得たもの、失ったもの

PS4とXboxOneのRPG。開発はベセスダソフトワークス。
フィールドがシームレスで進行に関係なくどこでも自由に行けて、会話の選択肢やストーリーの分岐が豊富でプレイヤーの考え方により物語は変化して、装備やスキルの種類が多種多様で戦い方にも幅があって、と、ユーザーの意思をダイレクトに反映し、自分自身がゲームの主人公として世界に入り込む、という臨場感を大切にしたベセスダRPG。
同ゲームの特徴は、遊び場は用意したから後は好きに遊んでくれと、プレイヤーの想像力に委ねるゲームデザインを徹底的に貫いていることで、具体的に言うと、調整をしていなかった。何処からでも進行出来るようにするためフィールドのどこに行ってもどのダンジョンに行っても敵の強さは一定だし、どの遊ばせ方にも対応させるためにレベルデザインやゲームバランスはかなり大雑把だし、ストーリーも演出は殆どしない。
自由に遊べる、遊べない、という観点から良くベセスダRPGと日本のゲームは比較されるが、もっと言うとそれは、調整されているか、否かだ。
日本のゲームはある程度調整して縛りをかけることで、徐々に出来ることが増えるメリハリを作ったり、どんどん敵が強くなって自分も強くなってと盛り上げ曲線を作ったり、戦いに思考を求めたり、ストーリーに演出を仕込んでドラマチックに仕上げたり、と、とにかくゲーム側があの手この手で工夫して、ユーザーが飽きないように、単調にならないようにと作られている。一方で言い換えるとこれは作り手側の押し付けでもあり、遊び方はかなり制限される。
ベセスダRPGはこういう作り手の押し付けを徹底的に排除し、とにかくプレイヤーの感じ方、遊び方次第としている。はっきり言ってメリハリに欠けるし、やりごたえは薄いし、ストーリーも単調に感じられて仕方ないが、自分の考えや行動を全て受け止めてくれるという感覚はその弱点を払拭するだけの臨場感がある。
これらは方向性の問題であり、どっちの方が良いとか悪いとかは決してない。好き嫌いで言えば俺は日本のスタイルの方が好みだが、ベセスダのRPGは自由度を付け焼き刃でなく一貫としたコンセプトのもとに組み込んで突き抜けているので圧倒されるものがあった。
しかし一方で、スカイリムの頃からベセスダの考え方に変化があるのが見て取れる。ペラペラモーションを見直して見栄えを良くしたり、ダンジョンに仕掛けを作ったり、戦闘のバランスを厳しくしたりと、レベルデザインを工夫したりと、今までプレイヤーの想像力に丸投げしていたのに最近はある程度調整してゲーム側から歩み寄っていた。
で、フォールアウト4。今回はスカイリム以上に、調整という部分に関して意識を持って作られている。
まず、バトル部分が調整されている。敵は隠れたり引いたりと賢くなり、ただ闇雲に撃つだけでは突破しにくいし、ボスはちゃんと強い。モーションや操作性も洗練されシューティングアクションとして格段に面白くなっている。
育成部分も深まった。武器の改造が新たに出来るようになり、その種類がかなり幅広い。改造には素材が必要なので、戦闘やガラクタ拾いの必要性が増している。たまにレア度の高い敵が出て来て、そいつを倒すと漏れなく特別な装備が貰えるというのも良いアクセント。
戦闘に歯応えが生まれたのと同時に、育成要素も高まった事で、敵が強いから育成しよう、あの武器を改造したいから素材を探そう、と、常に目的を持ちながら遊べるようになった。言い換えると、探索のキッカケを作ってくれている。このシリーズ特有の発見に満ちたフィールドと、調整が連動し、今作は随分とモチベーションを保ちやすい。
ストーリーも面白い。冷凍睡眠から目覚めてシェルターから出たらそこは核が落とされた200年後の世界だった、という始まりがまずインパクトある。攫われた子供を探す、というのが目的だが、ただ街を巡っていくだけでなく、精神世界に入ったり、飛空挺が現れたり、巨大なロボットが出て来たり、と定期的に大きな出来事が起こって関心を引いてくれる。特に終盤はクライマックスの連続で、やめ時が見つからなかった。
今作も陣営毎にお話があるが、それらもメインストーリーに密接にリンクし、最後の運命を別ける分岐として機能しているのがとても良い。ゴールがはっきりしているから、目的に向かって突き進んでいるという実感がある。
会話が長いゲームだが、今作はカメラワークや演出で見せ方を調整しているので印象的に話が伝わってくる。とある場面はかなりドラマチックに仕上げられており、感動的ですらあった。
そして、ある意味で今作の最大のポイントは、主人公が声付きで喋ること。相槌だって打つ。
今までは想像の余地を膨らませるためにノーボイスであえて無個性化していたが、今回はフルボイスで喋りまくる。要するに主人公にキャラ付けがされている。プレイヤーが主人公になり切る、というこのゲームが最も大事にしていた要素をある程度抑えてまで、ストーリーにドラマを持たせようとしているわけだ。これは大変革だ。
