特別でありたい



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PS4、PS3、PSVITA、XboxOneのテキストアドベンチャーゲーム。開発は5pbとニトロプラス。

シュタインズゲートに代表される科学アドベンチャーシリーズの第4弾。
良いなぁこれ。個人的にはシュタインズゲートよりツボかもしれん。エンターテイメント性が強いシュタゲに対してこれはメッセージ性が強い作品だから単純な比較は出来ないけど。
何を書いてもネタバレになるので中々言いにくいが、主人公がメタ的な意味で主人公になる、という話の構造が面白かった。何者かになりたい、という自己承認欲求をかなり大胆にミステリーのトリックとして仕込んでいるのがとてもセンセーショナル。
基本的には行き過ぎた自意識をアイロニー的に捉えている話だが、根底にあるのは自分が特別でありたいという心の叫びであり、特に終盤の展開はグサッときた。誰だって何者かになりたい。何かになれなくてもせめて自分らしくありたい。普遍的なテーマだが、特にサブカル向きに色濃く発信されており、このゲームのターゲットとする層には深く刺さる内容となっている。
妄想という名の尋常じゃない自我によって超能力が引き起こされるという設定は少しやりすぎな感があるが、このストーリーのテーマにズバリ当てはまっているからあまり気にならないし、そういう「自分」という部分に重きを置いたストーリーだからギャルゲー並みにあざといキャラクターもすんなり馴染んでいて受け止めやすい。しかも、安易なギャルゲーキャラではなく、何故そういう人格になったのかという内面掘り下げをちゃんと行っているから、行き当たりばったりではなく、登場人物が生きていた。
ただ、肝心な主人公があんまり魅力的じゃないんだよね。知識を集めて世の中を達観した気になり他人を見下して自分を特別視しているがコミュニケーション不全で頭でっかちというキャラ設定は面白いし、それがストーリーの核として機能しているのは良いが、実際その設定が主人公の人格として感じ取れる場面が序盤以外は殆どない。台詞といい、行動といい、行動原理といい、主人公が一番忌み嫌っているはずの「普通」の主人公にしか見えない。コミュニケーション不全という部分も単に会話で吃るだけで面白味がないし、もっと自分の世界を持っている感じを強く押し出して欲しかった。
これまでの科学アドベンチャーシリーズは主人公の癖がかなり強く、退屈になりがちな日常パートを面白く見せてくれたが、本作はそのあたりが微妙。だからかテンポが悪く感じられてしまう。

ゲーム的な側面としては、特定の場面でポジティブかネガティヴを選んで主人公がそれに伴った妄想をするという要素がある。
この妄想の内容がかなり唐突かつ行き過ぎた展開で、チュンソフト産のサウンドノベルを彷彿とさせるが、ゲームオーバーで止まることなく妄想から現実に帰るという流れでそのまま継続されるので遊びやすかった。
しかし、チュンソフトのそれと違ってフローチャートがないのは不便。この妄想トリガーの選択は二週目以降から解禁されるキャラ別ルートの発見を左右するのだが、選択肢の場面まで文字をスキップするしかないという面倒くささ。
また、ちゃんと話に付いて来ているか確認するために、質問に合わせてコルクボードに事件の資料やメモを貼り付けて答え合わせさせるマッピングトリガーというものがあり、それ自体はコルクボードにどんどん情報が埋まっていくのが爽快だし刑事的な気分も味わえて面白いのだが、これが2周目以降でもスキップされずに一々求められるのがダルすぎる。もう一回解いたんだから良いじゃんよー。5pbのゲームは周回必須の作りのくせに毎回邪魔な仕様を詰め込んでくるから困る。
と言いつつも、全貌が気になったから頑張って全てのルートをクリアーしてトゥルーエンドも見た。キャラ別ルートは4つあり1つは凄く良かったが、あと3つは普通。トゥルーエンドもまぁ無難。一周目以上の感動がないのは残念だったが、新しいルートで多くの新事実が明かされるのでやった甲斐はあった。

ボリュームはかなりある。全ルート攻略で50時間くらい。
ちなみに前作のカオスヘッドノアとかなり明確に繋がっているらしいが、未プレイでも全く問題はなかった。でも、今作の事件の元となった事件が前作の話らしく、そこら辺の概要は全く説明されなかったからちょっと気になるんだよな。今更だけどやってみようか、と思ったが、キャラデザで拒否反応が・・・。カオスチャイルドのキャラテイストもエロゲーっぽくてあんまり好きじゃないけど、カオスヘッドは更にそっち寄りだなぁ。でもカオスチャイルドもかなり買うの迷ったけどやってみたら面白かったし、表面で惑わされてはダメだな。
普通の枠に納まりたくない、という、サブカルチャーの本質を、とても上手いことストーリーに落とし込んでいるゲームだった。サブカルに傾倒している人にはオススメだね。