パズルとキャラクターが素晴らしすぎる、パズルゲーの傑作
‘‘コールドスリープから目覚めると、またもそこは訓練施設だった。
そこに被験者の管理担当だと称するAIコア「whealthy」が現れ、一緒に脱出しないかと持ちかけられる。
ところが、道中で施設のマザーコンピューター「GLaDOS」に捕まり、再びパズルのテストを強いられるのであった。’’
PS3とXbox360で出てる一人称視点のアクションパズルゲーム。開発はValve。前作は未プレイ。
これ、凄いな。何が凄いって、発想が凄い。
基本ルールは互いが入り口と出口の役割になっている、空間で繋がった青のポータルとオレンジのポータル(通り抜けフープのようなもの)を作れるポータルガンを使い、二つのポータル繋げつつ様々なギミックを活用し、出口に向かうというものなんだが、この感覚は新し過ぎる。
ポータルは、ただ位置と位置を結んでワープするだけの物ではない。その使い方だけでも充分に新鮮で楽しいが、ポータルを活用することで使い古されたギミックが全く新しい働きを見せる。
例えば、ジャンプ台で勢いを付けてからポータルを潜り、もう片方のポータルから勢いよく飛び出す人間大砲。主観視点と相まって、宙を舞う感覚がとても気持ち良い。
更に、ポータルの使い方によっては、一つのガジェットから様々な活用法を導き出せてしまうのだから凄い。例を挙げると、青いレーザーのような気流をある時はタレットから身を守る壁にしたり、またある時は歩道にしたり等。この発展性はまさにポータルマジック。
ポータルの可能性は無限大。これほどプレイヤーのイマジネーションを刺激するシステムはないと断言出来る。当然、これを利用したパズルの作りも素晴らしいの一言。
難易度のバランスも絶妙で、最初見た時はこんなの無理だろと思いつつも、弄っていくうちに何となく閃いてくる。解けた時の「俺天才なんじゃね?」感は凄まじい。
新しいテクニックやギミックがステージ毎に順序良く登場し、ちゃんとそれが次に繋がってくるので、自分の成長を感じ取らせてくれるし、進む毎に新しいガジェットが出てくるので全く飽きさせない。
パズル部屋の構造に関しても素晴らしく、全くゴチャゴチャしておらず驚くほどシンプルにまとまっている。一目見ただけで全体の構成がおおよそ把握出来る部屋作りに、ちょっと感動してしまった。逆に言うと殺風景な景観だが、これがまた閉じられた密室の雰囲気を醸し出していて、早く脱出したい気持ちにさせる。
パズルだけではなく歩いて進んでいくフィールドも用意されていて、そこでもちゃんとしたパズルが行われるのだが、ここでは若干のアクションが求められるので良いメリハリとなっている。ただ、ポータルが作れる壁を探すだけのステージ構成が多くて、パズル部屋に比べると若干退屈ではある。
ここからネタバレ注意。
このゲーム、パズルが素晴らしいだけではない。特筆すべきは卓越したストーリー演出と圧倒的な魅力を誇るキャラクター。
シナリオは簡単に言うと、二機のAIロボットの争いに巻き込まれつつ、脱出を計るという内容で、登場キャラは主人公を除いてこの二機のみだが、こいつらがとても魅力的。
主人公をある訓練施設の中に閉じ込め、延々とパズルという名のテストを強いて監視している施設のボス、「GLaDOS」。
普段は頑強なアーマーを包んで、皮肉で主人公を馬鹿にするとても嫌な奴なのに、実際アーマーを剥いで核のコアが晒されると只のジャガイモ電池でしかないというのがとても儚げで面白い。あれほど絶対的な力を振りまいていたのに、鳥にすら突っつかれる無力な存在になるのが何ともシニカル。途端にツンデレ化し、助けてくれと懇願する辺りも、可愛いらしいジャガイモの姿とアーマー状態の時に偉ぶっていたギャップと相まって、キャラの魅力を一層高めている。
もう一機の「whealthey」は、とにかく良く喋るお調子者で、最初は主人公を助けてくれるのだが、AIの入れ替えに成功し、自分が施設を掌握すると一気に豹変。彼の心が力に溺れていく演出には少し震えてしまった。
GLaDOSの邪魔をする為にあえて間抜けな性格で作られたことを知り、その事実を振り払うかのようにジャガイモ電池を叩きつけているシーンもとても印象的。この一連の流れは一見の価値がある。間抜けで、お喋りで、お調子者にも関わらず、思いがけず力を手にしちゃったから、無理してボスぶっている姿が滑稽で、何となく憎めない。
この二機による主導権争いが、子供の喧嘩みたいで何だか愉快。機械の争いながら、AIを差し替える一番重要な局面は人間である主人公に委ねられるのも、結局人間の手を借りないと何も出来ない、機械本来の在り方が描かれていて、その辺りも良かった。
