リアリティとゲーム



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E3の雑感の続きです。

【サード】

・ダークソウル3

マゾゲーダークファンタジー、ダークソウルシリーズの新作。前作はソウルシリーズの産みの親である宮崎氏がバイザー程度にしか関わってなかったが、今作はディレクターとしてガッツリ作ってるとのこと。と、言うことは世界観のリアリティを意識したものになりそうだな。
フロムソフトウェアのダークファンタジーは、如何にして世界観にゲームを溶け込ませるか、すなわちリアリティを宿らせるか、という点に関してかなりの拘りを見せている。オンラインの仕組みや主人公が不死身である事やチェックポイントの仕様など、普通ならゲームの都合としてシステマチックに処理されるところを、その世界の設定として結び付け、世界観を構築する要素として自然に機能させている。これにより、システム的に統制された無機質な世界ではなく、真実味のある生きた世界として感じられ、臨場感が伝わってくるわけだ。
その方向性を更に追求したのが、最新作のブラッドボーン。本作の世界観は野性味溢れる死闘感をテーマとしているのだが、そのテーマにそぐわないものは徹底的に排除し、ノーガードで真正面からぶつかり合う、という一点に特化していた。魔法やガードは無くなり、防具のバリエーションも乏しくなって、遊びの幅は相当狭くなったが、要素が一点に凝縮されたことで世界観の迫真性は極限まで高まり、本物の死闘感が味わえた。あの死闘感は、そこまでの犠牲を払う価値のあるオンリーワンの魅力だった。
相変わらずオンラインの仕様が謎だったり、啓蒙システムが説明不足だったり、唐突に周回に突入したりと、中々意図した通りにいかないこともあったが、だからこそ生まれる巡り会いもある。そこも宮崎氏が大切にしている要素の一つで、予定調和の域を超えた部分があるからからこそ、生きた世界として没入する事が出来る。それはつまるところ、リアリティだ。
世界への没入感を重視したゲームは大抵の場合ゲームとしては味気なくなるが、フロムのダークファンタジーは、大迫力のリアリティを保ちながらゲームとしても非常に奥深いものになっているという、驚くべき事をやってのけている。ゲームとして大事な部分と、世界観のリアリティとして大事な部分が、互いに邪魔する事なく密接にリンクして効果を高め合っている。宮崎氏のセンスは本当に凄い。
一方で、彼が離れたダークソウル2は、ちょっと方向性が違う。
2は大きな特徴として、ユーザービリティを意識している事が挙げられる。レベルを振り直せたり、レベルが上がりやすくて色々な武器を装備出来たり、ワープが楽だったり、周回を任意のタイミングで行えたりと、とにかく遊びやすくなっていた。
ただ遊びやすいだけでなく、プレイヤーの選択肢を広げたことで戦略の幅も広がっている。それに合わせてバランス調整も図られ、例えばデモンズやダークソウルは慣れるとパリィやスタブと言ったフェイタルアクションでゴリ押し出来たが、2はあえてそれらの使い勝手を悪くし、また武器の耐久値を下がりやすくして、一辺倒の戦術が通用しにくくなり色々な選択肢がある中でプレイヤーの判断力が求められる、という点が色濃く現れたゲームになっていた。やりごたえという意味ではダークソウルやデモンズすら上回っている。
要するに、2はより遊びやすく、より戦略的に、というとてもゲームらしい味付けで作られているのに対し、宮崎氏のダークファンタジーは、多少ユーザービリティが欠落しても世界観のリアリティを大事にする、という事に重きが置かれている。基本的に俺はゲームらしい味付けのゲームが好きだが、宮崎氏の作る世界観は類稀なる魅力があるのでフロムのダークファンタジーに関しては後者の方が好みだな。
さてさてダークソウル3。今回の世界観のテーマは終末感か。流石に今作はデザイン的な部分でそれを表現するのが限界だろな。ブラッドボーンは、アクション、映像、システム、舞台、モンスター、設定、ゲームバランス、音楽、そしてプレイヤーの感情、全てが一体となったゲーム体験そのものが、死闘感のテーマを現すというとてつもない事をやってのけたが、あれは新規タイトルである程度自由にゲームデザイン出来たから実現したことだしな。
だから、宮崎氏にはダークソウルという枠組に縛られず、新しいタイトルで新しい世界観のゲームを作って欲しいんだけどね。ダークソウル2を見る限り、別に宮崎氏が関わって無くても、フロムのスタッフなら一貫としたゲームデザインとゲームバランスが整ったハードコアなゲームを作れる訳だし。
でも、今作も楽しみなのは違いない。
2016年初頭発売予定。