が、これに関しては微妙だと言わざるを得ない。ボイスの種類は選べないので(膨大な台詞量があるから仕方ないが)キャラメイクの顔と声が合わないと終始違和感が付きまとう事になるし、相槌や声かけも場面に合わないフレーズが多くて緊張感が冷めることも多々ある。
何より、今作も主観型のストーリーテリング形式は変わらないのに、声色や喋り方で主人公の感情が伝わって来てしまうので想像の余地が狭まっている。ボイスだからこそという演出もたまにあるが、ほんの一部のみ。どちらかと言うとあまり良い方向には作用していない。
他に細かい部分としては、前作までは死んだらそこで永遠のお別れだったNPCの仲間は今回死んでも戦闘不能になるだけだし、武器の耐久性もなくなっている。
これらはサバイバルという世界の無情さを意識付けさせる仕様だったが、その臨場感よりも、遊びやすさを取ったわけだ。今作の方向性が伺える一端だ。
あと、ベセスダRPG最大の欠点であるフリーズが今作は全くなかった。厳密に言うと全く無いわけではないだろうが、少なくとも俺は40時間やって一度も固まらなかった。前作は20回くらいフリーズしたのに、ちょっと感動。まぁこれが当たり前なんだけど。
ただ相変わらずロードが長い。建物やダンジョンに入る度に30秒くらい中断されるから集中力が途切れやすい。没入度重視のゲームでこれは大きな欠点。
バグも多い。女性が喋ってるのに字幕が男口調という分かりやすいのに始まり、引っかかってNPCが動かなくなったり、会話が流れなかったり、ボタンが押せなかったりとかザラにある。進行不能に陥ったのも一度や二度ではない。
今までは主人公を演じるというロールプレイとしては完璧ながら、それ以外の部分がさっぱりで、総合的に見たRPGとしてはそんなに・・・というどちらかと言うと雰囲気ゲーに近かったが、今作は一気に弱点を払拭してきた。自由度と探索は相変わらず突き抜けていながら、ストーリー・戦闘・育成もバランス良くまとまり、隙のない作りになっている。
一方でロールプレイとしては尖りに尖っていた今までと比べると薄くなっている。やっぱり、ゲーム的な味付けを排して何んにも手が加えられてなかったあの無秩序な空間が、色んなイレギュラーを生んで生きた世界を作っていたのだろうなぁと感じる。
結局、何かを得るには何かを犠牲にしなければならないわけで、何でもかんでも+すれば良いわけではないのが、モノ作りの難しいところだね。
少なくとも、今作は俺好みの作りではあった。

PS4とXboxOneのRPG。開発はベセスダソフトワークス。
フィールドがシームレスで進行に関係なくどこでも自由に行けて、会話の選択肢やストーリーの分岐が豊富でプレイヤーの考え方により物語は変化して、装備やスキルの種類が多種多様で戦い方にも幅があって、と、ユーザーの意思をダイレクトに反映し、自分自身がゲームの主人公として世界に入り込む、という臨場感を大切にしたベセスダRPG。
同ゲームの特徴は、遊び場は用意したから後は好きに遊んでくれと、プレイヤーの想像力に委ねるゲームデザインを徹底的に貫いていることで、具体的に言うと、調整をしていなかった。何処からでも進行出来るようにするためフィールドのどこに行ってもどのダンジョンに行っても敵の強さは一定だし、どの遊ばせ方にも対応させるためにレベルデザインやゲームバランスはかなり大雑把だし、ストーリーも演出は殆どしない。
自由に遊べる、遊べない、という観点から良くベセスダRPGと日本のゲームは比較されるが、もっと言うとそれは、調整されているか、否かだ。
日本のゲームはある程度調整して縛りをかけることで、徐々に出来ることが増えるメリハリを作ったり、どんどん敵が強くなって自分も強くなってと盛り上げ曲線を作ったり、戦いに思考を求めたり、ストーリーに演出を仕込んでドラマチックに仕上げたり、と、とにかくゲーム側があの手この手で工夫して、ユーザーが飽きないように、単調にならないようにと作られている。一方で言い換えるとこれは作り手側の押し付けでもあり、遊び方はかなり制限される。
ベセスダRPGはこういう作り手の押し付けを徹底的に排除し、とにかくプレイヤーの感じ方、遊び方次第としている。はっきり言ってメリハリに欠けるし、やりごたえは薄いし、ストーリーも単調に感じられて仕方ないが、自分の考えや行動を全て受け止めてくれるという感覚はその弱点を払拭するだけの臨場感がある。
これらは方向性の問題であり、どっちの方が良いとか悪いとかは決してない。好き嫌いで言えば俺は日本のスタイルの方が好みだが、ベセスダのRPGは自由度を付け焼き刃でなく一貫としたコンセプトのもとに組み込んで突き抜けているので圧倒されるものがあった。
しかし一方で、スカイリムの頃からベセスダの考え方に変化があるのが見て取れる。ペラペラモーションを見直して見栄えを良くしたり、ダンジョンに仕掛けを作ったり、戦闘のバランスを厳しくしたりと、レベルデザインを工夫したりと、今までプレイヤーの想像力に丸投げしていたのに最近はある程度調整してゲーム側から歩み寄っていた。
