徹底したバランス調整と革新的なオンラインが光る傑作
開発はフロムソフトウェア。販売はSCE。
フロムと言えば、マゾでダークなRPGを得意としている会社で、例としてキングスフィールドやシャドウタワーが挙げられる。それらが持つ硬派な雰囲気と非常にシビアなゲーム性は、多くのニッチゲーマーの心を掴んだ。
キングスフィールドはPSで三作、PS2で一作発売されたのだが、一貫として硬派なテイストを守りながらマンネリを感じさせないデザインで、どれも素晴らしい出来だった。
ところが、PSPで発売された、キングスフィールドアディショナルは、それだけでキングスフィールドだと分かる虚無感広がる世界観がどういうわけだかなくなり、ダンジョン探索や戦闘が何故かwiz形式に変更され、さらにカジノまであるという迷走っぷり。
「大人も子供も皆楽しめる風にしました」と言わんばかりの何の味わいもないただ渋いだけの作品になっていてガッカリした覚えがある。普通のダンジョンRPGとしてはそこそこ遊べたけど。
後にキングスフィールドシリーズが完全収録された、キングスフィールドダークサイドボックスなるものが数量限定でフロムソフトウェアから発売されるのだが、この中にアディショナルは収録されておらず、公式までがアディショナルを黒歴史だと認めることになってしまった。
そういうわけで、フロムからキングスフィールドっぽい新作がPS3で出るらしいと聞いた時、アディショナルの悲劇が脳裏を過ったわけだが、ファミ通の紹介ページを見た時、一瞬で不安は消え去った。
キングスを彷彿とさせる、フロム信者以外は誰も得しないような突き放した陰湿な世界観。男心をくすぐる巨大なモンスター達。
ヤバい、これはヤバい。当時、受験生ながら毎週ファミ通を立ち読み、デモンズの情報があれば即購入。勉強そっちのけで何度も読み直し、妄想を深めていった。
このゲームは、不気味な森や中世っぽい城、誰も立ち寄りたがらない廃墟、無駄に高くそびえ立つ塔、まがまがしくも神々しい神殿などが点在したオープンワールドを駆け回る壮大なアクションRPGに違いない。
本能的に受け付けない気持ち悪いモンスター達に何度も殺され、攻略法を手探りで見つけながら進め、
「そりゃねーよ」と言いたくなるような嫌らしいトラップにかかってあっさり死に、苦労した末に辿り着いた奥の間で宝に手を伸ばそうとした瞬間、潜んでいた巨大なモンスターに一瞬で殺され唖然とする。そんなゲームに違いない。
いやー、想像するだけでゾクゾクしてくる。しかも、俺が大好きなCoop対応だって?
フロム様、俺は一生あんたに付いていくぜ…。
と、まぁ妄想が深まりすぎて、現実はオープンワールドではなくステージ制だと知った時はちょっとガッカリした。
しかし、それ以外はほぼ期待通り、いやそれ以上の作品に仕上がっていた。
デモンズソウルは、キングスフィールドの流れを汲んだ三人称視点によるアクションRPG。
難易度が高いゲームにありがちなファクターとして、操作性が煩雑だったり、操作キャラの動きに変な癖があったり、カメラワークが悪かったり、全く計算されていないレベルデザインだったりと、
プレイヤーのテクニックではどうしようもない要素から思いもよらない難易度に仕上がり、マゾゲーと呼ばれる作品が数多く存在するが、こういうのは総じて理不尽な仕様にイライラするだけで、ゲームとしては何の面白みも感じないものが多い。
一方、同じく難易度が高いデモンズソウルはそういったことは全く当てはまらない。
操作は凄く快適だし、ロードは気にならないし、カメラワークも特に問題ない。操作キャラの動きも、軽装なら驚くほどサクサク動き、重装備なら鈍重な動きと、プレイヤー次第で決まる。
難易度が高いながら、プレイヤーのストレスになる要素はほとんどない。故に何回死んだとしても、自分のせいだと納得出来る。
この辺りの作りはSCEと手を組んだのが大きいのだろう。
アーマードコア、キングスフィールド、シャドウタワー、どれを取ってもフロムのゲームがユーザビリティな作りとはとても言えない。
一方、さすがフロムと唸らされたのはマップのレベルデザイン。レベルデザインとは、マップの構造やモンスター、アイテムの配置のことを言う。
これがほんと良い意味で嫌らしい作りなんだ。
基本的に敵とタイマン勝負なら簡単に切り抜けられるが、複数に囲まれると一気に窮地になる。それを避けるためには、誘き出しながら慎重に戦う必要があるのだが、起伏に富んだ嫌らしいマップと死角から飛びだしてくる敵がそうさせてくれない。
