ギリギリ




ウソ、もう2013年終わっちゃうの!?いやー信じられん。早すぎる。今年も相変わらず暇さえあればゲームばかりやっていた。社会人になってしまったので時間はかなり厳しくなったがゲームはまだまだやめられないよほんと。今年は珍しくスクエニが頑張っていたこともあって余計にゲーム熱が加速した。
2013年は、実にスクエニが輝いていた年だった思う。
良くぞここまで金と時間をかけて作り込んだと褒めたくなる超絶クオリティのヒットマンとトゥームレイダー。絶対に無理だろうと思われたFF14リローンチの奇跡的な成功。クリエイターのエゴがたくさん詰まったライトニングリターンズ。まさかの次世代機でのキングダムハーツ新作。ようやく生存が確認されたヴェルサスもといFF15。
中でもFF15は散々待たされただけあって、E3で初公開されたプロモーション映像には度肝を抜かれた。次世代機に対応していながら現行機と比べてもそれほど代わり映えしないゲームが多い中で、これが次世代機の実力だと言わんばかりの飛び抜けた存在感を放っていた。既存のゲームを越えようとするスタッフの強い野心が伺える。海外の大手ですら大作は現行機とのマルチが殆どなのに、FFとキングダムハーツという看板タイトルを先行き不透明な次世代機一本で勝負しようとするスクエニの気概は大変なものだ。リメイクや携帯機の新作でお茶を濁して安定思考が強いように思えた最近のスクエニだが、まだまだ業界のパイオニアであろうとする情熱は失われていないということを見せ付けてくれた。
来年から日本でもいよいよ次世代機が発売される。現行機では散々なスクエニだったが、次世代機ではきっとやってくれると思う。

コンシューマ業界全体としては、厳しい厳しい言われている割には安定して新作が発表ないし発売されているし、確かに新規タイトルは少なくなったがそれは今に始まったことじゃないし、来年はPS4やXboxoneが発売されて少なからず起爆剤になるだろうし、まだしばらくは大丈夫そうと感じられた。
でも、家庭用ゲームもMMOや基本無料とか、俺にとってはあまり好ましくない方向に流れているのよねぇ。これはもう時代の流れだから仕方ないけど、ゲーム性を重視したオフラインゲーが好みの俺は中々迎合できないだろうなぁ。
そしていよいよ本格的になってきたスマートフォンの存在。ゲーム好きならもう見逃せないところにまできているけど、俺はあくまでゲーム機でしか味わえないゲーム体験が好きなので、スマートフォンのゲームに割く時間があるならコンシューマのゲームに費やす。もちろんスマートフォンにはスマートフォンにしかできないゲーム体験があると思うので頑張って欲しい。そうじゃないと成り立たないゲーム会社が多いからっていうのが本音だけど。


・今年気に入ったゲームベスト5

5位 ドラゴンズドグマ ダークアリズン(カプコン)

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モンスターのクオリティで押し通していたオリジナル版とは違い、ハクスラの側面が強い新ダンジョンの追加で俄然面白くなったアッパーバージョン。
高い難易度はランダム性の強いアイテム発掘の中毒性を高めているし、新たな発見が多いために繰り返し潜っても苦にならない
前作はモンスターと戯れる演出ゲーに近い側面があったので一度体験したらもう良いやという気分になったが、今作は全く違う新たな魅力をプラスし、見事に弱点を払拭している。もちろん本来の醍醐味であるモンスターとの戦闘は相変わらず面白い。
本来の魅力を保ったまま、違う面白さを付け足すことは大変難しいが、それをやってのけたカプコンは凄い。


4位 逆転裁判5(カプコン)

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人格が豹変し困難を極めたナルホドウの扱い。中途半端なオドロキの存在。特に深い意味がなかった弁護士資格剥奪の問題。
前作でいい加減なままだった流れを放り投げることなく見事に引き継ぎ、シリーズを仕切り直してみせた今作の意義は非常に大きい。
コミカルなキャラクターと軽妙なノリもいつも通りのクオリティだし、裁判や弁護士の存在意義を考えさせられるストーリーも絶妙。
本作を作るにあたって様々な問題があったろうが、それを全て乗り越え、ニーズを完璧に満たし、ストーリーも上手く仕上げた今作の仕事ぶりは素晴らしいとしか言いようがない。


3位 トゥームレイダー(スクウェアエニックス・クリスタルダイナミクス)

