作り込みは凄いのに物足りない





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モノリスソフト開発、任天堂発売。
製作に3年かけただけあって作り込みは凄い。
中でも力を入れてるのがフィールドマップで、隅々まで踏破しようとすると優に一時間はかかるであろうマップが10以上用意されている。
単に広いだけでなく、起伏に富んでて立体的で探索心をくすぐられるし、とても倒せないような巨大なモンスターがそこら中にウロウロしていたり、高い所からジャンプで飛び降りれたりと、開放感がハンパじゃない。
更にロケーションを発見することで経験値が貰えたり、フィールドに散らばっているコレペディアと呼ばれるアイテムを見つけることで貴重な装備やジェムを貰えたりと、探索する動機付けもきちんとある。
それでいて、目的地までのナビゲートが親切で、とにかく迷わず先に進みたいプレイヤーへの配慮もバッチリ。
フィールドのバリエーションも豊かで、平原、雪山、幻想空間、浮遊大陸、ジャングル、魔城など、それぞれ違ったシチュエーションを楽しむことが出来る。
フィールドの作り込みに関しては、数あるRPGの中でも間違いなくトップクラスだと断言出来る。

この広大なフィールドマップを最大限に活かしているのが膨大なクエスト。クエストに指示されたアイテムやモンスターを探すためにフィールドを駆け回るのが楽しい。
クエストを受注さえすれば、目標達成してもわざわざ報告する必要がないし、受注数も無制限。
クエストの内容は「○○を見つけろ」や「○○を倒せ」等のお使い要素がほとんどだが、この単純さがフィールドを歩いて雑魚を倒しているだけでどんどんクエストが消化されていくテンポを生むため、むしろ心地良い。

街の作り込みもハンパじゃない。
昼夜で出現する人が変わったり、物語を進めたりプレイヤーの行動によって会話の内容が変化したりするのは当たり前。
これに加えて街に住んでいる人との交友関係を表すキズナグラムというシステムがあり、これはクエストを消化したり話をしていくことで、どんどん街の人の関係が変化し、新しいクエストが出たり、話の内容が変わったりする。街を訪れるたびに新たな発見があるわけだ。
とにかく作り込みに関しては膨大かつ緻密に作られていて感服した。

個人的にRPGは「戦闘」「ストーリー」「探索」の三つの要素が重要だと思っている。
「探索」の要素は申し分ないが、残り二つの要素は気になる点があった。

まず、ストーリー部分。
RPGのストーリーで映画や小説のような高いレベルを求めるのは酷だと思うし、それに個人差もある。
ストーリーが破綻しているわけではないので及第点ではある。
ただ、序盤から中盤に起承転結を詰め込み過ぎて全体の起承転結が薄らいでしまった感じがある。
終盤の流れは熱いけど、逆を言えば唐突な展開の連続だった。
キャラクター達に愛情が湧かなかったのも話にのめり込めなかった原因の一つ。もう少し、一人一人を掘り下げて欲しい。
イベントに関しては、演出と音楽の使い方が上手いので盛り上がるのだが、登場人物のセリフの厨二っぽさには分かっていてもイラっとしてしまう。
セリフや演出は低年齢向きなのに、話の中身は変に大人びていて、いったいどっちの層をターゲットにしているのか中途半端なのが気になった。

次に戦闘部分。
基本システムは良くあるシームレスのRPGと同じ。
好きなタイミングで戦闘を始めれて、戦闘中にキャラを動かすことができる。一見するとアクションっぽいが、見た目攻撃が当たってなくてもダメージはしっかり受ける。
俺が知っているRPGの中ではFF12と白騎士物語に近い。
この二つと大きく違うのは敵の位置関係で効果が変わる技(アーツ)があること。
例えば、敵を背中から攻撃すると威力が上がったり、敵の側面から攻撃するとパーティーゲージが蓄まったり等のアーツが用意されている。
他にはMPの概念がないため、時間によって(リキャスト)技を使うタイミングは規制される。
この戦闘システムは平凡なものだが、使えるキャラクター7人はそれぞれ役割が異なるため戦略を考えてパーティーを組む楽しさがある。
敵を引き付ける壁役、状態異常が得意なトリックスター、回復神、魔法が得意なキャラなど。
アタッカー、ディフェンス、サポートの役割が明確で、三人パーティーではどれも微妙に物足りない気にさせるバランスが絶妙。
仲間のAIも賢いため、ほぼ自分の描いた戦略通りに戦闘は進む。
このように戦闘に至るまでの準備は楽しいのだが、問題は戦闘をつまらないと感じさせる仕様である。
このゲーム、敵とのレベル差が一定以上あると、ほとんどダメージが通らなくなるという補整がかかる。
つまり、レベル差がある敵を戦略を駆使して倒すってことがまず不可能。これは戦闘の醍醐味を完全に潰している。
逆にレベル差が一定以内なら特に戦略を考えずとも、リキャストした順にアーツを使っていくだけで、ほとんどの雑魚は倒せるという極端なバランス。
最初はアーツやパーティーの組み合わせとか、コンボとか色々考えて楽しんでいたが、レベル至上主義な戦闘の仕様に気付くと急激に冷めた。ゼノブレイドで一番残念な点がこれ。
が、何度も言うがこのゲームのフィールドの作り込みは凄いので、フィールドを探索しながらレベル上げするのは何とも言えない楽しさがあった。個人的にはこの瞬間がゼノブレイドをプレイしてて一番の至福の時。クリアーまでプレイ出来た一番の理由だ。

他に欠点としては、妙に使いにくいメニューのインターフェースと微妙に長い暗転。
二、三秒のロードとはいえ、装備やパーティーを変えるたびにもたつくとイライラもする。
ほとんどの施設や民家に入れない街も不満要素の一つ。
街自体はフィールドに負けないぐらい広く、立体的に作られているのだが、入れる建物がほとんどないというのは寂しい。
もう少しコンパクトにして密度を濃くした方が良かったのでは?
終盤になると金が余りまくるのもどうかと思う。
装備が知らないうちに蓄まってるし、買い物の楽しみがほとんどない。素材で装備を作っていく感じで良かった気がする。

ゼノブレイドに限らず、最近のRPGをやってると、いかにバランス調整が重要なファクターなのか思い知らされる。
この手のバランスは、やっぱりドラクエが頭抜けているんだなぁと思う。人気が衰えない理由は目に見えないバランス調整の賜物だろうなぁ。
ドラクエ6のDSリメイクはあれだったけど。

ゼノブレイドは手抜きや妥協は一切感じられなかったが、もっとゲーム性やバランスを洗練して欲しかった。
それでもフィールドの作り込みは凄いので、探索好きなRPGゲーマーならwiiごと買ってでもやる価値は充分ある。