・シェンムー3

まさかのシェンムー新作。キックスターターで金を集めて作るらしい。
シェンムーと言えばオープンワールドというイメージが強いが、製作者の鈴木裕の話を聞いてると一番見て欲しいのはストーリーっぽいな。新作も、オープンワールドは金が集まって作れたら・・・というレベルらしいし、さして意識してないっぽい。
まぁ今ではいくらでもその手のゲームはあるし、むしろオープンワールドだとシェンムーのようなキャラクター性のあるゲームはストーリーテリングが難しいので、それで良い気がする。
しかし、ストーリー重視なら過去作をやった事がない俺はあまりそそられないなぁ。


・フォールアウト4

やってる事は前作と変わらないだろなぁと思いきや、今作は主人公がボイスで喋る、という大変革がなされている。
いや、これは思い切ったな。ベゼスダのRPGは、プレイヤーが主人公になりきってゲームの世界に入り込む、という点を徹底的に追求しており、ストーリー性は薄かったが、それは演出やドラマチックな展開など、ゲーム側が調整してこう感じて下さいみたいな押し付けをあえて排除したからであって、全てはプレイヤーの感じ方次第、としていたのがベゼスダ流のストーリーテリングだった。
しかし、ボイスが付くとなると少なからず主人公にキャラクター性が生まれるわけで、プレイヤーが主人公に成り切る、という部分の邪魔になり兼ねない。
まぁドラクエと違ってこれは主人公も頻繁に受け答えするゲームだし、これくらいの調整は良い塩梅かな。ベゼスダRPGのストーリーが味気ないのは事実で、これで前よりは物語部分も楽しめそうだな。
2015年末発売予定。


・ミラーズエッジ カタリスト

パルクールアクションゲーム、ミラーズエッジの新作。久しぶり。
前作はパルクールの疾走感を味わうというよりは、道無き道を如何にパルクールを利用して突破するか、というパズル的な側面が強く、何周もやり込んでルートを完璧に把握すればこれはとても面白いんだろなぁと思いつつも、基本的に一周したらやめてしまう俺はこのゲームも例外でなく、いまいち面白さが分からないまま終わってしまった。
本作における一週目は準備段階であるとは言え、ステージのギミックがもっと面白ければ、初見でもそれなりに楽しめたと思うんだけどね。そこら辺が前作は単調だった。久しぶりの新作だし、今作は色々なアイディアが詰め込まれてると良いな。
2016年春発売予定。


・ホナー

剣戟アクションに特化した、コンバットアクションゲーム。
普通のアクションゲームはボタンを押したら適当に剣を振り回してくれるが、このゲームはある程度どの向きに剣を振るかコントロール出来るらしく、敵のガードが甘い箇所を狙ったり、逆にガード時には構えてる剣先を敵の斬撃の向きに合わせる必要があったりと、かなりリアルな殺陣アクションとなっている。
実験的な側面が強そうなので上手く回るかは疑問だが、これは興味深いね。


・ゴーストリコン ワイルドラン

ゴーストリコンがオープンワールド化か。
ゴーストリコンは4人1組のチームで進んでいくゲームで、ゴリ押しすると跳ね返されるがチームワークを意識すればあっさり突破できるレベルデザインが優秀だったが、そのゲーム性と、とにかく物量とシームレスと自由度が求められてメリハリを付けるのが難しいオープンワールドは相性が悪いんじゃないのか。
レベルデザインを維持しつつ物量たっぷりのオープンワールドを作り上げたら大したものだが、ハッタリ大好きのUBIだし、普通に噛み合わないで終わる気がするな。


・ディスオナード2

ステルスゲーム。前作は、超能力を活用したステルスが大胆で面白かった。何でもあり感が強く大味なのは否めなかったが、そこを主観視点による視覚の制限でゲームバランスを取りつつ臨場感を盛り上げるという、中々上手い作り方をしていた。最後の最後で面倒臭くなってやめたけど。


・スターウォーズ バトルフロント

映像が凄い。このクオリティでスターウォーズごっこが出来るとかワクワクが止まらない。
マルチメインだと思ったが、ひたすら敵のウェーブをなぎ倒していくモードもあるらしい。良いね。
11月19日発売予定。


・レインボーシックス シージ

少人数対戦に特化したゲーム。
一人の重みが明確に感じられるチームワーク重視のオンライン対戦は面白そうだが、こういうのは実際やってみると上手く回らない事が多いからな。それか楽しめるようになるまでのハードルがめちゃくちゃ高いか。チームワークを徹底的に拘ったゲームと言うとエボルヴが思い浮かぶが、あれは後者だった。
それにしてもオンラインの話しか聞かないが、シングルプレイや協力モードは無いのかな。
10月15日発売予定。