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映像と演出は当然のようにハイレベルだが、それだけでなく、無駄に広げることなく密度を重視した探索要素満載のフィールド、新しいアイテムが手に入る毎に開拓できる場所が増えていくメリハリ、頭を捻る必要のある謎解きなど、遊び手の感覚も大事にして作られているバランスが素晴らしい。その上ストーリーまで良く出来ているのだから隙がない。
アイドスが関わっているゲームはクオリティもさることながら、映像と物量だけで終わってないから毎回感心させられる。スクエニは良い会社を傘下に引き入れたな。


2位 グランドセフトオート5(TAKE2インタラクティブ・ロックスターゲームス)

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そりゃあゲームとしては薄っぺらだけどさ、仕方ないじゃん。凄いんだもん。突き詰めすぎている物量と映像からくるスケールと臨場感は、他の大作ゲームを全く寄せ付けない、グランドセフトオートにしか成しえないオンリーワンの体験。250億という馬鹿げた大金を費やしているだけのことはある。
ゲームの面白さが制作費で決まることはないが、金をかけないと作れないゲームがあるのも事実。250億もかけて作られたゴージャスなゲーム体験が、たったの7000円ぽっちで得られるなら安いものだ。


1位 ライトニングリターンズ ファイナルファンタジー13(スクウェアエニックス)

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自由度があって冒険ができるRPGがしたい!というユーザーの需要を満たしておきながら、そこに時間制限やらアイテムの制限やら異様に高い難易度やら面倒なものを色々と付け足し、結果的に、自由度はあるが本質的にはスタッフの思い描いたゲームビジョン通りに遊ぶことを強要する、極めてエゴの強いゲームとなっており、どうしても自我を抑えられないFFスタッフのパッションが強く現れた本作に全俺が夢中。
作りたいものを作る、という身勝手な想いを一方的にぶつけてくるこの感じ。FFは、これで良いんだよ。



・今年気に入った映画ベスト5

5位 かぐや姫の物語(高畑勲監督)

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想像以上にストーリー展開は一般的に知られている竹取物語そのままで入り込みやすく、想像以上にかぐや姫の内面が掘り下げられていてドラマチックだった。籠の中の鳥でしかない彼女の息苦しさと、自由への憧れが、話の中でというよりは、映像のインパクトから伝わってくる。アニメの特徴を掴んだ表現技法とアニメーション演出に流石はジブリだと唸らされた。
何故、彼女は月から地球にやって来たのか。何故、一瞬でも月に帰りたいと祈ったのか。何故、5人の皇子の求婚に対して無理難題の課題を貸したのか。そして、仏の御石の鉢でもなく、蓬莱の玉の枝でもなく、火鼠の皮衣でもなく、龍の首の珠でもなく、燕の産んだ子安貝でもない、かぐや姫が本当に欲しかったものは何だったのか?
彼女が本当に求めていたもの・・・それは、月とは違い有限がある地球という世界で、必死に悔いなく生きようとすること。だが、それに気付いた時には、既に月に帰らなければならなくなっているという悲劇。竹取の翁がかぐや姫を思って与えていた環境は、ただ意味もなく毎日が流れるだけで彼女に生きる活力を無くさせていたという皮肉。
かぐや姫の想いは、本作において明確な人生が与えられたことでより真摯に伝わってくる。更にそれが世界最高峰のアニメーションで表現されているのだからこれ以上の贅沢はない。


4位 桐島、部活やめるってよ(吉田大八監督)

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学校に限らず、何かの組織に所属する人間の、閉鎖的でありながら曖昧に繋がっている不安定な人間関係をここまで的確に描いてることに驚き。
ヒエラルキーの階層は違っても、彼らの間には僅かに薄い繋がりがあるということを、この映画では、ヒエラルキーの頂点に立つ学園のスーパーヒーローの取った一つの行動が、ヒエラルキーの上位から下位にかけてまるで糸を伝うように影響を及ぼしていく様から表現しており、更にそこから転じて、その細い糸を辿ることによって決して少なくない登場人物一人一人の葛藤と内面を丁寧に深く掘り起こしてみせることに成功している。これは見事と言う他ない。
そして最後のカタルシス。映画部の撮影カメラを通しての、ゾンビ映画に見立てたヒエラルキー上位と下位の対決は、溢れんばかりの青春を醸し出した、素晴らしいクライマックスとなっている。青春映画の傑作と呼ぶに相応しい。
ただ、ラストの展開は自分の考え方にそぐわないものだったので、ピンとこなかったな。現実的な自己認識による説得力、というのは好きじゃない。


3位 スタートレック イントゥダークネス(JJエイブラムス監督)

