだ。
しかし、今作はプレイヤーの遊び方によってストーリーの印象が大きく変わる。仲間との旅を存分に堪能したあとに迎えるエンディングと、メイン一直線で迎えるエンディングとは大きな差がある。実にオープンワールドらしい作りとなっている。

しかし、正直俺はそれが気に入らない。オープンワールドのプレイヤー次第な感じは別に良い。しかし、ストーリーの自己主張が弱いのは気に入らない。何故なら俺は、FFの押し付けがましいストーリー性が好きだから。
話の良し悪しは別にして、キャラに寄り添い、共に軌跡を歩んで大団円を迎えるドラマの一体感、キャラと一緒に困難を乗り越えていく感動が、FFにはある。
ところが今作は、上で言ったようにムービーが少ない。オープンワールドを行ったり来たりのミッション制であるため、話もぶつ切りで物語のドライブ感もあまりない。ゲームを通じて仲間の絆を感じさせてくれる旅の情緒は確かに素晴らしいが、その熱もあまりストーリーに繋がって来ない。
何度も言うが、FFはストーリーのゲームだ。しかし、今作はゲーム側からドラマチックに演出してくれない。これはこういうストーリーだ!という叫びが聞こえて来ない。どうもFF15はFFらしくないなぁ、というのが途中までの感想だった。

うん、途中までは、ね。まさか後半からああなるとは。
このゲーム、中盤まではオープンワールドだが、後半から急に一本道になる。要するに、従来のFFのようにストーリーをひたすら見せてくる。
後半から一本道になるのは知ってたけど、まさかここまでとは思いもしなかった。だってやってることが完全にアクションアドベンチャーなんだもの。
リヴァイアサンと空中戦したり、飛び交う飛空挺に乗り移って壊して回ったり、列車が爆発したりと、リアルタイムに迫力のあるアクションが起こりまくる。
こんなのアンチャーテッドやゴッドオブウォーじゃねぇかと言うのは簡単だけど、これはFFが今までずっとやりたかった事なんだろうなと思う。
今まではプリレンダムービーでド派手な演出を見せていたが、今作はアクションになり、ようやくプレイアブルとして表現できるようになったわけだ。
ただ、後半はボス戦もほとんどこの演出アクションで終わっちゃうのがね。いつものFFはゲームバランスが非常に手強く、主人公と共に困難を乗り越えていく達成感があったけど、今作はそれが弱い。RPGとして残念。

しかし、後半のテンポは凄く良い。ここからは一気呵成。どんでん返しに次ぐどんでん返し。ムービーをふんだんに使ったドラマチックな演出。心ときめくド派手なアクション。
この後半からの展開は賛否両論別れるだろう。というか、後半からは批判の声の方が圧倒的に多い。
しかし、FFはあくまでもストーリーのゲームだ。どうしてもFFはストーリーを見せたいんだ。そしてFF15は、後半からFF13よりも過激で思い切ったやり方で、そのストーリーを演出してみせた。
俺としては、やはりFFはこうじゃないと、と思ったね。オープンワールドに終始したらどうしても旅のついでに物語終わらせとくかという味気ないものになる。
結局、プレイヤーの歩みとストーリーをシンクロさせないと物語の熱は生まれない。ドラマチックに演出できない。一本道は馬鹿にされるが、ストーリーを印象的に見せる上では非常に効果的なやり方だ。まぁ13章はダルかったけど。
後半からはストーリーを中心に見せてくれるとはいえ、それでも物語はショボい。しかし、圧巻の映像と演出がそれをかき消してくれる。何だか良く分からないけど、とにかく凄いわこれと引き込まれる。もう後半からはFFのオーラが出まくり。圧倒的なパワーと勢いに飲み込まれた。実にFFらしくて素晴らしい。

ストーリーの中身に関してちょっと触れると、場面ありきで作為的な感じがかなり強い。そして薄っぺらい。印象的なシーンを繋ぎ合わせてるだけだろと何度も感じた。
ただそれでも、後半は勢いがあることもあって、ストーリーは呆気に取られるくらい驚きの連続だった。無難な話になるよりは良かったと思う。
まぁ正直表面的なストーリーはどうでも良いんだよね。結局の所、この物語が最も伝えたいことは、仲間との絆なんだから。
確かに、ガワであるメインストーリーは薄い。だけど、このゲームの本当の物語は4人の旅の思い出であり、絆だ。帝国との争いや星の病など壮大な話を描いているが、実のところそんなのはどうでも良くて、全ては4人の結び付きを描くためのパーツでしかない。
最後のエンディングのあのシーン。あれは良かった。感じ方はプレイヤーによって異なるだろう。仲間とどれだけ思い出を過ごしたかによって受け取り方は変わる。
だからこそ、あの場面は感動した。仲間との過ごし方はプレイヤー次第。それは、自分の中で培った自分だけの仲間への想いであり、真の感情だ。そしてそれを、最後にFFならではのドラマチックな演出で爆発させてくれる。オープンワールドの自由だからこそ生まれる自然な感情と、FFらしいドラマチックな演出が組み合わさった、最高の終わり方だった。
FF15は、オープンワールドとドラマのあるストーリー性の両立に対して、見事な答えを出してみせたと思う。

