む〜び〜




「アナと雪の女王」

氷の力を持った王女がマヒャドを唱えてレリゴーする話。
今年何百回と聞かされた例の歌にもある通り、たとえ周りから否定されたとしても個性を大切に自分らしく生きる、というテーマなのかと思いきや、王女は氷の力、すなわち自分の個性を最後まで嫌っているし、氷の力は終始邪魔にしかなっていないし、周りは氷を消せ消せと言ってくるばかりだし、しかも本当に消せちゃって自分自身で個性を否定するような展開になっているし、最後は氷の力が受け入れられて何となくハッピーで終わるがどんな個性でも捉え方次第で輝く面があるんだよと示している場面が一切ないので唐突に感じられ、結局のところディズニーマジックで誤魔化している感が大いにある。ミュージカルありきなのは拭えない。
しかし、王女の妹の最後の選択はかなり力のある演出で、最後まで一途に姉を愛し続けたその気持ちはテーマ性を高めていると共に、お約束に囚われない、本当の愛として、響くものがあった。


「名探偵コナン 異次元の狙撃手」

基本的にいつもの突っ込みどころが耐えないコナン映画であるが、アクションはいつも通り突き抜けていて良いし、シナリオもいくつか見所があった。
沖矢のあの一言も、もう分かりきっている事とは言え、良いファンサービスだった。


「Xメン フューチャー&パスト」

いつかは分からないけどとりあえず未来。対超能力人間に特化した兵器、センチネルによってミュータントは絶滅しかけていた。
という唐突すぎる出だしから始まるエックスメン。過去に戻ってセンチネルを生み出した博士を殺すのかと思いきや守るという展開は予想外で面白いし、プロフェッサーがミスティークに見離された途端に堕落しきっているのも笑える。
しかし最高に笑えるのは、中盤からストーリーをめちゃくちゃにぶち壊しながら全方位からヘイトを稼ぎまくっているマグニートさん。映画を大いに盛り上げていて、これぞヒールの鏡だと感心してしまった。
マグニートさんが健在な限り、エックスメンシリーズは安泰だな。


「渇き。」

グロい。痛い。グロい。痛い。もう見てらんない。グロだけなら耐えられるけど、痛いのは無理だよ。どうしてそこまでするの。
その理由は明白。この映画のテーマは不器用な形でしか自分を表現できない父親であり、娘に対する彼の愛の形を間違った方向で究極に突き詰めたのが、この凄惨な暴力表現なのだから、このグロは決してキャッチー狙いの下品なものではない。テーマを強固なものにする上で欠かせない表現。
とは言えあまりにもグロすぎるので観ていて気分が良いものではない。


「呪怨 終わりの始まり」

レンタルやゲームを含めたら今年はたくさんのホラー作品を手に取ったけど、その中で最も俺がブルブルしたのはこれ。まぁ映画館で観たからというのもあるが、伽倻子さんはヤバいほど雰囲気があった。
個人的に一番怖かったのは、佐々木希が初めて伽倻子の家を訪れたシーン。
居間に行くと伽倻子が背中を見せて座っている。ガリガリ音がするから何かと思って近付く佐々木希。途中、襖が視界を遮り、伽倻子の姿が見えなくなる。あー、これでいるはずの伽倻子が消えて何か変なものが残されてるんだろうなーと思って見てたら、次の瞬間視界に入ったのは、物凄い形相でこちらを睨みながら紙にうずまきをグルグル殴り書きしている伽倻子の姿で、その顔が本当に恐ろしくて、縮み上がってしまった。
また、シナリオは無内容だが、最後の主人公の表情は結構意外なもので、驚くわけでもなく、怖がるわけでもなく、ただそのどうしようもない現実を受け入れているように感じられ、適当な人物描写だったのにそこだけ内面が掘り下げられていて印象に残った。


「マレフィセント」

これはまた企画ありきですなぁ。マレフィセントというヴィランに焦点を当て、何故彼女はお姫様に呪いをかけたのか、という、少しでも葛藤を見せればジャイアン理論で深く見える題材でどう考えても面白くなるはずだろうに、なんでこんなにもいい加減なストーリーなんだろ。
とにかくマレフィセントの心の動きが行き当たりばったりで、呪いのシーンにしてもお姫様との触れ合いシーンにしてもただ思い付きで行動しているようにしか見えず、クライマックスのアナ雪的なオチも何にも感じない。
マレフィセントが捻くれてしまったルーツも一応掘り下げてるけど、それも何かありきたりというか、ディズニー的というか、つまるところ初めて彼女が惹かれた男の行動が安易すぎる。
分かりやすくロマンチックなのがディズニー映画の良いところだけど、この題材を扱うなら単純さよりも大事にして欲しいところがあった。何回も使える変化球じゃないだけに勿体ない。


