雰囲気だけで良かった



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PSVITAのアクションゲーム。開発は日本一ソフトウェア。

夜道を歩くゲーム。歩くと言っても一枚絵の中を俯瞰視点でキャラを動かすという迫力に欠けるものだが、アートワークが中々良い。暗く濁った光の質感と何となく郷愁を感じる背景の薄汚れた色合いの組み合わせが絶妙で、現実的と言うよりはデフォルメが強いが夜の儚さが分かりやすく伝わって来る。
そして夜道なだけあって異様に静か。自動販売機の音とか、遠くから聞こえる車の排気音とか、缶の鳴る音など、何気ない音が耳にこびり付いて仕方ない。静と動のコントラストが映えている。
映像やサウンドは夜の性質を捉えるという点に向かって的確に作られており、夜の持つ異質な空気感はそれなりに伝わって来る。

終わり。このゲームの魅力はそれだけ。練り込みの足りなさ具合はフラッシュゲームレベル。
ライトを照らさないと敵が見えず触れたら即ゲームオーバーというピーキーなバランス調整は、無闇に走り回る事を封じ、ゆっくり歩き回らせる事でより夜道の情景を伝わりやすくしているが、基本的にただ走って逃げるしか方法がないので単調。もっとアイテムや仕掛けを駆使して回避する方法があればと思うが、申し訳ない程度にしかその要素は含まれていない。
で、あまりにもこちらの選択肢が少ないのにやたらと難易度だけは高いからウンザリする。もう何回も死んだ。雰囲気重視のゲームでここまでシビアにする理由が分からない。戦略性やアクション性があるなら理解できるが、これは一言でいうと只のタイミングゲー。少しでもタイミングが合わないと死ぬというパターンが多すぎる。はっきり言って理不尽。何回もリトライしているうちに怖いという気持ちよりも徒労感の方が強くなる。
チェックポイントでしかセーブが出来ず、セーブするためにもアイテムが必要でと、昔のバイオハザード的なサバイバル感と緊張感を作り出そうとしている取り組みも、死にまくるゲームバランスのせいでただ面倒臭いだけのものに。まぁ難易度関係なしに、この仕組みはいらないんだけど。このゲームは初見殺しの演出がホラー的で面白いのだが、全然チェックポイントが見つからないのに唐突な罠で理不尽に死ぬとイライラしか生まれなかった。もっと素直に演出と雰囲気を楽しませて欲しい。

低予算ゲーなんだしやれる事は限られているのだから、ゲーム性を出そうとして面倒な事になってる要素は全部排除して、雰囲気に浸るという点だけに特化して作って欲しかったな。頑張って工夫しようとしている部分が大体悪い方向に作用してる。雰囲気は良いが、それだけで終わってればと思わずにはいられない。
ちなみに、夜道のアートワークは良いが、ホラーというよりは、夜って神秘的だなぁと感じるだけで、怖くはなかった。