ストーリーについての話が長くなり過ぎたな。ここからはそれ以外の要素に触れていく。
まず、オープンワールド。オープンワールドのノウハウがあまりないスクエニにちゃんとシームレスなマップを作れるのかと思ったが、そこそこ広いし、ダンジョンに入る時にロードが挟まるわけでもないし、フレームレートも安定してる。
バグが話題になってるが、俺は敵が動かなくなるのが一度あっただけで進行不能レベルは一度もなかった。オープンワールドとして普通に機能してる。
面白いのが、RPGのフィールドなのに車で移動できること。そうそう、FF15には、現代的な文化とファンタジーが織り混ざった世界観を楽しみにしてたんだよな。実際はほとんど端折られてしまったが、車の要素はその世界観の一端を感じさせてくれる。
ゲームとしても車は移動手段として便利な存在で、目的の近くまで車で走り道脇に停めて、細かいところやダンジョンは徒歩で探索、という流れが今までのRPGにない感じで新鮮。
オートドライブにして昔のFFの音楽を流しながら背景を眺めているのも楽しいし、ガソリンが切れたら車を押せるというのも面白いシーンだ。車中で4人がワイワイやってるのを見るのもホッコリする。
ただ、ファストトラベル時に発生するロードがヤバいくらいに長い。90秒くらい。クエストが行ったり来たりさせられるやつばかりだからファストトラベルかなり使うんだよな。それでこのロードの長さはしんどい。

次に、戦闘。今作の戦闘はシームレスな流れで突入するアクションタイプ。今までのFFはターンベースだったが、アクションじゃないとシームレスマップはあまり活きないのでこの判断は妥当。
しかし、エピソードダスカと呼ばれる体験版の時からかなり戦闘システムが変わってるけど、アクションの手軽さが重視されてしまったせいで、動きは軽快だけどRPG的な癖が抜けて随分戦略性は薄くなってしまったな・・・
◯ボタン押しっぱなしで攻撃、□ボタン押しっぱなしで回避、という反射神経をあまり求められないアクションなのは変わらない。
しかし、ダスカの時と比べるとMPが0になってもよろけないし、カウンターもできるし、MP消費で発動できたスキルの存在もなくなり、MP管理の必要性がほとんどなくなっている。結果、ゴリ押し系の大雑把なバランスになっているのは否めない。
武器を自由に持ち替えられるシステムも微妙。ダスカの時の、初段は槍でカウンターは大剣でフィニッシュは片手剣みたいな、攻撃の形態に合わせて武器をセッティングする仕組みの方がRPGらしくて良かった。
攻撃形態の特性と武器の間合いや振りの早さを考えてセッティングしたり、手数が多い二段攻撃目にMP回復効果のある武器を持って来たり、フィニッシュ攻撃はダメージが大きいからクリティカル率の高い武器にしたりと、ダスカの時は様々な方向から考える事ができる深さがあって、数値を計算するRPGとしての楽しさがあった。しかし、今のシステムはほぼ純粋なアクションでRPG的な考え方がほとんど出来ない。
スティック入力の組み合わせや、ボタンを押すタイミングなどでモーションが変わり、やり込めばテクニカルな深みはありそうだけど、そういう意味でもアクション色が強過ぎる。FFは、アクションのスタイルになったとしても戦略の根幹はRPGであって欲しかった。
バランス調整も疑問。回復アイテムが安く、しかも強力なものが多い。ラストエリクサーのような最上級回復アイテムもそこら辺に落ちていてたくさん手に入る。
その代わり敵の攻撃が痛くてやたらと死ぬのだが、すぐに回復できるから緊張感がない。強い敵が相手だと一発でも攻撃を受けたら致命傷だから細かい立ち回りをするのも馬鹿馬鹿しく、ひたすら回復ガブ飲みのゴリ押しになり気味。
結局、ほぼ純粋なアクションにしちゃったせいで、RPGユーザーでもクリアーできるようにかなり緩い調整にしてるんだよな。テクニックや戦略性よりもひたすらアイテムのゴリ押しで、正直どうなんだと思う。つくづくエピソードダスカのシステムの方が良かった。

もちろん、良いところもある。アクションとして動きが凄い。軽快だし、エフェクト派手だし、純粋にカッコ良い。オープンワールドは敵の間合いを取るのが面倒だが、ワープアクションのおかげでひたすらアクロバットに立ち回れる。動かしていて単純に楽しい。
戦略性もFFにしては薄いというだけで、他のオープンワールドゲームと比較すれば遥かにやり応えと戦いの幅がある。ダスカのシステムが良かったので少し残念だけど、普通に及第点ではあるかな。バランス調整は気に入らないが。
そしてFFと言えば、召喚獣。もちろん今作もいる。気まぐれな神様達が。任意に発動できず、出てくるかどうかは召喚獣の気分次第なのは笑った。どの神様が出てくるかも分からないし、たとえ召喚獣様の準備が整ってボタンを連打したとしても中々出て来ない。
もどかしいが、その分威力は絶大。しかも演出が凄まじい。大陸耐えられないだろってレベル。この召喚獣の仕様は結構好み。

