サイクロプスって、こんなに大きかったんだな



2015-03-13-13-25-18

PS4、PS3のアクションRPG。開発はオメガフォース。

サイクロプスでかすぎだろ足しか見えねぇよこれ。げ、ベビーサタンイオナズン唱えようとしてやが・・・あ、コケた。腐った死体いつまで耐えてんだよさっさとくたばれよ。お、はぐれメタルだ、って逃げるなおい待て。え、はやぶさ斬りって、分身して斬るの?目にも留まらぬ斬撃って、そういう意味だったの?クリフトザラキ失敗しすぎワロタ。ばくれつけんが四発どころの騒ぎじゃないんだが。ラリホーマうぜえええええ!!!!キガブレイク強えええええええ!!!!
いやぁ満喫した。今までのドラクエシリーズはプレイヤーの想像による補完を大事にするという部分が一貫としていたが、まさかアクションゲームとなって、サイクロプスのデカさを直に体感できる日が来るとは。それだけにハードルは高く半端な再現なら想像の余地を潰しやがってとなり兼ねなかったが、これほどのクオリティでやってくれるのならもう未練はない。
何しろこのゲームのスタッフは何を優先するべきか実に良く分かっている。無双シリーズのオメガフォースが手掛けているだけあってベースは一騎当千の無双アクションだが、無双に比べるとワラワラ感は随分抑え目になっており、その代わり大型の敵がこれでもかと出現したり、多種多様な敵が出て来て色々な攻撃を仕掛けてきたりして、単純な爽快感よりも、ドラクエのモンスターとアクションを目一杯体験させるという部分を重視しているのは大英断。
それはゲームの歯応えにも繋がっており、敵が個性的かつ種類が多いためそれに適した行動を考えさせられるし、攻撃も割と激しいため攻め一辺倒の戦い方では通用しなくてやりごたえがある。更に、強力な攻撃にはMPが必要だったり、動きを制限してくる状態異常が存在したり、魔法で補助をかけたりと、アクションの性質上ボタン連打になりがちなところをRPG的な要素をミックスすることで歯止めをかけている。
無双のように安易な連打アクションで簡単になぎ払えてしまうと敵が無個性に感じられてしまいせっかくのドラクエの個性あるモンスターが台無しだったが、このゲームのアクションはボタンを押す指に意思を込める余地があり、敵と戦っているんだという実感を生んでいる。だからこそドラクエのキャラやモンスターに明確な個性が感じられ、その世界の中に入り込んだ気持ちにさせられる。しかもその個性は執念すら感じる芸の細かさで再現されているのだから堪らない。
例えばそれは、やたらとデカくて強いサイクロプスだったり、無駄に耐えて鬱陶しい腐った死体だったり、ハッタリをかましてくるベビーサタンだったり、信じられないほど硬くて素早いはぐれメタルだったり、正面からの攻撃は防いでくるさまようヨロイだったり、全然成功しないザラキだったり、屋内で使うと頭をぶつけるルーラだったり、ギガブレイクの凄まじい必殺技感だったりする。マシンパワーによる映像の質は勿論凄いが、それは些細なことでしかない。真に迫力を与えているのは作り手の愛だ。尋常じゃない作り込みの細かさで、ドラクエの躍動感を忠実に再現している。そしてそれをアクションとして実感させる徹底したバランス調整がなされている。単純に凄い映像で動かしてみましたというだけでは決して到達できない、大迫力の臨場感があった。ドラクエの世界を直接体験させるという意味で、このゲームは完璧なまでに仕事をしてみせている。見事としか言いようがない。

更にこのゲームはモンスターを仲間に出来るというモンスターズ的な要素まで含んでいるのだから凄い。
倒したモンスターはメダルになることがあり、それを使うと一時的にとくぎや呪文を使ってくれたり、その場に残って戦ってくれたりする。単純にモンスターが仲間として動いてくれるのを見てるだけでも楽しいが、この仕組みを更に有意義なものにしているのが防衛戦が色濃いミッション。
メインストーリーにしてもサブクエストにしても大半は拠点やNPCを守りながら戦う必要があり、戦場の各地に点在するゲートを潰さないとモンスターは湧く一方なので拠点を離れて攻める必要があるのだが、ここで有効となるのが仲間モンスターなわけだ。拠点に置いて守らせたり、敵の軍勢を押し留めたりして猶予を作り、その間にゲートを潰すという、タワーディフェンス的な戦略性が生まれている。そこまで本格的ではないが、闇雲に敵を倒しているだけよりは行動の指標があるぶん良いアクセントになっている。

