魅力あるストーリー



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PS4とPS3のRPG。開発はバンダイナムコ。

出だしからいきなり、主人公が最も信頼する人物に最愛の人が殺されるという、インパクトのある出来事が起こり、掴みは抜群。世界に平和をもたらし救世主となったその人への復讐を誓い、主人公側が悪として描かれるストーリー展開は、今までにあまりない感じで面白い。
一般市民に対してもわりかし迷惑をかけているので、主人公陣営に共感しにくい面はあるが、激情のままにひた走る彼女の姿は心を動かす勢いがある。個よりも全を大事にする敵の組織と、自分勝手なエゴをぶつける主人公たちの対比を丁寧に描き、それぞれの硬さと脆さを浮き彫りにし、ストーリーの歩みとして理と感情というテーマが実感できる構成は見事。
明らかに身勝手なのは主人公たちだが、だからこそ自分のために生きる彼女らの姿はとても解放的で、抑圧された現代社会に生きるユーザーに響く。復讐は何も生まない、復讐して殺された人が喜ぶのか、などという安易な理論にこのストーリーは帰結しない。復讐という形ではあるが、それが彼女にとって前に進むということであり、それが彼女の生き様であり、それが信念を持って生きることだ、という強いメッセージに繋げているのはセンスオブワンダー。
最後の最後まで、敵を単純な悪とせず、主人公を単純なヒーローとして描かなかったことで、安易な勧善懲悪ではなく、何かを犠牲にしても譲れない信念を語るストーリーになっていて、本当に熱かった。
演出や台詞にしても、RPGにありがちな陳腐さは少ない。明らさまに分かりやすくせず、行間を大事にして、ユーザー自身が心の中で咀嚼し、染み渡るような作りになっている。主人公が迎える結末がその際たるもの。あの展開にはビックリした。驚きがありつつ、様々な意味が込められた、これ以上ない終わり方だったと思う。
今までのテイルズと言えば、薄っぺらい心の闇やいい加減な種族間の対立など、無いよりマシレベルの中途半端なプロットの中で、ピクニック気分でじゃれ合ってるうちに何となく世界を救っていたという90年代B級ファンタジーを地で行っていたが、今作は実に重厚で胸が熱くなるストーリーを見せてくれた。他のRPGとは一段格が違う風格すら漂っている。

もちろん、テイルズのウリであるキャラの仲の良さは相変わらず。今作は主人公が半魔物化しているため最初らへん愛想がないのだが、徐々に氷解して人の心を取り戻していくドラマ性と、お前こんなキャラじゃなかっただろと突っ込みたくなるツンデレ的なギャップの両面を同時に楽しめる。
いつも通り、道中でキャラ同士の掛け合いが凄まじい勢いで挟まるのだが、その会話の凝り方がまた尋常じゃない。キャラの魅力を掘り下げてるし、上手いことオチを付けるし、ちょっと考えさせるようなこと言うし、ギャグもそれなりだし、一々面白い。よくぞあれだけのボリュームを安定した質を保って作れるなと感心するばかりだ。

と、ストーリー、キャラクターに関しては申し分のない出来なのだが、戦闘がちょっと魅力ないね、これ。
技の個性が分かりにくくて管理しにくいうえに、ゲージさえ残っていればどんな組み合わせでもコンボが組めるから連打ゲーになりがち。軸となるのは様々な用途で使うソウルゲージの管理だけど、それを貯める方法が、敵を倒したり、状態異常にしたりと(ほとんどの技に状態異常が付属してる)、運の側面が強く、要するに適当に連打してれば何とかなりますよーという感じで面白くない。
今作みたいな、やり方次第で凄い効率性を突き詰められる自由度があるが、こうすれば有利になるという明確な戦略の軸がない戦闘システムは好きじゃないんだよな。徹底的に技や行動を管理すれば凄く深いのは分かるんだけど、そこまでのハードルが高い。それは作り手も分かってるから、基本的にはゴリ押しで何とかなるように調整している。結果、やり込む気のない俺は退屈だけど楽なゴリ押しの道を選んでしまう。
エクシリアのリンクシステムみたいに、有利・不利の関係性がはっきりしていて、状況に応じてジャンケンポン感覚で切り替えていくという、楽に考える必要性を作ってくれる戦闘システムの方が俺は好き。この手のシステムを作るのが上手いのがスクエニ。
ともかく好みの問題ではある。爽快感はあるし、それでいてやり込めば奥深いシステムなので、好きな人は好きだと思う。俺は合わなかった。

フィールド、探索に関してはいつものテイルズ。あまりクオリティは高くない。戦闘も退屈で、中々前に進まなかったが、ストーリーが盛り上がる後半からは一気呵成。すぐだった。
やっぱストーリーを一方的に押し付けてくる日本のRPGは、話さえ面白ければ本当に熱くなれて良いなぁ。一本道で、選択肢がなく、プレイヤーが主人公になれないストーリーなんて映画でやれよと言われるかもしれない。でも、ストーリーの熱が、ボタンを押す指に伝わるこの気持ちの昂り。キャラに寄り添い、共に軌跡を歩んで大団円を迎えるドラマの一体感。この感動は、キャラと一緒に困難を乗り越えていくことができる、ゲームだから得られるものだ。
実に日本のRPGを堪能させて貰った。