なにこの突然変異っぷり…





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DSのADV。逆転シリーズのスピンオフ作品、第二弾。

逆転裁判4でやっちゃった為か、シリーズを総監していた巧氏が開発から抜け、彼が全く関わらなかった前作の検事1は、良くも悪くも何もサプライズがない地味にまとまった内容で、いい加減な動機でいい加減な殺人を犯すという展開に失笑し、
ただお馴染みのキャラ登場にニヤリとするだけの、実にどうでも良いキャラゲーと化していてガッカリした覚えがある。これならまだ悪名高い4のがマシ。
と言っても、俺自身は4が初めての逆転シリーズだったからあんまり悪い印象はないんだけどね。4が面白くて逆転シリーズにのめり込んだくらいだし。
ただ、1・2・3を一通りやった後に4の豹変した成歩堂を見ると、やっぱり問題作なんだなぁと思う。

話を戻すが、今作も巧氏が関わってないことからあまり期待はしていなかった。
ただ、腐っても逆転だし、システムが面白いのは間違いないので暇潰しになればと思い買ったのだが、これは一体どういうことだ?
最高傑作と名高い逆転裁判3と比べても遜色ない出来に仕上がっていて、あまりの突然変異っぷりにぶったまげてしまった。

今作、注目すべき点はシナリオ。これが実に良く出来ている。というより、キャラが良く立っている。
逆転シリーズと言えば、アクが強いながらどこか惹かれる部分がある魅力的なキャラがウリのゲームであるが、前作は本当にいい加減な描き方で、目立ったキャラがおらず、ヒロインですら存在感が薄かった。
それを補うためか、旧キャラがやたらと登場したのだが、その旧キャラ自体も人物像が微妙に変わってるというもうどうしようない状態。

ところが、検事2ではそれが大幅に改善されている。
ヒロインはちゃんとヒロインらしくなってるし、主人公との掛け合いも様になってきた。相手側の検事と裁判官も、ただ表の一面だけを描くのではなく、違う面もしっかりと描写しており、特に検事の成長にはグッと来る。
新キャラに関しても印象的なのが多く、一癖ある奴ばかりで魅力的。
そこに旧キャラがほどよい感じで絡み、お馴染みのハチャメチャな展開を繰り広げる。

シナリオ展開はいつも以上に二転三転し、常に驚きの連続。今作はミスリードを誘う場面が多く、まんまと騙されることもしばしば。まぁ、かなり強引なところもあるが、ある種、それが逆転のテイストでもあるのでこの雰囲気が戻ってきたのは嬉しい。
今作のシナリオは、親子の絆というテーマが根底にあり、それが一貫としている為に話がブレない。そのテーマにしても、親子の強い絆だけを描いてるのではなく、決別や裏切り等、様々な面からのアプローチがありとても情緒的。クドイほど、「親子」を全面に押し出していながら、それでも話が破綻してないことに感心する。
行動の理由や犯行の動機についても確固としたものがあり、説得力がある。感情移入しやすく、物語にすんなり入り込めた。
ラスボスも同情してしまうような可哀想な奴だったが、きちんとフォローがあって救われたのが良かった。

ボリュームは、シリーズ最長と言って良いほど膨大で、クリアーまで大体28時間かかった。
ただ、一話一話が長すぎるために途中で混乱してくる。バックログも相変わらず搭載されていない。
特に、最終話は時系列が複雑過ぎて、もう何が何やらワケワカメだった。時系列フローチャートのような物を用意して欲しい。


システムは、前作とほぼ変わらないが、逆転裁判とは大きく異なる。
ウリだった裁判パートはなくなり、捜査パートで手掛かりを見つけながら参考人の証言を聞き、矛盾を付いていくという形を取っている。
結果的に捜査パートの煩わしさは軽減されたが、メリハリもなくなってしまい、矛盾を突き付けた時の爽快感がいくらか薄れてしまった。
ただ、今作は裁判官キャラが尋問中に介入してきて、裁判っぽい雰囲気を作り出している。主人公は検事ながら、ほとんど被告の弁護に立ち回ってるし、相手側をサポートするのは別の検事だったりと、
要するに舞台が裁判所ではないだけで、やってることは逆転裁判とほとんど変わらない。
逆転裁判の裁判パートは、推理を分かりやすく印象的に伝えるのに非常に優れたシステムであり、逆転検事のシステムも基本的にこれを踏襲してるので、これだけで面白いのは間違いない。

今作、新たに追加された要素はロジックチェス。
これは、相手から証言を引き出すやり取りをチェスに見立てたもの。チェスと言っても、ただ演出で利用されてるだけで、簡単に言うと癖を見抜いて時間制限内に証言を引き出すシステム。
ただ、このシステムは微妙。時間制限はユルユルで緊張感がないし、サイコロックほどの爽快感もなく、
最初に相手の癖を教えてくれるから癖を見抜く楽しさがあるわけでもない。試みは面白いが、色々と粗削りなシステム。
だがまぁ、根幹のシステムは完成されてるわけで、新システムは邪魔にさえならなければ、正直どうでも良い。

ちなみに、今作は結構難易度が高い。逆転裁判2の次くらいに難しいと思う。
かなり強引な推理があり、それで納得するのかよと、ツッコミたくなる場面も多々あったが、霊媒みたいなとんでも推理はないので、いちおう理に適ってはいる。


とにかく、シナリオに関しては、逆転シリーズの中でも一、二位を争うのではないかというくらい、良く出来ていた。
粗削りではあるが、そこは勢いで強引に持っていくのが逆転仕込み。このシリーズは細かい点を気にしたら負け。
欲を言えば、主人公の父親の弟子が良いキャラなのに、地味な役回りだったのが残念。てっきり、最後に美味しい見せ場があるのかと思ったんだけど。
4、検事1とガッカリした人でも、今作は間違いなく買うだけの価値があると思う。