FF15の真骨頂は、やり込み。
今作は、様々な要素が巧みに隠されている。普通にクリアーするだけだと殆ど見つける事ができない。故に、発見の楽しみがデカい。自分で見つけた感があるから。
コロシアムやチョコボレースのイベント、車を飛行型に改造するパーツ、伝説の武器、隠された鍵、奥に続くダンジョン、裏ボスなど、本当に様々な要素がオープンワールドの広大なフィールドに隠されているのだからワクワクする。
何より、敵がデカい。普通にフィールドにデカい敵がウロウロしている。これには感動した。シームレスなマップで、巨大な敵と遭遇する。うーん、実にファンタジーだ。こういうオープンワールドを待ってた。
今までこういう体験ができるのはドラゴンズドグマくらいだったが、流石はFF。実に日本らしいハッタリの効いた作りになっている。
あと、ダンジョンの作りが凄く凝っていた。アートワークと探索のやりがいが両立した見事なデザインになっている。ダークソウルに並ぶくらい出来が良い。それだけに13章の実質ラストダンジョンはもう少しどうにかならなかったのかと思うけどね。
俺は基本的にゲームをやり込まないタイプだけど、FF15はクリアー後が本当に面白い。仲間とダベりながら旅をして、デカい敵にビビり、新しい発見に喜び、適当にモンスターハントやクエストをこなし、ひょんなキッカケで見つけたダンジョンを探索して、その奥で強い敵と戦う。楽しい。実に楽しい。
ただ、装備の種類がちょっと少ないかなと思う。難しいクエストやモンスターハントをクリアーしても回復アイテムしか貰えない事が多くてガッカリする。強い敵を倒しても素材しか落とさないし。素材と言えば武器の改造だけど、このゲームの改造はそこまで深くなくて、あんまり使い道がないんだよね。
あと、明確に不満なのがフィールドやダンジョンに落ちてるアイテムがキラキラの石コロみたいな感じで表現されていること。雑多に落ちてる事もあって、アイテムを拾った時の感動が薄い。もっと良い見せ方はなかったのか。道具や装備などのアイテムは普通に宝箱的な表現で良かったな。
チョコボに乗ってる時はアイテムが拾えないのもイライラする。

不満は掃いて捨てるほどある。特に世界観とメインストーリーを大きく端折ってるのは、FFのナンバリングとして考えると非常に残念だ。だって本来はそこがFFの大きな魅力なんだから。
今作がFF13以上に賛否両論別れているのも頷ける。FF13は一本道だったし、ストーリーも大した事なかったが、ちゃんと一つの世界観を描ききり、骨太な物語を展開できていた。まぁ無理矢理続編を作っていたけど、FF13の世界としてやれることの全てをちゃんと出し切っていた。
FFは確かに欠点の多いシリーズだが、それは方向性を突き詰めて偏った内容になった事に起因することが多い。だけど今作は、単純に作り込み不足だと言わざるを得ない。いや、これでも相当時間とお金をかけて作られているのは分かるが、当初の規模が大きすぎてまとめきれずに迷走した様子がもろゲーム内容に現れてしまった。
無理をしてでも、最初の予定通り連作として作るべきだったと思う。完結まで何年だって待ったよ。こちとらもう10年も待ってるんだから。ヴェルサスの壮大な世界をこんな形で終わらせてしまうのはあまりにも悲しい。
正直、期待していた部分でかなり大きく裏切られたのは否定できない。
その反面、オープンワールドとしては十分期待に応えてくれた。物量やサブクエストの密度は海外ゲームに劣るが、ダンジョンはギミックだらけでやりがいがあるし、モンスターが大きくてワクワクするし、そして何より、かけがえのない仲間との時間が楽しく、旅をしているという臨場感がとてもある。
ハッタリが効いていて、賑やかで、やりがいのある、実に日本的なオープンワールドに仕上がっていたと思う。

FF15は確かにチグハグで中途半端なゲームだ。欠点も大量にある。
しかし、それでも、FF15はまぎれもなくFFだった、と言わざるを得ない。
普通という枠組みには収まらない、特別な体験がそこにはあった。
かけがえのない仲間たちとの旅。その一点は本当に楽しかった。そして最後のシーンはとても感動した。
仲間の絆という部分に関しては、完璧に芯が通っている。これが自分たちの見せたいものだ、という作り手の叫びが伝わって来る。このゲームにしかない感動がある。だから俺は、このゲームを愛せる。

ふぅ。良くも悪くも想像を超えたゲームだったな。
蓋を開けてみれば凸凹だらけの道だったが、4人で共に歩んだ旅路を振り返れば、それはとても輝いて見えた。
改めて、FFは特別なゲームであると感じた。