無駄が多すぎる傑作アクションゲーム




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WIIUのアクションゲーム。開発はプラチナゲームズ。

プレイする前は集団を引き連れた見栄えからしてアクション寄りのピクミンか?と思っていたが、いざ始めてみたら似ているのは大神の方だった。
大神とは、プラチナゲームズの前身であるクローバースタジオが開発したアドベンチャーゲーム。水墨画のような和風タッチのデフォルメ映像やゼルダに匹敵する謎解きが魅力のゲームであるが、何よりも独創的だったのは『筆しらべ』と呼ばれるアクションを使って画面に図形や線を引くことで様々な奇跡が起こせること。空に円を描けば太陽が現れ、枯木に円を描けば桜を咲かせ、木や岩などのオブジェクトに対して真一文字に線を引けば一閃が起こって対象を引き裂き、画面に二本ラインを引けば水流を生み出す、と言った、画面に筆しらべを行うだけで様々な奇跡が起こり、タイトル通りまるで神様になったかのような気分が味わえる素晴らしいゲームだった。
筆しらべは謎解きだけでなく戦闘にも応用されており、敵にはそれぞれ弱点が用意されていて奇跡を上手く使いこなすことで華麗に相手をいなせるという点に活かされているのだが、弱点と言っても単に相性の良い筆しらべを行えば良いというわけではなく、特定の場面でないと有効打とならないのが大神の戦闘の深いところ。敵の姿形や動き、筆しらべアクションの特性をパズルのように当て嵌めながら試行錯誤し一番効果的な戦い方を探す、という楽しみがあり、綺麗な倒し方を見つけた時の達成感はかなりのものだった。
このように、手探りの余地がある戦闘はとても奥深いのだが、このゲームは戦闘がオマケ扱いされているため難易度はかなり緩く、普通にゴリ押すだけでも余裕で倒せることもあって実際のところ試行錯誤する必要は殆どなかった。クリアーまでにゲームオーバーになったのはたった一回だけ。大神の本分はアクションではなく謎解きと世界観にあるので戦闘は邪魔しない程度に収められているのは確かに正解だが、せっかくの独創的なシステムとそれを活かした奥深さがあるだけに、勿体無いなぁと思わずにはいられなかった。
しかし、大神が発売されてから7年経ち、ついにそのモヤモヤを払拭するゲームが同作の生みの親である神谷氏により作りあげられた。それがこのワンダフル101である。

前置きが長くなったが、ワンダフル101は、アクションに特化した大神と言って差し支えない。
軸となるのはユナイトモーフと呼ばれるアクション。これは大神の筆しらべのように任意のラインを引くことで様々な力を発揮するものだが、大神が筆で線を引いていたのに対し、このゲームの場合はどうやってラインを引いているのかと言うと、仲間の隊列を使うことになる。何しろこのゲームの仲間は非常に多い。一度に最大100人まで連れ揃える事が可能だ。これは見た目的にも印象が強く、一人一人の仲間にそれぞれ違ったデザインが用意されていて、それが百人全部画面に収まってそれぞれ動いているというのは強烈なインパクトがある。
その味方の集団を操って陣形を作ることで仲間が合体し、ユナイトモーフが作れる。円の陣形を作れば拳のモーフとなり、波の陣形を作れば鞭のモーフが出来上がる、と言った具合だ。陣形の操作は、タブレットコントローラなら画面をなぞる事で線を引けるので楽だが、プロコン(オーソドックスなコントローラ)で操作しようとすると右スティックで陣形をぐねぐね動かす必要があるので割と難しい。タブレットコントローラは重いので基本的に俺はプロコンで遊んでいたが、思ったように線が引けなくてイライラした。特に鞭とかぎ爪のモーフは似たような図形なので何度も誤爆する羽目に。
しかし、普通のアクションゲームだってコンボを決める時は複雑なコマンド入力が必要であることを考えれば、何の苦労もなしにユナイトモーフが扱えたらそれこそ味気ないものになってしまうのは間違いない。このゲームは他のアクションゲームとは違って複雑なコマンド入力は必要とせず、その代わりちょっとハードルの高いライン引きを求めてくるわけだ。個人的にアクションゲームで嫌気が差すのが、やたらと多く用意されているアクションそれぞれに複雑なコマンド入力が求められることで、コンボを覚えるのがとにかく苦手な俺としてはやり込もうとする度にその壁にぶち当たって挫折していた。それに対しこのゲームは図形を覚えるだけでほぼ事足りるのだから俺にとっては理想的と言える。
だからと言ってアクションの醍醐味であるコンボが存在しないわけではない。本作においてコンボはコマンド入力で決めるのではなく、ユナイトモーフを組み合わせることで決めていく。ユナイトモーフは最大4つまで同時に動かせることができるので、これを上手く使いこなすことで幅広い戦術が可能となり、コンボを作る余地が生まれる。もちろん上手く使いこなすにはモーフと敵の特性を理解する必要があるし、モーフを作るには隊員が10人以上必要なので仲間の数も念頭に置く必要がある。大抵のアクションゲームで主に求められるのは反射神経と正確なコマンド入力だが、このゲームの場合は状況判断とパズル的な思考が強く求められるわけだ。独創的なシステムもさることながら、アクションゲームでこの感覚は全く新しかった。
このゲーム性を加速させているのが大神を彷彿とさせる手探り感。大神には、敵の姿形や動き、筆しらべアクションの特性をパズルのように当て嵌めながら試行錯誤し一番効果的な戦い方を探す楽しみがあると書いたが、ワンダフル101にも全く同じ事が当てはまる。敵の弱点は明確に用意されているが段階を踏まないと見つけられないよう巧みに隠されており、綺麗な倒し方を探すために何度も試行錯誤して試すこの手探り感は最高に面白い。
倒し方が分かったら単なる作業になるかと言えばそんなこともなく、そこにマルチユナイトモーフによる幅広い戦術が加わって如何に早く華麗に敵を倒すかというアプローチが生みだされており、どんどん上手くなっていくことに達成感を感じられるアクションゲームならではの醍醐味も備わっている。
そして何と言っても今回は難易度がめちゃくちゃ高い。大神はせっかくのシステムと仕掛けが温い難易度のせいで台無しになっていた感があったが、ワンダフル101は普通にごり押しているだけではまずまともにダメージを与えられない。なので戦闘のミソである試行錯誤を必然の流れとしてプレイヤーに誘導している。
かと言って強制的にパズル的な戦闘を求められるわけではなく、ゲームオーバーになってもすぐその場でリトライとなり、更に敵の体力はゲームオーバー直前のまま引き継がれるので、何度もやり直していればごり押しで何とかなる懐の広さもある。考える必要があるというのは裏を返せば面倒でもあるので、どちらのプレイスタイルにも対応したこのバランス取りは素晴らしい。新規タイトルながらアクション面においては実に隙がない。恐ろしい完成度だ。