そして終盤からの息をつかせない演出の連続。主人公の行く手を阻もうと次から次へとダイナミックな仕掛けが作動し、それをポータルでかわしていく展開は映画さながらの迫力で燃える。もちろんムービーではなく、自分で操作するから臨場感は凄まじい。
ラスボス対決時の発狂具合も見ていて面白く、やはりラスボスはこうでなくちゃと感じさせる。
このゲームのもう一つの大きな特徴は、素晴らしくセンスに溢れた台詞回し。
whealtheyのボケてるのか本気でやってるのか分からない一人芝居に笑わずにはいられないし、GLaDOSの皮肉は一々ユーモラスで面白い。
が、問題なのは吹き替えがないことで、字幕しか表示されないため、台詞の度に画面の下を注視しなければならない。パズルゲーとは言え、動かしている場面が多いのだから、こういうゲームで吹き替えなし字幕オンリーはやめろと心の底から言いたい。
あと、演出に力を入れているのに、ロードの挟みが多くて少し萎えた。最近のゲームはロードレスによって没入感を生み出す物が多いのに、ポータルはそれに当てはまらない。
他に細かい事を言うと、シナリオと言いテクニックと言い、「前作経験してる人なら分かるでしょ」と言わんばかりの説明不足で、前作をやってない人は置いてきぼりな雰囲気があった。俺もその一人。やっていくうちに慣れるけどね。
ボリュームはシングルで11時間程度。俺は悩んでいる場面が多かったので、結構時間がかかった。周回要素はまるでなく、高難易度モードもない。よってリプレイ性は微塵もない。
が、このゲームには協力プレイが用意されている。現在PSNが死んでいるので、オンラインは試せなかったが、友達とやってみたらすこぶる楽しかった。
協力プレイのステージは、シングルモードとは一新され、協力必須のパズルが満載。互いに足を引っ張りあって笑い、一緒にあーでもないこーでもないと悩み、解いた時に喜びを共有する、リトルビッグプラネットと似たような面白さがある。
意思疎通が欠かせなく、野良だとキツそうな気もするが、そのもどかしさがまた楽しそうでもある。協力モードにちゃんとシナリオやイベントが用意されているのもポイント高い。
ボリューム不足は否めないが、7140円という定価は決して高くはない。パズルゲー好きなら絶対に買うべき作品。
‘‘コールドスリープから目覚めると、またもそこは訓練施設だった。
そこに被験者の管理担当だと称するAIコア「whealthy」が現れ、一緒に脱出しないかと持ちかけられる。
ところが、道中で施設のマザーコンピューター「GLaDOS」に捕まり、再びパズルのテストを強いられるのであった。’’
PS3とXbox360で出てる一人称視点のアクションパズルゲーム。開発はValve。前作は未プレイ。
これ、凄いな。何が凄いって、発想が凄い。
基本ルールは互いが入り口と出口の役割になっている、空間で繋がった青のポータルとオレンジのポータル(通り抜けフープのようなもの)を作れるポータルガンを使い、二つのポータル繋げつつ様々なギミックを活用し、出口に向かうというものなんだが、この感覚は新し過ぎる。
ポータルは、ただ位置と位置を結んでワープするだけの物ではない。その使い方だけでも充分に新鮮で楽しいが、ポータルを活用することで使い古されたギミックが全く新しい働きを見せる。
例えば、ジャンプ台で勢いを付けてからポータルを潜り、もう片方のポータルから勢いよく飛び出す人間大砲。主観視点と相まって、宙を舞う感覚がとても気持ち良い。
更に、ポータルの使い方によっては、一つのガジェットから様々な活用法を導き出せてしまうのだから凄い。例を挙げると、青いレーザーのような気流をある時はタレットから身を守る壁にしたり、またある時は歩道にしたり等。この発展性はまさにポータルマジック。
ポータルの可能性は無限大。これほどプレイヤーのイマジネーションを刺激するシステムはないと断言出来る。当然、これを利用したパズルの作りも素晴らしいの一言。
難易度のバランスも絶妙で、最初見た時はこんなの無理だろと思いつつも、弄っていくうちに何となく閃いてくる。解けた時の「俺天才なんじゃね?」感は凄まじい。
新しいテクニックやギミックがステージ毎に順序良く登場し、ちゃんとそれが次に繋がってくるので、自分の成長を感じ取らせてくれるし、進む毎に新しいガジェットが出てくるので全く飽きさせない。
パズル部屋の構造に関しても素晴らしく、全くゴチャゴチャしておらず驚くほどシンプルにまとまっている。一目見ただけで全体の構成がおおよそ把握出来る部屋作りに、ちょっと感動してしまった。逆に言うと殺風景な景観だが、これがまた閉じられた密室の雰囲気を醸し出していて、早く脱出したい気持ちにさせる。