「GODZILLA」

ゴジラを大きな存在として見せる、ただその一点に特化して作られたハリウッドゴジラ。
最初の一時間はチラ見せに終始していて、早く見せてくれというこちらの気持ちを煽り続けているだけだが、全貌が明らかになった時、震えが止まらなかった。ガッチリとした首まわり。逞しい太もも。あの筋骨ムキムキのフォルムそのままだ。そして例の唸り声。前回のハリウッド制作のイグアナのような似非ゴジラではない。僕らが待っていた本物のゴジラがそこにいた。
そのあとも、市民視点から捉えたカットを多用することで、ゴジラの存在を尊大なものとして見せている。ここぞという場面以外はゴジラをあえて大きく見せず、畏敬の存在として際立たせている。単なる怪獣ではなく、自然を司るもっと大きな象徴として見事に捉えていた。
極め付けはゴジラ必殺の攻撃である、放射熱線のシーン。発動するタイミングも完璧だが、あのカメラワークは凄い。力強く放射する姿を完璧に演出。
日本製作のゴジラですら末期はゴジラが単なるアイコンと化していたのに、海外製作のこのリスペクト具合には頭が下がる。かなりハードルを上げて観に行ったが、見せ方も、CGのクオリティも申し分なく、もう大満足。


「オール・ユー・ニード・イズ・キル」

これなんてダクソ?
主人公が死ぬ度に時間が巻き戻り生き返るという設定で、初見殺しあり、自滅あり、成長ありと、完全にダークソウルの要領だった。
パターンを学習して途中から覚えゲーになっている辺りもゲームオタクなら感じるところがあるし、主人公が戦闘未経験で初めは貧弱なスペックしか持ち合わせていないのも実にゲーム的で良い。そのひ弱な主人公を演じているのがトムクルーズというギャップがまたイカしてる。
しかも難易度はダークソウルよりも遥かに凶悪。機械生命体と戦争しているのだが、どう見ても無理ゲー。しかも自由度ありすぎ。うわー、ゲームだったらこれ楽しいだろうなーと、やはりゲームオタク視点で見てしまう。
ゲーム的な展開とリトライゲーばりのテンポの良さが小気味良く、普通の映画だったらどんな展開でも華麗に切り抜けてるけど普通はこうなるよな、というメタ的な楽しみ方もできる、面白いアイディアの映画。原作はあるけど。
ゲーム好きは是非チェックして貰いたい。


「トランスフォーマー ロストエイジ」

半分寝てた。いつも通りロボットがウィンウィンガチャンガチャン動いていて凄かった。


「るろうに剣心 京都大火編」

原作知らないのでストーリーや再現度は良く分からないが、アクションは誰が見ても楽しめる申し分のないクオリティ。ワンパターンでもないし、かなり見応えがある。
日本でもこんなアクション作れるんだなー、と素直に感心した。


「るろうに剣心 伝説の最期編」

相変わらずアクションが凄い。終盤のスーパーるろうに大戦的な展開は、話の整合性的に考えたらアウトだが、少年漫画的な盛り上がりとして見ればアリ。


「6才のボクが、大人になるまで」

この映画、一見すると普通のドキュメンタリータッチな青春映画だが、実際はかなり挑戦的な作り方をしていて、メインのキャストを変えずに12年間に渡って撮り続けるという、気の遠くなるような事をしている。
役者自身の年月の積み重ねを捉え、その時の周りの環境を撮っているのだから、当然迫真めいたものがある。少年の成長や環境の変化を撮ったものとしてこれほど説得力のあるものはない。
ただそれだけの映画なので、決して面白いものではないが、それでもこの試みは大いに価値ある描写を生んでいる。


「インターステラー」

娘を地球に残し、お父さんが新たな星を探す話。
あまりにも大胆不敵。迫力ある宇宙映像と、説得力のある理論を備え、骨太なSF展開をしているが、これらのスケールある話と設定は全て、愛を語るための布石でしかないのだから恐れ入る。
終盤はご都合主義極まっているが、あそこまで突き抜けられると、そうか、愛さえあればなんでも出来るんだと思わず納得させられてしまう。愛の力は理屈じゃないのだから、これで良いのだろう。