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ハイクオリティな映像。ダイナミックな演出。迫力満点のアクション。魅力的なキャラクター。一気呵成のストーリー。自然に盛り込んだ人間ドラマ。脅威の3D効果。
新鮮さによる驚きは何もないが、全てが水準以上で、頭をカラッポにして見ても、ワクワクし、感動し、熱くなれる、これぞ正しいエンターテイメント大作の姿。
ハリウッドの単純明快な娯楽大作はもう飽きたと思ったが、シンプルだからこそ、突き詰められた作品には惹かれるものがあるなぁ。


2位 真夏の方程式(西谷弘監督)

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軽いノリと湯川の変人キャラクターでごり押ししていたドラマとは打って変わって重厚な物語を描いて見せた劇場版。何しろ映画はテレビと違って途中でチャンネルを変えられるということがない。物語をじっくりと展開していくには理想的な環境だ。
それでも既存のファンに嫌われることを怖がってか、ドラマ映画はテレビの拡大版のような感覚で作られる事が非常に多いが、本作はあえてタイトルにガリレオというブランド名を外して、ドラマとは全然違いますよーと自ら発信している。
実際、いつもの音楽や女刑事との絡み、超常現象による奇抜な事件は抑えられドラマ版のような軽妙さはなくなり、ガリレオらしさという意味ではあまり満足度は高くないかも知れない。
しかし、軽めのノリが抑えられたことによりドラマ性を高めることに成功し、全てに理由と意味があり、因果が複雑に絡まった物語はとても味わい深い。
何より、苦手としていた子供との触れ合いによりガリレオこと湯川の魅力は本作で一層高められている。


1位 風立ちぬ(宮崎駿監督)

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飛行機は、商売の道具ではなく、戦争の手立てでもなく、美しい夢だ。
この言葉に、心を突き動かされた。


・今年気に入った小説ベスト3

3位 クリスマス・テロル(佐藤友哉著)

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認める。佐藤友哉は、ある一点に関しては本物の本物だ。その一点とは、お客に金を払わせて買って貰う立場である商業小説で、ブログ感覚に自分の書きたいことや思っていることをそのままぶちまけてしまう厚顔無恥な面の皮の厚さだ。物語全体がそもそも作者の自意識の塊であるが、まさか結末まであとがきめいた自分の叫びで締めくくるとは。ここまでくると畏敬の念すら湧く。
自分だけが分かればそれで良いという作品を書いておきながら、自分の作品が世に受け入れられない事に不満を抱いている矛盾。この作品内で語られているのはたったそれだけ。
文学は個性を受け入れるが、ここまでミクロな視点で語ろうとする小説家は恐らく彼だけだろう。あまりにも狭すぎる視野はとことんリアリティを排除した作者だけの世界を作り上げ、外に晒されず行き場をなくした独りよがりな感情は暴力的パッションに変貌している。
あまりにも自意識過剰な文章で内省など一切感じられないが、故に、この作品は圧倒されるばかりのパッションに満ち溢れている。作者の凄まじいパワーを感じる。
佐藤友哉は、真っ当な事を書こうとしているわけじゃない。賛成を得るために書こうとしているわけでもない。誰かの為になる事を書こうとしているわけでもなければ、正論を書こうとしているわけでもないし、もっと言えば小説を書こうとしているわけでもない。
ただ、書きたいことを書こうとしている。そこには計算や遠慮や誤魔化しは一切ない。ひたすら真っ直ぐ愚直に、自分が思っていることを、自分が伝えたいことを書いている。故に内容は他人から見れば全く無益なものでしかない。
だが、個性とは何ものも代替できない力であり、行きすぎた個性は疎まれるのと同時に人の心を動かす魅力にもなり得る。それの前ではテクニックや想像力など些細なものでしかない。この本は決して共感できる内容ではないが、それでもこの暴力的なパッションには人の心を揺らす確かな魅力があることは認めざるを得ない。佐藤友哉はある意味、小説家にとって一番大切なものを持っているのだろう。
しかし、こんな作者の自己満足でしかない本は一部の文学好きか佐藤友哉フェチにしか売れる見込みがないのだが、それに反して彼は心からビッグになりたいと願っているのだから恐れ入る。
彼だって自分のスタイルが大衆向けでないことは理解しているはずだ。それなのに決して今のスタイルを曲げようとしない。自分の心の叫びを世の中に広く知らしめたいという浪漫を追い続けている。サリンジャーのようになりたいと切に願っている。あまりにも純粋すぎて眩しい行為だ。
しかし、彼がサリンジャーのようになることは到底無理なので、分かる人に分かって貰えればそれで良いという本来あるべき鞘に収まれば良いのにと思ったりもするが、そうは言ってもやはり彼には、矛盾した気持ちを小説にぶつけて発散している今のままでいて欲しい。


2位 暗闇の中で子供(舞城王太郎著)