で、フォールアウト4。今回はスカイリム以上に、調整という部分に関して意識を持って作られている。
まず、バトル部分が調整されている。敵は隠れたり引いたりと賢くなり、ただ闇雲に撃つだけでは突破しにくいし、ボスはちゃんと強い。モーションや操作性も洗練されシューティングアクションとして格段に面白くなっている。
育成部分も深まった。武器の改造が新たに出来るようになり、その種類がかなり幅広い。改造には素材が必要なので、戦闘やガラクタ拾いの必要性が増している。たまにレア度の高い敵が出て来て、そいつを倒すと漏れなく特別な装備が貰えるというのも良いアクセント。
戦闘に歯応えが生まれたのと同時に、育成要素も高まった事で、敵が強いから育成しよう、あの武器を改造したいから素材を探そう、と、常に目的を持ちながら遊べるようになった。言い換えると、探索のキッカケを作ってくれている。このシリーズ特有の発見に満ちたフィールドと、調整が連動し、今作は随分とモチベーションを保ちやすい。
ストーリーも面白い。冷凍睡眠から目覚めてシェルターから出たらそこは核が落とされた200年後の世界だった、という始まりがまずインパクトある。攫われた子供を探す、というのが目的だが、ただ街を巡っていくだけでなく、精神世界に入ったり、飛空挺が現れたり、巨大なロボットが出て来たり、と定期的に大きな出来事が起こって関心を引いてくれる。特に終盤はクライマックスの連続で、やめ時が見つからなかった。
今作も陣営毎にお話があるが、それらもメインストーリーに密接にリンクし、最後の運命を別ける分岐として機能しているのがとても良い。ゴールがはっきりしているから、目的に向かって突き進んでいるという実感がある。
会話が長いゲームだが、今作はカメラワークや演出で見せ方を調整しているので印象的に話が伝わってくる。とある場面はかなりドラマチックに仕上げられており、感動的ですらあった。
そして、ある意味で今作の最大のポイントは、主人公が声付きで喋ること。相槌だって打つ。
今までは想像の余地を膨らませるためにノーボイスであえて無個性化していたが、今回はフルボイスで喋りまくる。要するに主人公にキャラ付けがされている。プレイヤーが主人公になり切る、というこのゲームが最も大事にしていた要素をある程度抑えてまで、ストーリーにドラマを持たせようとしているわけだ。これは大変革だ。
が、これに関しては微妙だと言わざるを得ない。ボイスの種類は選べないので(膨大な台詞量があるから仕方ないが)キャラメイクの顔と声が合わないと終始違和感が付きまとう事になるし、相槌や声かけも場面に合わないフレーズが多くて緊張感が冷めることも多々ある。
何より、今作も主観型のストーリーテリング形式は変わらないのに、声色や喋り方で主人公の感情が伝わって来てしまうので想像の余地が狭まっている。ボイスだからこそという演出もたまにあるが、ほんの一部のみ。どちらかと言うとあまり良い方向には作用していない。
他に細かい部分としては、前作までは死んだらそこで永遠のお別れだったNPCの仲間は今回死んでも戦闘不能になるだけだし、武器の耐久性もなくなっている。
これらはサバイバルという世界の無情さを意識付けさせる仕様だったが、その臨場感よりも、遊びやすさを取ったわけだ。今作の方向性が伺える一端だ。
あと、ベセスダRPG最大の欠点であるフリーズが今作は全くなかった。厳密に言うと全く無いわけではないだろうが、少なくとも俺は40時間やって一度も固まらなかった。前作は20回くらいフリーズしたのに、ちょっと感動。まぁこれが当たり前なんだけど。
ただ相変わらずロードが長い。建物やダンジョンに入る度に30秒くらい中断されるから集中力が途切れやすい。没入度重視のゲームでこれは大きな欠点。
バグも多い。女性が喋ってるのに字幕が男口調という分かりやすいのに始まり、引っかかってNPCが動かなくなったり、会話が流れなかったり、ボタンが押せなかったりとかザラにある。進行不能に陥ったのも一度や二度ではない。
今までは主人公を演じるというロールプレイとしては完璧ながら、それ以外の部分がさっぱりで、総合的に見たRPGとしてはそんなに・・・というどちらかと言うと雰囲気ゲーに近かったが、今作は一気に弱点を払拭してきた。自由度と探索は相変わらず突き抜けていながら、ストーリー・戦闘・育成もバランス良くまとまり、隙のない作りになっている。
一方でロールプレイとしては尖りに尖っていた今までと比べると薄くなっている。やっぱり、ゲーム的な味付けを排して何んにも手が加えられてなかったあの無秩序な空間が、色んなイレギュラーを生んで生きた世界を作っていたのだろうなぁと感じる。
結局、何かを得るには何かを犠牲にしなければならないわけで、何でもかんでも+すれば良いわけではないのが、モノ作りの難しいところだね。
少なくとも、今作は俺好みの作りではあった。
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