・マスエフェクト アンドロメダ

マスエフェクト新章。このシリーズは壮大なスペースオペラの舞台を全くハッタリ無しに作り上げるから凄い。
3部作の最後でとんでもない終わりを迎えたが、全てをリセットして再スタート。
2016年発売予定。


・プラントvsゾンビ ガーデンウォーフェア2

ゾンビと植物が戦う謎のゲーム。
コープが楽しくて一時期ひたすらやってたな。前作は一日だけ無料配信されたところを目ざとくゲットしたが、今回はちゃんと買うか。
2016年発売予定。


・ニードフォースピード

映像のクオリティが凄い。人とか完全に実写にしか見えない。というかあれ実写だよね?そうじゃなかったらビビる。
ドライブクラブと言い、フォルツァと言い、プロジェクトカーと言い、現行機のレースゲーは映像が凄まじいが、車の写実性に関しては最高峰であるグランツーリスモはとんでもない事になってそうだな。
海外では11月3日発売予定。


・ドゥーム

クリーチャーをボコボコにするシューティングゲーム。
怪物系を倒すシューティングはクリーチャーの恐ろしさを引き立たせるために安易に倒せるようにはせず弾薬のマネジメントを考えさせられるものが多いが、このゲームはPVを見る限り全く容赦無しにボコボコにしてた。これはこれでアリ。
2016年春発売予定。


・コールオブデューティー ブラックオプス3

毎年恒例のCOD。今年はブラックオプスのターンだが、中身はアドバンスドウォーフェアのブーストで飛び回るアクションを発展させたような感じに見える。壁蹴りアクションは面白そう。
海外では11月6日発売予定。



やっぱり、大作は良いもんだね。凄いものを作ろうという熱量は、単純にワクワクさせられる。E3は海外メインのカンファレンスだが、日本のゲームもわりかし目立っていた。日本のゲームはシステムに根付いたコンセプトのものが多いので規模が大きいという意味での凄いゲームを目指す必要はあまり無いし、そもそも大作が成立する市場がないが、でっかいものを作ろうという意気込みのゲームは無くなって欲しくない。
今年のE3のスクエニの存在感は際立っていた。大作を作れる数少ない国内メーカーとして、沈みかけている日本の据え置き機市場を牽引して見せるという、並々ならぬ意思が伝わってきた。スクエニは、未だにそれだけの力がある会社だ。発表されてから発売まで長いのも、早めにプロジェクトをユーザーに伝えてハードを買って貰おうという意図があるからだ。流石にヴェルサスは論外だけどな。結局PS3で出せなかったし。
話は前後するが、大作と言うと、ゲームゲームした仕組みを極力排除してその世界への没入感を重視したものが多く、ゲームとして見た場合はやりごたえが無くて退屈なものが多い。
没入感を重視した方が映像とスケールは映えるから大作のゲームデザインとしては自然な流れではあるが、大作好きでありながらシステムを重視したものが好みという面倒くさい嗜好を持つ俺は、色々な大作をやる度に、最初は面白いけど同じ事の繰り返しだしプレイヤースキルを掘り下げていく感じも無いしゲームバランスに起伏も無いしで段々やってることが単調になって飽きてくる、というパターンに陥ることが多かった。
そんな俺にとって、スクエニの作るゲームはドンピシャなんだよね。スクエニは、駆け引きとプレイヤースキルの成長が実感できる奥深いシステムを詰め込みつつ、金をかけて大作に仕立て上げる事が出来る、数少ない会社。FFはその最たるものだね。俺がFF好きで、スクエニ好きなのは、そういう側面もある。
FF7リメイクはどうなるかねぇ。最新技術の映像でオリジナル版のようなコマンドバトルにすると違和感しか無いが、そういう整合性を考えずに、世界観は世界観、ゲームはゲームと別けて考えて作られているのがスクエニの伝統的なゲームデザインなので、コマンドバトルのままでもらしくて良いと思う。
まぁ、インタビューで既に臨場感を意識したバトルになると言ってるんだけど。これはアクション要素が強い戦闘になりそうだな。それが妥当なところだろう。
それでも、臨場感ありきのありがちな大作にはして欲しくない。FFはあくまでも、ゲームを意識して作って欲しい。FFは良く映画的だと言われるが、それは全く違う。FFほどゲームらしい大作は多くないよ。