イライラソニック





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WIIUのアクションゲーム。開発はセガ。同名のタイトルで3DSでも発売されているが世界観とシステム以外は違うらしい。

前作のジェネレーションズは、多少の失敗は許容してくれる懐の広さ、やり込めばやり込むほどスピードを維持できる仕掛けが開拓される奥深さ、両方に対応したステージの構造と、余計な要素は省いてスピードの一点に特化したシンプルで爽快感のあるシステムが特徴で、とにかく如何にしてソニックの代名詞であるスピードを際立たせるかという点が重視されていた。
しかしながら上手く走るにはかなり難易度が高く、加速を殺さないギミックは巧妙に隠されているため醍醐味であるスピード感を味わうにはやり込みが必須だったが、面倒くさい仕掛けは極力排除されているので繰り返しプレイは苦にならず、何度もリトライして上手くなっていく達成感、そして何と言ってもそれが明確に結果として現れるあのスピード感が心を満たしてくれた。
慣れるまではスピードを殺されてばかりでイライラも募るが、その期間がある故に、高速で突っ走り続けられるようになった時のカタルシスと言ったら、堪らないものがあった。
ただ気持ち良く走れるだけではこうはならない。自分のテクニックで制御しているという感覚があるからこそ、この快感は得られる。そのためには飴と鞭で言う鞭の部分は多少必要なわけだ。難易度バランスという意味では前作は本当に素晴らしかった。

そんな前作の良かったところを何と今作は全放棄。スピードは緩くなり、操作はややこしくなり、マップは面倒な仕掛けに溢れ、オマケに普通にクリアーを目指すだけでも鬼難しく、鞭の部分が極めて強いソニックと化していた。
まずステージの仕掛けが酷い。マリオやドンキーコングを彷彿とさせるシビアなジャンプアクションやテンポを損ねるだけの仕掛けが多すぎる。無駄に頭を捻らないと倒せない敵や、敵を全部倒さないと先に進めなかったりと、スピードを殺す足止めが連発。コースを走るというよりは複雑なアスレチックを攻略していく感じ。終盤になると走り回らせてくれるステージは殆どない。ソニックに求めるものとは真逆な方向性に突き進んでいた。
次に操作が酷い。カラーパワーと呼ばれる変身アクションを使う時にタッチ操作を求められるのがウザすぎる。タッチやモーションコントロールの付け焼き刃な操作ほど無意味で面倒なものはないというのに、まさか未だに固有のインターフェースを無理矢理使わせようとするゲームがあったとは。
そもそもカラーパワー自体が全然面白くない。確かに便利な能力も少しはあるが、半分はステージの構造上仕方ないから嫌々使っているだけで、アクセントになってるどころか邪魔。変身の演出や操作説明で一々画面を止められるし、かと言って使わないとタイムが縮められないのでヤキモキする。同じくこのシステムを採用していたソニックカラーズでは好評だったようだが、今作では明らかにいらない。
そして難易度がクソ高い。数えるのもアホらしくなるくらい死んだ。難しいのは当然悪いことではないが、今作は面倒な仕掛けが多いからゲームオーバーになって最初からという現実を突きつけられると心の底からため息が出る。そのくせリングを100個集めると残機が1UPする仕様が何故か廃止されているし、嫌がらせとしか思えない。
それに加えてコースの中にボス戦が含まれているのも鬱要素。コースで失敗した上でゲームオーバーになったら仕方ないと思えるが、コースをクリアーした後のボス戦でミスしたらまた最初からやり直しというのは何か納得できないしかなり応える。ボスはボス、コースはコースで分離してほしかった。ボス戦は相変わらずつまらないし。

今作はとにかくモチベーションを削ってくる要素が豊富で、ストレスフルにもほどがある。いくらやり直しが前提のゲームであると言っても、何回もやり直す気には到底なれないのだが、惜しいことに前作以上にやり込みがいがあるのも事実。
今作の特徴は重力を無視したパイプコースと段差や壁を駆け上がれるパルクール。パイプコースにより360度余すところなくギミックが仕込まれているため今まで以上にルートの開拓は豊富だし、その上パルクールによって移動の自由度も格段に増した。壁を水平に駆けたりできるのはかなり気持ち良い。
仕掛けが豊富なだけあって探索寄りの面も強く、スピードはかなり緩めに抑えられている。とにかく前に突き進むが特徴だった前作までとは違い上下左右関係なしに広く走り回れるのが今作の特徴なのでこの調整は正解。ちょっと物足りない面もあるけどね。
ステージの作り込みとルートのレベルデザインに関しては前作以上に練られている感があり、ルートによっては面倒な仕掛けのエリアをすっ飛ばすこともできるし、上手く走れた時の爽快感はある意味ジェネレーションズよりも上かもしれない。
でも、タイムアタックには必須である、カラーパワーとスピンダッシュが個人的には好きになれないのでやっぱり今作は苦手だな。カラーパワーは言わずもがなだが、スピンダッシュは溜めないと発動できないのと、その間はパルクールできなくて使い分けがややこしくなるから嫌い。普通にブーストダッシュで良かったのに。

ストーリーは率直に酷かった。ない方がマシとはこれのこと。意味もなくテイルスが挑発的で、意味もなくエッグマンが優しくて、意味もなく六武集とかいう六人衆が敵意むき出しで、本当に意味のないことだらけだった。安易すぎるストーリー展開といい、本当にどうでも良いとしか言いようがない。

今作もリトライ性が高いのはいつも通りだった。仕掛けの作り込みはかなりのもの。散々イライラさせてからスピードのカタルシスを堪能させる作りも相変わらずだが、序盤はともかく、終盤のステージはもう二度とやりたくない。爽快感よりもストレスの方が強かったというのが率直なところ。
パルクールとパイプコースはとても面白いので、単純にそれに特化した作品を作ってくれれば良かったのにと思わざるを得ない。もしかしたらその結果がこれなのかもしれないが。
何かストーリー的にも続編を作る気満々みたいなので、とりあえず次回作は無駄に難解なジャンプアクションとカラーパワーを排除してくれることを祈る。