伝わらない



2015-03-01-22-08-23


PS4のシューティングゲーム。開発はレディーアットダウン。

映像とストーリーを中心に置いて作られたゲーム。要するにとても映画的な作りで、リニアなアクションゲームは少なからずそれを意識した作りのものが多いが、このゲームは特にそっち方面に寄っている。
まず映像のクオリティが非常にハイレベル。このゲームの舞台である19世紀のイギリスを魅力的に再現。ちょっとダーティーで霧がかっていて美しい、この設定お馴染みの風景をとてつもなくハイクオリティな映像で表現している。微妙に褪せた感じにしてアンティークな空気を醸し出しているのがまた雰囲気作りに一役買っている。
世界観もユニークで、半獣と呼ばれる怪物が徘徊していたり、飛空船が存在したり、光線銃やフレア銃が使えたりと、ファンタジーと突飛な技術と史実がごちゃ混ぜになっているが、何故だか非現実的に見えないのが面白いところで歪な組み合わせなのにその時代感とマッチしていてスチームパンク的な迫力があった。まぁ19世紀のイギリスが舞台なら多少のファンタジーは何でも馴染みそうではあるけど。

一方でストーリーは微妙。それなりに盛り上がりどころを作っているしキャラの個性も出そうとしているので引きはあるが、展開ありきの構成なので深みはない。最後の方とか仲間を助け出すために危険を冒して敵地に侵入するのだが、大してその仲間との関係を掘り下げてないから何でそこまでしてという感じが否めず、クライマックスなのに全然主人公の気持ちとリンク出来なくて盛り上がれなかった。
またストーリーに力を入れてるだけあってムービーが長い。ムービーのおかげで話は印象的に伝わってくるものの、それよりもアクションゲームなんだからテンポ良くプレイさせてくれという気持ちの方が勝り、手持ち無沙汰感はかなり強かった。話も大して面白くないし。

シューティングとしては普通。良くあるTPSと言った感じ。ガジェットは特徴的で面白く、19世紀のイギリスでSF的な武器をブッパできるギャップは楽しかった。光線を放ったり可燃物をばら撒いて炎で燃やしたりと、威力的にもエフェクト的にも非常に先鋭的なのに、ちゃんと当時の技術を踏襲していてレトロなテクノロジーを技術革新したらこうなったという時代錯誤な未来感があって素晴らしい。
そんな革新的な装備を使って並みの武器で対応してくる相手を圧倒するのがとても愉快。と思ったら敵もSF武器を使ってきて、受ける立場としても体験できるのがまた良かった。操作性も良いし、敵の動きも小賢しくて歯ごたえがある。シューティングゲームとして問題なく面白い。
ただ武器が拳銃系と小銃系で一つずつの二つまでしか持ち運べないのが不便。何にも考えずに撃つだけでOKなら銃を使い捨てる形でも良いけど、このゲームは敵と銃にわりかし個性があって適した装備で対処しないと結構手こずる面があるので、一度手に入れた武器はプールしていつでも簡単に使えるようにしたほうが楽だし戦略的だし良かったんじゃないかと思う。特に終盤は銃の制約のせいで相当苦労する羽目になった。
あ、半獣ちゃんは雑魚なので眼中にありませんでした。敵は人間だけでなく半獣も登場し、俺はこいつとのバトルに期待を寄せていたのだが、これが本当に拍子抜け。とにかく全然出て来ない。多分も10匹も見てないと思う。最初は半獣が強大な敵であることを演出するためにここぞという場面以外ではあえて出さないようにしてるのかと思ったが、たまに出て来たかと思えば恐ろしく弱いのね、こいつ。そこらの雑魚と大差ない。動きのパターンも突っ込んで攻撃したあと踵を返して逃げるだけ。動き方があまりにもわざとらしく、AIっぽさがありありで冷める。映像は凄いけど生きてる感じが全くない。そして弱い。見かけ倒しにも程がある。何だこれ。
たまにやたらと強い半獣もいるが、そいつとはほぼQTEで決着がつくので実感が薄い。半獣がロンドンの街に蔓延っているというストーリー設定なのに、全然出て来ないから存在感が薄すぎるし、カットシーンの演出の力で強そうに見せてるだけで実際のプレイアブルでは死ぬほど弱い存在であるため真に迫るものがなく、全く脅威が伝わって来ない。何でこんな雑魚に長年脅かされてるんだと思ってしまう。この時点で半獣という敵に一切の魅力が失われてしまっている。このゲームのストーリーに説得力が感じられず、入り込めない大きな原因はこれ。

映像や話に拘って作ろうとはしているが、それが熱としてゲームプレイに繋がってこないのがこのゲームの最大の欠点で、ストーリーも半獣も確かにムービーだからこそ表現できた見所はあり見せ方としては決して悪くないが、プレイアブル部分は完全に浮いちゃっており、映画でやってれば良いんじゃねと言いたくなる。
傍観者としてではなく主人公としてその世界に入り込めるのがゲームという媒体の大きな魅力であり、映画的な迫力とゲームならではの臨場感をミックスした作品を作りたいというのが本作の意図だと思うが、結局は映像を見せるというところが先行しすぎてゲームとしてどう溶け込ませるかという肝心な部分が蔑ろになっている。やっぱりゲームはゲームの部分でカタルシスを得させてくれないとストーリーの熱も映像の迫力も伝わってこないよ。

それにしても、半獣の中途半端な扱いもそうだけど、SF的な武器も結局二つくらいしか出てこなかったし、ストーリーはかなり端折ってる感じだし、映像のエンジン作成に力入れ過ぎて中身を作り込む時間がなかったぽいなこれは。インファマスといい、キルゾーンといい、これといい、最近のSCEの大作は見切り発車が多すぎる。ブラッドボーンは頼むぞ本当に。
でも映像は凄いし、世界観も面白いし、シューティングとしてもそこそこだし、すぐ終わるので、PS4のマシンパワーをサクッと体感したいならうってつけだと思う。