良く出来た作業ゲー







PS3のRPG。開発はガスト。

アトリエシリーズはメルルが初プレイ。RPGということで買ってみたのだが、一般的なRPGとは随分毛色の違う感触で少し驚いた。

このゲームはアイテムの管理を軸に進められる。主人公は錬金術師という設定で、素材となるアイテムを調合することで新たなアイテムを錬金出来る。
フィールドへ探索しに行き、素材を手に入れたり、依頼を達成してマップを開拓していき、そうやって行動範囲を広げることで新たな材料が手に入り、未知のアイテムを錬金出来るようになる。同時にモンスターも強くなるので、対応するためにアイテムを売って装備を買ったり、強い戦闘アイテムを錬金して準備をし、そしてまた探索に出て素材の補充や行動範囲を広げたり・・・といったサイクルをひたすらに繰り返す。
どんどん探索出来る場所が広がり、どんどん新しい素材が手に入るようになり、どんどん敵が強くなり、どんどん調合出来るアイテムが多くなり、と作業の繰り返しながらこのサイクルは底知れぬ中毒性がある。
更に熱中度を高めているのが開拓システム。本作は王国を発展させ、人口を増やすことがゲームの目的になっている。プレイヤーには次々に依頼が届き、その依頼をこなしていくことで行動範囲が広がったり、ポイントが貯まっていく。
目標が絶えず更新されていくから能動的にプレイ出来るし、テンポが圧倒的に良いもんだからどんどん依頼が解かれていくのが気持ち良い。PS3で言うトロフィーを解除した時の喜びに近い。依頼を達成することでマップが広がったり、新たな施設を増設出来たりとご褒美が実利的なのも嬉しい。依頼のこなし方にしても、質の良いアイテムを錬金すれば少量で済んだりと、吟味することで有利になる幅の広さも良い。
依頼を達成していくとどんどん地図が賑わって、フィールドも変化していくから見た目も楽しいし、王国の人口という明確な目標が設定されているので漠然とやるよりモチベーションが保てる。人口が右肩上がりに増えていく様子をニヤニヤしながら見るのも一興。作業を単なる作業に納まらせない作りは素晴らしい。

このゲームのキモは日数制限があることで、錬金をするにしても、フィールドを探索するにしても(マップはエリア制で、地図を双六のように移動し、選んだエリアのマップにワープする)日数を消費することになる。これによりアイテム管理やマップの移動にメリハリが生まれ、
「遠出するからアイテムをたくさん錬金しておきたいが、期日が迫っているからどうするか・・・」や「ここまで遠くに来たのだからあそこも探険しておきたい、しかし残りのアイテムが・・・」と上手い具合に悩まされてしまう。日数やアイテムと相談して、フィールドを探険するのがとても楽しい。
普通にクリアーするだけなら適当にやってるだけでも何とかなるが、トゥルーエンドを見ようとすると、かなり日数を計算して調合や探索を行う必要があり、アイテム管理ゲーとして懐の広いバランスを誇っているのも魅力。

RPGと言えば戦闘だが、このゲームにおいて戦闘はオマケみたいなもので、爆弾系のアイテムを使えば大体は一撃死するという大味過ぎるバランス。だが、この戦闘がサクサクでとにかくテンポが良いもんだから、アトリエのゲーム性と見事にマッチしている。それでいて結構演出が派手なので爽快。
テンポを重視しているだけあって、インターフェースも心地よく、街の中なら何処からでも細かくワープ出来るのが素晴らしい。ロードも早い。
しかし、依頼を受け取ったあとわざわざ執事のもとに行って認可されてからしか依頼をこなせない仕様は少し解せない。何故こんなテンポを乱すような設計にしたのだろうか。
一番テンポを乱してくるのが凄まじい頻度で挟まれるイベントで、またこのイベントの中身が内容のない、キャラの馴れ合いばっかりで心の底からどうでも良い。ご丁寧にスキップ出来ないので、イベントが挟まれる度にイライラが募る。イベント大好きな俺だが、こういう馴れ合いだけのイベントはいらない。
あと、アイテム管理のあたりが煩雑。コンテナから特定のアイテムを探そうにもソートが微妙すぎてダルいし、素材の種類を確認する時、わざわざ図鑑を開かないと分からないのは面倒。アイテムに重点を置いたゲームでシリーズを何年も続けているのに、ここのインターフェースが未だにイマイチなのはどうなのかなーと思う。

カッコ良いキャラと可愛いキャラが凄い勢いで出てくるキャラ萌えゲーの一面もあり、キャラのデザインをウリにしているだけあって登場人物のグラフィックのクオリティが中々高い。3Dポリゴンでありながら、原画のテイストを損なわさず、忠実に再現している。CGっぽさをまるで感じさせない。しかし、こいつらの織り成すイベントが・・・以下前述の通り。
背景のグラフィックも結構頑張っていて、意外と綺麗。森の雰囲気とか良い感じ。
逆に明らかにいい加減なのがモンスターのモデリング。まぁ、このゲームは戦闘がテンポ良くどんどん流れていくので敵のグラフィックがどうだろうとあまり気にならない。上手いこと手を抜ける部分は抜いて、力を入れるべき部分にリソースを注ぎ込んでいる。

クリアーまでは20時間程度。エンディングがいくつも用意されているので何周も遊べる。一周目はシリーズ初心者だとやれることが多すぎて戸惑ってしまうが、慣れた二周目からが本番である。
・・・と思うのだが、かく言う俺は正直一周で飽きた。一周目も何となくやってしまう中毒性とテンポのおかげでダラダラとやれたが、ハマってたかと言うとそうでもない。
ゲームデザインは良く練られているし、バランスも良いんだけど、やってることの大部分がアイテム管理の作業というのはやっぱり味気ない。ストーリー性に乏しくて、戦闘が大味なこともあって何となくのめり込めなかった。そういうゲームだから仕方ないんだけどね。これでストーリー性強くしたら、間違いなくテンポが悪くなるだろうから。
単純に俺が合わなかっただけなので、アトリエ自体はこのままで良いと思う。アトリエシリーズが好きな人には文句なしに良作。