もはやミステリーの欠片もない




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“空襲で焼失したとされていたゴッホの2番目のひまわりの模写が、ニューヨークマンハッタンのオークションに出品された。市場最高額となる3億ドルで落札した鈴木次郎吉は、絵画を守る7人のスペシャリストを揃え、ゴッホの7つのひまわりを集めた展示会を日本で開くと宣言。しかし、展示会の開催を目指す彼らに、宝石しか狙わない筈の怪盗キッドの影が迫る。”

これは酷い。映画コナンのストーリーが酷いのはいつもの事だが、今年は輪をかけて酷い。
とりあえずやたらと色々な要素が詰め込まれているが、何一つ噛み合ってない。犯人の動機もひまわりに想いを抱くお婆さんの過去もキッドと刑事の対決もある兄弟のひまわりに対する葛藤も、全てが唐突で中途半端。最低限の掘り下げすらないので全く何も伝わらない。たった2時間の尺でここまで詰め込んでしまうとよっぽど上手くそれぞれのストーリーをリンクさせて相乗的に掘り下げない限り話は綺麗にまとまらないが、映画コナンは需要的にアクションありきでストーリーを構築しなければならない制約があるのだから、素直に話の的を一つに絞れと言いたい。
話がとっ散らかってる中でも一応中心にあるのはダークヒーローな怪盗キッドという部分で、ここを一番見せたいのだろうが、キッドの狙いが序盤からバレバレでダークヒーローという題材が全然機能してないし、動機にしても無理矢理過ぎる。もう全てにおいて滑ってる。

一番酷いのがミステリー部分。酷いというか、ミステリーの体裁すら保てていない。何故キッドがキッドらしくないやり方で犯行を仕掛けてくるのか、という点が一応ミステリーとして設定されているのだが、これが全然ミステリーになってないというね。
登場人物達が先入観で勝手にこうに違いないと決め付けてるだけ。ちゃんとした根拠と事実がない。こんなのは謎でも何でもなく単なる想像であり、その実態のない想像をミステリーとしての謎にすり替えているのが今回のコナン映画。これはタチが悪い。終盤に暗号文出して何とかミステリーっぽさを出そうとしているが何の誤魔化しにもなってない。
ミステリーがないがしろにされている昨今の映画コナンでも一つは何かしらの謎があったのに今回はただの一つも謎がなければトリックと言えるようなトリックもないしオマケにちゃんとした動機もない。ミステリーと名乗って良い最低限のレベルにすら達してないね。

そして見所であるはずのアクションにしても微妙という。いつもは限界まで振り切ってるくせに、今回はやけに抑え目。もうここだけが見せ場なんだから遠慮しなくても良いのに。感動演出がまた押し付けがましくて冷める。

コナン映画の中でも最低レベルに近い内容だった。別に今さらミステリーに期待してないけど、最低限一つは謎を作れよと。トリックらしいトリックを見せろよと。年々ミステリーが弱くなるコナン映画だがついにここまで来たか。
アクションも微妙で盛り上がりに欠けるし、一番テンション上がったのが次回映画予告という悲しさ。
ただ、神出鬼没で華麗なキッド様という絵面のカッコ良さは相変わらず。もうこの映画はそれだけでも良いかなという気はする。