「ゴーンガール」

結婚は、牢獄なんです。
というだけの話なのに、ここまで引き込ませるデヴィッドフィンチャーの力は凄いな。とても面白かった。


「ベイマックス」

ストーリーはかなり強引だが、ケアロボットであるベイマックスの見せ方がとても面白かった。
ビニール素材で作られているという設定が、ベイマックスの優しさを端的に表していて、とても良い。ビニールを活かしたアクションはユニークで面白おかしいし、何より、抱き締める、という本作のキーとなる行為をとても引き立たせていた。


「クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」

僕はこの映画にとっても感銘を受けてしまい、3回も劇場に行って同じ映画を観て、その度に泣いてしまいました。
タイトル通り、ロボとーちゃんが頑張る話。ロボットが人間的な感情を抱いて〜それを見た人間も感化されて〜という脚本は多いが、俺としてはロボットはどこまで行ってもロボットだろという考えが強いので、そういう話はいまいちピンと来ないのだが、と言うかここからネタバレするので注意して欲しいが、
この映画のポイントはひろしが本当にロボットになったかのように中盤まで見せているところで、途中までロボとーちゃん=本物のひろしとして観ていた俺は、まんまと感情移入させられてしまった。ロボットがロボットに見えなかった。
そして本物のひろしが登場してからは、機械はどこまで行っても人間にはなり得ないというロボットの永遠のテーマが前面に押し出される。機械と人間の壁を必死に乗り越えようとするロボとーちゃんの健気さは胸に迫るものがある。結局ロボットは人間になり得ないという現実を突きつけられるが、彼の家族への想いは間違いなく本物だ。
この映画が素晴らしいのは、ロボットという題材のピークを、ロボットなのに心があるという部分に持ってくるのではなく、ロボットであるから故に越えられないものがあり、それでもその壁を乗り越えようとする意思の強さを現しているところにある。ロボとーちゃんの、紛いものでない、本物の家族愛に、泣かされた。


「ホビット 決戦の行方」

ホビット三部作の最終章。ストーリーが酷すぎるからネタバレする。
ドワーフの長があまりにも自分勝手で、それが原因でエルフ・人間を敵に回し、主人公陣営と言えるドワーフ達が敵みたいな役回りになって追い込まれていくのは面白く、ドワーフが陣取っている山の前に、エルフ・人間連合軍、更にはオークの軍勢も集合し、全陣営が入り乱れての大乱戦が始まるのか!?と最高にボルテージが上がるところまでは良かったが、ピークはここまで。
何か普通に協力し合ってて興ざめ。さっきまでのいがみ合いはどこいった。どうせ無内容なんだからちょっとはドワーフとエルフ・人間で争ってくれよ。
そんな中でも無視を決め込んで引きこもっているドワーフの長は自己中極まっていて輝いているのだが、特に深い理由もなく唐突に改心し、そこからジャイアン理論で英雄扱いされて持ち上げられ、たった13人加勢しただけなのにいきなり戦況がひっくり返りと、全く釈然としない展開に満ちていて最高に薄っぺらい。
アクションにしてもあまり盛り上がらず、何か宿命のライバルみたいな感じでドワーフの長とラスボスを対峙させているが、長は途中までサボっていた挙句ショートカットを使って辿り着いているため全く込み上げてくるものがないし、決着の付け方もイマイチ綺麗じゃない。
加えて、ドワーフの青年とエルフの女の関係性が戦闘のドラマを占めているのだが、これは前回からの話だが、何故エルフの女がドワーフの青年に惹かれているのか良く分からない。牢屋の前でちょっと喋っただけだよな。もう少し理由付けが欲しい。その女に好意を寄せているエルフの兄ちゃんの方がよっぽど献身的で、直接的には何も言わないがさり気なくアプローチしたり彼女が窮地に陥ったら必ず助けているのに女の方は全く気にも留めておらず、あまりにも可哀想。
パイレーツオブカリビアンを彷彿とさせるペラペラなストーリーだが、パイレーツはノリがアレだったから薄っぺらい展開がむしろ笑えたが、マジメなノリのホビットだと寒いだけだな。
まぁでも、アクション大作という部分は及第点だし、ホビットに求められているのは結局のところそこなので、ストーリーが空っぽでも気にはならないか。



今年はゲームに関しては個人的に響くものが少なかったけど、映画は響きまくった。