これぞ究極の映画体験ゲーム



image


PS4のアクションゲーム。開発はノーティードッグ。

はぁ、映像ヤバすぎるでしょこれ。もうため息が出るほど凄い。ゲームのCGはここまで来たのかと驚くばかり。
凄いのは、単純なグラフィックの質だけではない。カメラワーク。アートデザイン。演出。モーション。奥行き。映像を構築する、全ての要素が異次元のレベルに到達している。HD世代になってから映画のようなシチュエーションを体験するゲームが増え、特に海外のゲームはその点に関して目を見張る物が多かったが、本作はその中でも明らかに飛び抜けている。格が違う。
そんな最高クラスの映像技術で、インディージョーンズを彷彿とさせるシチュエーションをこれでもかと体験できるのだから堪らない。ムービーでしか無理でしょというアクションや演出をシームレスにプレイアブルとして体験させてくれるのはいつもの事だとは言え、本当にいちいちスケールが大きくて、いちいち見せ方が上手いのだから驚かされてしまう。「やべぇ・・・やべぇよこれ・・・」と、ぶつぶつ呟いている気持ち悪い俺がいた。

しかもさぁ、ちゃんと自分が動かしているという実感があるんだよね。近道したり迷子になったりするカーチェイスとか、幅広い戦い方がある車両での銃撃戦とか、道に迷いながら戦車から逃げるシーンとか。こういう映画的な臨場感を体験させるシークエンスは、大抵の場合、演出に沿って決められたパターンをなぞるだけのものが多いのに、このゲームは圧倒的な作りこみとバランス調整で、プレイヤーが考えながら動ける余地を作っている。決められた演出をなぞるのではなく、自分自身の行動がシーンを作り上げているのだ。だから、ド迫力のアクションが生の体験として伝わってくる。
それは戦闘面でも同じ。マップがより立体的となり、ガジェットや仕掛けが増え、ステルスもやりやすくなった今作は、よりフレキシブルでカッコ良いアクションを演出できるようになった。それでいてシンプルさは貫いており、深く考えずにテンポ良くアクションができる。
アンチャーテッドは、ゲームとしてそこまで深いものがあるわけではない。このゲームのコンセプトはあくまで映画的な体験をゲームとして感じさせることであり、全ての要素がそれを支えるためのファクターだ。故に、今までは決められたシチュエーションの通りに動いて決められた演出を体験する、という側面が強いゲームだった。
しかし、本作はそれなりにアプローチの幅を作って、工夫の余地を生み出している。そしてそれはゲームとしての手応えだけではなく、コンセプトを高める演出としても生きている。しかも決してテンポを乱していない。このバランス取りは素晴らしいとしか言いようがない。

主人公ネイトさんの化け物じみた身体能力はいつも通り。あり得ない角度と高さの崖を自分の身体一つで登っていく姿は痛快の一言。神の如き握力を駆使して道なき道を強引に進んでいくのはアンチャーテッドの醍醐味だが、映像の奥行きが増した今作はその点が更にパワーアップ。画面が引いた時、あまりのスケールにビビってしまった。絶対に踏み外す事はないと分かっていても、途中で足場が崩れたり変形したりすると心臓がドキッとなる。ネイトさんが事あるごとにヤバいを連呼してくるから余計に焦る。
そしてようやく頂上に辿り着き、上から見下ろした時に広がる風景は圧巻の一言。今までの足跡を振り返り、ここまで来たのかと感慨に更けまくり。特に難しい事をさせられるわけでもないのに達成感を感じてしまうこの没入感は相当なものだ。

そして、本作がシリーズ最終作という事で注目のストーリー。宝探しに人生を懸けている兄を登場させて、トレジャーハンターの本能と現実的な問題の狭間で葛藤に悩む主人公を揺さぶる物語は中々重厚に語られている。今回のお宝は、財宝に取り憑かれて自分しか見えなくなった海賊の秘宝なのだが、その設定が、自分の為ではなく誰かの為に行動するようになった主人公の心理変化を上手い事際立たせていた。最後の終わり方も、本作のテーマを上手く畳む秀逸なものだ。
しかし、キーパーソンである主人公の兄がなんか浮いているんだよなぁ。唐突な兄弟設定というのもあるが、あんまり兄弟愛が伝わって来ない。兄が海賊王の宝に執着する裏には実は兄弟の秘密が・・・みたいな、目的と兄弟愛を繋げて一捻りしてくるかと思ったが、特に何も工夫なく薄っぺらいままに終わってしまった。血の繋がり描いときゃとりあえず感情移入しやすいでしょと言わんばかりの付け焼き刃な感じで、兄弟という関係だけでゴリ押ししてる気がしてならない。

ボリュームはシリーズ最長。俺は15時間くらいかかった。最初はかったるいチャプターも多いが、中盤からは一気呵成。もうスペクタクルが止まらない。特に戦車や車両に追われながら街から脱出するシークエンスはPS4屈指の名シーン。たった数分の場面のためだけにあれだけ広大で洗練されたマップを作ってしまうとか凄すぎる。
ロケーションとしては、やはり見所は、トレジャーハント系の王道であり、アンチャーテッドシリーズのお約束でもあるジャングル。今までのノウハウをフルに解き放ったのか、映像がとてつもない事になっている。誇張抜きで完全に実写にしか見えない。これがCGだとかおかしな話だよなぁ。

いやー、文句無しにシリーズ最高傑作だったな。アクションは薄っぺらいままだがあくまでテンポを重視し、AAAタイトルのスタンダードになりつつあるオープンワールドに浮気もせず、アンチャーテッドが大切にしてきた道だけをしっかりと見据え、そこを突き詰めている。かと言って単なるシリーズ作品のコピーにならず、ちゃんと進化もしている。結果として、究極の映画体験ゲームが生まれた。この方向性に関しては一切他を寄せ付けない、王者の風格漂う圧倒的なクオリティだ。
ノーティードッグは、これ以上ないくらい素晴らしい有終の美で、アンチャーテッドを締めくくって見せた。