さらにスタッフがニヤニヤしながら配置したであろう罠や、初見殺しとしか言いようがない敵など、全ての要素が連動してプレイヤーの前に立ちはだかる。こちらの心理をチクチクと突いてくるマップの構造とレベルデザインがもう堪らない。
一歩、歩くたびに何か起きるんじゃないかと思わせるマップの雰囲気、不気味で精神的に追い込んでくる気持ち悪いモンスター達。
どのステージも手抜きは一切なく、最後の最後まで片時も緊張感が抜けない、画面から目を離せない。
故に難易度は高いが、攻略のパターンが一つに納まらないバランスがまた絶妙。
単に慎重に進めば良いところもあれば、思いきった行動をした方が良い場面もあるし、アイテムや装備を見なおして打開策を考えたり、モンスターの配置や地形をあらかじめ覚えたりと、アクションの腕だけでなく、頭を使って攻略できるのも面白いところ。
基本的に敵の配置や罠の位置などを知っていれば格段に楽になるゲームだが、かと言って覚えゲーだけの範疇に納まらず、初見でもテクニックや機転で切り抜けられるバランスの良さ。
アクションが苦手な人は、何度も挑戦してマップの構成を覚え、レベルを上げながら攻略すれば良いし、アクションが得意な人はテクニックを駆使して進めば良い。
難易度が高いながら、どちらのプレイスタイルにも合わせたバランス調整は見事と言うほかない。
さらに面白い試みをしているのがオンライン。
同じオンラインに繋いでいるプレイヤーの行動が白い幻影となって見えるシステムは、特にメリットはないが暗いステージが多いこのゲームの中で僕らは繋がっているんだと勇気を与えてくれるし、
地面に赤く浮かび上がるメッセージ機能は、プレイヤーのミスリードを誘うものから攻略に役立つものまであって面白いし、
他者の死ぬ前後が見えるシステムは、間抜けな死に様に笑ってしまうし、ちょっとしたヒントにもなっている上手い仕組み。
仲間になって一緒にステージを攻略できる青ファントムは、下手すれば世界観が壊れてしまうシステムだが、
ボイスチャットやテキストチャットをあえて対応させず、ポーズなどの最低限のコミュニケーションだけを取り入れることで、面倒くさい人間関係の煩わしさをとっ払いつつ、デモンズソウルの世界観を壊さないよう上手く保っている。
オンラインに繋いでいるプレイヤーが敵として現れる黒ファントムシステムも非常に面白い試みだが、これは一考の余地ありで、下手すると初心者が詰んでしまう可能性がある。
そのほかソウル傾向というものがあり、これはオンラインに繋いでいるプレイヤーの状況によって、普段は通れない場所に行けたり、敵の強さが変わったりするというシステムなのだが、一人では調整することが難しく、結局運任せになる。
貴重なアイテムの多くはこのシステムを利用しないと手に入らないだけに、この仕様はちょっとどうかと思う。
いわゆる死んで覚えるゲームだが死ぬとペナルティとしてスタート地点に戻され、死んだ場所に集めたソウルを置いてきてしまうというのがある。
この死んだら最初に戻されるという仕様はプレイに緊張感を生むという意味で大きく役立っているわけだが、俺としてはあまり好きではない仕様で
「また同じことをやらされるのかよ…」と思ってしまう。
俺は同じことをやらされるのが何よりも嫌いなゆとりゲーマーなんだ…。
キングスフィールドをプレイしていて、あと少しで次のマップってところで死んだ時のモチベーションの下がりようったらハンパじゃなかった。
それゆえに、クリアーした時の達成感は他の温いゲームとは比べものにならなかったし、自分の力で攻略法を見つけた時の快感は何とも言えないものがあったからキングスフィールドは苦しいながらも楽しいゲームだった。
デモンズソウルの場合は、最初のステージをクリアーすれば4つのマップが解禁され、好きな順にプレイできるため、たとえあるマップで死んだとしても、
「次は違うマップでやるか。あ、また死んだ。じゃあ、また違うマップをやろう」と、マップを変えることでモチベーションを下げることなくプレイすることができた。
さらに、いくつかのマップでは仕掛けさえ解けばスタート地点近くにボスへ続く道が作られる。
これらの要素によって、キングスフィールドの頃に感じていたリスタート時のストレスは大幅に軽減された。
アクションが快適で、レベルデザインが絶妙で、オンラインが面白くて、中毒性があって、何周も遊べるんだから、このゲームは最強と言わざる得ない。
とはいえ難易度が高く、世界観が暗いので合わない人にはとことん合わないのは事実。
でもまぁPS3を持っているならとりあえず買っとけば良いと思う。
ゲーマーを自負するなら、PS3を買ってでもやるべき作品。