アクションに目を奪われがちだが忘れてならないのがヒーローを題材にした魅力的な舞台設定。
もうとにかく熱い。熱すぎる。ベタだがあまりにも直球すぎる演出とお約束だらけのストーリーは目新しさはないがヒーローものの魅力が存分に詰め込まれており凄まじい熱血に満ちていた。QTEだらけの演出は鬱陶しくもあるが、見せ方が上手いのでダイレクトに白熱した展開が伝わってくる。
とにかくこの熱血っぷりは尋常じゃない。子供の頃、ヒーローアニメを見て胸を踊らせていたあの時の昂ぶりが湧き上がる想いだった。戦隊アニメのオマージュやパロディもあちこちに散りばめられており、製作者のヒーローに対する愛情がひしひしと感じられる。綺麗にタイトルへと繋がる終わり方も見事。

注目のタブレットコントローラはまぁまぁ上手く使っていたかな。ユナイトモーフのインターフェースは勿論として、他にも二画面非対称のステージが一部あって仕掛けとして活かされていた。
ただ俺は普通のコントローラでやっていたので、二画面見ながら操作するのは大変だった。ワイプでモニターに二画面映せるから別に問題ないと言えばないけど。
でもアイテムがサブモニターにしか表示されないのは参った。アイテム使おうとする度にタブレットに目を移動する必要があるからウザいことこのうえない。これは明らかに悪い使い方。
それでもタブレットコントローラの使い方は付け焼き刃という感じではなく全体的に悪くない方向性だった。タブレットコントローラのみのゲームプレイに対応しているのも良い。

独創的なシステム、試行錯誤する戦闘、幅広い戦術、ピーキーなバランス、ストレスフリーなリトライ設計、愛が感じられるヒーロー設定。ここまでの要素が揃っていてハマれないことがあるだろうか。
あるんだなぁそれが。正直後半はダレにダレまくった。このゲームの最大の欠点は詰め込みすぎていること。
どんなに低く見積もっても4割近くはメインのアクションと関係のない要素で占められており、シューティングだったり、パンチアウトだったり、パズルだったり、またシューティングだったり、またまたシューティングだったり、とにかくシューティングが多すぎるんだよ!どんだけシューティング好きなんだよ!しかもつまんないうえに難しいよ!無駄に難易度高くて何度も死ぬからこれのせいでやり込む気がなくなる。
ベヨネッタでもそうだったが、今作のディレクターである神谷氏の作るゲームは本編とは関係のない要素が多く盛り込まれており、良く言えばサービス精神旺盛、悪く言えば押し付けがましいゲーム内容は、彼のアイデンティティでもあるのだろうが、個人的にはもう少し控えてほしい。今回はさすがにやりすぎ。これはストーリーや演出にも当てはまり、ムービーとQTEが頻繁に挟まってきて興を削がれる。その内容自体は面白いものだが、まともにアクションをさせてくれる場面が少ないので、もっとアクションやらせてくれよ!と思わざるを得なかった。
とにかく無駄の宝庫である本作は、結果的にとてつもないボリュームと化しており、アクションゲームなのにクリアーまで25時間近くかかるというとんでもないことになっていた。リトライが緩いにも関わらずこのプレイ時間なので信じられないボリュームだ。ただしその半分近くがいらない要素なので手放しには褒められない。そもそも忙しいアクションゲームでこんなに長くても困るというのが正直なところ。長いうえにいらない部分が多いので辟易としてくる。

大神のシステムをアクション特化にして作り上げた本作は、アクション部分に関しては類稀なるポテンシャルを誇っているが、神谷氏のサービス精神のせいで気軽には遊べない作りになってしまっている。
何でもかんでも付け足せば面白くなるわけではないのはスタッフも重々承知だろうが、良くも悪くも趣味的なゲーム作りが特徴であるプラチナにおいて、この癖はもはや切っても切り離せない個性なんだろうな。この無駄な部分が好きって人もいるだろうし。
このサービス精神のせいでせっかくのアクションが霞んでしまっているのは残念だが、そこを拘りだと割り切ることができれば、このゲームはスタッフの愛がたっぷり詰まった作品としてとても楽しめる。アクションの出来は文句無しなのでWIIU持ちのアクションゲーマーなら絶対買うべき。