ゲーム以外の雑感



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《映画の話》

・モテキ

なんかパッケージの表紙では大勢の女性がわっしょいしてて、あぁこいつら全員から言い寄られるハーレム映画なのかぁ、と思ったら、実際に言い寄ってきたのは2人くらいで、思ったよりもただのモテモテ映画ではなくて非モテの葛藤をそれなりに描いて見せてる人間ドラマだったけどその掘り下げ方が安易なためテンプレートだなぁとしか感じられず、普通に単純なラブラブ映画として見せてくれた方が面白かっただろなぁと思った。


・ハンニバル

アンソニーホプキンスが人をムシャムシャパクパクする映画。
だったのは前作の方で、今作の博士はそれ程食欲旺盛ではなかったが、それでも何をやらかすか分からない異様な緊張感があった。
羊たちの沈黙の話をすっかり忘れてしまってる俺には、終盤の主人公が博士を守ろうとするシーンは「おい、こんな人殺しさっさと成仏させろよ!」としか思えなかったが、博士の主人公に対する偏執と、トラウマが一周して博士に対して好意的な感情が生まれた主人公の歪んだ関係性は面白かった。


・天使と悪魔

前作はキリスト教が密接にストーリーに絡み知識がないと分かりにくかったが、今作は舞台装置として使われているだけで分かりやすいエンターテイメントになった。
終盤、爆発から都市を守り、光り輝く空からパラシュートが降りてくるシーンはまるで神様が具現化されたようで、中々に面白い見せ方。実は全てそいつのマッチポンプであり事件の元凶だったというオチも含めて皮肉的で良い。人は結局神様にはなれない。
ただのアクション映画ではなく、メッセージ性もある良作。


・ヘンゼルとグレーテル

“森で迷ったヘンゼルとグレーテル兄妹は、お菓子の家を見つけました。その家の家主は悪い魔女で、兄妹は騙されて捉えられてしまいます。しかし兄妹は、隙を見て魔女を釜に突き落として殺しましたとさ。めでたしめでたし。”

というのはプロローグで、物語はその十数年後。何故か二人が立派な魔女ハンターになってるという所から始まる。
ヘンゼルとグレーテルの魔女殺しのスキルは尋常ではなく、あの手この手で魔女を追い込み、次々とブチ殺していく様が愉快。アクションの動きも凄いが、魔女の動きもトリッキーで面白い。それだけといえばそれだけの映画だが、ヘンゼルとグレーテルの童話をここまで振り切ってアクション映画に仕立ててしまうのは痛快だ。
ちなみにヘンゼルはお菓子の家でお菓子を食べ過ぎた過去のせいで糖尿病を発症。メルヘンちっくな部分を生々しく現実に引き戻す設定だが遊び心が感じられて良い。


《名探偵コナンの話》

最近のコナンはやたらとサイコな犯人を押し出している。コナンはトリック重視のミステリーであるため犯人の人物像にはあまり焦点が当てられないので意外だ。
しかしこれが取って付けた感ありありで酷い。ものすごく安易なこじ付けで人格描写してるので薄っぺらいと言わざるを得ない。先週は、挫折を知らない人間だからとか言って行動原理を作っていたが、そういう人間だと感じさせる積み重ねが全くないので説得力がないし、一つの側面だけで人間性を決め付けている偏った考え方が不快。
30分にも満たない尺ではぽっと出のキャラの内面を掘り下げるのは難しいので、こういう話こそ前編後編の二部制で作れよと思うが、最近のコナンがこの方向性なのは人間の業を感じさせる深い話を作ろうという意欲から来てるのではなくて、単にネットで話題になることを狙ってるだけの魂胆が丸見えなのでそういう仮定は無意味だわな。露骨な灰原押しと言い、媚びすぎ。


《ドラマの話》

・キリング〜闇に眠る美少女〜

女の子を殺した犯人を捜す話。最終話があまりにも唐突でこの終わり方は酷いと思いきや、実はそこはまだ折り返し地点で、シーズン2に続いた。なんか見る気が無くなった。でも真犯人はちょっと気になる。
基本的には、犯人見つけた⇒実は違った、を繰り返しているだけで、堂々巡り。そもそも犯人とする根拠があまりにも薄いうえに、犯人と決め付けられた人間の行動原理がかなり強引で、無理やりどんでん返しを作ってるようにしか見えない。
あとは主人公と相棒が能無しというか、こいつらの勇み足のせいで疑われた人間が社会的にも肉体的にも死にかけてるのに態度はでかいし、全然反省しねーし、結局同じ事を繰り返すし、警察って嫌な人種だなあという印象ばかりが残るドラマだった。


