いまいち盛り上がりに欠けるが、映像とスケールは相変わらず異次元




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PS3のアクションゲーム。開発はサンタモニカスタジオ。

映像とスケールがいつも通り凄い。凄すぎる。それが最も良く発揮されているのが導入部分。ゴッドオブウォーのお約束である最初の先制パンチでプレイヤーをゲームの世界に引き込ませる手法は今作も健在で、最初の30分は超ド迫力。空いた口が塞がらないとはこのこと。ただただ凄いとしか言いようがない。
カメラが極端に引いていてキャラが見にくかったり、ボスがデカすぎて状況が掴みにくかったり、戦闘が大雑把だったりといったことはあるが、そういった細かいことは無視してひたすらスケールと迫力だけを求めて詰め込まれた導入は、PS3のマシンパワーを最大限に発揮した圧倒的なグラフィックと相まって、もはや映画を操作していると言っても過言ではないほどの、凄まじい体験が出来る。製作者のセンスと技術には脱帽するしかない。
とは言え、据え置きで出た前作の3よりは驚きが少なかったのも事実。グラフィックが殆ど進化していないのは3の時点で既に限界突破していたかのような超クオリティだったので仕方ないが、それよりもストーリーやボスキャラ的にあまり燃えてくるものがなかった。
3は初っ端からゼウスやハデスと言ったオリュンポスの四天王が勢揃いし、その神々に主人公クレイトスとタイタン一族のタッグが激突するという、まさに最初からクライマックスな状態から始まっており、特にポセイドンとの対決など失禁するレベルの壮大さで、ゲーム史上に残る盛り上がりと言っても大袈裟ではなく、ゲームはグラフィックより中身が大事という正論すら木っ端微塵に粉砕してしまうほどの、圧倒的な映像パワーを見せ付けてくれた。
それに比べると今作の導入部分はいささか盛り上がりに欠け、残念だったのは否めないが、それでもスケールと演出に関しては他の追随を寄せ付けないズバ抜けたものがあるのは間違いない。

序盤が終わると途端に地味になるのもいつも通り。演出タイムが終わり、普通のアクションゲームになるのだが、映像とは違いこのシリーズのアクションの出来はそれほど秀でていない。それは今作も同じ。細かい部分では色々と変更がなされているが、基本的にやってることはいつもと変わらない
システム的に何かオリジナリティがあるわけでもなく、敵をなぎ倒していく爽快感があるわけでもなく、ヒットアンドアウェイの楽しさがあるほどモーションや敵のアクションが練られているわけでもなく、ただ適当に攻撃してガードしていれば何とかなる無難なアクションゲーム。決してつまらなくはないが、何回もやり込みたくなるほどの深さはない。
しかし、特筆すべきなのはステージの仕掛けとスケール。特に圧巻なのが、崩れ果てて原型を留めていない馬鹿デカい巨像の中を進んでいくステージで、仕掛けを解く度に巨像のパーツが動いて組み合わさっていくというスケールに圧倒される。しかもそれがまたパズルのように緻密かつピッタリと完成に近付いていくもんだから凄くスッキリする。
謎解きそのものは仕掛けがさり気なく設置されているので分かり辛くかなり難易度は高いが、アクションゲームにありがちな付け焼き刃なオマケレベルではなくかなり凝っており、思わず唸ってしまうものも多かった。
更に面白いのが今作から追加されたウロボロスの宝石というアイテムを使った謎解きで、これを使うと瓦礫や破片を動かしてあるべき姿に戻したり、逆に壊して分解する事が出来る。謎解きとしても良く考えられているが、パーツが動いて完成されたり破壊されたりする一部始終を眺めているのがこれまたスケールのデカさと相まってとても面白い。

そして今作も、ない。何がないって、ロードが一切ない。一瞬とかそんな次元じゃない。無。完全に皆無。それどころかカクツキすらない。ゴッドオブウォーでは当たり前の事なので今更驚くこともないが、それにしてもこれだけのグラフィックを実現していながらロードがないというのはやはり驚嘆してしまう。
故に辞めどきが分からない。一瞬の緩みも乖離もなくゲームが続くので、これ以上ないくらい没頭してしまう。大体8時間くらいで終わったが、その間何か余計なことを考える暇なく夢中で遊び終えてしまった。
ただ、今作は上で言ったように物語や出てくるキャラクターがイマイチなので、本気で取り憑かれたかのようにやっていた2や3(1は微妙)と比べると、それほどテンションは上がらなかったな。
その他にも理由として、宿敵であるゼウスのクズが出て来ないとか、その代わり出て来る敵が小物すぎるとか、偶に発生する音飛びが気になるとか色々あるが、最も大きいのはいつもは問答無用で殺戮の限りを尽くしていたクレイトスさんが今作は随分優しいから。
破壊神になる前の話とは言え、今回のクレイトスさんはいつもの彼と比較すれば天使のようだった。エンジェルスマイルを見せたり攻撃から逃れようとする人を助けたり家族以外の者を気遣ったりと、およそ過去作品からは想像出来ない慈悲深い行為が見られるので、クレイトスファンは必見。
しかし丸かった頃の意外な一面が見られたのは良いが、このゲームはクレイトスさんの暴力的なキャラクターがバイオレンスなアクションと激しい演出の力強さを助長させていた面があったので、そういう意味ではちょっと残念。シナリオ上の都合だから仕方ないんだけどね。

やってることは毎回同じなのでマンネリは否めなかったが、この映像とスケールは海外のゲームの中でも抜きん出たものがあり中々体験出来ないので、やらずにはいられない。今作も充分期待に応えてくれた。
ちなみに、今作のウリらしいオンライン対戦はやってないので何とも言えない。