ガッカリだが、素晴らしい




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PS3とXbox360のアクションゲーム。開発はイラショナルゲームス。

映像が凄まじい。海外のゲームをやる度に毎回そう言ってる気がするが、凄いものは凄いのだから仕方ない。毎度毎度海外ゲームは世界観のクオリティがハンパないが、その中でもこのゲームは最高峰に位置する。
まず、舞台が空中都市というのがズルい。雲より高く浮いている都市。周りを飛び回っている飛空船。そして、ゲーム内では産業革命の時代なのに空中都市の技術を確立している時代錯誤なオーバーテクノロジーっぷり。360度空に囲まれた風光明媚な景色と突拍子もない飛躍した技術によるロマンに満ちたこの世界には、嫌でもワクワクせざるを得ない。
しかもその空中都市が、ハイレベルなグラフィック技術とセンスで作られているのだから見応え満点。グラフィックの質という技術的な面で凄いのは勿論の事だが、空中都市という舞台を一つの社会として完成された世界であるように、説得力を持たせて表現して見せているのが凄い。
例えば、荷物を輸送するレールが走っていたり、都市はエリア毎に別れて浮遊していて決められたスケジュール通りにドッキングしてエリアを繋いでいるなど、その世界観ならではの様子を見栄えだけでなく機能としても体験させてくれる。
また、このゲームは史実とある程度リンクさせているのだが、南北戦争が終結した時代にも関わらず人種差別が政府レベルで認められており、空中都市の舞台が世間とは一線を画した独自の世界であるということを強調すると共に、もし南北戦争で南側が勝利していたらというifの世界を現しているのだから面白い。
バイオショックシリーズの特徴の一つである、ユニークでクオリティの高い世界観は今作で極まった感がある。

もう一つ、バイオショックの大きな特徴と言えば、毎回キモ可愛い少女が出て来て物語的にもゲーム的に大きな影響を与えてくることだが、インフィニットのキーパーソンである少女エリザベスは実に可愛い。今作は常に付きまとってくるのだが、一緒に歩いているだけで様々な反応を見せてくれるのが愛らしく、主人公と喧嘩した時は怒ったり、主人公が弱っている時は心配して見せたり、ショッキングな出来事が起こったあとはしょげたりと、何とも感情表現豊かで一人の人間として接している感覚がある。
また、彼女はたまにアイテムやコインを渡してくれることがあり、その行為が「エリザベスが10コインをあなたに渡しました」みたいなテキストとして表示されるのではなく、ちゃんとキャラクターが動いて渡してくれるのがとても良い。ちゃんとコミュニケーションを取っている。
更に、白眉なのは戦闘におけるエリザベスの扱い。よく、アクションゲームで少女キャラと行動を共にするというシチュエーションが発生するが、大抵の場合無抵抗な少女を敵から守ることにイライラが募り、足手まといでしかない護衛対象のキャラに憎しみが湧いてくる。守るという行為をすることで二人の絆を感じさせるという、キャラに感情移入させるための取り組みでもあるはずなのに、逆効果になっていることもしばしばだった。
そういう意味で、本作の戦闘におけるエリザベスの働きは素晴らしい。何しろエリザベスは敵から一切のダメージを受けないので、全く気にかける必要がないのだ。それどころか時たま弾薬や回復薬などのアイテムを投げ渡してくれるという有能っぷり。体力が風前の灯火という場面で回復薬を投げ渡された時には、おお女神よ、という気持ちにすらなる。共に戦っているということを強く感じさせてくれる。ここまでしてくれて感情移入しないわけがない。
彼女は単なる同行者ではない。喋るだけの人形でもない。心強いパートナーであり、また、愛すべき一人の少女でもある。そのことを、ムービーではなく、ストーリーでもなく、ゲームプレイの体験の中で感じさせてくれる巧みさ。これぞ、キャラを演じられるゲームの醍醐味だ。ゲームにとって、これほど理想的なストーリー手法はない。
このゲームのストーリーははっきり言って理解させようという気があまり感じられないが、「主人公とエリザベスの絆」が物語の軸であるとすれば、物語の筋は主人公とエリザベスの関係を引き立てるものとして上手いこと働いていると言える。


とまぁ、ストーリーと世界観に関しては素晴らしいものがあるのだが、肝心のゲームの中身は前作から大幅に変わり、サバイバル性と戦闘の戦略性が薄まってしまったのは残念。
前作は、超能力を利用した戦闘がとても面白かった。敵のウェーブやボス戦が始まる前にインターバルがありその間に綿密に罠を仕掛けたりして、自分の思った通りに敵が踊る様子を見るのが最高に愉快だったのだが、今作は使い勝手の良い超能力が終盤まで手に入らないし、敵の殆どが最初から臨戦態勢なので考えている暇がない。
これはマップが一本道になった事も影響していそうで、前作までの複雑に入り組んだマップなら回り込んだり隠れたりという選択肢もあって考える猶予があったし、何より、あざといばかりに仕掛けが施されていて詰め将棋のように敵を追い詰められたのだが、今作は殆ど一本道で前へ前へと進む感じなので、立ちはだかるようにして敵が現れる。結果、ゴリ押しの戦闘になる。デメリットが殆どないコンティニュー制度が益々それに拍車をかけている。
しかし、本作で新たに追加されたスカイラインとスカイフックを活用したジェットコースターのようなアクションは素晴らしかった。慣れさえすれば凄まじいスピード感で戦闘を展開出来る。今までにない体験で興奮してしまった。アイディアとしても世界観の設定を活かしていて見事。
この仕組みを組み込んだことで、戦闘がアクション寄りになってしまったり一本道のマップになってしまったのは自明なので、仕方ないかなと思う。

バイオショックシリーズの何に価値を見出すかで意見が別れそうな本作。主人公と少女の関係か、クオリティの高い世界観か、戦略的でフレキシブルな戦闘か、複雑で探索のしがいがあるマップか。
俺としては、前作の戦略的で柔軟性のある戦闘に惹かれていたので正直今回はガッカリだった。だが、世界観とキャラクターを中心に据えて構築されたこのゲームのデザインは芯が通っている。
エリザベスのキャラクターと空中都市の舞台は、大変魅力的だった。