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全く持って何を言っているのか分からない。分からないが、作者の気持ちだけは痛いほど伝わってきた。これほどまでに愛の痛さと切実さを実直に書ける小説家が、舞城以外にどれだけいるだろうか。
舞城王太郎は、決して上辺だけの言葉で誤摩化さない。決して都合の良いあやふやな文章で取り繕わない。舞城は、ひたすらに愚直で、ひたすらに熾烈で、ひたすらに切実に、物語を紡いでいる。そしてその裏には居たたまれなくなるほどの人間愛が溢れている。
舞城の特徴と言えば、グロテスクな描写、突飛な設定、唐突な展開であるが、何も意味なく文章を飛躍しているわけではない。ただインパクトを与えるためだけにラディカルな技法を使っているわけでもない。物語の展開装置やトリックの種として機能させているのは勿論だが、人間の意志や感情や煩悩やコンプレックスと言った、つまり自己の発信を究極に表現したものとしてそれらが表されている。
この小説で言えば、最初の30ページで描かれる三郎と荒木の熾烈を極めた戦いがその最たるものだ。何度ボコボコにされても三郎に立ち向かう荒木のムチャクチャなやり方は、決して周囲から理解を得られるものではないが、それでもそれは彼なりの愛情の示し方であり、それは混じり気のない純粋な、とてつもない信念を宿らせた本物の愛の形だったのだ。同時にそれは抑制の外れた自我の果てでもある。
舞城の叫ぶ人間愛とは、そうした不器用で過激で自分勝手にしか表現出来ないアイデンティティでさえも理解して受け入れる、ということに帰結するものだ。


1位 終点のあの子(柚木麻子著)

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少女たちの繊細な心境を機微に捉えた小説。そこに描かれているのは、狡猾で弱くて自分勝手で他人のことを思ってやれない少女の姿だ。
平凡な希代子は自分の感情を他人に理解させようとして狡猾に動き回るし、自分に自信のある朱里は傲慢で常に人を見下しているし、常にヒエラルキーを気にしている恭子はブスでオタクな早智子と一緒に過ごすことに安らぎを覚えつつも周りの目を気にして一緒にいることに後ろめたさを感じ突き放してしまうし、文学少女でやおい好きな早智子は飾らない性格故に恭子のコンプレックスに気付いてやれない。
自分らしく生きたい、周りに良い目で見られたい、自分の気持ちを相手に分かって貰いたい。彼女らの想いはそれぞれだが、共通しているのは自分の居場所を守りたいということ。彼女らは決して悪い人間ではない。自分の居場所を守るために必死で、プライドが高い故にそのための手段が幼稚なだけだ。
ほんの少し勇気を出して、自分を曲げれば、他人の目を気にしなければ、相手の事を理解してやれば、物事は解決するのに、それが出来ない少女の弱さに心苦しくなる。ちっぽけなプライドに縋って自分を更に苦しめてしまう少女の切なさに心が痛む。
分かる。他人から見ればどんなにしょうもなくて馬鹿馬鹿しいプライドでも、それは自分の縋る寄る部であり、それを捨て去るという行為がどれだけ勇気と覚悟が必要なことなのかは痛いほど分かる。しかし、プライドとプライドのぶつかり合いはすれ違いしか生まない。
この小説は全編に渡って、プライドという名の自分の寄る部を守るのに必死な少女たちのそれぞれの想いが交錯し、息苦しいすれ違いの数々で埋められているが、
最後に、またも自分を曲げなかったことで大切な友人を失いそうになった朱里が、精一杯の勇気を振り絞って謝りに行ったエンドは希望に満ち溢れていて、とても爽やかな気持ちにさせてくれた。


・Yata of the year

3位 グランドセフトオート5(TAKE2インタラクティブ・ロックスターゲームス)

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スケール、クオリティ、臨場感、制作費。あらゆる面が規格外のオメガ大作。
全てを資本力の力押しで解決しているゲームだが、それは他のタイトルが決してマネできることではなく、それだけの価値に見合ったブランドを確立したからこそ、GTAだからこそできた芸当だ。250億もの大金を一つのゲームに費やすことができるのは、ゲーム業界全体で見てもGTAしかあり得ないだろう。
これだけの作り込みを可能とさせたGTAのポテンシャルには、ひれ伏さざるを得ない。


2位 大東京トイボックス(うめ著)

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クリエイターの情熱が詰め込まれた傑作。ゲームは、人が作っているんだということをとても強く感じさせてくれる。


1位 ライトニングリターンズ ファイナルファンタジー13(スクウェアエニックス)

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今年、俺のソウルを最も震わせた作品は言うまでもなくこれ。FFに関しては、もう言い尽くしたな。


ではでは、よいお年を。