アクションの基本は無双なので爽快感ありまくり。本家に比べればワラワラは弱いがそれでもかなりの大軍勢をなぎ払っていける。操作も簡単だし誰でも手軽に遊べる。簡単アクションだからこそどのタイミングでどのアクションを使うかという部分に集中できた。
難易度はそれなりに高いが、レベルを上げたり装備を整えたりしてきちんと準備すればあっさりクリアー出来るあたり実にRPGらしくて良い。強化しまくってオラオラプレイになれば今度は無双らしい爽快感が活きてくるという素晴らしい二重構成。色々な楽しみ方が出来るので中々飽きない。無双のアクションは敷居が低いだけでなく実に応用の幅が広いなと感じさせられる。
キャラチェンジも非常に便利。仲間は4人パーティで構成されるが、ワンボタンで簡単に操作キャラを変更できる。手軽に色々なキャラを動かせるのが単純に楽しいし、HPがヤバくなったらゼシカにチェンジしてハッスルダンスしたり、状態異常になったらすかさず治癒できる仲間にチェンジしたり、キャラチェンジがターン制的な戦術性を生んでいる。キャラはいずれも特徴があり、アクションの動きとしての個性もそうだが技の能力での差別化も大きく、補助重視でパーティを組むか、攻め重視でパーティを組むか、その中間を取るか、と言った、RPG的な考え方でパーティを組む楽しさがあるのも◯。ただ、画面の仲間アイコンから操作キャラ以外のMPとテンションゲージを確認できないのは不便なのでどうにかして欲しい。
キャラチェンジが出来るとは言え同じ面子ばかりだと飽きてくるが、絶妙なタイミングで新しい仲間が出てくるのでダレが来ない。しかも新しい仲間を使ってみると反則的に強い。こいつ強すぎだろこれだけ使ってれば良いやとその時は思うが、新しい仲間が出てくるとまたそれを上回るレベルで強かったり目を引く技が使えるので、新しいキャラは一通り使って試そうと思えた。

ゲームバランスも相変わらず絶妙だった。ドラクエは、ゲームバランスに徹底した拘りを持って作られており、例えばドラクエ7の開発時、堀井氏はパラメーターを1の単位にまで拘り徹底して作り込もうとしたらしく、その結果制作期間は長引き、それに業を煮やしたエニックスが勝手に発売時期を世間に公表してしまい、開発側とぎこちない空気になってしまったという嘘か本当か分からない逸話があるが、実際、敵やキャラのパラメーターは勿論のこと、アイテムの店頭価格、ダンジョンで手に入るアイテム、魔法のMP消費量、エンカウントのアルゴリズム、細部に渡るまで絶妙なストレス加減でコントロールされているのだから信ぴょう性がある。変わらない安心感だけがドラクエの魅力ではない。ドラクエの真骨頂は、メリハリのあるゲームバランスにある。
今作もそうだ。倒しにくい敵だったり、鬱陶しい攻撃だったり、RPG的な制約のある仕組みだったり、守りながら戦う必要のあるミッションだったり、テンポを損ねる面倒な要素が満載だが、決してベースの無双アクションは壊しておらず、何も考えずにゴリ押しする勢いの部分と、思考が求められる戦術の部分で、絶妙なバランスが保たれている。そして大きいのが分かりやすさ。ゲームシステムも操作性も育成要素もとても取っ付き易く作られているのでプレイヤーは目の前の目的を突破するということだけに集中しやすい。
難しすぎず、明快で、しかし楽に乗り越えられるものではなく、適度にプレイヤーに困難を与えて山場を作り、ゲーム展開に絶妙な抑揚を付けている。アクションになっても手触りはドラクエだった。映像や演出だけでなく、ゲームとしてもちゃんとドラクエをやっている。
まぁちょっと技のバランスが極端過ぎる気はするけどね。攻め方は一辺倒になりがち。主人公のれんごくぎりとか使い勝手良すぎだし。まぁでも技の種類は多いからあんまり複雑に使い所を考えさせられても把握するのが面倒だし、これくらい大味に寄っていた方がバランスは取れている。

ストーリーは無いよりはマシな程度。ラスボスの前のボスのところが一番盛り上がって、そこからラストに至るまでは一気に盛り下がるというペース配分はどうかと思う。真のラスボスを作るために無理矢理取って付けた感がある。
惜しいのは主人公の扱い方。計画を立てずにはいられないが周りからは蔑ろにされているという主人公のキャラはとても面白いのに、それ以上の工夫がなくてガッカリだった。この性格ならそれ自体が前振りとして効き、理屈を超えた大切なもの、自分を信じる事や仲間への信頼や咄嗟のがむしゃらな行動と言った、ベタで燃える展開が更に強調されて際立つのに、何か随分適当だった。もっと向こう見ずで無謀で必死な感じにしてくれたらそれだけで割と良い感じの話に見えるのに勿体無い。あってないようなシナリオだったし、主人公のキャラを際立たせるためだけのストーリー構築にしても良かったんじゃないかと思う。
ボリュームは結構ある。クリアーまでは25時間くらい。サブクエストも豊富で、作業的だしメインと似たようなものばかりではあるが、たまにかなり実利的なご褒美が貰えるのでやりがいがあった。
クリアーすると強くてニューゲームもあるし、強化ボスや最強武器集め、闘技場、無料DLCのサブシナリオなど、飽きない限りは長く遊べそうな作りになっている。これで協力プレイがあれば最高なんだけどな。分担作業が求められるくせに仲間はアホだし。

メリハリのあるゲームバランス。分かりやすいシステム。個性のあるキャラクターとモンスター。アクションになってもドラクエはドラクエだった。始める前は無双寄りの作りでドラクエ成分は映像だけなんだろうなぁと思っていたが、全くそんなことはなかった。爽快感をベースにしながらも、絶妙にドラクエらしいバランスと要素を仕込んでいる。アクションの楽しさとドラクエの楽しさが十二分に感じられる仕上がりになっている。
何より、このゲームの最大の意義である、アクションだからこそ表現できたドラクエの世界の魅力はMAXを振り切って発揮されていた。期待を遥かに上回る再現レベル。これを見るだけでも買う価値がある。
ドラクエが好きなら絶対に体験するべき。