《漫画の話》

・「賭博黙示録カイジ」福本伸行

今更すぎるけどこれはとても面白い漫画ですね。テンポは良いし、賭博は駆け引きが深いだけでなくルール自体がとても単純で分かりやすいし、ストーリー性は薄いが台詞だけで主人公達の置かれている堕落した境遇をリアルに表現して負けられない緊張感を出してるし、嫌な奴をギャフンと言わせる爽快感もあるし、幕引きも見事。
特に利根川との戦いで、相手の優秀さを逆手に取ったトラップを仕掛けて成功して主人公が言った「お前を信じたからだよ」という言葉には痺れた。裏切りやインチキが横行し、何も信じられるものがなかったのに、最後の最後は、信じる力が勝ちに繋がるというね。こういうの好きよ。
愛や勇気や友情と言った暑苦しさを徹底的に排除し、頑なに現実の重さを描いた漫画であるが、それだけで終わる事なく、ここぞというところでドラマを作り、エンターテイメントとしてのカタルシスもあった。このバランス感覚が素晴らしい。これは紛れも無い傑作ですなぁ。


《小説の話》

・「深夜百太郎 入口」舞城王太郎

50個のショートホラーが詰まった小説。
いやぁ舞城はホラーに向いてるねぇ。作者の特徴と言えば、グロテスクな描写、突飛な設定、唐突な展開であるが、特に今回はホラーテイストなので効果的だった。いきなりエグい描写を挟んでくるから予測出来なくて怖い。
ストーリーはホラーになっても相変わらず実直で誠実だった。上で特徴をあげたが、舞城は、何も意味なく文章を飛躍しているわけではなく、ただインパクトを与えるためだけにラディカルな技法を使っているわけでもない。物語の展開装置やトリックの種として機能させているのは勿論だが、人間の意志や感情や煩悩やコンプレックスと言った、つまり自己の発信を究極に表現したものとしてそれらが表されている。
つまるところホラーありきで書かれているのではなく何かを伝えるためにホラーの設定を使っているので、これ別に怖がらせる気ないよね、って話がかなり多い。怖いと思える大部分は文体によるもの。中にはホラー重視のショートもあるけどね。


・「母性」湊かなえ

全編に渡ってずーっと「こうすれば天国のお母さんが褒めてくれる!」と、自分の母親にどう思われるかという観点からしか物事を考えられない母と、子供ではなく自分の母親しか見てない母に本物の愛情を注いで欲しいと渇望する娘の葛藤をネチネチ描いてるだけの話だが、序盤の叙述トリックを使ってミステリーっぽく見せてるのが上手く働いてスイスイ読ませる。
母の歪みきった精神状態は面白く、かなり強烈に母親への依存を描いていて、「うわぁ・・・この人ヤバいよ」とドン引きしながら読んでいたが、その一方で人事には見えなかった。人間誰しも、何かに依存しているのだから。
スイッチは人それぞれだろうが、潜在意識から条件反射的にくる衝動というものは誰しも必ず持っている。それは癖みたいなもので、中には合理性や一般性を欠いたものも多く、他人からして見れば中々理解し難い。それは本人には分かっていても、潜在意識とは自分の根底と直結しているものなので中々上手くコントロール出来ない。本当にこれはどうしようもない時がある。
本人からして見ればそれは自分の長年積み重ねてきたアイデンティティに関わってくる問題であり、それを曲げるというのは途方もなく勇気と痛みを強いることだからだ。
だからこの母の気持ちは良く分かる。恐らくどうしようもないのだろう。だけど、親に愛を求める娘の気持ちはもっと良く分かる。
本能のままに生きる母と、本能のままに親に愛を求める娘のすれ違いっぷりが、とても切ない小説だった。


《野球の話》

プレミア12はなんか面白くない。メジャーリーガーが参加しない似非世界大会だからだろうか。もちろん勝ってほしいけどそれよりスワローズの選手が怪我しないで帰って来て欲しい。