パズルだけではなく歩いて進んでいくフィールドも用意されていて、そこでもちゃんとしたパズルが行われるのだが、ここでは若干のアクションが求められるので良いメリハリとなっている。ただ、ポータルが作れる壁を探すだけのステージ構成が多くて、パズル部屋に比べると若干退屈ではある。
ここからネタバレ注意。
このゲーム、パズルが素晴らしいだけではない。特筆すべきは卓越したストーリー演出と圧倒的な魅力を誇るキャラクター。
シナリオは簡単に言うと、二機のAIロボットの争いに巻き込まれつつ、脱出を計るという内容で、登場キャラは主人公を除いてこの二機のみだが、こいつらがとても魅力的。
主人公をある訓練施設の中に閉じ込め、延々とパズルという名のテストを強いて監視している施設のボス、「GLaDOS」。
普段は頑強なアーマーを包んで、皮肉で主人公を馬鹿にするとても嫌な奴なのに、実際アーマーを剥いで核のコアが晒されると只のジャガイモ電池でしかないというのがとても儚げで面白い。あれほど絶対的な力を振りまいていたのに、鳥にすら突っつかれる無力な存在になるのが何ともシニカル。途端にツンデレ化し、助けてくれと懇願する辺りも、可愛いらしいジャガイモの姿とアーマー状態の時に偉ぶっていたギャップと相まって、キャラの魅力を一層高めている。
もう一機の「whealthey」は、とにかく良く喋るお調子者で、最初は主人公を助けてくれるのだが、AIの入れ替えに成功し、自分が施設を掌握すると一気に豹変。彼の心が力に溺れていく演出には少し震えてしまった。
GLaDOSの邪魔をする為にあえて間抜けな性格で作られたことを知り、その事実を振り払うかのようにジャガイモ電池を叩きつけているシーンもとても印象的。この一連の流れは一見の価値がある。間抜けで、お喋りで、お調子者にも関わらず、思いがけず力を手にしちゃったから、無理してボスぶっている姿が滑稽で、何となく憎めない。
この二機による主導権争いが、子供の喧嘩みたいで何だか愉快。機械の争いながら、AIを差し替える一番重要な局面は人間である主人公に委ねられるのも、結局人間の手を借りないと何も出来ない、機械本来の在り方が描かれていて、その辺りも良かった。
そして終盤からの息をつかせない演出の連続。主人公の行く手を阻もうと次から次へとダイナミックな仕掛けが作動し、それをポータルでかわしていく展開は映画さながらの迫力で燃える。もちろんムービーではなく、自分で操作するから臨場感は凄まじい。
ラスボス対決時の発狂具合も見ていて面白く、やはりラスボスはこうでなくちゃと感じさせる。
このゲームのもう一つの大きな特徴は、素晴らしくセンスに溢れた台詞回し。
whealtheyのボケてるのか本気でやってるのか分からない一人芝居に笑わずにはいられないし、GLaDOSの皮肉は一々ユーモラスで面白い。
が、問題なのは吹き替えがないことで、字幕しか表示されないため、台詞の度に画面の下を注視しなければならない。パズルゲーとは言え、動かしている場面が多いのだから、こういうゲームで吹き替えなし字幕オンリーはやめろと心の底から言いたい。
あと、演出に力を入れているのに、ロードの挟みが多くて少し萎えた。最近のゲームはロードレスによって没入感を生み出す物が多いのに、ポータルはそれに当てはまらない。
他に細かい事を言うと、シナリオと言いテクニックと言い、「前作経験してる人なら分かるでしょ」と言わんばかりの説明不足で、前作をやってない人は置いてきぼりな雰囲気があった。俺もその一人。やっていくうちに慣れるけどね。
ボリュームはシングルで11時間程度。俺は悩んでいる場面が多かったので、結構時間がかかった。周回要素はまるでなく、高難易度モードもない。よってリプレイ性は微塵もない。
が、このゲームには協力プレイが用意されている。現在PSNが死んでいるので、オンラインは試せなかったが、友達とやってみたらすこぶる楽しかった。
協力プレイのステージは、シングルモードとは一新され、協力必須のパズルが満載。互いに足を引っ張りあって笑い、一緒にあーでもないこーでもないと悩み、解いた時に喜びを共有する、リトルビッグプラネットと似たような面白さがある。
意思疎通が欠かせなく、野良だとキツそうな気もするが、そのもどかしさがまた楽しそうでもある。協力モードにちゃんとシナリオやイベントが用意されているのもポイント高い。
ボリューム不足は否めないが、7140円という定価は決して高くはない。パズルゲー好きなら絶対に買うべき作品。
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