フロムと言えば、マゾでダークなRPGを得意としている会社で、例としてキングスフィールドやシャドウタワーが挙げられる。それらが持つ硬派な雰囲気と非常にシビアなゲーム性は、多くのニッチゲーマーの心を掴んだ。
キングスフィールドはPSで三作、PS2で一作発売されたのだが、一貫として硬派なテイストを守りながらマンネリを感じさせないデザインで、どれも素晴らしい出来だった。
ところが、PSPで発売された、キングスフィールドアディショナルは、それだけでキングスフィールドだと分かる虚無感広がる世界観がどういうわけだかなくなり、ダンジョン探索や戦闘が何故かwiz形式に変更され、さらにカジノまであるという迷走っぷり。
「大人も子供も皆楽しめる風にしました」と言わんばかりの何の味わいもないただ渋いだけの作品になっていてガッカリした覚えがある。普通のダンジョンRPGとしてはそこそこ遊べたけど。
後にキングスフィールドシリーズが完全収録された、キングスフィールドダークサイドボックスなるものが数量限定でフロムソフトウェアから発売されるのだが、この中にアディショナルは収録されておらず、公式までがアディショナルを黒歴史だと認めることになってしまった。
そういうわけで、フロムからキングスフィールドっぽい新作がPS3で出るらしいと聞いた時、アディショナルの悲劇が脳裏を過ったわけだが、ファミ通の紹介ページを見た時、一瞬で不安は消え去った。
キングスを彷彿とさせる、フロム信者以外は誰も得しないような突き放した陰湿な世界観。男心をくすぐる巨大なモンスター達。
ヤバい、これはヤバい。当時、受験生ながら毎週ファミ通を立ち読み、デモンズの情報があれば即購入。勉強そっちのけで何度も読み直し、妄想を深めていった。
このゲームは、不気味な森や中世っぽい城、誰も立ち寄りたがらない廃墟、無駄に高くそびえ立つ塔、まがまがしくも神々しい神殿などが点在したオープンワールドを駆け回る壮大なアクションRPGに違いない。
本能的に受け付けない気持ち悪いモンスター達に何度も殺され、攻略法を手探りで見つけながら進め、
「そりゃねーよ」と言いたくなるような嫌らしいトラップにかかってあっさり死に、苦労した末に辿り着いた奥の間で宝に手を伸ばそうとした瞬間、潜んでいた巨大なモンスターに一瞬で殺され唖然とする。そんなゲームに違いない。
いやー、想像するだけでゾクゾクしてくる。しかも、俺が大好きなCoop対応だって?
フロム様、俺は一生あんたに付いていくぜ…。
と、まぁ妄想が深まりすぎて、現実はオープンワールドではなくステージ制だと知った時はちょっとガッカリした。
しかし、それ以外はほぼ期待通り、いやそれ以上の作品に仕上がっていた。
デモンズソウルは、キングスフィールドの流れを汲んだ三人称視点によるアクションRPG。
難易度が高いゲームにありがちなファクターとして、操作性が煩雑だったり、操作キャラの動きに変な癖があったり、カメラワークが悪かったり、全く計算されていないレベルデザインだったりと、
プレイヤーのテクニックではどうしようもない要素から思いもよらない難易度に仕上がり、マゾゲーと呼ばれる作品が数多く存在するが、こういうのは総じて理不尽な仕様にイライラするだけで、ゲームとしては何の面白みも感じないものが多い。
一方、同じく難易度が高いデモンズソウルはそういったことは全く当てはまらない。
操作は凄く快適だし、ロードは気にならないし、カメラワークも特に問題ない。操作キャラの動きも、軽装なら驚くほどサクサク動き、重装備なら鈍重な動きと、プレイヤー次第で決まる。
難易度が高いながら、プレイヤーのストレスになる要素はほとんどない。故に何回死んだとしても、自分のせいだと納得出来る。
この辺りの作りはSCEと手を組んだのが大きいのだろう。
アーマードコア、キングスフィールド、シャドウタワー、どれを取ってもフロムのゲームがユーザビリティな作りとはとても言えない。
一方、さすがフロムと唸らされたのはマップのレベルデザイン。レベルデザインとは、マップの構造やモンスター、アイテムの配置のことを言う。
これがほんと良い意味で嫌らしい作りなんだ。
基本的に敵とタイマン勝負なら簡単に切り抜けられるが、複数に囲まれると一気に窮地になる。それを避けるためには、誘き出しながら慎重に戦う必要があるのだが、起伏に富んだ嫌らしいマップと死角から飛びだしてくる敵がそうさせてくれない。
さらにスタッフがニヤニヤしながら配置したであろう罠や、初見殺しとしか言いようがない敵など、全ての要素が連動してプレイヤーの前に立ちはだかる。こちらの心理をチクチクと突いてくるマップの構造とレベルデザインがもう堪らない。
一歩、歩くたびに何か起きるんじゃないかと思わせるマップの雰囲気、不気味で精神的に追い込んでくる気持ち悪いモンスター達。
どのステージも手抜きは一切なく、最後の最後まで片時も緊張感が抜けない、画面から目を離せない。
故に難易度は高いが、攻略のパターンが一つに納まらないバランスがまた絶妙。
単に慎重に進めば良いところもあれば、思いきった行動をした方が良い場面もあるし、アイテムや装備を見なおして打開策を考えたり、モンスターの配置や地形をあらかじめ覚えたりと、アクションの腕だけでなく、頭を使って攻略できるのも面白いところ。
基本的に敵の配置や罠の位置などを知っていれば格段に楽になるゲームだが、かと言って覚えゲーだけの範疇に納まらず、初見でもテクニックや機転で切り抜けられるバランスの良さ。
アクションが苦手な人は、何度も挑戦してマップの構成を覚え、レベルを上げながら攻略すれば良いし、アクションが得意な人はテクニックを駆使して進めば良い。
難易度が高いながら、どちらのプレイスタイルにも合わせたバランス調整は見事と言うほかない。
さらに面白い試みをしているのがオンライン。
同じオンラインに繋いでいるプレイヤーの行動が白い幻影となって見えるシステムは、特にメリットはないが暗いステージが多いこのゲームの中で僕らは繋がっているんだと勇気を与えてくれるし、
地面に赤く浮かび上がるメッセージ機能は、プレイヤーのミスリードを誘うものから攻略に役立つものまであって面白いし、
他者の死ぬ前後が見えるシステムは、間抜けな死に様に笑ってしまうし、ちょっとしたヒントにもなっている上手い仕組み。
仲間になって一緒にステージを攻略できる青ファントムは、下手すれば世界観が壊れてしまうシステムだが、
ボイスチャットやテキストチャットをあえて対応させず、ポーズなどの最低限のコミュニケーションだけを取り入れることで、面倒くさい人間関係の煩わしさをとっ払いつつ、デモンズソウルの世界観を壊さないよう上手く保っている。
オンラインに繋いでいるプレイヤーが敵として現れる黒ファントムシステムも非常に面白い試みだが、これは一考の余地ありで、下手すると初心者が詰んでしまう可能性がある。
そのほかソウル傾向というものがあり、これはオンラインに繋いでいるプレイヤーの状況によって、普段は通れない場所に行けたり、敵の強さが変わったりするというシステムなのだが、一人では調整することが難しく、結局運任せになる。
貴重なアイテムの多くはこのシステムを利用しないと手に入らないだけに、この仕様はちょっとどうかと思う。
いわゆる死んで覚えるゲームだが死ぬとペナルティとしてスタート地点に戻され、死んだ場所に集めたソウルを置いてきてしまうというのがある。
この死んだら最初に戻されるという仕様はプレイに緊張感を生むという意味で大きく役立っているわけだが、俺としてはあまり好きではない仕様で
「また同じことをやらされるのかよ…」と思ってしまう。
俺は同じことをやらされるのが何よりも嫌いなゆとりゲーマーなんだ…。
キングスフィールドをプレイしていて、あと少しで次のマップってところで死んだ時のモチベーションの下がりようったらハンパじゃなかった。
それゆえに、クリアーした時の達成感は他の温いゲームとは比べものにならなかったし、自分の力で攻略法を見つけた時の快感は何とも言えないものがあったからキングスフィールドは苦しいながらも楽しいゲームだった。
デモンズソウルの場合は、最初のステージをクリアーすれば4つのマップが解禁され、好きな順にプレイできるため、たとえあるマップで死んだとしても、
「次は違うマップでやるか。あ、また死んだ。じゃあ、また違うマップをやろう」と、マップを変えることでモチベーションを下げることなくプレイすることができた。
さらに、いくつかのマップでは仕掛けさえ解けばスタート地点近くにボスへ続く道が作られる。
これらの要素によって、キングスフィールドの頃に感じていたリスタート時のストレスは大幅に軽減された。
アクションが快適で、レベルデザインが絶妙で、オンラインが面白くて、中毒性があって、何周も遊べるんだから、このゲームは最強と言わざる得ない。
とはいえ難易度が高く、世界観が暗いので合わない人にはとことん合わないのは事実。
でもまぁPS3を持っているならとりあえず買っとけば良いと思う。
ゲーマーを自負するなら、PS3を買ってでもやるべき作品。
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